シラバス

授業科目名
環境持続性と自然共生社会
単位数
2
担当教員名
鬼頭 秀一
担当形態
単独
授業の到達目標及びテーマ
(1)人間と自然、自然と人工(人為)などと二項対立的に捉えられてきた人間と自然との関係を乗り
越える自然共生社会の考え方を理解する。
(2)殺生と食の問題、狩猟や捕鯨と野生生物保護の問題を、二項対立的ではない人間と自然との関係
性の中で捉えることができる。
(3)外来種の問題や生物多様性保全、自然再生の事例を、自然環境の問題だけでなく、社会的環境、
精神的環境の側面から捉え、文化や社会の中での住民主体の保全のあり方について考え、説明が
出来る。
(4)自然共生社会をどのような文化的、社会的な枠組みで行っていくべきか、政策決定のあり方も
含めて具体的に説明ができる。
(5)人間にとって望ましい自然、自然の恵みの面だけでなく、荒ぶる自然のもたらす禍、災害リスク
も含めた人間と自然との関係のあり方について理解し、どのようなあり方を実現していくべきか
について説明することが出来る。
授業の概要
自然保護ということで、何を、何のために、どのような形でまもるのかを、さまざまな自然保護や
環境保全の事例を通して学び、その理論的な全体の枠組み、普遍的な原理を導き出し理解する。その上
で、自然共生社会が、政策的にどのような形であるべきかを、さまざまな位相から考えていく。
環境持続性と自然共生社会を考えるための基本になる学問が環境倫理学である。人間が自然とどう
関わるべきかという環境倫理の考え方を軸に自然との共生を考えることでより、自然との共生をより
根源的なところから立体的に捉え、実践に生かすことが出来る。今まで人間と自然とを対立的に捉え、
開発対保護、環境対経済と二項対立的に捉えられてきた環境持続性や自然との共生の考え方を乗り越え
て、人間が自然とどのような関係を築き、共生できるのかという観点から問題を捉えられるような理論
的な枠組みを構築する。新しい環境倫理の考え方をもとにして自然との共生の問題を実践的、政策的に
捉えてみたい。
授業計画
第1回:
「自然を守る」こととは何か、人間と自然との関係を考える
第2回:都市と人工物のあり方を頭に置きつつ、自然と人為の関係について考える
第3回:肉食と菜食のことを顧慮しつつ、食べること、殺生することについて考える
第4回:捕鯨問題を検討しつつ、食べることと文化、野生生物保護について考える
第5回:アフリカの狩猟の問題を検討しながら『環境持続性』
「持続可能性」とは何かについて考える
第6回:二項対立図式の中にある環境保全、環境倫理のあり方を再検討する
第7回:外来種問題を社会の中に位置づけて考える
第8回:自然保護の問題、外来種問題、自然再生の問題を歴史的視点から考える
第9回:再生可能エネルギーと自然保護の関係の中で「地球に優しい」を考える
第10回:未来世代に配慮する自然共生社会のあり方について考える
第11回:精神的豊かさという観点から自然共生社会のあり方を問いなおしてみる
第12回:地域に根付いた文化や智恵ということを自然共生社会の中で生かすあり方を考える
第13回:熟議的市民政治と、ローカルな共的管理か、自然共生社会のガバナンスを考える
第14回:リスク管理のあり方を考えつつマネジメントのありかたについて考える
第15回:恵みも禍も、包括的福利の視点から自然共生社会の全体の枠組みについて考える
定期試験
スクーリングでの学修内容
白神山地の自然保護、環境保全の現場の問題を具体的に検討しながら、自然保護、自然との共生の
枠組みとして何が問題になっているのか、解決せねばならない課題なのかを摘出する。その上で、環境
倫理の考え方の歴史的な流れについて検討し、1992 年のリオデジャネイロの地球サミットの環境保全の
枠組みの転換点について考えながら、新しい自然との共生の枠組みについて検討する。里山などの二次
的自然における保全のあり方を具体的に検討しながら、自然保護、環境保全における、農業をはじめと
する人間の営みの位置づけについて検討しながら、自然との共生のあり方の基本的な考え方について
講義する。
(主に、第5回、第6回、第11回、第12回の内容を含む。
)
テキスト
鬼頭 秀一・福永 真弓(編)
『環境倫理学』東京大学出版会 2009年
参考書・参考資料等
鬼頭 秀一『自然保護を問いなおす──環境倫理とネットワーク』ちくま新書 1996年
鬼頭 秀一(編)
『環境の豊かさをもとめて――理念と運動』
(
『講座 人間と環境』 第12巻)昭和堂
1999年
鷲谷 いづみ・鬼頭 秀一(編)
『自然再生のための生物多様性モニタリング』東京大学出版会
2007年
学生に対する評価
スクーリング評価(25%)
、レポート評価(25%)
、科目修得試験(50%)を総合して評価する。