日米協力 JUPITER

日米協力 JUPITER-II 計画の概要
阿部勝憲 東北大工
Katsunori ABE, Graduate School of Engineering, Tohoku University
TC: 室賀健夫(NIFS)/R.Kurtz(PNNL)
1-2A: MHD 低減セラミックコーティング:
Deputy: 室賀健夫(NIFS)/A.Pint(ORNL)
1-2B: リチウムキャプセル照射:
Deputy: 松井秀樹(東北大)/R.Odette(UCSB)
課題 2: 高温ガス冷却ブランケットシステム
TC: 長谷川晃(東北大)/R.H.Jones (PNNL)
サブタスク 2-1 SiC/SiC 複合材料の基礎課題と製造:
Deputy: 檜木達也(京大)/L.Snead(ORNL)
サブタスク 2-2 SiC/ヘリウムシステムの熱機械特性:
Deputy: 清水昭比古(九大)/A.Ying(UCLA)
サブタスク 2-3 ヘリウムキャプセル照射:
Deputy: 長谷川晃(東北大)/L.Snead(ORNL)
課題 3: ブランケットシステムモデリング
TC: 相良明男(NIFS)/N.Ghoniem(UCLA)
サブタスク 3-1 設計統合モデリング:
Deputy: 橋爪秀利(東北大)/D.Sze(UCSD)
サブタスク 3-2 材料システムモデリング:
Deputy: 関村直人(東大)/R.Stoller(ORNL)
および、NIFS 担当:難波忠清、東北大大洗センター担当:松
緒言
JUPITER-Ⅱ計画(Japan-USA Program for Irradiation/Integration
TEst for fusion Research-Ⅱ)は、日米科学技術協力事業・核融合
分野における共同プロジェクトである。本計画は、1995-2000
年度に実施された JUPITER 計画に引続き、2001 年度より 6 年
計画でスタートした。JUPITER 計画では、主要な低放射化構造
材料および機能材料における動的照射効果と変動・複合照射下
における特性変化について原子炉照射実験により明らかにした。
JUPITER-II 計画では、これらの成果を受けて、先進的ブランケ
ット開発につながる低放射化構造材料と増殖材/冷却材との組
み合わせシステムについて、
「先進ブランケットの照射下特性
とシステムインテグレーション」と題して要素技術と照射挙動
の研究を行っている。
研究の目的
本計画では、高エネルギー中性子による誘導放射能を著しく
低減できる低放射化構造材料と、高いトリチウム増殖と高熱効
井秀樹、PIE 担当:木村晃彦(京大)
、大貫惣明(北大)
率を可能とする増殖材/冷却材の組み合わせからなる、
「自己
冷却液体ブランケット」および「高温ガス冷却ブランケット」
運営組織と計画の進め方
システムについて、ブランケットの製作・運転に必要な各種の
組織、全体計画、各年度の実施状況、次年度の計画等は運営
要素技術の開発研究を行うとともに、開発の鍵となる材料シス
委員会(日米の代表 R と計画調整担当 PC で構成;R:阿部勝
テムの照射下健全性の評価を行うことを目的とする。さらに各
憲(東北大学)/S.Berk/G.Nardella(DOE)、PC:香山晃(京大)
、
ブランケットシステムの総合評価と材料システムのモデリング
田中知(東大)/S.J.Zinkle(ORNL),D.Sze(UCSD))で審議し調整
による評価を行い、実用化に向けての開発指針を明らかにしよ
する。各年度のタスク計画は主として、各大学研究者の派遣に
うとするものである。
よる実験や解析の実施および主要課題に関するワークショップ
からなり、核融合科学研究所の日米協力研究計画委員会で承認
課題と現在のタスク構成・担当
されたものが実施される。実施状況や計画は年 2 回の国内研究
以下に、TC:タスク調整担当、Deputy:副(敬称略)を示す。
者会議(16 年度は 16 年 10 月 18 日と 17 年 3 月 5 日)で調整し
課題 1: 自己冷却液体ブランケットシステム
進めている。
サブタスク 1-1 溶融塩 FLiBe システム
1-1A: FLiBe の純化と取扱い、トリチウム化学、安全性:
TC:寺井隆幸(東大)/D.Petti(INEEL)
Deputy: 奥野健二(静大),西川正史(九大)/R.Anderl(INEEL)
1-1B: FLiBe の熱流動シミュレーション:
TC:功刀資彰(京大)/M.Abdou(UCLA)
Deputy: 横峯健彦(九大)/ N.Morley(UCLA)
サブタスク 1-2 バナジウム合金構造・液体リチウムシステム
主な使用施設
タスク 1-1-A に関わる FLiBe やトリチウム関連実験はアイダ
ホ国立工学環境研究所の安全・トリチウム実験施設(STAR)
を使用している。タスク 1-2、タスク 2-3 に関わる中性子照射実
験はオークリッジ国立研究所の高中性子束同位体炉(HFIR)と
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ホットラボ(オークリッジ国立研究所、パシフィックノースウ
なった。
ェスト国立研究所および国内の東北大学金研大洗センター)等
今後の計画:被覆のき裂や損耗に対応した2重被覆法および
を使用している。タスク 1-2-A の MHD 被覆関連実験はオーク
新しい“その場”被覆法の開発
リッジ国立研究所のリチウム施設等を、タスク 1-1-B、タスク 2-2
1-2B リチウムキャプセル照射
に関わる熱流動実験はカリフォルニア大ロサンゼルス校のルー
成果:①高純度 V-4Cr-4Ti 合金の優れた加工性と溶接性を明
プ施設等と東北大学工学研究科のTNTループ等を使用してい
らかにした。
る。
②照射下クリープ試験のための圧力管試験片を作製し、
以下ではブランケットシステムそれぞれの各タスクについて 3
照射キャプセルを設計製作して照射実験を行った。
年半の主な成果と今後の計画をまとめる。
今後の計画:HFIR 照射による Li 中での照射下クリープ特性、
課題1 自己冷却液体ブランケットシステム
溶接部材挙動、不純物効果の解明、
サブタスク 1-1 溶融塩 FliBe システム
課題2 高温ガス冷却ブランケットシステム
1-1A Flibe の純化と取り扱い、トリチウム化学、安全性成果:
サブタスク 2-1 SiC/SiC 複合材料の基礎課題と製造
①Flibe は吸湿性が高く溶融塩中の不純物が化学的挙動
成果:①SiC の耐照射性材料設計指針に基づく先進複合材料
に大きな影響を及ぼすことから、専用グローブボクス
を開発し、製造法を確立した。
中で混合溶融することにより調整を行った。
②接合法の開発、高気密性・高熱伝導性複合材料を開
②Flibe と構造材料との両立性確保に必要な酸化還元状
発した。
態(Redox)制御のための装置の設計・製作と実験を終
③セラミックス系複合材料の微小試験片技術を開発し
了し、Be による体系内還元の可能性を実証した。
た。
③Flibe 中の水素同位体の挙動は Flibe ブランケット設
今後の計画:照射試験用大型部材の作製とヘリウム中での耐
計のために重要である。これまでに同心二重管型水素
酸化・耐食性とクリープ挙動の解明
同位体透過装置を製作し、Flibe 中の重水素の拡散係
サブタスク 2-2 SiC/ヘリウムシステムの熱機械特性
数と溶解度を測定した。
成果:①ペブル型固体増殖材システムにおける熱伝導特性を
④安全評価上重要となる空気や水蒸気と高温で接触し
解明した。
たときの Flibe 中の短寿命放射性核種の挙動予測のた
②高温・応力負荷下におけるペブルの変形と構造材と
め、Flibe 中の成分の移行にについて各成分の分圧とパ
の反応の試験装置を開発した。
ージガス流速によって決定されることが明かになった。
③ペブルの変形による冷却挙動のモデル計算法を開発
今後の計画:Redox 制御の確立と構造材との共存性試験、
した。
および少量トリチウムの溶解拡散の実験
今後の計画:1100℃までの高温・応力負荷環境下における変
1-1B Flibe の熱流動シミュレーション:
形と熱伝導特性および共存性試験
成果:①Flibe は電気伝導率が小さく、核融合炉の強磁場下で
サブタスク 2-3 ヘリウムキャプセル照射
も磁場の影響を受けにくい利点があるが、高プラント
成果:①先進複合材料の耐照射性検証のための高温でのラビ
ル流体であるため熱輸送特性を改善するため乱流によ
ット照射を行った。
る流体攪拌を確立するために Flibe シミュラント流体
②加速器照射により、先進複合材料の寸法安定性、核
の KOH 水溶液を用いた非磁場下の熱流動特性試験装
変換ガス効果を明かにした。
置を製作した。
今後の計画:ラビット照射材の照射後試験、高温重照射環境
②FliHy 実験ループでの円管内乱流の PIV 計測法によ
下でのキャプセル照射、共存性試験
り平均流速分布および乱流統計量を得た。
課題3 ブランケットシステムモデリング
③非磁場下の熱流動特性の直接数値解析と本装置の実
サブタスク 3-1 設計統合モデリング
験結果との比較を行い、よい一致を得た。
成果:①Flibe システムからのトリチウム回収系のモデリン
今後の計画:磁場下での熱流動試験装置の製作と磁場下で
グによりシステムの成立性を検証した。
の MHD 流動特性の解明
②液体ブランケットシステムの熱伝達特性と MHD 特
サブタスク 1-2 バナジウム合金構造・液体リチウムシステム
性の解明効果を数値解析により評価した。
1-2A MHD 低減セラミックスコーティング
今後の計画:ガス冷却システムにおける熱伝導特性変化の影
成果:①高温 Li 浸漬試験により Er2O3、Y2O3 CaZrO3 などの
響とブランケットの成立性の検討
サブタスク 3-2 材料システムモデリング
新しい被覆候補材を見い出した。
成果:①分子動力学的(MD)解析のためのポテンシャルの整
②プラズマ被覆や RF スパッタリング法による被覆材
備と改良を行った。
料開発を行った。
②MD 法によるクラウディオンバンドルと格子欠陥の
③Li 浸漬により耐食性に優れた Er2O3 の被覆が可能と
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相互作用を明かにした。
③照射損傷量評価のための計算コード(NPRIN)を開
発し、妥当性を検証した。
今後の計画:PKA の詳細計算に基づく合金に対する評価の高
度化
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