野辺山の野菜の収穫から出荷まで ・ 朝4:00 レタスの収穫開始 (早い農家は2:00ごろから始めるところもある) ・ 野菜の収穫はすべて手作業。アルバイトを含めて4~5人で早朝から 作業。 (日が当たるとレタスの葉がしおれてしまう。良質の野菜を収穫 するために早くから作業。9 月に入ると、霜が降りる日があり、そのと きは様子を見ながら、霜がとけてレタスの状態がよくなってから収穫。 農協の指導員が畑を回って、指示を出す。) ・ 10: 10:00までに午前中の分を集荷場へ運ぶ。 00 集荷場に運ばれてきたレタスは、真空予冷して鮮度を保てるように する。 ・ 12: 12:00までに、長野県全体の収穫量が把握され、全国の市場の 00 需要量などから、どこへどのくらい送るか決定され、出荷される。 全国に安定的に作物を届ける仕組みが整っている。 ・ 四国へは 四国へは、 へは、午後の 午後の便。 トラックにより 10 時間ほどで到着し、翌日店 頭に並ぶ。現在は、市場を通さず、スーパーと直接契約することも多く なっている。 ・ 九州へは 九州へは、 へは、朝 8 時ごろに出荷 ごろに出荷。 出荷。 トラックで運ばれ、翌日店頭に並ぶ。 (長崎・佐賀によく出荷。遠くは沖縄まで) 畑のひみつ <白マルチ> マルチ> ・ ポリエチレン製で、燃やしても有害ではない。水と炭酸ガスに分解 される。 ・ 葉物野菜にとって、大敵は雨で土が跳ね返って葉につくこと。土の 中には細菌やカビの原因が含まれているので、葉につくと作物を腐 らせる。 ・ 雨が数日続くと、葉物野菜が全滅することもあった。 ・ 雨が降っても野菜を守る方法として、マルチを張ることが考え出された。 ・ 白色のマルチを使うのは、土の表面温度を上げない様にするため。黒いマルチを使うと土の表面 温度が50~60度になり、葉が腐ってしまう。土の温度が上がりやすい夏に生育や収穫時期が かかる野菜を育てるときは白マルチを使う。葉を腐らせず、葉を大きくして大きな玉のレタス、 キャベツ、白菜ができる。 ・ 白い色は葉物野菜の大敵であるアブラムシがつかないという効果もある。 (他に銀色のマルチもある。熱に比較的つよいキャベツの畑で使われる。) <レタス畑 レタス畑の黄色い 黄色い札> ・ ハエと害虫よけ。ハエや害虫は、黄色い色によってくるという習性があるので、黄色い札をとこ ろどころに立てる。札は、とりもちのような粘着質になっていて、虫を捕まえる。最近はあまり つかわれなくなった。 レタス畑 ・ レタスは、株間 28cm 畝間 45cm 白菜は 株間 45~50cm 畝 50cm ・ レタスは2期作を行うことが多い。 ・ 連作障害を避けるため、レタス、白菜、牧草などをローテーションで育てる。 ・ 最近は肥料などが発達し、土質改良ができるので、連作障害の心配はなくなってきている。 28cm 45cm 2作目は、1作目の株と株の間に穴をあけて植える。 <水やり・ やり・農薬散布> 農薬散布> ・ 川の水をポンプ等で引き上げた水汲み場が何箇所かあり、そこから 水をタンクに積んで畑に撒く。スプリンクラーを備えた畑もある。 ・ 野辺山は高地なので、夜露が降りる。普段は雨と夜露のおかげで、 水やりはしなくても育つ。今年は雨が降らなかったので、何度が水 を撒く必要があった。 ・ 農薬は収穫までに4~5回撒く。日本の農薬は人体にほとんど影響はない。 ・ 農薬を撒いても、夜露と朝露で流されるので、中の葉っぱもそのまま食べられる。 ・ 出荷の 1 週間前は、農薬は撒かない。出荷のときは残留農薬の検査もある。 野辺山の野菜畑(吉沢としいちさんの畑) ※ トラクターの道 トラクターの道 約3m 80~100m 約25m つまり、野菜畑は水や農薬をまくことを考えて畝がつくられている。 農薬・水まきノズル 10~13mくらい伸びる 農家の現状と苦労 <農家の 農家の工夫> 工夫> ・ 酪農農家と協力して野菜を栽培している農家が多い。連作障害を防ぐため、畑に家畜飼料用のトウ モロコシや牧草を植え、酪農家に納入する。農家は畑の堆肥がほしいので、酪農家が家畜の糞を利用 して堆肥をつくり、野菜農家に渡す。ギブ&テイク! ・ 連絡障害を防ぐ作物としての麦は家畜用が多い。土を消毒する効果のある麦を植えている。 ・ 牧草も様々な種類があり、土に良いものを植えるようにしている。 <野菜作りの 野菜作りの現状 りの現状> 現状> ・ レタスは植えてから約45日で収穫できる。6月に植えると55日。 8月は40日。9月は45日 ・ 一日約800箱、多いときは1300箱(一軒で) ・ レタスは一箱に8個×2段 計16個。白菜は大きさで箱が分かれる。 ・ 7月は最盛期で出荷調整をして500円~600円 ・ 9月は白菜1箱1300円くらい。レタスは1000円 ※無人野菜売り場などでは1玉100円 ・ 白菜は、効率のよい野菜。よい収入になる。 ・ 冷涼な気候を生かして、夏に他の地域では育ちにくい高原野菜を出荷する。 ・ 高いので使えるかぎり使う。みんな個人でトラクターを所有している。 ・ 熊本のキャベツの出来が悪いと、九州では野辺山のキャベツの値が上がるといわれている。 <野辺山の 野辺山の野菜カレンダー 野菜カレンダー> カレンダー> 1月 白菜 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10 月 11 月 12 月 種まき 植え付け・肥料やり 収穫 レタス (50 日) キャベツ (80 日) <トラクター> トラクター> ・ トラクターはアメリカ製を使っている農家が多い。耐久性や馬力に優れている。 ・ トラクター前の部分で約1100万円。後ろ(荷台や散布用)で400万円。計1500万円。 <農家の 農家の苦労> 苦労> ・ 野菜の値段は約30年間変わっていないが、育てるのに必要な肥料や石油代などいろいろな資材は 値上がり。経済的に豊かな農家は少ない。 ・ 子どもに「跡取りになれ」と、言えない経済状況の農家が多い。 ・ 昔に比べて、種蒔き(育苗)から収穫までの期間が長くなっている。 ・ 秋は土壌づくりや暗渠の整備。冬は育苗。昔は夏が終わったら仕事は終わりという農家が多かった。 野辺山の野菜作り <開拓の 開拓の歴史> 歴史> ・ 野辺山周辺は、戦前は土地は軍の持ち物で、軍事演習場だった。特攻 隊のグライダー演習場でもあった。 (記念碑あり) ・ 戦後、食料不足の時、政府は国有地の払い下げを始めた。その時、引 揚者を開拓団として野辺山に入植させた。 (約200家族)現在でも約8 0軒が農家を営んでいる。 ・ 開拓当時の野辺山は、一面の荒れ地で、作物を育てる状態ではなかっ た。開拓団の人たちは、石をのけ、林を切り開いて畑を作った。高地で 冬の寒さは厳しく、開拓は容易ではなかった。 ・ 野辺山地区の農家は、 「集落を形成していない」という特色がある。 ・ 開拓の過程で、黒岩さんという人が野辺山の農業の基礎をつくった。 一軒当たり、農業で生計を立てるために必要な土地の広さを試算し、政 府にそれだけの土地を農家に与えるよう要求。 一軒当たり8ha与えられることが認められ、みんなに平等に土地を分 けていった。その際、家屋を建てる場所も指導した。畑の近くに家を建てること。すぐに作業に出ら れるし、収穫後の処理もすぐできるところ に建てるよう、指導した。だから、野辺山の農家は家を囲むように畑が ある。 (最近は、畑を借りたり、交換したり、酪農と兼業したりしている 農家も多いため、この限りではない。) <気候を 気候を生かした野菜作 かした野菜作り 野菜作り> ・ 8~9月の高原野菜は野辺山産が出荷量全国一位。レタスはシェア15%、白菜は20% ・ 9月下旬ころから、最低気温が6℃くらいになり、土の中の細菌が動かなくなる。また、冬は真冬 日が100日、地下70cmくらいまで土が凍り、土の中の細菌もいなくなる。 ・ 4月上旬から中旬にかけて、畑の雪の溶け方を見て畑での作業が始まる。 ・ 「育苗センター」で暖房をつかって苗を育てておく。 ・ 4月下旬~5月上旬に苗を定植させる。
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