ちいちゃんのかげおくり

第3学年
国語科
学習指導案
授業者
1
単元名
場面のうつりかわりをとらえて,感想をまとめよう
「ちいちゃんのかげおくり」
2
単元の目標
○場面の移り変わりに着目して読み,進んで感想を書こうとしている。
(国語への関心・意欲・態度)
○場面の移り変わりに注目し,それぞれの場面の様子を叙述をもとに想像しながら読むことができる。
(読むこと (1)ウ)
○本文を引用したりまとめたりして,文章の叙述に基づき感想をまとめることができる。
(読むこと (1)エ)
○感想を交流する中で,一人一人の感じ方の違いについて気付くことができる。
(読むこと (1)オ)
○作品中の多様な表現や感想を表すのに適切な言葉があることに気付いている。
(伝統的な言語文化と国語の特質に関する事項 (1)イ(ア))
3
単元を貫く言語活動
「ちいちゃんのかげおくり」を場面の移り変わりに注意しながら読み,感想文を書き交流する。
(読むことの言語活動例 ア)
4
児童と単元について
(1)児童について(省略)
(2)単元について
本単元は,「場面のうつりかわりをとらえて,感想をまとめる」ことをねらいとしている。この単元
は,小学校学習指導要領「C読むこと」の(1)ウ・エ・オ,を受け,さらに単元を貫く言語活動
「「ちいちゃんのかげおくり」を場面の移り変わりに注意しながら読み,感想文を書き交流する。」(読
むことの言語活動例 ア)を受けて設定したものである。
教材文「ちいちゃんのかげおくり」は,「ちいちゃん」という一人の幼い女の子が戦争によって家族
から離され,自分の状況を適切に周囲の大人に伝えることができないため,結果的にひとりぼっちにな
り,自分の家の防空壕で命を失うという悲劇的な作品である。しかし,「ちいちゃん」の立場に立って
みると,「きらきらわらい」だし,「わらいながら,花ばたけの中を走りだ」すほど,会いたいと願って
いた家族に再会できる喜びにあふれた作品であるともいえる。この作品は,児童にとって初めてふれる
戦争の物語であり,児童たちが自分の生活とは遠くかけ離れた過去の出来事「戦争」や,当たり前と
思っている家族との生活,命,未来などの「平和」を,主人公「ちいちゃん」の目を通して見つめ,
同時に客観的に自分自身の目でも見つめるものである。そして,最後の平和な公園の場面で改めて平
和への願いを味わうことができるものである。
児童は,これまでに,自分の経験と物語を結びつけて読み,自分の思いや考えをまとめる学習をして
きた。また,2年生の「わたしはおねえさん」で「あらすじ」や登場人物について学習し,1学期の
「もうすぐ雨に」では,組み立てに基づき,人物の言動や気持ちに着目して読むことを学習してきた。
本単元では,場面の移り変わりに着目し,場面の様子を想像するところから一歩進んで,場面どうしの
関係や場面がもつ働きについて押さえながら学習する。それが,「三年とうげ」での場面を比べ,情景
の違いや登場人物の気持ちの変化を読み取ることにつながっていく。また,「物語を読んで感想をまと
める」活動は,2年生で経験し,その段階では自分の気持ちを表現し,その理由となる叙述をまとめる
学習を行ってきている。本単元では,「初め」「中」「終わり」の構成での感想文の書き方を学習する。
それが,4年生の「プラタナスの木」の自分の体験と比較して感想を書くことにつながっていくもので
ある。
(3)指導にあたって
第一次では,「ちいちゃんのかげおくり」の「場面の移り変わりをとらえて感想をまとめる」という
ゴールを示し,「感想文を書いておたがいの文を読み合ってみたい。」という思いを引き出ししていく。
そして,学習計画を立て今後の見通しをもたせ,あらすじや物語の設定をつかませ,初発の感想を持た
せていく。この際には,あらすじと感想の違いをきちん理解させていきたい。
第二次では,場面の移り変わりに注目し,叙述に即して場面の状況や登場人物(特に中心人物=主人
公)の気持ちを読み取る力をつけていく必要がある。そのため,読みのポイントになる部分にサイドラ
インや書き込みをさせ,ていねいに読ませたい。読みを進めるに当たっては,初めに,第一場面と第四
場面の「かげおくり」を比較して共通点と相違点を読み取り,読みのめあてをもたせる。その後,二つ
の「かげおくり」の間に起きた出来事や第五場面の持っている意味を読み取っていく。このときには,
言葉や表現,状況の描写を大切にしつつ,場面と場面の移り変わりに気を付けて読ませていきたい。ま
た,それぞれの授業の終末には根拠を明らかにした感想を書かせ,第三次につなげていく。また,主体
的な学びにするため,子どもたち自身の力で解決できるようにグループでの学習を大事にしたい。一斉
学習ではグループでできなかったことなどを,様々な人の意見で解決できるようにしたい。
第三次では,第二次で読み取ったことをもとにして,感想文の中心になる「いちばん心をうたれたと
ころ」を挙げ,その場面を引用したりまとめたりして,感じたことを書かせていく。なお,「初め」
「中」「終わり」の構成で書かせるが,整合性をもった文になるように指導する。そして,書き終えた
後は,感想文を読み合って交流して,さらに自分の考えを深めたり,よりよい表現方法を学んだりでき
るように学習を進ませたい。
また,単元の中には入れないが,読書指導として戦争に関する本を選んでおき,昼の読書タイムでは
並行読書として読ませ,戦争について考える機会としたい。
本時では,「一人で『かげおくり』をするちいちゃんの気持ちの状況を理解し,そのときのの気持ち
を読み取ること」がねらいとなる。たったひとりぼっちで家族にも会えず,しかも衰弱している状況に
もかかわらず一人で「かげおくり」をするちいちゃんの思いや,「かげおくり」をした後に家族に再会
できた喜びを,叙述に沿って読んで捉えさせていきたい。そのため,読みのポイントになる部分にサイ
ドラインを引かせ,それ意識させて,ちいちゃんの気持ちにせまらせていく。話し合う活動は,個での
読み取りをグループで確認・交流し,そして,一斉で話し合わせていく。グループでの話し合いでは,
学習の手引きを準備しておき,子どもたちの手で学習が進むようする。一斉の場では,日常ではあまり
使わない「きらきらわらう」という表現が,どのような表情や様子を示しているのか,そして,どんな
気持ちを表しているのかを十分に話し合わせたい。なお,話し合いに時間をかけすぎて,感想を書く時
間がなくならないように留意したい。
学習環境については,学習計画や前時までの学習内容等を掲示しておくが,感想文を書くための読み
取りであるということを意識させるため,単元のゴールは常に見えるところに明示しておきたい。
読物語のあらすじ・設定を捉え
て,初発の感想をまとめ,話し
ている。
(発言・ノート)
行
読
書
(読書タイム)
・感想文を読み合って,友 ・感想文を読み合って交
12 達との感想の違いを捉える 流する。
とともに,本単元の学習を
振り返ることができる。
評価規準
関感想文の書き方に関心をも
ち,進んで学習計画を立ててい
る。
(発言・ノート)
並
5 単元計画
総時数12時間(本時7/12)
次 時
ねらい
学習活動
・感想文を書くという課題 ・感想文を書いた経験に
第
を設定して,その書き方に ついて気をつけることを
一 1 ついて考えるとともに学習 出し合う。
次
計画を立てることができる。・学習課題を設定し,学
習計画を立てる。
2 ・作品を通読し,物語のあ ・ 作 品 を 読 み , あ ら す
らすじ・設定を捉えるとと じ・物語の設定を捉え,
3 もに,初発の感想を持つこ 初発の感想を話し合う。
とができる。
・二つの「かげおくり」の ・二つの「かげおくり」
4 場面を読み,その様子を比 を比べて話し合う。
べて共通点や相違点につい
て考えることができる
・ひとりぼっちになってい ・第二場面までのちいち
第 5 く「ちいちゃん」の気持ち ゃ ん の 状 況 や 心 情 を 読
二
を,叙述をもとに想像し読 む。
次
み取ることができる。
・たった一人で家族の帰り ・第三場面のたった一人
6 を待つちいちゃんの状況や で家族を待つちいちゃん
心情を叙述をもとに読み取 の状況や心情を読む。
ることができる。
7 ・一人で「かげおくり」を ・ 第 四 場 面 の ひ と り で
本 するちいちゃんの状況を理 「かげおくり」をするち
時 解し,その心情を読み取る いちゃんの状況やその心
ことができる。
情を読む。
・第五場面の役割について,・第五場面を読んで,場
他の場面との関わりに注意 面の役割について話し合
8 しながら考え,理由ととも う。
に自分の意見を発表するこ ・物語を読んで,心に浮
とができる。
かんだことを話し合う。
・感想文の書き方を知り, ・ 感 想 文 の 書 き 方 を 知
物語を読んで,一番心を打 り,一番心を打たれた場
第 9 たれたことをまとめること 面について感想をまとめ
三
ができる。
る。
次
・感想の中心を明確にして,・感想の中心を明確にし
10 「初め」や「終わり」を適 て,「初め」「中」「終わ
切に関連付けながら,感想 り」の感想文を書く。
11 文を書くことができる。
読二つの「かげおくり」を比べ,
その違いを読み取っている。
(ワークシート・発言)
読叙述をもとにひとりぼっちに
なっていく状況やちいちゃんの
気持ちを想像している。
(ノート・発言)
読叙述をもとにたった一人で家
族の帰りを待つ状況やちいちゃ
んの気持ちを想像している。
(ノート・発言)
読一人で「かげおくり」をする
ちいちゃんの状況を理解し,そ
のときの気持ちを想像してい
る。
(ノート・発言)
読第五場面の役割について,他
の場面との関わりの中で考え,
捉えている。(ノート・発言)
読感想文の組み立てを理解し,
一番心を打たれたことを理由と
ともにまとめている。
(発言・ノート)
読本文を引用したり,まとめた
りして表現している。
(ノート・感想文)
言感想を表すために適切な言葉
があることに気付いている。
(発言・ノート)
関友達との感想の違いに気づい
ている。(ノート・発言)
読友達と考えや書き方を比較し
意見を伝えている。
(発言・付箋)
6 本時の実際(7/12)
(1)ねらい
一人で「かげおくり」をしているちいちゃんの状況を理解し,そのときの気持ちを
場面の状況をもとにして読み取ることができる。
(2)学習過程
段階
学習活動(学習形態)・めあて
時間
教師の支援・評価
資料
つ 1 前時までの学習をふり返り,本時の
2 ・単元を貫くめあてを毎時間見えるところ ・めあて
めあてを確かめる。
(一斉)
に掲示しておく。また,前時までの学習 ・学習計画
か
のあしあとや学習計画を掲示しておく。 ・ 学 習 の あ
・教科書に書き込ながら行う初めての学習 しあと
む
めあて
になるため,全文掲示をする。
・教材文
一人で「かげおくり」をしている
・学習のあしあとの表から,第四場面は一
全文掲示
ちいちゃんの気持ちや様子を想像し
人でかげおくりをしていることを確認し,
よう。
めあてにつなげるようにする。
2
第一場面と比較し,違うところを
確認する。
(一斉)
見
通 3
第四場面を音読し,ちいちゃんの状
況や気持ちが分かるところにサイドラ
インを引き,自分の読みや考えを教科
書に書きこむ。
(個)
す
3
・以前に学習した第一場面と第四場面を比
較した掲示を利用して,共通点・相違点
を確認する。
・第四場面は「一人で」「まぼろし」「かな
しい」「さびしい」かげおくりとなってい
るが,本当にそうなのかと投げかける。
12 ・ここからは,グループ学習で学習を進め ・ 学 習 の 手 引 き
ていく。学習を進めるために,学習リー (ワークシート)
ダーへ学習の手引きを配布しておく。
・学習リーダー用
・グループ学習を行う前に,音読するとき 学習の手引き
の注意点を示す。
・ちいちゃんの状況や気持ちが分かるとこ
ろにサイドラインを引きながら,音読さ
せる。
・自分の考えが書けない児童には,その立
場に立って想像するように支援するが,
書ける場所のみでよいことも伝える。
・時間前に全員が書き込みができた場合は,
話し合いに入ってよいことにする。
読み取ったことをもとに,ちいちゃ
21 ・はじめは,グループ内で意見を発表させ, ・掲示用短冊
んの状況や気持ちについて 話し合う。
交流させる。
・さし絵
(グ)→ (一斉)
・グループでの学び合いの時には,話し合
【予想される反応】
いの様子を観察し,適宜支援する。
・ちいちゃんの状況・気持ち
・「ふらふらする足をふみしめながらかげお
決
弱っている
くり」をしたことと「きらきらわらいだ
お母さんやお兄ちゃんと会いたい
した」ことを話し合いの重点にする。
最後の力をふりしぼった
・一斉の学習での話し合いでも,重点にし
・「きらきらわらいだしました」
ぼり,話し合いをさせる。
光るような笑顔
・「きらきら」は,どんなときに使うのか
す
かがやくような声
を確認し,どんな様子でわらっているの
会いたかった家族に会えて本当にうれしい
か想像させる。
・最後に,ちいちゃんの公園での様子のさ
し絵を黒板に掲示し,ちいちゃんの失っ
たものについて確認する
る
評価
読一人で「かげおくり」をするちいちゃ
んの状況を理解し,そのときの気持ちを
想像している。(書き込み・発言)
解 4
ま 5
と
め
る
第四場面を読んだ感想を発表する。
5
・どの叙述からそのように考えたのか,根
拠とともに書かせ,数名に発表させる。
2
・本時の学習について,自己評価させる。
・学習計画表をもとに,次時の学習内容を
確かめさせる。
【予想される反応】
・ちいちゃんのうれしそうな様子を読むと,逆につら
い気持ちになります。
・ちいちゃんの願いがかなったのに,死んでしまって
かわいそうだと思いました。
ふ 6 本時の学習の振り返りをして,次時
り
の学習について見通しをもつ。
か
え
る