2015/2/25 産学連携による学生の主体性を引き出 す授業の取り組み ~Future Skills Project(FSP)研究会 産学協同PBL講座~ 東京薬科大学 生命科学部 高橋勇二 背景 I. 大学教育における問題点 ・学ぶことへの意欲が入学後に徐々に低下する学生が 散見される ・実験研究に強い興味を持っていながら、実験上のつま ずきで、研究をやり遂げることのできない学生が見受けられる II. 実社会における問題点 ・少しの失敗でも意欲を消失する社員が顕在化している ・就職3年以内離職率の増加している III.大学と企業等での共通の課題 ・意欲が高く、多少の失敗は乗り越えられ、力強さを備えた 学生を育成することが産学双方の緊急な課題として浮上 してきている 1 2015/2/25 解決への仮説 意欲が高い学生の育成 自ら行動する、自ら学ぶ、自律的に行動する、 自分をコントロールする、主体性を持つ、主体的に行動する 大学での学びが社会で役立つという認識を高める 失敗に強い学生の育成 失敗を経験として成長するという自分に対する自信をもつ 自分を客観化し、他者との間で自己を相対化する 失敗から学ぶという貪欲さと、学んだという実感や体験を積む 解決への実施案(プログラム要素) 能動的な学習、産学共同で 大学での学びが社会での活躍に繋がることを認識できる学習体験 大学での学びに期待感のある1年生前期で実施 自己の振り返りから、自己認識と自己成熟を促す グループ学習によるグループ活動力、リーダーシップ育成 コースデザイン 1 学習対象者、学習時期 • 東京薬科大学生命科学科の1年生前期 一般目標 • 実社会の課題から学ぶという学習体験を通じて、 大学での学びに目標を持つ。 • グループでの課題解決活動に主体的に参加し、 主体性と失敗体験から学ぶという力強さを身に つける。 行動目標 • 主体的な学びを習慣化する。 • 主体的な学びの環境を造りだし、仲間と共有する。 (主体的な学びの環境に居場所を見つける。) • グループで協力し課題を解決できる。 2 2015/2/25 コースデザイン 2 学習方略 • • • • • • 社会人参加 少人数討論 能動学習 失敗を活かすPDCAサイクル 自己省察 Future Skills Project 研究会が開発している講座*の導入 学習評価 • 振り返りシート:毎回 (定性評価・省察度合いを評価) • プレゼンテーション:2回 (企業人による評価、アイディアよ りもプロセスや論理性を評価) • 講義外学習時間(定量評価) • レポート課題:講義終了後(定性評価・省察度合いを評価) 「産学協同PBL講座」の実施概要 内容:FSP講座(Future Skills Project研究会が開発した講座)導入 対象者:東京薬科大学 生命科学部 応用生命科学科 1年生 (男子39名、女子30名、6から7人 X 10チーム) 授業期間:1年生前期 4月から6月、全14回(必修科目) 授業時間:毎週金曜日15:20~16:30の90分(変則設定あり) 協力企業:株式会社資生堂、アステラス製薬株式会社 ファシリテーター:外部講師1人 課題 • 資生堂:「あなたは、SEA BREEZEの担当者です。競合ブラン ドから首位を奪い、No1のポジションを盤石化するためのブ ランド育成戦略を提案しなさい。」 • アステラス製薬:「あなたはあるテラス製薬の社員でA地域を 担当する医療情報担当者です。A地域の医薬品売り上げ目 標を達成するための医療情報伝達戦略を考えなさい。」 3 2015/2/25 赤字の回は企業が参加 本プログラムはFuture Skills Project研究会により立案された。 階段教室で実施、車座になり討論 先輩社員の前で発表するという疑似体験 先輩社員と討論発表する疑似体験 優秀グループを表彰 4 2015/2/25 結果 出欠:全員が14回中12回以上出席した。 受講生の講義時間外の1週間当たりの学習時間 (hr) 平均 3.9 hr (個人学習 1.3 hr、グループ学習 2.6 hr) 最大 8.0 hr 最小 2.2 hr 振り返りシート • FSP講座で学んだことは、将来にとって大きなものになると思います。講師の「自 ら機会をつくり出し、機会によって自らを変えよ」という言葉が心に残っています。 • 今日で終わりかと思うとすごく寂しい。良い案が出せたのに、それをしっかり伝え 切れなかったことが悔しい。答えのない課題に対してグループで答えを出し、それ を相手に伝える。社会に出たら、とても重要なことだと思う。 • チームで働くことの難しさ、社会の厳しさ、「なぜ」と考えること、これらを4年間の 大学生活を通して、少しでも知ることが出来たらいいと思う。 • 中間発表に対する指摘が厳しかった。しかし、厳しいことを言われたけど、それを アドバイスとポジティブに考えて、最終発表までにこのアドバイスを完璧にしたいと 思う。 学生の認識度に関する事前および事後アンケート 述べられている根拠や理由と結論の間に、 飛躍がないか考えながら読む(聞く) 事前 5 34 事後 28 14 37 0% 20% 大変思う 40% まあ思う 0 13 60% あまり思わない 80% 12 事後 30 15 0% 20% 40% まあ思う 100% 24 60% 21 80% 全く思わない 1 36 10 19 0% 20% 大変思う 1 12 あまり思わない 5 全く思わない 37 大変思う 事前 事後 1 常に自分の意見を持ち、自分の意見が周り と違った場合でもはっきり発言するようにして いる 事前 いつも自信を持って発言し、行動している 5 31 40% まあ思う 60% あまり思わない 4 80% 100% 全く思わない 社会人と学生とで、職業に対する責任感や 考え方がどのように違うかを理解している 事前 14 事後 36 19 17 38 0 4 2 100% 0% 20% 大変思う 40% まあ思う 60% あまり思わない 80% 100% 全く思わない 5 2015/2/25 まとめ 大学と企業等に共通に認められる教育あるいは人材育成上の問 題点として顕在化している主体性および意欲の低下という問題点を 解決するため産学共同PBL授業を1年生前期に導入した。 その結果、以下の傾向が認められた。 1. 主体性自立性の良い指標と考えられている講義以外学習 時間が長い傾向が認められた。 2. 大学の学びに、自主性、主体性、積極性が必要であるとい う認識が深まった。 3. 社会での活躍を支える基礎学力、および、他者と自己理解 に基づく論理的会話術の必要性に対する認識が深まった。 4. 講義終了6ヶ月後で、Rosenbergの自尊心尺度の低下傾向 が女子に認められた。 5. 今後、さらに定量的な評価を継続する必要がある。 著作権の都合で掲載しておりません 日本経済新聞 2014年2月6日 6
© Copyright 2024 ExpyDoc