マニフェスト前文

マニフェスト前文
さらされています。「より広く、より大き
都市部に引っ越されており、店が無く
く」は時代の流れ、と言ってしまえばそ
なったら困るだろうと、予め注文を聞
れまでですが、その流れに置き去りに
いて週に数日だけ通ってきて店を開
植木の3町と合併し、政令指定都
され疲弊している地域や人々が増え
けているそうです。そんな中でも、そこ
市への移行を実現しました。
ていることも事実です。
に暮らす人たちは地元に誇りを持ち、
私は熊本市長として、富合、城南、
次の世代に引き継いでいきたいとの
政令市を目指した理由は大きく2
市町村の側にもそうした周辺部の
つあります。1つ目は、政令市が得る
地域までカバーする力は財政的にも
このまま人口流出が続けば…との不
ことのできる権限や財源を活用して
人的にも厳しくなっています。だったら
安も日に日に高まってきています。
都市機能の充実を図るとともに、政
どうするのか、私は県がもっと住民に
令市のブランド力によって、企業誘致
近づき市町村と一緒になって行政を
このような地域を今後も維持し、
や国際的なスポーツ大会やコンベンシ
進めなければならない、と考えました。
住民が暮らし続けるためにはどうした
ョンの開催を進めるなど、経済的効
果を高めることです。
強い決意を持っておられます。しかし、
らいいのか。皆さんと話し合いました。
県の仕事は本来、市町村の補完
と連絡調整です。ただそれを一律に
まず一人ひとりの意向を尊重する
そしてもうひとつ、こちらが重要なの
市町村に対して行うのではなく、政令
ことを前提として、いくつかの集落の中
ですが、熊本市民にとって身近できめ
市である熊本市には権限や財源をも
心となる「小さな拠点」づくりを進め、
細かな行政をすることです。過去に十
っと委譲し、熊本市のことはできるだ
小中学校や医療・福祉施設、商店
数回の合併を繰り返して拡大を続け
け熊本市に任せる。そしてその分、県
等を歩いてまわれる範囲に集積しま
てきた熊本市にとって、住民と行政と
は熊本市以外の市町村のことにもっ
す。
の距離を縮めるということは、飽託郡
と力を注いで、特に補完の役割を強
北部村に生まれ、村民から町民、そ
化していく。そのためには県の役割、
「小さな拠点」とそれ以外の集落と
して市民になった私が肌感覚として
県庁の在り方を見直して改革しなけ
は、民間や NPO 等の協力を得なが
持っていた重要な課題でした。それが
ればならないと実感しました。
ら乗り合いタクシー等の移動手段や
政令市になれば区役所が設置され、
買い物支援でつなぎます。また
それぞれの区ごとに特色のあるまちづ
八代市泉町の五家荘は平家落
ICT(情報通信技術)環境を整備す
くりを進めたり、住民に身近な行政サ
人の伝説や長い歴史に育まれた伝
ることで、遠隔医療や通信教育も可
ービスを提供したりできるのです。
統文化が色濃く残されており、特に
能にします。
紅葉の時期には多くの観光客が訪れ
平成の大合併によって熊本県内
ます。私はこれまで2度この地を訪れ、
一定の収入と生き甲斐が得られる
の他の市町村でも合併が急激に進
住民の皆さんと膝を突き合わせて、
産業の育成も必要です。農林業や
められました。一方、県全体では人
地域の課題や実情、目指すべき将
民宿、特産品販売等の観光産業に
口減少が進み、地域間の格差は広
来像について語り合いました。
磨きをかけ6次産業化で付加価値
がりつつあります。
を高めます。
秘境と言われるこの地域は高齢化
私は一昨年 12 月熊本市長を退
や若者の流出が進み、今では 5 つの
川辺川流域で隣接する五木村と
任して以来、県内各地を、特に限界
集落を合わせても 350 世帯ほどで、
共同プロジェクトで取り組んでいる物
集落といわれる山間や海辺の地域も
集落ごとにあった小学校も既に 1 校
産振興、宮崎県にまたがる九州脊
訪ねました。市町村合併による広域
に統合され、中学校には通えないこと
梁山地のさまざまな登山コースなども、
化に加えて、地方の経済は TPP(環
から寮生活が求められています。日
行政の枠を超えてさらに磨きをかけ整
太平洋パートナーシップ協定)に代表
用品が買えるお店も1軒だけ残って
備し PR していきます。また小水力や
されるグローバル化、自由化の波にも
いますが、そのお店のご主人は既に
バイオマス等の再生可能エネルギー
事業を起こします。
そして違いがあるからこそ、地域同士
有機農業が盛んで、かなり条件の厳
が連携したり、交流したりすることで新
しい田畑でもきちんと耕作がなされて
移住を考える人のためには、何の
たな価値を創造します。ここでは五家
います。この地域のある方から「今の
仕事があって、どれ位の収入が見込
荘を例に取り上げましたが、県内各
政治家は国家のことは語っても国土
めるのか、どんな行政の支援、そして
地でこうした座談会を重ねていると、
について語ろうとしない!」と、苦言を
地域の人々の手助けを受けられるか、
その地域ならではの課題に気付かさ
呈されました。地域を歩いて対話を
後継者がいない農家や民宿などの情
れるだけでなく、それにもまして素晴ら
重ねた中から頂いた貴重な言葉です。
報もまとめて具体的に提供します。ま
しい魅力があることが実感できました。
ふるさと熊本の県土を次世代に引き
た ICT 環境を整えることで、場所を
選ばずに田舎で仕事ができる人も増
えます。
県は市町村と協力してこうした観
継いでいくために私も全力を尽くして
そして「小さな拠点」と役場や役所
いきます。
のある市町村の中心地とはもっと太
いパイプでつなぎます。過疎地の集落
平成 28 年 3 月
が維持され人が住み続けることは、
幸山政史
光や特産品、そして移住に関する情
地方都市の活性化にもつながります。
報を取りまとめ、民間の力も活用して
地方の小規模な都市でも救急医療
※マニフェスト本体は近日公開予定
インターネットのサイトや県の出先機
に対応した病院や高校、商店街など
※告示日までは加筆変更する場合
関、イベントを通して全国に発信しま
一定規模の商業施設等の都市機
す。必要な資金はクラウドファンディン
能は周辺の人々の暮らしを守るため
グなども利用して民間の資金も活用
にも絶対に維持しなければなりません。
します。
これまでもさまざまな地域活性化
最近は個人旅行で五家荘を訪れ
の取り組みがなされてきましたが、国
る外国人観光客も見られるようにな
の決めた方針に基づいて県、そして
りました。特産品の「隠れの里の柚子
市町村が取り組むという流れが強かっ
こしょう」は観光庁の魅力ある日本の
たと思います。横並びの振興策では
おみやげコンテストでフランス賞を受賞
現場のニーズとかみ合わないことも多
しました。また今冬には五家荘を舞
く、地域の特色が生かされず連携や
台にした短編映画の撮影もあり、国
交流によって付加価値が創造される
際映画祭に出品されるということです。
こともありません。
地域の宝を見出して磨くことが国際
化にもつながるのです。
やはり基本は一人ひとりの暮らしで
あり、それを支える地域コミュニティー
皆さんと夜遅くまで語り合っていると、
です。そのうえで「小さな拠点」、市町
現場ならではのいろいろな意見が出
村、地域振興局を単位とした圏域、
てきます。私も皆さんのアイデアをどう
県という順番でそれぞれの地域の将
すれば実現できるか考えることができ
来像を積み上げていかなければなり
ました。もちろんその場で話したことが
ません。そのことが熊本県の魅力を最
すぐに実現できるわけではありません
大限に引き出し、国際的にも評価さ
が、地域住民が主体となって描いた
れ、一過性でない持続的な成長を
将来像こそが大切だと私は思います。
遂げる原動力になるはずです。
それぞれの地域の特色が生かされ
ることによって多様性が生まれます。
山都町の旧矢部町。この地域は
があります