4 ピーマンの生物農薬施用試験

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ピーマンの生物農薬施用試験
背景と目的
旭川の農業はクリーン農業に積極的に取り組んでおり,野菜では19品目21集団が
YES!clean 認証を取得している全道有数のクリーン農業推進地域です。
旭川青果物生産出荷協議会ピーマン部会も YES!clean 認証を取得しクリーン栽培を実
践していますが,難防除害虫のハダニの防除に苦慮しています。
そこで,ハダニの天敵であるミヤコカブリダニ剤(スパイカルプラス)を基幹とした
ハダニ防除について旭川における適応性を検討しました。
関係先
旭川青果物生産出荷協議会ピーマン部会
アリスタライフサイエンス株式会社(以下「ア社」とします)
結 果
(1)生物農薬の定着状況(表1)
放飼28日後には,多くの株に定着が確認され,以降も安定して定着していました。
確認された頭数が若干少ないのですが,ミヤコカブリダニが微小で移動中の個体以外の
確認が難しかったので,実際にはもっと多く定着しているものと思われます。
今回の試験ではハダニの発生がほとんど認められませんでしたが,ミヤコカブリダニ
の体色が赤味を帯びた個体も確認されていることから,ハダニ発生のごく初期に捕食し
ていたものと思われます。ア社によりますと動物性の餌(ハダニ)を摂ると体色が赤味
を帯びるようになるということです。
表1 ミヤコカブリダニの定着状況
放飼後1ヶ月
頭数(頭/5葉×10株)
放飼後2ヶ月
8.0
放飼後3ヶ月
27.5
13.0
(2)栽培結果
栽培期間中の高温と灌水不足により,尻腐果が多発しました。また,草姿は過繁茂気
味となりました。慣行区・生物農薬区共にハダニの発生はほぼ認められず,アブラムシ
が多発したため,生物農薬に影響の少ない剤(チェス水和剤)を用い防除を行いました。
生物農薬区が若干増収となっていますが,ハダニの被害は両区とも確認されていない
ことから,他の要因(灌水・ほ場の水はけなど)によるものと思われます。
表2 ピーマンの収量
総収量
(㎏/10a)
良果収量(㎏/10a)
計
1果重(g)
不良果収量(㎏/10a)
計
尻腐果
その他
生物農薬区
8,563
6,153
34.5
2,410
2,133
276
慣
8,000
5,604
31.9
2,386
2,283
103
行 区
(3)まとめ
今回の試験では生物農薬区・慣行区共にハダニの発生がほとんどなかったことから,
生物農薬の導入において最大の問題である定着性について検討を行いました。
放飼後の定着は良好であり,その後も安定して定着していることから旭川でのミヤコ
カブリダニ剤の使用には支障ないものと思われます。
使用の際はハダニが発生している状況ではミヤコカブリダニによる防除効果が現れる
まで時間がかかったり,ハダニ密度が高い場合は効果が見られない場合もあるので,放
飼前日にハダニの防除を行い「ゼロ放飼」の徹底が重要です。
その他
・
<スパイカルプラスの特徴と使用に当たっての注意>
パック剤であり対象作物の茎や枝に吊り下げるだけでよい。
・
従来のボトル剤で問題となった放飼時のミヤコカブリダニの落下や株ごとのばらつ
きなどが解消されており,誰にでも容易に扱えるものとなっている。
・ パック剤内には餌ダニも入っており,パック内においても増殖しながら設置後6週
間ほどの間順次パック内から植物体上に移行していく。また,餌ダニも植物に害を与
えるものではない。
・ ミヤコカブリダニはハダニを捕食するほか,花粉を食べても生育・増殖する。発生
前または化学農薬による殺ダニ後に放飼(ゼロ放飼)することにより,高い定着性を
持ちハダニの発生を抑制する。
・ 本剤を使用しているほ場ではハダニ以外の病害虫防除においても,天敵に影響の少
ない農薬を選択する必要がある。
・ 放飼から2~3週間は摘花・摘葉を避ける。また,天敵に影響の少ない農薬であっ
ても2週間は使用を避ける(放飼前に防除を行うようにする)。
写真 スパイカルプラス