津別まちなか再生事業 コンパクトシティ: 津別で考える「小さな拠点」(前半) 平成27年7月17日 筑波大学 システム情報系 社会工学域 域長 谷口 守 分析協力:山根優生、越川知紘 1 谷口 守 専門:都市計画・交通計画・環境計画 (工学博士) 1961 神戸市生まれ 大学は京都へ、京都大工学部助手、カリフォルニア大 バークレイ校、筑波大社会工学、ノルウェー王立都市 地域研究所、英国ウェールズ大都市地域計画学科、 岡山大環境理工学部、そして現職 活動:(国)社会資本整備審議会(コンパクト化制度)、 (県)都計審(茨城、埼玉、和歌山、岡山、福岡) (市)まちづくり(いわき、日立、宇都宮、川越、 豊田、倉敷、松江、津山、北九州・・寄島・・) (学)都市計画学会学術委員長、IFHP評議員 特急から誰も降りなかったある駅で (いい街なんだけど)・・・ 人よりも「ゆるキャラ」の方が多い 地域活性化 担当者と思 われる 伝わらない熱い思い・・・三重県の地下道で かと思うと、静かな温泉街だった湯布院は・・・ 朝ドラなどでPR成功するも、 クルマ侵入大混雑+日帰りへのシフト 「身の丈」活性化は実は(やっぱり)難しい 「身の丈」系の地域再生として 地方のうごき:“小さな拠点” (国土のグランドデザイン2050) 例)広島県 東広島市 小学校廃校舎再利用 地方部の生活拠点づくり 拠点 生活サービス集積 集落 生活の基盤 コミバス等で相互につなぐ 半径 約380m 小さな拠点ガイドブック(国交省)より 上:wikipedia/ 下:Yahoo地図より作成 ワークショップ お題 津別で「小さな拠点」はありえる? 成立させるにはどうする? 人口減少時代の切り札 コンパクトシティ? 「地方」より「都市」での議論が中心 その基礎知識から 富山 青森 歩いて暮らせるまち ← 密 コンパクト 疎 分散 → 公共交通が主軸 強中心型都市圏 弱中心型都市圏 自動車依存型都市圏 主要交通網と都市の「形」(都市構造)の関係 (Thomson) 11 基本:都市コンパクト性と環境負荷(自動車依存)の関係 日本の都市はもともと先進諸国の中で最もコンパクト 12.0 宇都宮 1人当たり自動車燃料消費量(MJ) サクラメント 60000 都市コンパクト化は 絶大な効果 ロサンゼルス 50000 シカゴ Canada Australia 40000 トロント フランクフルト Europe ブリュッセル 30000 20000 シンガポール バンコク 10000 ロンドン 東京 ソウル 10.0 年間1人当たりガソリン消費量 (1000MJ) USA 70000 津 香港 100 200 人口密度(ha) 鹿児島 北九州 名古屋 札幌 8.0 広島 Sustainability and Cities, Island Press, 1999. 那覇 仙台 神戸 6.0 川崎 長崎 京都 大阪 23区 4.0 所沢 横浜 2.0 300 市街化区域人口密度が倍 → 人口 一人当たりガソリン消費量は約半分 >1000,000 >300,000 >0 0.0 0.0 出典:P.Newman & J. Kenworthy: 福岡 酒田 0 0 岡山 玉野 50.0 100.0 150.0 市街化区域人口密度 (人/ha) 200.0 出典:谷口守・村川威臣・森田哲夫:個人行動データを用いた都市 特性と自動車利用量の関連分析、都市計画論文集、No.34、1999. 1997 ジャカルタで 前世紀からの復習: 都市コンパクト化政策 日本だけが取り残されていた 1987 国連ブルンドランド報告(サステイナビリティ) 1989 ノルウェー TP10 1989 オランダ 国家環境政策 1994 英国 PPG13 1994 ドイツ アアツボルグ憲章 (ドイツでは減少化時代の都市の未来形としてはや くから位置づけ) コンパクトシティ国際研究グループ IUPEA (代表Oxford:マイク・ジェンクス) 2002年当時(日本人研究者不在) 2000年のお話 国土交通省でコンパクトシティ講演機会 • 反応:「お話の内容はよくわかりましたが、コン パクトシティがよいとは法律には書いてありま せん」 ・・・・どうすれば優秀な行政担当者達は態度・ 行動「変容」するか? ~2007.を振り返り 1)研究ベースでの検討は90年代に基本的に終了 2)各学会で特集号、特別セッション組織 2001:不動産学会(都市コンパクト化を考える)、 2002:交通工学(コンパクト市街地と都市交通)、 :計画学(コンパクトシティの光と影)他 3)国、地方などへ働きかけ 2001:国土交通省での勉強会 2002:都市交通全国会議:パネル 2002:政令指定都市 連絡協議会 2003:国土交通省でPRパンフ 2005~:国土審議会、国土形成計画の中へ 2007.7.:社会資本整備審議会 第2次答申 社会資本整備審議会 第2次答申 集約型都市構造(コンパクトシティ)の実現に 向けて(2007.7.) >2007:社会資本整備審議会 第二次答申以 降、 「制度化」が進むコンパクトシティ >2012:低炭素まちづくり法(エコまち法) >2013:交通政策基本法 >2014:都市再生特別措置法改正 等 >2014:国土のグランドデザイン2050 2012 低炭素まちづくり法策定へ 都市再生特別措置法の改正 (2014.8.) • http://www.mlit.go.jp/en/toshi/city_plan/co mpactcity_network.html • 都市機能誘導地区の設定など、実質的に初 めての本格的なコンパクト化実現のための法 律です。 1 .都市再生特別措置法等の一部を改正する法律の概要 法律の概要 平成26年8月1日施行 ●立地適正化計画(市町村) ・都市全体の観点から、居住機能や福祉・医療・商業等の都市機能の立地、公共交通の充実に関する包括的なマスター プランを作成 ・民間の都市機能への投資や居住を効果的に誘導するための土俵づくり(多極ネットワーク型コンパクトシティ) 都市機能誘導区域 居住誘導区域 生活サービスを誘導するエリアと当該エリア に誘導する施設を設定 居住を誘導し人口密度を維持するエリアを設定 ◆都市機能(福祉・医療・商業等)の立地促 進 ◆区域内における居住環境の向上 ・区域外の公営住宅を除却し、区域内で建て替え る際の除却費の補助 ・住宅事業者による都市計画、景観計画の提案制 度(例:低層住居専用地域への用途変更) ○誘導施設への税財政・金融上の支援 ・外から内(まちなか)への移転に係る買換特例 ・民都機構による出資等の対象化 ・交付金の対象に通所型福祉施設等を追加 ◆区域外の居住の緩やかなコントロール ○福祉・医療施設等の建替等のための容積率 等の緩和 ・一定規模以上の区域外での住宅開発について、 届出、市町村による働きかけ ・市町村の判断で開発許可対象とすることも可能 ・市町村が誘導用途について容積率等を緩和す ることが可能 ○公的不動産・低未利用地の有効活用 ◆区域外の住宅等跡地の管理・活用 ・市町村が公的不動産を誘導施設整備に提供する 場合、国が直接支援 ・不適切な管理がなされている跡地に対する市 町村による働きかけ ・都市再生推進法人等(NPO等)が跡地管理を 行うための協定制度 ・跡地における市民農園や農産物直売所等の整 備を支援 ◆歩いて暮らせるまちづくり ・附置義務駐車場の集約化も可能 ・歩行者の利便・安全確保のため、一定の駐車 場の設置について、届出、市町村による働 きかけ ・歩行空間の整備支援 ◆区域外の都市機能立地の緩やかなコン トロール ・誘導したい機能の区域外での立地について、 届出、市町村による働きかけ 公共交通 維持・充実を図る公共交通網を設定 ◆公共交通を軸とするまちづくり ・地域公共交通網形成計画の立地適正化計画への調和、計画策定支援(地域公共交通活性化再生法) ・都市機能誘導区域へのアクセスを容易にするバス専用レーン・バス待合所や駅前広場等の公共交通施設の整備支援 ※下線は法律に規定するもの ◆誘導施設への税制支援等のための計画と中活法に基づく税制支援等のための計画のワンストップ申請 22 A B 定義はあるの? • 生態学者の定義、建築学者の定義、な ど多々 (一致しない) →分野間の議論のためのプラットフォー ムとしては最適な概念:都市のダイエット >個人的に用いている定義:交通環境負 荷(燃料消費量)を下げる都市構造 (→これだとごまかせない) なぜ今? → コンパクトでない都市のデメリット が目立ってきたから ・人口減少時代:広がり続ける都市 > 公共交通衰退 > 交通環境負荷増大 > インフラ、既存ネットワークの有効活用 > 健康なくらし 0.1 ヒューストンhttpwww.top-city-photos.comhouston_city_photographs.htm 0.2 ヒューストンhttpwww.top-city-photos.comhouston_city_photographs.htm Sandbiller and Frust: Flug über die Region Karlsruhe, Silberburg-Verlag, 2006. 4種類の地区タイプ • • • • A地区:1箇所 B地区:3箇所 C地区:4箇所 D地区:28箇所 • 各指定地区は、各LRTターミナルから半径 300mが想定。 誤解されるコンパクトシティ A.けしからん!派 B.それはおかしい派 Ⅰ.ネガティブ系 C.どうせできない派 ①あべこべ派 ②なんとなく派 D.守旧派 Ⅱ.ありがち研究者系 E.定義派 F.ひともうけ?派 (産・官・学問わず) Ⅲ.ポジティブ系 G.期待過剰派 コンパクト・シティに対する反応 A.けしからん!派 B.それはおかしい派 Ⅰ.ネガティブ系 C.どうせできない派 ①あべこべ派 ②なんとなく派 D.守旧派 大きな誤解:中山間地域から撤退した方がよいと Ⅱ.ありがち研究者系 E.定義派 申し上げた事は一度もない。 → しかし、この概念を間違えて理解する人、利用 F.ひともうけ?派 してやろうという人がいる。 (産・官・学問わず) →Ⅲ.ポジティブ系 それを鬼の首を取ったように批判して自己PR G.期待過剰派 する輩も出てきた。 岡山県北部の津山市(総人口110569人)を例に 5,102人 663人 7,247人 90,301人 鳥取県 島根県 7, 256人 広島県 山口県 岡山県 香川県 兵庫県 2008.5. 2015.3. 2015.3. 地方のうごき:“小さな拠点” (国土のグランドデザイン2050) 例)広島県 東広島市 小学校廃校舎再利用 地方部の生活拠点づくり 拠点 生活サービス集積 集落 生活の基盤 コミバス等で相互につなぐ 半径 約380m 小さな拠点ガイドブック(国交省)より 上:wikipedia/ 下:Yahoo地図より作成 51 研究背景 人口減少・少子高齢化時代 国 拠点 “小さな拠点” 国土のグランドデザイン2050 生活サービス集積 ネットワーク化 集落 都道 府県 集落活動 センター 高知県資料より 生活の基盤 都市マス による拠点設定 市町 村 横断的視点での整理 国 国交省資料より 市町 村 都道 府県 効果的な 小さな拠点を 考える上で有益 52 調査対象事業・計画 指定者 国 都 道 府 県 事業・計画名 国土 交通省 小さな拠点 づくり事業 N (重複有) 分析対象小さな拠点例 ・岡山県新見市哲西周辺(道の駅) ・広島県東広島市小田周辺(廃校活用) 30 総務省 集落ネットワーク ・山形県川西町吉田周辺(集会所) ・兵庫県宍粟市千種町鷹巣周辺(廃校活用) 圏事業 高知県 集落活動センター ・高知県四万十市大宮周辺(廃施設活用) ・高知県梼原町松原周辺(集会所) 推進事業 14 過疎集落再生・ 活性化支援事業 ・和歌山県白浜町市鹿野周辺(役所支所) ・和歌山県有田川町板尾周辺(診療所) 13 都市計画 マスタープラン ・熊本県人吉市人吉駅周辺(鉄道駅) ・愛媛県今治市玉川周辺(役所支所) 44 和歌山 県 市町村 5 全国PT調査過去5回全てで調査対象の 41都市・地域から「地方部」を抽出 地方部に位置する都市名 弘前 盛岡 湯沢 郡山 宇都宮 上越 岐阜 金沢 山梨 静岡 海南 松江 安来 徳島 今治 高知 南国 熊本 人吉 鹿児島 104地区 を選定 53 分析に用いる変数 商業 飲食 医療 業務 文教 交通 土地 利用 h) i) 説明変数 a1) スーパー数 a2) 食料品店数 a3) コンビニ数 b1) 飲食店(レストラン等)数 b2) 飲食店(酒場)数 b3) 飲食店(軽食)数 c1) 薬局・薬店数 c2) 医療機関数 d1) 銀行・信金数 d2) 郵便局数 d3) 警察消防数 d4) 行政機関数 e1) 公民館・集会所数 e2) 図書館数 e3) 中学校数 e4) 小学校数 e5) 幼・保育所数 e6) 都市公園数 f1) 鉄道駅数 f2) バス停数 f3) 国道有無ダミー f4) 道の駅有無ダミー f5) GS数 g1) 市街化調整区域ダミー g2) 用途指定ダミー 拠点人口密度 拠点内全会社・法人数 データ出典 電子電話帳 国土数値情報 電子電話帳 国土数値情報 国交省HP「道の駅案内」 国土数値情報 各都市の都市計画区域 マスタープラン 国土数値情報 電子電話帳 54 類型別主成分得点等中央値 主成分分析 → クラスター分析 拠点類型 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ Ⅵ Ⅶ 生活 N 機能 鉄道駅 文化 教育 行政 市街化調 利便 道路軸 集積軸 軸 施設軸 施設軸 機能軸 整区域軸 施設数 A 地方 3 4.916 1.031 中心拠点 B 生活駅 6 -0.338 3.009 中心型拠点 C 旧町村 11 0.375 -0.717 中心型拠点 D 市街化調整 14 -0.001 -0.245 区域型拠点 E 道路型拠点 8 -0.134 -0.056 -1.992 -0.045 -0.768 -0.933 -1.565 108 -0.448 0.222 0.221 0.573 -0.362 29 0.847 -0.954 0.512 1.203 0.142 15 0.186 0.411 -0.251 -0.089 1.868 14.5 -0.005 -0.515 1.844 -1.341 -0.658 12 -0.464 8 -0.078 5 F 公的施設 29 -0.333 -0.270 -0.274 0.552 -0.744 0.708 型拠点 G 低集積拠点 33 -0.237 -0.274 -0.358 -0.773 -0.218 -0.616 主成分得点から各類型を命名 何が生活拠点に必要か 徒歩圏にあって欲しい施設 0 スーパー・ドラッグストア 銀行・信用金庫 診療所・医院・クリニック 病院 バス停 コンビニエンスストア 郵便局 小・中学校 鉄道駅 百貨店・ショッピングセンター ガソリンスタンド 市役所・地区市民センター等 公園 飲食店(食事の提供を伴う) 警察署(含む交番)・消防署等 幼稚園・保育所 図書館 鮮魚店・青果店等の商店 地域内交通 デイケア・デイサービス施設 集会所等のコミュニティ施設 飲食店(軽食のみ) 文化ホール 体育館 その他 100 200 300 (宇都宮市調査より) 400 500 600 700 690 423 422 389 333 312 246 209 173 153 129 127 116 106 98 71 50 49 41 34 32 14 6 5 7 800 類型別施設存在確率 A.地方中心拠点 (その1) B.生活駅中心型拠点 海南駅(和歌山) 56 D.市街化調整区域型拠点 山梨市駅 玉川(愛媛) googlemap 比較的集積 市街化調整区域 にも拠点設定 高需要度順 住民アンケート「実際に何が必要とされるか」宇都宮市(2014)より 類型別施設存在確率 E.道路型拠点 (その2) D.旧町村中心型拠点 道の駅美山(京都) G.低集積拠点 57 旧初瀬小(高知) 2015/1 googlemap F.公的施設型拠点 集積小 大きく偏り 行政大・民間小 施設分布図 A.地方中心拠点(人吉市人吉駅周辺) 58 施設分布図 B.生活駅中心型拠点(田野町田野駅周辺) 59 施設分布図 C.旧町村中心型拠点(喬木村交流センター周辺) 60 施設分布図 D.市街化調整区域型拠点(今治市玉川地区周辺) 61 施設分布図 E.道路型拠点(南丹市上平屋地区周辺) 62 施設分布図 F.公的施設型拠点(白浜町市鹿野地区周辺) 63 施設分布図 G.低集積拠点(中津市槻木地区周辺) 64 ワークショップ お題 津別で「小さな拠点」はありえる? 成立させるにはどうする?
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