経営戦略論 木曜5限 第2回 経営戦略論とは何か 河野憲嗣 Mail:[email protected] URL:www.kenjikouno.jimdo.com/ 芝浦工業大学_2013後期_経営戦略論 本日のテーマ:経営戦略論とは何か □ 経営戦略論の定義 □ 経営戦略論の視点と本質 ・戦略と戦術 ・外的要因と内的要因 ・3層による理解 ・経営理念とビジョン ・選択と集中 □ 経営戦略論の史的展開 芝浦工業大学_2013後期_経営戦略論 Strategic Management □ 直訳は、「戦略的経営」 □ 経営戦略論は、経営学の一領域 □ 企業の経営戦略を策定・遂行・評価するプロセスを研究 する学問 □ 経営戦略=Competitive Strategy=競争戦略 ・競争を勝ち抜くための指針を与える「戦いの構想」 芝浦工業大学_2013後期_経営戦略論 Robert Boyden Lambの定義 戦略経営とは,企業が,関連する市場や産業を評価・統御 し,競合他社を査定し,全ての既存あるいは潜在的な競合 他社に対処できるような目標と戦略を設定し,各々の戦略 が遂行されているかどうか,変化した環境,新技術,新たな 競合他社,新たな経済的・社会的・財政的・政治的状況に 適用させるために戦略を置き換える必要が無いかどうかを 一年ごとあるいは四半期ごとに再評価する,継続的なプロ セスである。 芝浦工業大学_2013後期_経営戦略論 グロービスの定義 企業あるいは事業の目的を達成するために、持続的な競争 優位を確立すべく構造化されたアクション・プラン。 目的 ・事業の目的は何か? そのために ・競合と比べて何が強みなのか? ・提供価値とその源泉は何なのか? 競争優位性 そのために アクション・プラン ・優位性を持続的に達成できる構造は何か? ・目的達成のための具体的な施策は何か? 芝浦工業大学_2013後期_経営戦略論 戦略と戦術 戦略 Strategy 戦術 Tactics 大局的 長期 全体 局地的 短期 個別 総合的 複合的 作戦的 部分 単一 戦闘的 戦役全体 鳥の目 長・大・広 戦場 虫の目 短・小・狭 「三流は戦術を語り、二流は戦略を語り、一流は兵站を語る」 芝浦工業大学_2013後期_経営戦略論 外的要因と内的要因 外的要因 内的要因 顧客 競合他社 従業員 伝統・歴史 代替品 サプライヤー 組織 資産 政治 経済 模倣困難 希少 社会・文化 地理条件 ブランド 特許 Positioning Resource-based view 芝浦工業大学_2013後期_経営戦略論 3層による経営戦略の理解 ホファー・シェンデル(1978) 全社戦略 企業戦略、経営戦略 競争戦略 事業戦略 機能別戦略 財務 戦略 生産 戦略 人事 戦略 組織 戦略 技術 戦略 マーケティング 戦略 企業のあらゆるレベルで戦略が論じられるようになった。 芝浦工業大学_2013後期_経営戦略論 経営理念・ビジョンと経営戦略 経営理念 ビジョン 戦略 ・経営に対する普遍性を持つ信念、価値観、 ステークホルダー(企業に関わる人々)や 社会に対する誓約 ・企業が、ある時点までにこうなっていたい と考える到達点 ・経営理念に基づきビジョンを実現するため の道筋/手段 ・企業の持続的な競争優位性を確立するた めの基本枠組み 芝浦工業大学_2013後期_経営戦略論 経営戦略論の起源 □ 孫子(紀元前500年ごろ) ・「戦略」の概念を世界で最初に用いたといわれる。 □ クラウゼヴィッツ(1832年) ・「戦略」という概念を国家の政治目的と捉えて組織論、 意思決定論を展開。 □ ランチェスターの法則(第一次大戦時) ★ ・戦争を定量的、統計的、数学的に始めて扱った。 芝浦工業大学_2013後期_経営戦略論 第二次大戦終結後 大規模な軍事拡大時代は終結。 それまで軍需産業の発展に伴って著しい成長を遂げてきた 米国経済も転換期を迎える。 企業規模拡大、環境変化を予測した製品の上市、組織改変、 事業多角化などを計画的に遂行する必要性に迫られる。 □ ノイマン/モルゲンシュテルン ・はじめて「経営戦略」という言葉を使ったとされる。 ・本来軍事用語である「戦略」という用語に新たな概念。 芝浦工業大学_2013後期_経営戦略論 1960~70年代 <背景> 主なテーマは、組織をビジネス環境に適応させること。 第二次大戦を経て、大組織へ成長した企業が採用した戦略 は「多角化」。将来に対して一定の見通しを持つことができる 長期経営計画の策定が求められる。 製品と事業戦略に関する投資の当否を明らかにする経営戦 略論がブームとなる。 特に70年代の米国は景気停滞とインフレ下にあり、多角化・ 肥大化した事業体をどう経営するかが課題。 芝浦工業大学_2013後期_経営戦略論 1960~70年代 □ PIMS研究(1960~19年間)Profit Impact Market Strategy ・GE社でスタート→ハーバード大→戦略計画研究所へ ・市場占有率の高い企業ほど規模の経済と経験効果が効く □ チャンドラー(1962) ・「組織は戦略に従う」 職能別から事業部制組織へ □ アンゾフ(1965) ・「戦略的意思決定」 戦略概念を計画から実施、統制へ ・多角化戦略とは製品・市場分野の選択→計画アプローチ □ コンサルティングファーム(1970年代) ・PPM/PLCなどの概念を開発。 芝浦工業大学_2013後期_経営戦略論 1980年代~ <ポジショニングアプローチ> 1980年代のアメリカでは、技術革新の進展や規制緩和によ る競争の激化に伴って、既存事業における競争戦略や製品 ポートフォリオの構成に関心が高まった。 □ マイケル・ポーター(1980) 「ファイブ・フォース分析」「バリューチェーン」 現実の企業経営への応用が可能であること から一気に企業へ広まる。 芝浦工業大学_2013後期_経営戦略論 1980年代~ <創発的アプローチ> 1980年代後半は日本経済が急成長し、日本企業が喧伝さ れる一方、アメリカ企業の競争力が失われた時期。 日本企業の成功を受けて、環境との適合関係の静態的分析 ではなく、企業内部で戦略を実施する人間の人的資源として の能力、その形成プロセスの重要性が指摘されるように。 □ H.ミンツバーグ(1989) ・戦略は構想し策定するものではなく、「出現する」 ・組織は戦略を前もって構想せずとも、日常の行為を通 じて戦略を見守ることで賢明になれる (例)HONDA、スーパーカブ50ccのアメリカでの販売 芝浦工業大学_2013後期_経営戦略論 ホンダスーパーカブC50(1966年~) 芝浦工業大学_2013後期_経営戦略論 1990年代~ □ バーニー(1991) 「リソースベースドビュー」「VRIO分析」 魅力的な産業の発見や業界内のポジション 確立を重視する立場に対して、 企業内の経営資源に競争優位の源泉を求めている。 芝浦工業大学_2013後期_経営戦略論 選択と集中 □ 戦略的意思決定の要諦は「選択と集中」 ・経営資源には限りがあるため、すべての選択肢を実行 にうつすことはできない ・「何を取り、何を捨てるか」の決断が常に求められる □ ただし、「選択と集中」にはリスクもある ・事業の当たりはずれが大きい ・短期的利益の追求に走る傾向 ・次世代ビジネスの種まきは? 芝浦工業大学_2013後期_経営戦略論 ランチェスターの法則 □ 第1法則 「数が同じなら1人の能力が高いほうが勝つ」 □ 第2法則 「武器の性能が同じなら数が多いほうが勝つ」 第1法則 弱者の戦略 第2法則 強者の戦略 ①局地戦 ニッチ市場に狙いを定める ①広域戦 大市場や全体を狙う ②接近戦 顧客との関係づくりを重視 ②遠隔戦 広告や流通を活用する ③一騎打ち 攻める相手をしぼり込む ③確率戦 全方位に数打てば当る ④一点集中 強みに特化して勝利へ ④総合戦 すべての資源を総動員する ⑤陽動戦 フェイントでかく乱 ⑤誘導戦 有利な状況に引き込む 芝浦工業大学_2013後期_経営戦略論 参考資料 ・グロービス・マネジメント・インスティテュート編(2007) 『MBA経営戦略』 ダイヤモンド社 ・岸田民樹・田中政光(2009) 『経営学説史』 有斐閣 ・堀公俊(2013)『ビジネス・フレームワーク』 日経文庫ビジュアル
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