公開特許公報 特開2015

〔実 18 頁〕
公開特許公報(A)
(19)日本国特許庁(JP)
(12)
(11)特許出願公開番号
特開2015-166344
(P2015−166344A)
(43)公開日 平成27年9月24日(2015.9.24)
(51)Int.Cl.
FI
テーマコード(参考)
A01N 63/00
(2006.01)
A01N
63/00
F
2B030
A01P 21/00
(2006.01)
A01P
21/00
4B024
C12N
1/21
(2006.01)
C12N
1/21
4B065
A01H 17/00
(2006.01)
A01H
17/00
4H011
C12N 15/09
(2006.01)
C12N
15/00
ZNAA
審査請求 未請求
請求項の数10 OL (全23頁)
(21)出願番号
特願2015-29054(P2015-29054)
(71)出願人 501203344
(22)出願日
平成27年2月17日(2015.2.17)
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合
(31)優先権主張番号
特願2014-27854(P2014-27854)
研究機構
(32)優先日
平成26年2月17日(2014.2.17)
(33)優先権主張国
日本国(JP)
茨城県つくば市観音台3−1−1
(74)代理人 100091096
弁理士
平木 祐輔
(74)代理人 100118773
弁理士
藤田 節
(74)代理人 100180954
弁理士
(72)発明者 田中
漆山 誠一
福代
茨城県つくば市観音台三丁目1番地1
独
立行政法人農業・食品産業技術総合研究機
構
中央農業総合研究センター内
最終頁に続く
(54)【発明の名称】微生物農薬、並びに植物の虫害抵抗性付与及び品質低下抑制方法
(57)【 要 約 】
【課題】外的ストレス等による植物のエチレン生成を抑制し、虫害抵抗性の付与と農産物
の品質低下の抑制を両立する方法を開発する。
【 解 決 手 段 】 1-ア ミ ノ シ ク ロ プ ロ パ ン -1-カ ル ボ ン 酸 デ ア ミ ネ ー ス ( ACCd) 遺 伝 子 を 発 現
可能な状態で有するシュードモナス属細菌を有効成分とする植物の虫害抵抗性付与及び品
質低下抑制のための微生物農薬を目的の植物に施用する方法を提供する。
【選択図】なし
( 2 )
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【特許請求の範囲】
【0003】
【請求項1】
多くの植物は、植食性昆虫等に対して忌避作用による自
1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸デアミネース(A
己防除能を有している。例えば、植物は、虫害等の傷害
CCd)遺伝子を発現可能な状態で有するシュードモナス
による外的ストレスを引き金に、エチレンを産生するこ
属(Pseudomonas)細菌を有効成分とする植物の虫害抵
とで植食性昆虫等からのさらなる加害を防除している(
抗性付与及び品質低下抑制のための微生物農薬。
非特許文献1)。つまり、エチレンは、二次代謝産物で
【請求項2】
ある植食者誘導性揮発性成分(以下「HIPV」と称する。
前記シュードモナス属細菌が受託番号NITE P-01743の細
)の生成を誘導することにより、植食性昆虫等に対する
菌である、請求項1に記載の微生物農薬。
【請求項3】
忌避効果や食害阻害効果、天敵誘因作用を通じて抵抗性
10
を一層強化することが知られている(非特許文献2)。
前記シュードモナス属細菌が受託番号NITE P-01985の細
【0004】
菌である、請求項1に記載の微生物農薬。
しかし、エチレンは、植物に虫害抵抗性をもたらす一方
【請求項4】
で、植物の生育を抑制するため収量が低下してしまうと
前記シュードモナス属細菌がACCd遺伝子を発現可能な状
いう問題がある。さらに、エチレンは、植物体を硬化し
態で包含する発現ベクターを有する、請求項1∼3のい
、及び/又は病害微生物に対して抵抗性を示す抗菌物質
ずれか一項に記載の微生物農薬。
であるファイトアレキシンの蓄積をもたらし、臭いや苦
【請求項5】
みを発生させる等の食味の低下をひき起こす。それ故、
前記品質低下が外観の毀損、香気成分の変化、及び/又
農産物としての品質を多面的に低下させてしまうという
は食味の低下である、請求項1∼4のいずれか一項に記
問題もある。したがって、植物に虫害抵抗性を付与しつ
載の微生物農薬。
20
つ農産物としての収量と品質を保持するためには、生育
【請求項6】
期間を通じてエチレンの植物体内レベルを適度に制御す
ACCd遺伝子を発現可能なシュードモナス属細菌を植物内
る必要がある。しかし、エチレンは、植物細胞で一旦生
生微生物として有する植物。
成されると自己触媒的に増加して過剰誘導されてしまう
【請求項7】
ため、植物自身のフィードバックによる代謝制御は困難
前記シュードモナス属細菌が受託番号NITE P-01743の細
となる。つまり、エチレンに基づく虫害抵抗性の獲得と
菌である、請求項6に記載の植物。
、農産物の収量及び品質保持は、相反する関係にあり、
【請求項8】
人為的な防除方法によらず虫害防除と農産物の収量及び
前記シュードモナス属細菌が受託番号NITE P-01985の細
品質保持を両立することはできない。
菌である、請求項6に記載の植物。
【0005】
【請求項9】
30
農業害虫の防除方法には、従来、主に化学農薬の散布等
前記シュードモナス属細菌がACCd遺伝子を発現可能な状
の化学的防除方法が用いられてきた。化学農薬を用いれ
態で含む発現ベクターを有する、請求項6∼8のいずれ
ば、虫害防除と農産物の収量及び品質保持の両立が可能
か一項に記載の植物。
となる。
【請求項10】
しかし、化学的防除方法による虫害防除は、薬剤抵抗性
請求項1∼5のいずれか一項に記載の微生物農薬を目的
個体の出現(非特許文献3)、環境汚染、及び農作物へ
の植物に施用する工程を含む、植物に虫害抵抗性を付与
の残留等が大きな問題となる。また、有機農業において
し、かつ品質低下を抑制する方法。
は、原則として化学農薬を使用することができない。さ
【発明の詳細な説明】
らに近年では環境に配慮する関心の高まりから環境と調
【技術分野】
【0001】
和した持続的な防除技術への移行が求められており、安
40
全性が高く、環境への影響が少ない新たな防除方法が注
本発明は、植物内生菌を有効成分とする微生物農薬、並
目を集めている。例えば、生物農薬による生物学的防除
びにそれを用いて目的の植物に虫害抵抗性を付与し、か
方法は、その好例である。生物学的防除方法とは、自然
つその植物の品質低下を抑制する方法に関する。
生態系における捕食・被食関係や宿主・寄生体関係に基
【背景技術】
づき、農業害虫の天敵を生物農薬(天敵製剤)に利用し
【0002】
て農業害虫等を防除する方法である。しかし、生物農薬
農作物の栽培において、農業害虫による加害は、生産量
の多くは、化学農薬よりもコスト高となる上に、化学農
の低下、微生物やウイルスの媒介による植物病害の蔓延
薬のように虫害を完全に防除するほどの効果は得られな
、及び外観及び食味等の農産物の品質低下等の深刻な問
い。また結局、傷害時にエチレンが発生してしまうため
題をもたらす。それ故、農業害虫の防除は、農業上重要
、農産物の品質を保持するには不十分であった。
な課題である。
50
【0006】
( 3 )
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現在までに、農業害虫に対して忌避性を付与する農薬や
れており、農業分野においても植物内生菌を利用した技
農業害虫に対する抵抗性誘導剤は、数多く知られている
術が多数開発されている(池田成志ら, 2013, 化学と生
。例えば、非特許文献4及び5は、PGPR(植物生育促進
物, 51(7):462-470;Shrivastava G., et al., 2010, C
根圏細菌:Plant Growth Promoting Rhizobacteria)を
ritical reviews in plant science, 29:123-133)。ま
キュウリ及びトマトに接種することで、ナミハダニ密度
た、植物内生菌の中で1-アミノシクロプロパン-1-カル
を抑制したことを開示している。しかし、エチレン発生
ボン酸デアミネース(ACCd)遺伝子を有する菌が植物の
の抑制やそれに基づく品質保持に関しては言及されてい
成長を促進させることも知られている(Glick B.R., et
ない。エチレンの発生を制御し、虫害抵抗性を付与する
al., 2007,
と共に、エチレンに基づく農産物の品質低下を抑制する
技術については、これまでに知られていない。
Eur J Plant Physiol, 119:329-339)。
【0012】
10
そこで、本発明者らは、ACCd遺伝子を有し、高いエチレ
【先行技術文献】
ン生成阻害能をもつ植物内生菌を有効成分として利用す
【非特許文献】
る微生物農薬を開発し、それを目的の植物に施用したと
【0007】
ころ、従来困難と言われていた虫害抵抗性の獲得と品質
【非特許文献1】Arimura G. et al., 2009, Plant Cel
保持を両立することに成功した。本発明は、上記知見に
l Physiol., 50(5):911-923
基づくものであり、以下を提供する。
【非特許文献2】塩尻かおりら, 2009, 応動昆, 46:117
【0013】
-133
(1)1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸デアミネ
【非特許文献3】刑部正博・上杉龍士, 2009, 日本農薬
ース(ACCd)遺伝子を発現可能な状態で有するシュード
学会誌, 34(3):207-214
モナス属(Pseudomonas)細菌を有効成分とする植物の
【非特許文献4】Tomczyk A.,2002,IOBC/WPRS Bull., 2 20
虫害抵抗性付与及び品質低下抑制のための微生物農薬。
5(6):67-70
(2)前記シュードモナス属細菌が受託番号NITE P-017
【非特許文献5】Tomczyk A. & Kielkiewicz M., 2000,
43の細菌である、(1)に記載の微生物農薬。
J Plant protection research, 40(1)22-25
(3)前記シュードモナス属細菌が受託番号NITE P-019
【発明の概要】
85の細菌である、(1)に記載の微生物農薬。
【発明が解決しようとする課題】
(4)前記シュードモナス属細菌がACCd遺伝子を発現可
【0008】
能な状態で包含する発現ベクターを有する、(1)∼(
相反関係にある虫害抵抗性の付与と農産物の品質低下の
3)のいずれかに記載の微生物農薬。
抑制を両立させるために外的ストレスによる植物のエチ
(5)前記品質低下が外観の毀損、香気成分の変化、及
レン生成を抑制する非化学的防除方法を開発する。
び/又は食味の低下である、(1)∼(4)のいずれか
【課題を解決するための手段】
30
に記載の微生物農薬。
【0009】
(6)ACCd遺伝子を発現可能なシュードモナス属細菌を
従来、外部刺激によるエチレン及びファイトアレキシン
植物内生微生物として有する植物。
の生成、及びそれに基づく虫害抵抗性に関する研究は主
(7)前記シュードモナス属細菌が受託番号NITE P-017
に生物学的防除分野で、また植物の二次代謝産物、香気
43の細菌である、(6)に記載の植物。
成分及び食味等の食品としての品質に関する研究は主に
(8)前記シュードモナス属細菌が受託番号NITE P-019
食品化学や植物化学分野で行われていた。
85の細菌である、(6)に記載の植物。
そのため虫害防除と品質保持を関連付けて、各課題解決
(9)前記シュードモナス属細菌がACCd遺伝子を発現可
を両立させる研究は注目されていなかった。
能な状態で含む発現ベクターを有する、(6)∼(8)
【0010】
のいずれかに記載の植物。
そこで、本発明者らは、虫害による外的ストレス、それ 40
(10)(1)∼(5)のいずれかに記載の微生物農薬
によるエチレンの生成、エチレンによって誘導される二
を目的の植物に施用する工程を含む、植物に虫害抵抗性
次代謝物HIPVやファイトアレキシンの生成と蓄積、そし
を付与し、かつ品質低下を抑制する方法。
てエチレンやHIPV等による虫害抵抗性の増強、並びに収
【0014】
量及び品質の低下という一連の事象を1システムとして
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願20
捉えることで、たとえ農業害虫による加害があっても、
14-027854号の明細書及び/又は図面に記載される内容
エチレンの自己触媒的生成を抑制することによって、虫
を包含する。
害抵抗性付与と農産物の品質低下の抑制を両立させるこ
【発明の効果】
とができると考え、研究を進めた。
【0015】
【0011】
本発明の微生物農薬によれば、植物に虫害抵抗性を付与
多くの植物の体内には植物内生菌が生息することが知ら 50
し、それによって農産物の収量を保持することができる
( 4 )
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。また、農業害虫の加害等の外的ストレスによって発生
ニの産卵数を示す図である。シュードモナス属細菌RH7
するエチレンに基づく農産物としての品質低下を抑制す
株を有効成分とする本発明の微生物農薬を施用した株(
ることができる。
RH7)と非施用の株(非接種)をそれぞれ示している。
【0016】
【発明を実施するための形態】
本発明の植物に虫害抵抗性を付与し、かつ品質低下を抑
【0018】
制する方法によれば、本発明の微生物農薬を施用するこ
1.微生物農薬
とで、その植物に虫害抵抗性を付与し、また農産物とし
1−1.概要及び定義
ての品質低下を抑制することができる。
本発明の第1の態様は、植物内生細菌を有効成分として
【図面の簡単な説明】
【0017】
有する微生物農薬である。本発明の微生物農薬によれば
10
、目的の植物に施用することで、その植物に虫害抵抗性
【図1】エチレン前駆物質ACC存在下における本発明の
を付与し、かつ農産物としての品質の低下を抑制するこ
微生物農薬によるリョクトウ胚軸の伸長比率を示す図で
とができる。
ある。試験区(OFT2)は、シュードモナス属細菌OFT2株
【0019】
を有効成分とする微生物農薬を施用したリョクトウを、
本明細書において「植物内生菌(エンドファイト;endo
また対照区(Cont)は、該微生物農薬を施用していない
phyte)」とは、植物体内(例えば、細胞間隙や細胞内
リョクトウを示す。
)で共生して生活している真菌や細菌をいう。
【図2】シュードモナス属細菌OFT2株を有効成分とする
【0020】
本発明の微生物農薬を施用したシソ株(接種)と非施用
本明細書において本発明の微生物農薬を施用する「植物
のシソ株(非接種)の葉上におけるハダニ個体数を示す
」は、植物内生菌であるシュードモナス属細菌を接種可
図である。
20
能な植物である。例えば、コケ類、シダ類、被子植物及
【図3】図2におけるシソの葉の外観を示す図である。
び裸子植物が該当する。被子植物は、双子葉植物又は単
aはシュードモナス属細菌OFT2株を有効成分とする本発
子葉植物のいずれも包含する。また草本及び木本のいず
明の微生物農薬を非施用のシソ葉、またbは施用したシ
れも含む。本発明において、特に好適な植物は、農林業
ソ葉である。円内は、ハダニに加害され、葉色が抜けた
上重要な植物、例えば、花卉、果物、穀類、野菜(根菜
部分を示す。
類を含む)の農産物植物が挙げられる。具体的には、単
【図4】本発明の微生物農薬の施用方法による虫害抵抗
子葉植物では、イネ科(Poaceae)植物(イネ、コムギ
性効果の獲得の差異を示す図である。
、オオムギ、ライムギ、カラスムギ、ハトムギ、キビ、
【図5A】本発明の微生物農薬における有効成分である
アワ、ヒエ、トウモロコシ、モロコシ、コウリャン、ソ
シュードモナス属細菌OFT2株を接種した試験区の植物と
ルガム、サトウキビ、タケ、ササを含む)、ショウガ科
対照区の植物におけるHIPVの一種である青臭い臭気成分 30
(Zingiberaceae)植物(クルクマ、ショウガ、ミョウ
の濃度比を示す図である。
ガ、ウコンを含む)等の植物が挙げられる。また双子葉
【図5B】本発明の微生物農薬における有効成分である
植物では、ナス科(Solanaceae)植物(ペチュニア、タ
シュードモナス属細菌OFT2株を接種した試験区の植物と
バコ、トマト、ナス、キュウリ、ピーマン、ジャガイモ
対照区の植物におけるシソ特有の芳香成分の濃度比を示
、トウガラシを含む)、ヒルガオ科(Convolvulaceae)
す図である。
植物(サツマイモを含む)、バラ科(Rosaceae)植物(
【図6】ハグラウリの葉上におけるナミハダニとカンザ
ウメ、サクラ、イチゴ、リンゴ、ナシ、モモ、ビワ、ア
ワハダニの産卵数を示す図である。シュードモナス属細
ーモンド、スモモ、ボケ、ヤマブキを含む)、サトイモ
菌OFT2株を有効成分とする本発明の微生物農薬を施用し
科(Araceae)植物(サトイモ、コンニャクを含む)、
た株(OFT2)と非施用の株(非接種)をそれぞれ示して
いる。
ユリ科(Liliaceae)植物(ユリ、チューリップ、ヒア
40
シンス、スズラン、アスパラガス、ネギ、タマネギを含
【図7】ナスの葉上におけるナミハダニとカンザワハダ
む)、セリ科(Apiaceae)植物(ニンジン、パセリ、ク
ニの産卵数を示す図である。シュードモナス属細菌OFT2
ミン、フェンネルを含む)、スミレ科(Violaceae)植
株を有効成分とする本発明の微生物農薬を施用した株(
物(ビオラ、パンジーを含む)、キンポウゲ科(Ranunc
OFT2)と非施用の株(非接種)をそれぞれ示している。
ulaceae)植物(ラナンキュラス、クリスマスローズ、
【図8】シュードモナス属細菌RH7株を有効成分とする
アネモネ、クレマチスを含む)、シソ科(Lamiaceae)
本発明の微生物農薬によるACC存在下でのリョクトウの
植物(シソ、ラベンダー、サルビア、バジル、ミント、
胚軸長を示す図である。試験区(RH7)はRH7株を接種し
ローズマリー、セージ、レモンバーム、オレガノ、タイ
たリョクトウを、また対照区(非接種)はRH7株を接種
ムを含む)、マメ科(Fabaceae)植物(ダイズ、ピーナ
していないリョクトウを示す。
ッツ、アズキ、グリーンピース、インゲンマメ、ヒラマ
【図9】シソの葉上におけるナミハダニとカンザワハダ 50
メ、エンドウ、ソラマメ、クズ、スイートピー、タマリ
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ンドを含む)、ウリ科(Cucurbitaceae)植物(キュウ
)、バラミドリアブラムシ(Rhodobium porosum)、オ
リ、ツルレイシ、ウリ、カボチャ、メロン、スイカ、ヘ
カボノアブラムシ(Rhopalosiphum rufiabdominalis)
チマ、ヒョウタンを含む)、アブラナ科(Brassicaceae
、ダイコンアブラムシ(Brevicoryne brassicae)、ニ
)植物(レタス、キャベツ、ダイコン、ハクサイ、カブ
セダイコンアブラムシ(Lipaphis erysimi)、ネギアブ
、アブラナを含む)、キク科(Asteraceae)植物(キク
ラムシ(Neotoxoptera formosana)、タイワンヒゲナガ
、ガーベラ、ダリア、キンセンカ、マリーゴールド、ヒ
アブラムシ(Uroleucon formosanum)、イチゴケナガア
マワリ、コスモス、マーガレットを含む)、ナデシコ科
ブラムシ(Chaetosiphon fragaefolii)、チューリップ
(Caryophyllaceae)植物(ナデシコ、カーネーション
ヒゲナガアブラムシ(Macrosiphum euphorbiae)、トウ
を含む)、リンドウ科(Gentianaceae)植物(トルコギ
キョウ、リンドウを含む)、アオイ科(Malvaceae)植
モロコシアブラムシ(Rhopalosiphum maidis)、ムギク
10
ビレアブラムシ(Sitobion akebiae)、ムギヒゲナガア
物(ワタ、オクラ、アオイ、ムクゲを含む)、サクラソ
ブラムシ(Sitobion akebiae)、ジャガイモヒゲナガア
ウ科(Primulaceae)植物(サクラソウ、プリムラ、シク
ブラムシ(Aulacorthum solani)、ミカンクロアブラム
ラメンを含む)等の植物が挙げられる。
シ(Toxoptera citricida)、リンゴコブアブラムシ(O
【0021】
vatus malisuctus)及びモモコフキアブラムシ(Hyalop
本明細書において「虫害抵抗性」とは、農業害虫による
terus pruni)が挙げられる。コナジラミ上科に属する
植物の加害を防止又は抑制する作用をいう。
種であれば、例えば、タバココナジラミ(Bemisia taba
【0022】
ci)、シルバーリーフコナジラミ(Bemisia argentifol
本明細書において「農業害虫」とは、前記農林業上重要
ii)、オンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporarioru
な植物に損害を与える害虫が該当する。農業害虫には、
m)又はミカントゲコナジラミ(Aleurocanthus spinife
植食性昆虫、ハダニ科(Tetranychidae)に属する種、
20
rus)が挙げられる。カイガラムシ上科に属する種であ
フシダニ科(Eriophydae)に属する種、及び線形動物門
れば、例えば、ワタフキカイガラムシ(Icerya purchas
(Nematomorpha)に属する種(いわゆる線虫)が含まれ
i Maskell)、ルビーロウカイガラムシ(Ceroplastes r
る。
ubens)又はタマカイガラムシ(Eulecanium kunoense)
【0023】
が挙げられる。ハゴロモ上科に属する種であれば、ウン
本発明の微生物農薬の対象となる植食性昆虫は、特に限
カ科(Delphacidae)に属する種、ハゴロモ科(Ricanii
定はしないが、体長8mm以下の微小昆虫、例えば、アザ
dae)に属する種が挙げられる。
ミウマ目(Thysanoptera)に属する種、カメムシ亜目(
【0024】
Heterpptera)に属する種、アブラムシ上科(Aphidoide
本発明の微生物農薬の対象となるハダニ科に属する種は
a)に属する種、コナジラミ上科(Aleyrodidae)に属す
、特に限定はしないが、例えば、ナミハダニ(Tetranyc
る種、カイガラムシ上科(Coccoidea)に属する種、又
30
hus urticae)、カンザワハダニ(Tetranychus kanzawa
はハゴロモ上科(Fulgoroidea)に属する種等が好まし
i)、オウトウハダニ(Amphitetranychus viennensis)
い。アザミウマ目に属する種であれば、例えば、ミカン
、ミカンハダニ(Panonychus citri)、リンゴハダニ(
キイロアザミウマ(Frankliniella occidentalis)、ヒ
Panonychus ulmi)及びクローバービラハダニ(Bryobia
ラズハナアザミウマ(Frankliniella intonsa)、クロ
praetiosa)が挙げられる。また、フシダニ科に属する
トンアザミウマ(Heliothrips haemorrhoidalis)、ミ
種は、特に限定はしないが、例えば、ミカンサビダニ(
ナミキイロアザミウマ(Thrips palmi)、ネギアザミウ
Aculops pelekassi)、リュウキュウミカンサビダニ(Ph
マ(Thrips tabaci)、クロゲアザミウマ(Thrips nigr
yllocoptruta citri)、トマトサビダニ(Aculops lycop
oplosus)、チャノキイロアザミウマ(Scirtothrips do
ersici)、シソサビダニ(Shevtchenkella sp.)が挙げ
rsalis)及びアカメガシワクダアザミウマ(Haplothrip
られる。
s brevitubus)が挙げられる。カメムシ亜目に属する種 40
また、本発明の微生物農薬の対象となる線虫に属する種
であれば、例えば、ツツジグンバイ(Stephanitis pyri
は、植物寄生性であれば特に限定はしないが、例えば、
oides)、ナシグンバイ(Stephanitis nashi)、ゲット
ネグサレセンチュウ(Pratylenchus)に属する種、ネコ
ウグンバイ(Stephanitis typica)、及びキクグンバイ
ブセンチュウ(Meloidogyne)に属する種、シストセン
(Galeatus spinifrons)が挙げられる。アブラムシ上科
チュウ(Heterodera、Globodera)に属する種、ハセン
に属する種であれば、例えば、ワタアブラムシ(Aphis
チュウ(Aphelenchoides)に属する種、又はクキセンチ
gossypii)、ダイズアブラムシ(Aphis glycines)、マ
ュウ(Ditylenchus)に属する種等が好ましい。ネグサ
メアブラムシ(Aphis craccivora)、エンドウヒゲナガ
レセンチュウに属する種であれば、例えば、キタネグサ
アブラムシ(Acyrthosiphon pisum)、イチゴネアブラ
レセンチュウ(Pratylenchus penetrans)、ミナミネグ
ムシ(Aphis forbesi)、ユキヤナギアブラムシ(Aphis
サレセンチュウ(Pratylenchus coffeae)、ムギネグサ
spiraecola)、モモアカアブラムシ(Myzus persicae
50
レセンチュウ(Pratylenchus neglectus)、ノコギリネ
( 6 )
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10
グサレセンチュウ(Pratylenchus crenatus)、クルミ
る酵素である。植物細胞内のACCは、植物が外的ストレ
ネグサレセンチュウ(Pratylenchus vulnus)、及びチ
ス等の外部刺激を受けることによってACC酸化酵素によ
ャネグサレセンチュウ(Pratylenchus loosi)が挙げら
り酸化され、エチレンが生成される。ACCdは、ACCを分
れる。ネコブセンチュウに属する種であれば、例えば、
解することで、植物が外的ストレスを受けた後も過剰の
サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita
エチレン発生を抑制し、傷害に対する植物の過剰反応を
)、アレナリアネコブセンチュウ(Meloidogyne arenar
抑制することができる。
ia)、リンゴネコブセンチュウ(Meloidogyne mali)及
【0028】
びキタネコブセンチュウ(Meloidogyne hapla)が挙げ
本明細書において「ACCd遺伝子」とは、acdS遺伝子とも
られる。シストセンチュウに属する種であれば、例えば
呼ばれ、ACCdの活性ペプチドをコードする広義のACCd遺
、ジャガイモシストセンチュウ(Globodera rostochien 10
伝子をいう。具体的には、野生型ACCd遺伝子、野生型AC
sis)、ダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines
Cdの活性を有する変異型ACCdをコードする変異型ACCd遺
)、及びクローバーシストセンチュウ(Heterodera tri
伝子、及び野生型ACCdの活性を有するペプチドをコード
folii)が挙げられる。ハセンチュウに属する種であれ
するその断片を包含するヌクレオチドが該当する。
ば、例えば、ハガレセンチュウ(Aphelenchoides ritze
【0029】
mabosi)、イチゴセンチュウ(Aphelenchoides fragari
「野生型ACCd遺伝子」は、ACCd本来の機能を有するペプ
ae)、及びイネシンガレセンチュウ(Aphelenchoides b
チドをコードする遺伝子であって、自然界に存在する対
esseyi)が挙げられる。クキセンチュウに属する種であ
立遺伝子群において、通常、最も多く存在する遺伝子で
れば、例えば、イモグサレセンチュウ(Dithlenchus de
ある。例えば、配列番号5で示すアミノ酸配列からなる
structor)、及びナミクキセンチュウ(Ditylenchus di
Pseudomonas fluorescens F113のACCdをコードする遺伝
psaci)が挙げられる。
20
子や配列番号6で示すアミノ酸配列からなるシュードモ
【0025】
ナス属細菌(Pseudomonas sp.)のACCdをコードする遺
本明細書において「品質(の)低下」とは、農業害虫の
伝子が挙げられる。
虫害によって発生する農産物の外観の毀損や、香気成分
【0030】
の変化、及び/又は食味の低下をいう。外観の毀損とは
「変異型ACCd遺伝子」とは、宿主植物に病害虫抵抗性や
、例えば、食害痕による美観の低下や農業害虫の付着に
環境ストレスに対する耐性を付与する活性が野生型ACCd
よる生理的嫌悪感の付与が挙げられる。また香気成分の
と同等以上の変異型ACCdをコードするACCd遺伝子であっ
変化とは、例えば、ヒトに対して好ましい匂いを与える
て、野生型ACCd遺伝子の塩基配列において1若しくは数
芳香成分の減少及び/又はヒトに対して不快感を与える
個の塩基が欠失、置換又は付加された遺伝子をいう。変
臭気成分の増加が挙げられる。さらに、食味の低下とは
異型ACCd遺伝子には、例えば、野生型ACCd遺伝子の塩基
、例えば、苦味成分やえぐみ成分の増加、及び/又は植 30
配列において1個又は数個のヌクレオチドが欠失、置換
物の硬化等による食感の低下が挙げられる。また、本明
又は付加されたもの、前記塩基配列と60%以上、好まし
細書において「品質(の)低下の抑制」とは、農産物の
くは70%、75%、80%又は85%、より好ましくは90%以
外観の毀損や、香気成分の変化、及び/又は食味の低下
上、95%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上の同
が生じないようにすること、すなわち、品質の保持を意
一性を有するもの、又は野生型遺伝子の部分塩基配列に
味する。これは、農業害虫の加害により発生するエチレ
相補的な塩基配列からなる核酸断片と高ストリンジェン
ンの過剰な生成を抑制し、エチレンによって誘導される
トな条件下でハイブリダイズするものが含まれる。ここ
HIPV等により農業害虫からの加害を防止又は抑制すると
で前記「同一性」とは、二つの塩基配列を整列(アライ
共に、HIPV等の生成を適度に抑えることで達成される。
ンメント)し、必要に応じてギャップを導入して、両者
【0026】
1−2.構成
の塩基一致度が最も高くなるようにしたときの野生型AC
40
Cd遺伝子の塩基配列の全塩基数に対する変異型ACCd遺伝
(1)有効成分
子の塩基配列中の同一塩基数の割合(%)をいう。「数
本発明の微生物農薬において有効成分として機能する植
個のヌクレオチド」とは、2∼30個、2∼14個、2∼10個
物内生菌は、1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸デ
、2∼8個、2∼6個、2∼5個、2∼4個、又は2∼3個のヌク
アミネース(本明細書ではしばしば「ACCd」と略称する
レオチドをいう。また、「高ストリンジェントな条件」
。)遺伝子を発現可能な状態で有するシュードモナス属
とは、非特異的なハイブリッドが形成されない条件を意
(Pseudomonas)細菌である。
味する。高ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイ
【0027】
ゼーション後の洗浄において、高温かつ低塩濃度な条件
ACCdは、エチレンの前駆物質である1-アミノシクロプロ
をいう。例えば、65℃、0.1×SSC及び0.1% SDSで洗浄す
パン-1-カルボン酸(本明細書ではしばしば「ACC」と略
る条件である。このような変異型ACCd遺伝子としては、
称する。)をアンモニア(NH3 )とα-ケト酪酸に分解す 50
限定はしないが、例えば、SNP(一塩基多型)等の多型
( 7 )
JP
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に基づく変異体、スプライス変異体、遺伝暗号の縮重に
付で、受託番号NITE P-01985として、同様に独立行政法
基づく変異体等が挙げられる。
人製品評価技術基盤機構に寄託されている。
【0031】
【0035】
「その断片」とは、野生型ACCd遺伝子又は変異型ACCd遺
ACCd遺伝子が外因性遺伝子の場合、有効成分であるシュ
伝子の断片で、宿主植物に病害虫抵抗性や環境ストレス
ードモナス属細菌はACCd遺伝子を発現可能な状態で包含
に対する耐性を付与する活性を有するペプチドをコード
する発現ベクター(ACCd遺伝子発現ベクター)を有して
するヌクレオチドをいう。
いてもよい。本明細書で「発現ベクター」とは、目的の
【0032】
遺伝子を発現可能な状態で包含し、それを発現すること
上記のように本明細書では、特に断りのない限り「ACCd
ができる遺伝子発現システムをいう。したがって、「AC
遺伝子」は、野生型ACCd遺伝子、変異型ACCd遺伝子及び 10
Cd遺伝子発現ベクター」とは、人為的操作を介して外部
その断片を包括するヌクレオチドをいう。
から導入された外来性のACCd遺伝子を発現発現ベクター
【0033】
である。「発現可能な状態で包含する」とは、シュード
ACCd遺伝子は、内因性遺伝子、外因性遺伝子又はその組
モナス属細菌内で目的のACCd遺伝子を発現可能なように
み合わせのいずれであってもよい。植物内生菌が、内因
発現ベクター内のプロモーターの制御下に配置すること
性のACCd遺伝子をゲノム上に有する場合には、その細菌
をいう。
を有効成分として用いればよい。すなわち、内因性のAC
発現ベクターは、プロモーター以外にもACCd遺伝子の発
Cd遺伝子を有するシュードモナス属細菌は、特段の改変
現調節領域として、必要に応じてターミネーター、エン
を要さずに、そのまま本発明の微生物農薬の有効成分と
ハンサーを含むことができる。さらにマルチクローニン
して用いることができる。一方、後述するようにACCd遺
グサイト、シグナルペプチドDNA、標識遺伝子を選択要
伝子が人為的操作を介して外部から導入された外因性遺 20
素として適宜含むことができる。
伝子の場合であれば、その遺伝子の由来生物種は問わな
【0036】
い。例えば、有効成分として用いるシュードモナス属細
本発明の微生物農薬の所定量あたりにおける有効成分の
菌以外の他生物種由来のACCd遺伝子等を用いることもで
含有量は、シュードモナス属細菌の種類、施用植物の種
きる。また、内因性のACCd遺伝子を有するシュードモナ
類、剤形、及び施用(接触)方法等の諸条件によって異
ス属細菌が、外因性のACCd遺伝子を有する場合、その外
なる。通常は、本発明の微生物農薬を施用する際に有効
因性のACCd遺伝子は、内因性のACCd遺伝子を有するシュ
成分のシュードモナス属細菌が施用植物体内に侵入する
ードモナス属細菌に由来するACCd遺伝子であってもよい
上で十分な量を含んでいることが好ましい。この量は、
し、それ以外の他生物種由来のACCd遺伝子でもよい。
当該分野の技術常識の範囲において本発明の微生物農薬
【0034】
に含有されるシュードモナス属細菌が施用後に対象植物
本発明の微生物農薬において有効成分として使用される 30
に対して所望の量となるように各条件を勘案して決定す
シュードモナス属細菌は、グラム陰性好気性桿菌に属す
ればよい。例えば、シュードモナス属細菌OFT2株又はRH
る真正細菌である。本発明の有効成分として使用される
7株で、本発明の微生物農薬の剤形が液剤の場合であれ
シュードモナス属細菌は、感染によって植物体内に侵入
ば、溶液中に10 ∼10
し、内生可能な植物感染性シュードモナス属細菌である
要に応じて施用時には、水、食塩水(0.4%以下、ただ
。さらに、ACCd遺伝子を発現可能な状態で有していれば
し、食塩水の濃度は施用植物の耐塩性によって決定され
、その種類は問わない。例えば、内因性のACCd遺伝子を
、施用植物に耐性があれば0.4%よりも高めが好ましい
有するP. oleovorans、P. oryzihabitans、P.fluoresce
)、5%以下のマンニトール水、バッファー等でさらに1
nce又はP.putidaが挙げられる。本発明の微生物農薬に
0∼1000倍に希釈してもよい。
8
おいて有効成分として好適なシュードモナス属細菌は、
OFT2株及びRH7株である。これらの菌株は、有機栽培さ
1 0
cfu/mLの範囲にあればよい。必
【0037】
40
(2)農薬製剤上許容可能な担体
れた野菜から本発明者らによって分離された新規のシュ
本発明の微生物農薬は、有効成分のシュードモナス属細
ードモナス属細菌で、高いエチレン生成阻害能を有する
菌のみから構成されていてもよいが、必要に応じて、シ
。OFT2株は、16S rRNAの塩基配列から、P. oryzihabita
ュードモナス属細菌がACCd遺伝子を発現可能な範囲にお
nsに近似の新規菌株であることが判明し、2013年10月31
いて農薬製剤上許容可能な担体を含むことができる。
日付で、受託番号NITE P-01743として、独立行政法人製
【0038】
品評価技術基盤機構(292-0818
日本国千葉県木更津市
本明細書において「農薬製剤上許容可能な担体」とは、
120号室)に寄託されている。また、
微生物農薬の施用を容易にし、有効成分であるシュード
かずさ鎌足2-5-8
RH7株は、16S rRNAの塩基配列に基づく解析によれば相
モナス属細菌の生存性及び植物感染性を維持又は/及び
同性の高い近似種が存在せず、新種のシュードモナス菌
微生物農薬の作用速度を制御する物質であって、植物の
株であると推測されている。RH7株は、2014年12月19日
50
栽培に施用しても土壌及び水質等の環境に対する有害な
( 8 )
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影響がないか又は小さい、又は動物、特にヒトに対する
ることもできる。
有害性がないか又は低い物質をいう。例えば、溶媒及び
【0044】
補助剤が挙げられる。
本発明の微生物農薬の剤形は、シュードモナス属細菌が
【0039】
施用植物体内に侵入し得る状態であれば、いかなる状態
溶媒としては、水(滅菌水、脱イオン水、超純水を含む
であってもよく、例えば、液体状態の液剤、固体状態の
)、バッファー(リン酸緩衝液、炭酸緩衝液を含む)、
固形剤とすることができる。液剤の場合、有効成分であ
生理的食塩水、シュードモナス属細菌の培地又はそれら
るシュードモナス属細菌を適当な溶液に懸濁した溶液剤
の混合溶媒が挙げられる。
、油性分散液剤、エマルション剤、懸濁剤が挙げられる
【0040】
。固形剤の場合、有効成分であるシュードモナス属細菌
賦形剤としては、粉砕天然鉱物、粉砕合成鉱物、乳化剤 10
が、施用植物に作用し得る状態であれば、特に制限はし
、分散剤及び界面活性剤等が挙げられる。
ない。例えば、粉剤、散剤、ペースト剤、ゲル剤が挙げ
【0041】
られる。
粉砕天然鉱物には、例えば、カオリン、クレイ、タルク
【0045】
及びチョークが挙げられる。
1−3.効果
粉砕合成鉱物には、例えば、高分散シリカ及びシリケー
本発明の微生物農薬によれば、虫害抵抗性を植物に付与
トが挙げられる。乳化剤としては、非イオン性乳化剤や
し、それによって農産物の収量を保持することができる
アニオン性乳化剤(例えば、ポリオキシエチレン脂肪ア
。また、農業害虫の加害等の外的ストレスによって発生
ルコールエーテル、アルキルスルホネート及びアリール
するエチレンの生成を抑制し、エチレンによって引き起
スルホネート)が挙げられる。
こされる農産物の品質低下を抑制することができる。こ
【0042】
20
のエチレンによる品質低下の抑制効果は、従来の化学農
分散剤としては、例えば、リグノ亜硫酸廃液及びメチル
薬や生物農薬では知られていない薬効である。
セルロースが挙げられる。
【0046】
界面活性剤としては、例えば、リグノスルホン酸、ナフ
本発明の微生物農薬は、有効成分のシュードモナス属細
タレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ジブチルナ
菌を目的の植物に感染させるだけで上記効果を奏し得る
フタレンスルホン酸のアルカリ金属塩、アルカリ土類金
。シュードモナス属細菌は、生育速度が速く、植物に対
属塩及びアンモニウム塩、アルキルアリールスルホネー
する感染性や定着性が高いことから、本発明の微生物農
ト、アルキルスルフェート、アルキルスルホネート、脂
薬は、取り扱いや目的の植物への施用、特に苗へ施用が
肪アルコールスルフェート、脂肪酸及び硫酸化脂肪アル
簡便であり、かつ比較的安価で提供することができる。
コールグリコールエーテル、さらに、スルホン化ナフタ
【0047】
レン及びナフタレン誘導体とホルムアルデヒドの縮合物 30
ACCd遺伝子を発現可能な状態で有するシュードモナス属
、ナフタレン又はナフタレンスルホン酸とフェノール及
細菌は、圃場等の土壌にも生息し得ることから、本発明
びホルムアルデヒドの縮合物、ポリオキシエチレンオク
の微生物農薬の有効成分は、化学農薬等の人工成分では
チルフェニルエーテル、エトキシル化イソオクチルフェ
なく、天然成分を利用することができる。そのため、本
ノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、アル
発明の微生物農薬は、担体の選択によっては、環境への
キルフェニルポリグリコールエーテル、トリブチルフェ
影響が極めて低いことから、有機農業においても抵抗な
ニルポリグリコールエーテル、トリステアリルフェニル
く使用できる。
ポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリエーテ
【0048】
ルアルコール、アルコール及び脂肪アルコール/エチレ
2.植物品質低下抑制及び虫害抵抗性付与方法
ンオキシドの縮合物、エトキシル化ヒマシ油、ポリオキ
2−1.概要
シエチレンアルキルエーテル、エトキシル化ポリオキシ 40
本発明の第2の態様は、植物の品質低下抑制及び虫害抵
プロピレン、ラウリルアルコールポリグリコールエーテ
抗性付与方法である。本発明の方法は、第1態様に記載
ルアセタール、ソルビトールエステル、リグノ亜硫酸廃
の微生物農薬を目的の植物に施用して、微生物農薬の有
液、及びメチルセルロースが挙げられる。
効成分であるシュードモナス属細菌を植物に感染させる
【0043】
ことで達成し得る。この方法によって、目的の植物に虫
本発明の微生物農薬は、前記農薬製剤上許容可能な担体
害抵抗性を付与するとともに、植物が生成するエチレン
を1以上包含することが可能である。また、この他に、
により生じる品質の低下を抑制することができる。
シュードモナス属細菌の生存性、植物感染性及びACCd遺
【0049】
伝子の発現に影響しない範囲において、他の薬理作用を
2−2.方法
有する有効成分、すなわち、殺虫剤、除草剤、肥料(例
本発明の方法は、必須の工程として施用工程を含む。
えば、尿素、硝酸アンモニウム、過リン酸塩)を包含す 50
本明細書において「施用工程」とは、第1態様の微生物
( 9 )
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農薬を目的の植物に施用する工程をいう。本工程におい
JAS認証有機圃場(オーガニックファームつくばの風、
て微生物農薬中の有効成分であるシュードモナス属細菌
つくば市手子生)で生産したニンジン根部1本を70%エ
を植物に感染させ、植物体内で植物内生菌として定着す
タノールに1分間、次に1%次亜塩素酸(和光純薬)に2分
ることによって微生物農薬の効果を発揮し得る。微生物
間、浸漬して表面殺菌を行った。続いて、乾熱滅菌した
農薬を植物に施用する方法は、微生物農薬中の有効成分
ステンレスナイフでニンジンの表皮を除去し、このナイ
であるシュードモナス属細菌を目的の植物に接種するこ
フを新たに火炎滅菌後、ニンジンを輪切りにした。輪切
とができる方法であれば特に制限はしない。シュードモ
りにしたニンジンの切断面を選択寒天培地に30分載置し
ナス属細菌は、植物に対する感染・定着性が高く、また
た後、該ニンジンを取り除き、28℃にて暗所で培養した
生育速度が速いことから接種が容易である。したがって
。前記選択寒天培地には、DF培地をベースとして、NH4
、例えば、本発明の微生物農薬を、目的の植物の土壌や 10
の代わりに唯一のN源としてACCを添加した培地を用いた
培地に混入する方法や、目的の植物に散布(噴霧散布を
(Penrose D.M., et al., 2003, Physiologia Plantaru
含む)、塗布、浸漬又は潅注等により施用する方法が挙
m 118:10-15)。選択培地の具体的な組成は、1L(pH7.2
げられる。ここでいう「土壌」は、植物の生育が可能な
)あたり、KH2 PO4 4.0g(和光純薬)、Na2 HPO4 6.0g(和
土壌であれば特に制限はしない。通常は、適当な養分(
光純薬)、MgSO4 ・7H2 O 0.2g(和光純薬)、Glucose 2.
窒素、リン、カリウム等)を含み、適切なpH値を有する
0g(関東化学)、Gluconic acid 2.0g(和光純薬)、Ci
栽植用土壌が利用される。また、「培地」は、人工的に
tric acid 2.0g(関東化学)、FeSO4 ・7H2 O 1mg(和光
調製した目的の植物の栽植用培地をいう。寒天培地のよ
純薬)、H3 BO3 10μg(和光純薬)、MnSO4 ・H2 O 11.19μ
うな固体培地であってもよいし、液体培地であってもよ
g(関東化学)、ZnSO4 ・7H2 O 124.6μg(和光純薬)、C
い。培地の例として、培地の組成は、当該分野で公知の
uSO4 ・5H2 O 78.22μg(和光純薬)、MoO3 10μg(和光純
培地組成でよい。適用作物の種類等によって適宜選択す 20
薬)、及びACC 300mg(東京化成)とした。選択寒天培
ることができる。
地用として、選択培地に終濃度1.5%となるよう寒天(
【0050】
和光純薬)を添加した。
本発明の方法において、第1態様の微生物農薬の施用量
【0056】
は、剤形、施用方法、施用植物の種類等によって異なる
培養後の選択寒天培地において、輪切りのニンジンを載
ことから、条件によって適宜調整すればよい。一例とし
置した際に、表皮よりも内側、つまり断面部分に相当す
2
+
て、微生物農薬が液剤の場合には、土壌1m あたり、10L
る部位に発生したコロニーを植物内生菌として採取し、
∼100L、好ましくは40L∼60Lで使用すればよい。
新たな選択寒天培地上に植え継ぎ、植物内生菌の純化を
【0051】
3回行った。純化後に得られた菌株について、ACCd遺伝
微生物農薬の施用回数は、制限はしない。通常は、1回
子として報告されているプライマーセット(F1936:配
で足りるが、必要に応じて複数回施用してもよい。
30
列番号1;F1938:配列番号2)(Didier Blaha et al.
【0052】
, 2006, FEMS Micrbiol Ecol 56: 455-470)を用いてコ
施用工程後の植物は、通常の方法で栽培すればよい。有
ロニーPCRを実施し、acdS遺伝子(ACCd遺伝子)の有無
効成分であるシュードモナス属細菌の植物体内での定着
を確認した。具体的には、滅菌した爪楊枝を用いてコロ
と共に、その植物に虫害抵抗性と品質低下の抑制効果を
ニーから菌体を採取し、PCR反応液25μL(GoTaq Green
付与することができる。
master mix x2 (Promega) 12.5μL;25μM Upstream pr
【0053】
imer (F1936) 1.25μL;25μM Downstreamprimer (F193
2−3.効果
8) 1.25μL;滅菌水10μL)に懸濁した。PCR条件は、95
本発明の方法によれば、目的の植物に第1態様の微生物
℃で2分間熱処理後、95℃で0.5分間、続いて53℃で0.5
農薬を施用することで、その植物に虫害抵抗性を付与し
、また農産物の品質低下を抑制することができる。
分間、72℃で0.5分間を35サイクル、その後72℃で5分間
40
の処理とした。PCR後、1%アガロースゲルを用いて増幅
【実施例】
産物を電気泳動した。
【0054】
【0057】
<実施例1:微生物農薬における有効成分としてのACCd
その結果、ACCd遺伝子で予想されるサイズのバンドが得
を有する植物内生菌の分離(1)>
られ、ニンジンから得られた植物内生菌がACCd遺伝子を
(目的)
持つことが示唆された。
本発明の有効成分として使用する、エチレン生成阻害能
【0058】
、すなわちACCdを有する植物内生細菌を宿主植物から分
次に、分離した菌を同定するために、DNeasy Blood&Tis
離する。
sue kit(QIAGEN)を用いて菌体よりDNAを抽出した。抽出
【0055】
したDNAを鋳型として、プライマーセット(10F:配列番
(方法及び結果)
50
号3;1540R:配列番号4)を用いてPCRにより16S rRNA
( 10 )
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遺伝子を増幅した。PCR条件は、95℃で3分間熱処理後、
【0063】
95℃で0.5分間、続いて55℃で0.5分間、72℃で1.5分間
トルエン処理した菌体液200μLを新しい1.5mLのチュー
を35サイクル、その後72℃で5分間の処理とした。増幅
ブに移し、20μLの0.5M ACCを添加して振とう後、30℃
産物は、1%アガロースゲルで電気泳動を行った後、約1.
で15分間保温静置した。その後、1mLの0.56M HClを添加
5k bpの増幅断片を確認した。High Pure PCT Product P
し、再度激しく振り混ぜ、16000gで5分間遠心した。上
urification Kit (Roche)を用いて増幅産物を精製し、
清1mLをとり、800μLの0.56M HClを添加、300μLの0.2
サイクルシーケンス反応により1515bpのDNA塩基配列を
% 2,4-ジニトロフェニルヒドラジン/2M HClを添加して
決定した。得られた塩基配列は、BLASTプログラムによ
、振とうした。その後30℃で30分間保温静置し、2mLの2
り既存の塩基配列との相同性を検索し同定した。
【0059】
M NaOHを添加した後、540nmの吸光度を測定して、α-ケ
10
ト酪酸を定量した。α-ケト酪酸の定量は、10mM α-ケ
その結果、P. oryzihabitansと99%の相同性を示す新規
ト酪酸/0.1M Tris-HCl緩衝液(pH8.5)既知量を用いて、
のシュードモナス属細菌(NITE P-01743)であることが
予め作成した検量線により行った。なお、ACC溶液を添
明らかとなった。この菌体をシュードモナス属細菌OFT2
加しないものを対照として差し引いた。また,トルエン
株と称し、本発明の微生物農薬の有効成分とした。
処理した菌体液100μLを用いてタンパク質量を測定し,
【0060】
タンパク質あたりの酵素活性を算出した。
<実施例2:シュードモナス属細菌OFT2株におけるACCd
【0064】
活性の検証>
(結果)
(目的)
DF-NH4 フリー培地を用いたときのα-ケト酪酸量は、24
実施例1で本発明の微生物農薬の有効成分として分離さ
1nmol/mg proteinであった。これにより、実施例1で本
れたシュードモナス属細菌OFT2株におけるACCd活性を検 20
発明の微生物農薬の有効成分として分離されたシュード
証した。
モナス属細菌OFT2株は、ACCd活性を有していることが立
【0061】
証された。
(方法)
【0065】
ACCdによるACC分解時に生じるα-ケト酪酸を比色定量す
<実施例3:微生物農薬施用植物におけるエチレンによ
ることによりACCd活性を測定した。3% TSB培地40mLにOF
る生育抑制の回避効果の検証(1)>
T2株を接種し、暗所28℃で培養した。3% TSB培地の組成
(目的)
+
T M
は1Lあたりtryptic soy broth(BD
)とした。続いて
本発明の微生物農薬における有効成分であるシュードモ
、4℃にて10000gで10分間の遠心分離によりOFT2株を集
ナス属細菌OFT2株を接種した植物が、エチレンによる生
+
菌し、10mLのDF-NH4 フリー培地で2回洗浄後、再度遠心
+
して菌体を7.5mLのDF培地(NH4 フリー)に再懸濁した
育抑制作用を回避し得ることを検証する。
30
+
【0066】
。DF-NH4 フリー培地は、Penrose D.M.ら(2003, 前述)
(方法)
の方法に従った。具体的な組成は、1L(pH7.2)あたり
微生物農薬を施用する植物としてリョクトウ(緑豆)を
、KH2 PO4 4.0g(和光純薬)、Na2 HPO4 6.0g(和光純薬)
用いた。リョクトウの胚軸は、エチレン存在下では伸長
、MgSO4 ・7H2 O 0.2g(和光純薬)、Glucose 2.0g(関東
が抑制されることが知られている。そこで、シュードモ
化学)、Gluconic acid 2.0g(和光純薬)、Citric aci
ナス属細菌OFT2株のACCd活性によって、施用植物のACC
d 2.0g(関東化学)、FeSO4 ・7H2 O 1mg(和光純薬)、H
からエチレンへの生成量を減少し、胚軸の伸長阻害が軽
3
BO3 10μg(和光純薬)、MnSO4 ・H2 O 11.19μg(関東化
減されるか否かを検証した。
学)、ZnSO4 ・7H2 O 124.6μg(和光純薬)、CuSO4 ・5H2
【0067】
O 78.22g(和光純薬)、及びMoO3 10g(和光純薬)とし
た。0.5M ACCを最終濃度3mMになるよう懸濁液に添加し
リョクトウ種子を70%エタノールに1分間、次に1%次亜
40
塩素酸(和光純薬)に2分間、浸漬して表面殺菌した後
、25℃にて200rpmで24時間振とう培養した後、4℃にて1
、1%寒天培地に播種し30℃にて24時間、暗所で培養し
0000gで10分間の遠心分離によりOFT2株を集菌した。集
、発芽させた。発芽のそろった個体を選択して、菌接種
菌した菌体を5mLの0.1M Tris-HCl緩衝液(pH7.6)に懸濁
用苗とした。
し、さらに遠心分離で集菌する洗浄操作を2回行った。
【0068】
【0062】
シュードモナス属細菌OFT2株を3% TSB(BD)液体培地で
次に、OFT2の菌体を1mLの0.1M Tris-HCl緩衝液(pH7.6)
28℃にて36時間培養した。遠心分離後、5%マンニトール
に懸濁し、1.5mLのミニチューブに移して16000gで5分間
(和光純薬)液で洗浄した。得られた菌体を5%マンニト
遠心し、上清を除去した。次いで0.1M Tris-HCl緩衝液(
ールで再懸濁してO.D.6 0 0 =0.4に調整し、その懸濁液を
pH8.5) 600μLに懸濁し、30μLのトルエンを添加後、vo
本発明の微生物農薬とした。この懸濁液を上記の菌接種
rtexを用いて30秒間激しく振とうした。
50
用苗に10分間接種した後、ACC寒天培地に移植し、これ
( 11 )
JP
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20
を試験区とした。500mL密閉容器内の0、2、10、及び25
に、各ポットのシソ株から上位葉、中位葉、及び下位葉
μMのACC(東京化成)を含む0.7%寒天培地に菌接種後のリ
の各2枚をランダムに選び、ハダニの個体数をルーペで
ョクトウ芽生え4個を移植し、暗所で28℃にて72時間栽
カウントした。また、定植60日後の出荷好適サイズに達
培した。対照区は、微生物非接種とし、各区についてト
した上位の完全展開葉の外観を撮影した。
リプリケート(3重)実験を行った。栽培後、リョクト
【0073】
ウの胚軸長を測定した。
(結果)
【0069】
図2にハダニ個体数の結果を、また図3に定植60日後の
(結果)
葉の外観を示す。シュードモナス属細菌OFT2株を接種し
図1に結果を示す。いずれのACC濃度の場合にも、シュ
た試験区は、非接種の対照区と比較してハダニの個体数
ードモナス属細菌OFT2株を接種した試験区のリョクトウ 10
が約1/10に減少していた。
では、対照区と比較して胚軸の伸長比率が高かった。こ
【0074】
の結果は、試験区では、エチレンの前駆物質であるACC
図3では、対照区(a)の葉上にはハダニによる食害痕
が、リョクトウに感染したシュードモナス属細菌OFT2株
(円内)が認められるのに対して、試験区(b)の葉上
によるACCd活性により分解され、エチレン生成量が減少
には食害痕がほとんど認められなかった。
した結果、リョクトウの胚軸長の抑制が回避されたこと
【0075】
を示唆している。
以上の結果から、シュードモナス属細菌OFT2株を接種し
【0070】
た植物が虫害抵抗性を獲得しており、また食害回避によ
<実施例4:微生物農薬を施用した植物の虫害抵抗性獲
り外観の品質を保持できることが立証された。
得の検証(1)>
【0076】
(目的)
20
<実施例5:微生物農薬の施用方法による虫害抵抗性付
本発明の微生物農薬における有効成分であるシュードモ
与効果の検証>
ナス属細菌OFT2株を接種した植物が、虫害抵抗性を獲得
(目的)
することについて検証する。
本発明の微生物農薬の施用方法による植物の虫害抵抗性
【0071】
効果獲得の差異について検証する。
(方法)
【0077】
微生物農薬を施用する植物としてシソを用いた。青ちり
(方法)
めんシソ(サカタのタネ)の種子を1%次亜塩素酸(和光
基本的な方法は実施例3に準じた。青ちりめんシソ(サ
純薬)に2分間、浸漬して表面殺菌した後、園芸培土(
カタのタネ)の種子を表面殺菌した後、園芸培土(げん
ナプラ養土Sタイプ[ヤンマー]:げんきくん果菜200[コ
きくん果菜200:ナプラ=2:1)に播種した。発芽後4葉時
ープケミカル]=2:1)に播種した。発芽後4葉時(播種 30
(播種より約30日後、根鉢を形成した時期)にセルトレ
より約30日後、根鉢を形成した時期)にセルトレー(口
ー(口径4cm、深さ5cm)に移植した。移植後の培土には
径4cm、深さ5cm)に移植した。移植後の培土には、げん
、げんきくん果菜200を用いた。
きくん果菜200を用いた。
【0078】
【0072】
微生物農薬の有効成分であるシュードモナス属細菌OFT2
微生物農薬の有効成分であるシュードモナス属細菌OFT2
株は、3% TSB液体培地に接種後、暗所にて28℃で36時間
株は、3% TSB液体培地に接種後、暗所にて28℃で36時間
培養した。培養後に遠心分離して集菌し、滅菌生理的食
培養した。培養後に遠心分離して集菌し、滅菌生理的食
塩水に懸濁した後、再度遠心分離した。0.1%の食塩水に
塩水に懸濁した後、再度遠心分離した。0.1%の食塩水に
再懸濁した。このときの懸濁液のO.D.6 0 0 =0.530であっ
再懸濁した。このときの懸濁液のO.D.6 0 0 =0.530であっ
た。
た。この懸濁液を本発明の微生物農薬として用いた。バ 40
【0079】
ットに前記懸濁液を3cmの深さまで入れ、シソセル苗を1
この懸濁液を本発明の微生物農薬として、浸漬法と噴霧
8時間浸漬し、この苗を試験区とした。シュードモナス
法の2通りの方法で青ちりめんシソに施用した。浸漬法
属細菌OFT2株非接種の対照区として、懸濁液に替えて0.
では、実施例3と同様にバットに前記懸濁液を3cmの深
1%の食塩水に同時間浸漬した苗を用いた。浸漬の翌朝、
さまで入れ、各シソセル苗を18時間浸漬した(浸漬区)
9号ビニールポットに一株ずつ定植して、ガラス室施設
。一方、噴霧法では、前記懸濁液を、ハンドスプレーを
内で栽培した。栽培期間中の施設内の温度条件設定は、
用いて3mL/株の液量で葉面に噴霧散布した(噴霧区)。
最低室温20℃、高温は30℃で、天窓・側窓は自動開閉と
また,浸漬法では無菌食塩水の噴霧を,噴霧法では無菌
した。この施設内で化学農薬を散布しない場合には、ハ
食塩水への浸漬を行った。対照区として、菌体を含まな
ダニは毎年側窓から侵入する等して自然発生し、宿主植
い0.1%食塩水に18時間浸漬し、さらに3mL/株の液量で葉
物に寄生して増殖することが知られている。定植53日後 50
面に噴霧した。施用の翌日に、シソセル苗を9号ビニー
( 12 )
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ルポットに一株ずつ定植して、各株の下位葉に、カンザ
生物農薬として用いた。試験区として、バットに前記懸
ワハダニの雌成虫10頭を置いた1.5cm×1.5cmのインゲン
濁液を3cmの深さまで入れ、移植後26日のセル苗を40時
初生葉断片を、ダブルクリップで固定し、外部からのカ
間浸漬した。対照区には、微生物農薬を施用しない苗を
ンザワハダニの侵入のない25℃の人工気象器(コイトト
0.3%の食塩水に同時間浸漬したものとした。各区につい
ロン)で栽培した。各ポットは水を張ったトレイに入れ
てクワドルプリケート(4重)実験を行った。
、株間のハダニ移動を防止した。定植21日後に、各ポッ
【0085】
トのシソ株の中位葉上のカンザワハダニの個体数をルー
処理翌日に園芸培土(げんきくん果菜200)3kgの入った
ペでカウントした。
径21cmのポットに一株ずつ定植して、実施例4と同じハ
【0080】
(結果)
ダニが外部から侵入し、自然発生するガラス室施設内で
10
栽培した。
図4に結果を示す。対照区と比較して、本発明の微生物
【0086】
農薬を施用した浸漬区及び噴霧区ではいずれもハダニの
定植47日目に、各株にハダニが発生していることを確認
個体数増加が抑制された。この結果は、本発明の微生物
後、シソ株における可食部(各側枝の上位完全展開葉)
農薬は、有効成分であるシュードモナス属細菌を目的の
の対生する2枚の葉のうち一方を、5枚/ポット以上とな
植物に感染させるため接種することができれば、その施
るように採取した。ポット毎に1サンプルとして、採取
用方法にかかわらず虫害抵抗性を植物に付与できること
した可食部の葉を洗浄し、2∼3mm片に刻んだ後、新鮮時
が立証された。
重量2gに対して20mLの10%食塩水を添加して、室温で60
【0081】
分間振とうした。これを40メッシュのステンレスざるで
<実施例6:微生物農薬を施用した植物における品質低
濾し、得られた溶液を香気成分分析用試料液とした。
下の抑制効果の検証>
20
SPME用20mLガラスバイアル(スペルコ)に試料液の1mL
(目的)
と、内部標準として0.04%ベンジルアルコール(ring-13C
本発明の微生物農薬における有効成分であるシュードモ
、ケンブリッジアイソトープラボラトリー)10μLを添加
ナス属細菌OFT2株を接種した植物が品質低下の抑制効果
した。続いて、SPMEファイバー(DVB/CAR/PDMS,2cm;ス
を有することを検証する。
ペルコ)に試料液から発生する揮発性成分を35℃で10分
【0082】
間吸着させた。次に、GC/MSインジェクションポート内
(方法)
で吸着した揮発性成分を250℃で加熱脱着させ、分析カ
微生物農薬を施用する植物には、実施例4及び5と同様
ラム内にスプリットレスで5分間導入し、多成分の一斉
にシソを用いた。シソの品質としては、外観と香気成分
分析を行った。
が挙げられる。香気成分は、虫害等の外的ストレスによ
【0087】
り発生するエチレンの作用で変化し、その結果、シソの 30
分析条件は、カラムにDB-Wax 60m, id.0.25mm, df 0.25
品質が低下することが知られている。実施例4の結果か
μm(アジレント・テクノロジー)を用いて、昇温条件4
ら、本発明の微生物農薬を施用したシソは、虫害抵抗性
0℃(1分間)、rate 8℃/min、240℃(10分間)とした。
を獲得し、商品対象である葉の食害痕を低減させ、外観
分析装置には、多目的試料導入装置(MPS2;ゲステル)
を保持できることが判明した。そこで、本実施例では、
、及びガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)(Agile
本発明の微生物農薬を施用したシソ葉の香気成分が虫害
nt 6890/5973 GC/MSD;アジレント・テクノロジー)を用
により変化することなく、品質が保持されることを検証
いた。取得したデータの解析は、Chemstation (アジレ
した。
ント・テクノロジー)とAroma office (西川計測)を用い
【0083】
て行った。香気成分の同定は、ライブラリデータベース
基本的な方法は、実施例4に記載の方法に準じた。青ち
(NIST Mass Spectral Database, 米国国立標準技術研
りめんシソ(サカタのタネ)の種子表面を殺菌した後、園 40
究所、及びAroma office)の一致、及び入手可能なもの
芸培土(げんきくん果菜200:ナプラ=2:1)に播種し、
については市販の試薬を用いたコクロマトグラフィによ
発芽後4葉時にセルトレー(口径4cm、深さ5cm)に移植
って行った。サンプル間の成分量の比較はChemstation
した。移植後の培土には、げんきくん果菜200を用いた
により成分毎に特異的な質量数と保持時間(RI)を設定
。
し、条件に一致するピークについて面積を積分し、内部
【0084】
標準
シュードモナス属細菌OFT2株は、3% TSB液体培地に接種
m/z=114)で除した数値を用いた。
後、暗所にて28℃で36時間培養した。培養後に遠心分離
【0088】
して集菌し、滅菌生理的食塩水に懸濁した後、再度遠心
(結果)
分離した。0.3%の食塩水に再懸濁した。このときの懸濁
図5A及びBに結果を示す。Aは青臭い臭気成分の濃度比
液のO.D.6 0 0 =0.782であった。この懸濁液を本発明の微 50
を、Bはシソ特有の芳香成分の濃度比を示す。青臭い臭
1 3
C標識ベンジルアルコールのピーク面積値(RI、
( 13 )
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気成分は、ヒトが嫌悪感又は不快感を感じる臭いであり
培し、4週間後にサイズの揃った上位葉を採取した。
、一般に虫害等の外的ストレスを受けた植物から発生す
【0095】
るエチレン等の作用で増加する。この成分が増加すると
産卵数の計測には、リーフディスク法を用いた。採取し
、通常、商品としての品質は低下する。一方、Bに挙げ
た葉を1辺約1.5cmの正方形に切断し、その葉片を蒸留水
た芳香成分は、健康なシソ葉が有する香気成分であり、
で満たしたシャーレ内の脱脂綿上に設置した。この1枚
この成分が保持されているほど品質は高いとされる。
の葉片上にナミハダニ又はカンザワハダニの雌成虫を1
【0089】
個体置き、翌日にそれぞれの産卵数を計数した。
図5Aに挙げた青臭い臭気成分である、1-ヘキサノール
【0096】
、(Z)-3-ヘキセン-1-オール、3-オクタノール、(E)-2ヘキセン-1-オールは、いずれも対照区よりも試験区で
(結果)
10
図6にハグラウリにおける各ハダニの産卵数の結果を、
濃度比が低く、本発明の微生物農薬を施用した植物は、
また図7にナスにおける各ハダニの産卵数の結果を、そ
ハダニが定着しても青臭い臭気成分の発生を抑制できる
れぞれ示す。ハグラウリ及びナスのいずれにおいても、
ことが明らかとなった。
シュードモナス属細菌OFT2株を接種した試験区(OFT2)
【0090】
では対照区(非接種)と比較して両ハダニ共に産卵数が
一方、図5Bに挙げた芳香成分であるリナロール、ペリ
減少した。産卵数の抑制は、後代のハダニの発生を抑制
ルアルデヒド、ゲラニオール、ネロールは、逆に対照区
し、それによって虫害を防止して、植物の外観の品質を
よりも試験区で濃度比が高かった。これは、対照区では
保持できる。
ハダニによる虫害の外的ストレスやそれに基づくエチレ
【0097】
ンの発生で芳香成分が減少したのに対して、本発明の微
以上の結果から、微生物農薬の有効成分であるシュード
生物農薬を施用した植物は、ハダニが定着しても芳香成 20
モナス属細菌OFT2株は、シソ科植物以外の植物にも虫害
分が保持され、シソの品質が保持できることを示唆して
抵抗性を付与でき、また農業害虫の種類も問わないこと
いる。
が立証された。
【0091】
【0098】
以上の結果は、本発明の微生物農薬を施用した植物が、
<実施例8:微生物農薬における有効成分としてのACCd
対照区と比較してハダニによる加害後も青臭い臭気成分
を有する植物内生菌の分離(2)>
が増加することなく、シソ葉の特有の芳香成分を保持で
(目的)
きることが明らかになった。
OFT2株以外のACCdを有する新たな植物内生細菌を植物か
【0092】
ら分離する。
<実施例7:微生物農薬を施用した植物の虫害抵抗性獲
(方法及び結果)
得の検証(2)>
30
JAS認証有機圃場(三重県津市)で生産したシシトウ可
(目的)
食部1本からACCdを有する新たな植物内生菌を分離した
実施例4∼6は、シソ科のシソを用いた実験結果であっ
。基本的な分離方法は実施例1と同じであることから、
た。そこで、本発明の微生物農薬がシソ科以外の植物に
重複する説明は省略し、ここでは実施例1とは異なる点
も虫害抵抗性を付与できることを検証する。
についてのみ説明する。
【0093】
【0099】
(方法)
前記シシトウから得られたACCd遺伝子を持つ植物内生菌
微生物農薬の有効成分であるシュードモナス属細菌には
OFT2株を、微生物農薬を施用する植物には、ウリ科のハ
を同定するために、中川及び川崎(中川恭好 & 川崎浩
子, 2001, 日本放線菌学会編, 放線菌の分類と同定, 日
グラウリ(トーホク:青はぐら)及びナス科のナス(サ
本学会事務センター, 遺伝子解析法16S rRNA遺伝子の
カタのタネ:中長なす)を用いた。また、虫害抵抗性は 40
塩基配列決定法, pp88-117)に記載の方法に基づいて16
、ハダニの産卵数で計測した。
S rRNA遺伝子の塩基配列を決定した。BigDye terminato
【0094】
r v3.1 Cycle Sequencing Kit (Life technoligies)で
基本的な方法は、実施例4に記載の方法に準じた。以下
サイクルシーケンス反応を行い、ABIPRISM3130x1 Gene
、実施例4と異なる点を中心に説明する。各種子を表面
tic Analyzer System及びChromas Pro1.7を用いてDNA塩
殺菌した後、園芸培土(げんきくん果菜200)を入れた
基配列を決定した。得られた塩基配列情報に基づいて、
セルトレー(口径4cm、深さ5cm)に播種した。ガラス室
アポロン3.0(データベース アポロンCB-BA10.0)及び
施設内で栽培し、12日後にシソと同様に調製したOFT2株
国際塩基配列データベース(GenBank/DDBJ/EMBL)によ
を接種した。この時のO.D.6 0 0 =0.442であった。接種翌
り既存の塩基配列との相同性を検索し同定した。
日に園芸培土300g(げんきくん果菜200)の入った径10.
【0100】
5cmのポットに一株ずつ定植して、ガラス室施設内で栽
50
その結果、既知シュードモナス属細菌には相同性の高い
( 14 )
JP
25
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26
菌が見いだせず、新種のシュードモナス属細菌であると
基本的な方法は、実施例4に記載の方法に準じた。また
考えられた。この菌体をシュードモナス属細菌RH7株(N
、リーフディスク法については、実施例7に記載の方法
ITE P-01985)と称し、OFT2株と共に本発明の微生物農
に準じた。以下、実施例4と異なる点を中心に説明する
薬の有効成分とした。
。
【0101】
【0108】
<実施例9:シュードモナス属細菌RH7株におけるACCd
微生物農薬を施用する植物としてシソを用いた。青ちり
活性の検証>
めんシソ(サカタのタネ)の種子を1%次亜塩素酸(和光純
(目的)
薬)に2分間、浸漬して表面殺菌した後、園芸培土(げ
実施例1で本発明の微生物農薬の有効成分として分離さ
れたシュードモナス属細菌RH7株におけるACCd活性を検
んきくんN100)に播種した。発芽後10日目にセルトレー
10
(口径19cm、深さ43cm)に移植した。移植後の培土には
証した。
、げんきくんN100を用いた。
【0102】
【0109】
(方法)
シュードモナス属細菌RH7株は、3% TSB液体培地に接種
方法は、実施例2に記載の方法に準じた。
後、暗所にて28℃で3日間培養した。培養後に遠心分離
(結果)
して集菌し、滅菌生理的食塩水に懸濁した後、再度遠心
1時間あたりのα-ケト酪酸量は、11.2±0.1μmol/mgで
分離した。
あった。これにより、実施例8で分離されたシュードモ
0.2%の食塩水に再懸濁した。このときの懸濁液のO.D.6 0
ナス属細菌RH7株も、OFT2株と同様ACCd活性を有してい
0
ることが立証された。
して用いた。バットに前記懸濁液を2cmの深さまで入れ
【0103】
20
=0.40であった。この懸濁液を本発明の微生物農薬と
、移植後26日のセル苗を18時間浸漬し、この苗を試験区
<実施例10:微生物農薬施用植物におけるエチレンに
とした。RH7株非接種の対照区として、懸濁液に替えて0
よる生育抑制の回避効果の検証(2)>
.2%の食塩水に同時間浸漬した苗を用いた。
(目的)
【0110】
RH7株を接種した植物が、エチレンによる生育抑制作用
浸漬の翌日に園芸培土300g(げんきくん果菜200,N100
を回避し得ることを検証する。
を重量各150g)の入った径10.5cmのポットに一株ずつ定
【0104】
植して、ガラス室施設内で栽培した。定植4週間後に、
(方法)
上記と同様に調製した微生物農薬を3mLずつ各株の根元
基本的な方法は、実施例3に記載の方法に準じた。寒天
に滴下し、追加接種とした。追加接種の4週間後にサイ
培地におけるACCの濃度は、0、2、及び10μMとした。
ズの揃った上位葉を採取して、リーフディスク法を用い
【0105】
30
てナミハダニ及びカンザワハダニの産卵数を計数した。
(結果)
【0111】
図8に結果を示す。いずれのACC濃度の場合にも、シュ
(結果)
ードモナス属細菌RH7株を接種した試験区のリョクトウ
図9に各ハダニの産卵数の結果を示す。シュードモナス
では、対照区(非接種)と比較して胚軸長が大きかった
属細菌RH7株を接種した試験区(RH7)では、対照区(非
。この結果は、試験区では、OFT2株と同様に、エチレン
接種)と比較して、ナミハダニで1/10以下に、またカン
の前駆物質であるACCが、RH7株によるACCd活性により分
ザワハダニで約1/3に減少した。この結果から、シュー
解され、エチレン生成量が減少した結果、リョクトウの
ドモナス属細菌RH7株も植物に虫害抵抗性を付与できる
胚軸長の抑制が回避されたことを示唆している。
ことが立証された。実施例10及び11の結果は、ACCd
【0106】
遺伝子を発現可能な状態で有するシュードモナス属(Ps
<実施例11:微生物農薬を施用した植物の虫害抵抗性 40
eudomonas)細菌であれば、いかなる菌種であっても同
獲得の検証(3)>
様の虫害抵抗性及び品質低下抑制を植物に付与できるこ
(目的)
とを示唆している。
シュードモナス属細菌RH7株を接種した植物が、虫害抵
【受託番号】
抗性を獲得することについてリーフディスク法を用いて
【0112】
検証する。
受託番号:NITE P-01743
【0107】
受託番号:NITE P-01985
(方法)
( 15 )
【図1】
JP
【図5A】
【図5B】
【図2】
【図6】
【図3】
【図7】
【図4】
2015-166344
A
2015.9.24
( 16 )
【図8】
JP
【図9】
2015-166344
A
2015.9.24
( 17 )
【配列表】
2015166344000001.app
JP
2015-166344
A
2015.9.24
( 18 )
JP
2015-166344
A
2015.9.24
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(72)発明者
大脇
良成
茨城県つくば市観音台三丁目1番地1
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
中央農業
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
中央農業
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
中央農業
総合研究センター内
(72)発明者
日本
典秀
茨城県つくば市観音台三丁目1番地1
総合研究センター内
(72)発明者
塔野岡
純子
茨城県つくば市観音台三丁目1番地1
総合研究センター内
Fターム(参考) 2B030 AA02
AB04
AD04
AD16
CA28
4B024 AA05
AA08
BA79
CA01
DA09
EA04
GA11
4B065 AA41X AA41Y AB01
BA02
BD50
CA41
CA53
4H011 AB03
BB21
BC18
DA15
DC05
AC06
BA01
DD03