民放キー局のネット戦略を聞く

テーマインタビュー
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民放キー局のネット戦略を聞く
テレビ東京
テレ東らしい
「エッジの効いた」
番組
TVerで手応え
福田一平 コンテンツビジネス局局長
石田淳人 メディア戦略室室次長
ネット配信事業で見据えるもの
(写真右)
(写真左)
ザーも少なくない。特に、コアなファン層
を持つような番組では、じっくりと視聴し
── 民放キー 5局が立ち上げた広告付き
たいというニーズが強いようで、PC 視聴
無料動画配信サービス「TVer」について、
が多いデータ結果が出ている。
テレビ東京としての考えはどこにあるのか。
── 見逃し配信がテレビ視聴への回帰を
福田 民放各局は“テレビ受像機という1
生むという反応はあるのか。
つのプラットフォームに相乗りして収益を
福田 そうした一部の調査結果も目にして
得る”というビジネスモデルで成長してき
いるが、結論を出すのは早計だと思う。た
極めたうえで、ネット領域におけるテレビ
た。その点では、TVer の発想も理にかな
だ、テレビ東京で言えば、深夜帯に多くラ
局の最適広告ビジネスモデルを、いかに構
っている。各局が独自に展開しているホー
インアップしている「エッジの効いた」番
築して提案できるか、そこがポイントにな
ムページの PV 数が伸び悩んでいることを
組については、ネット配信を通じて若い世
ると考えている。
考えると、
“個”ではなく“束”になった
代に接触してもらい、テレビ視聴へと誘導
方が、集客力とユーザビリティの向上には
したい考えは強くある。
有効であると思う。
── 実際、そうした「エッジの効いた」
── スマートテレビ連携・防災等対応シ
── いわゆる「見逃し配信サービス」で
番組の手ごたえはどうか。
ステム普及高度化機構
(スマテレ防災機構)
期待することは何か。
福田 他局がゴールデン帯の番組を見逃し
に対するスタンスはどうか。
福田 視聴する時間と場所を制限される放
配信として用意する中、それらに負けない、
石田 ハイブリッドキャストによって放
送を、不便なメディアと感じる若い世代に
むしろアクセス数で勝る勢いを見せている
送・通信の本格的な連携ができるようにな
リーチを広げる手段として期待している。
テレビ東京の深夜番組も多い。こうした、
り、そこに防災情報を取り込んでいくとい
また、広告市場全体が頭打ちの中、唯一シ
配信デバイスによる視聴傾向の違いについ
う考えを持っている。ただし、放送局とし
ェアを伸ばし続けているネット領域、特に
ては考慮していく必要があるだろう。
て取り組む以上、その取り扱いは責任を持
動画広告市場を見過ごすわけにはいかない。
── ネット配信における広告事業の見通
って行うべきであり、具体的な方策という
テレビ局の新たな収益源確保のために
しはどうか。
点までは現時点では昇華できていない。
ADVOD を展開している。
福田 市場はまだ小さいが、最近クライア
── ハイブリッドキャストの活用自体を
── 受信デバイスとして期待するものは
ントから「動画広告を出稿したいが、投稿
考えているのか。
何か。
モノが多く、良いコンテンツが少ない」と
石田 期待はしているが、簡単にいくとは
福田 やはり若い世代がユーザーの中心で
いう声を聴く。その意味で質の高いテレビ
考えていない。ネット上でさまざまなサー
あるスマホとタブレットへの期待が高いが、
番組は、ニーズに応えられると思う。あと
ビスが存在する中で、それらをテレビに持
番組内容によっては PC で視聴するユー
は我々が、ユーザーの視聴動向、特性を見
ち込んだ際、若い人たちがどのように使う
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4-2016
社内横断的プロジェクトを発足