【全訳】 成田 LCC 拡大 航空旅客を増やす起爆剤に 成田空港の新ターミナル開業を,LCC(格安航空会社)の新規就航や路線拡大の追い風にし なければならない。 成田空港で初の LCC 専用のターミナルとなる,成田空港第 3 旅客ターミナルが開業した。新 ターミナルは,施設の設計を簡素化することで建設費を切り詰め,航空会社から空港に支払われ る使用料を従来のターミナルの半分程度に抑えたことが特徴である。 広い休憩スペースや早朝から営業する飲食店を備えることで,新ターミナルは早朝のフライト が多く存在する LCC の乗客の利便性を向上させている。 成田空港が LCC の誘致について真剣に考え始めたのは,羽田空港が国際線を大幅に増便し, 成田の国際空港としての存在感が低下したからだ。 また,新ターミナルの開業は,アジアなどからの訪日客を増やすことも狙いとしており,それ によって成田の国内外の都市を結ぶハブ空港としての役割は強まるであろう。 LCC は高止まりしていた航空運賃の引き下げや,若者を含む新たな顧客層の開拓に貢献して いる。 国内全体の航空需要を増進させる動きを活発化するために,この成田の新ターミナル開業をう まく利用することが重要である。 LCC は国内の航空旅客者数全体の約 7%を占めているが,これは東南アジアの 50%や北米の 30%と比べて遥かに低い数値に留まっており,拡大の大きな余地が残されている。 考えられ得る経済効果とはどのようなものだろうか。 高い経済成長を誇るアジア諸国と日本をつなぐ航路は特に期待ができる。強い海外の観光需要 を日本の成長戦略に生かさなければならない。 地方都市が LCC の就航によって海外の諸都市と直結されれば,観光関連産業の利益になると 同時に,地方経済を活性化することにもなる。 この目標を達成するため,地方で取り組むべき課題がたくさんある。もっと広く観光情報を発 信するなど,自らの地域を可能な限り多くの人に宣伝するための案を打ち出せるよう,創意工夫 をしなければならない。 各々の空港も,アジアの主要空港と比較すると高い着陸料の値下げや,開業時間の延長などの 方策を実行し,「選ばれる空港」になることを目指すべきである。 民間の航空業界側の努力も,LCC のサービス拡大には不可欠である。 近頃,ドイツ機の墜落などを含む,LCC に関わる航空機事故が続発している。低コストでの 運航が事故の直接的な原因ではないものの,LCC の安全面での疑念が強まる恐れがある。 乗務員の健康管理や機体のメンテナンスなど,安全の確保に関して可能な限りの方策を実行し, 安全運航の実績を積み重ねることが LCC に対する信頼構築へのカギとなる。 気がかりな1つの問題として,国内 LCC のパイロット不足が挙げられる。LCC のパイロット の多くは他の大手航空会社を退職してから採用された者が多く,高年齢化が進んでいる。昨年は, 十分なパイロットが確保できず,フライトの減便を強いられるケースが数多くあった。 パイロットの養成は短期間では成し遂げられない。LCC 各社は将来を見すえて,雇用と人材 育成に戦略的に取り組まなければならない。
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