縦隔気腫・皮下気腫

縦隔気腫、皮下気腫
呼吸器外科 伊藤 謙作
原 因
喘息患者の0.2%に発生する
縦隔気腫
肺胞の破裂 肺炎、異物吸引、喘息、怒責、陽圧換気
気管、主気管支、食道の損傷 特発性食道破裂、内視鏡検査、外傷
頸部開放創 気管切開、甲状腺手術、歯科治療
タービンによる強制送気
胸壁皮下気腫
貫通性 外傷などで胸壁が開放
非貫通性 肋骨骨折による肺損傷 開胸手術後
壁側胸膜の損傷部分から空気が漏れ出す
外傷性の縦隔気腫・皮下気腫
 胸壁損傷:肋骨骨折、胸骨骨折
シートベルト外傷
 頸部気管損傷:ハンドルによる打撲、開放性気管損傷
シートベルト非装着
空気の出入り=sucking wound
 胸郭内気管損傷:気管内圧上昇、急制動⇒気管支牽引
声帯が閉じていると起こる
80%が気管分岐部
症例1:肺手術1ヵ月後に発症した皮下気腫
開胸肋間
症例2:肺手術1ヵ月後に発症した皮下気腫
ドレーン刺入痕
症例3:緊張性気胸脱気直後に発症した皮下気腫
ドレーン刺入痕
脱気前
脱気後
症 状
皮下気腫
握雪感、疼痛⇒頭部頸部に進展すると鼻声、複視など
縦隔気腫
胸痛、呼吸困難感
原疾患によるものが多い
頸部、胸壁の皮下気腫
90%以上に見られる
縦隔内圧の上昇⇒静脈の還流不全(緊張性縦隔気腫)
仰臥位で心音の減弱(前屈位で心音回復)
新生児の人工呼吸に頻発
Hamman症候(心拍動に同期する捻髪音)
ごくまれに気脊柱症
どちらも気胸を合併しやすく、気胸の症状にも留意。
検査:胸写、CTが有用
胸写
縦隔の拡大、縦隔・心臓辺縁の空気層、縦隔胸膜が持ち上げられて線状に。
側面像では胸骨後腔、大動脈弓周囲で空気を観察しやすい
1/3の症例では正面像だけで縦隔気腫が指摘できない
胸部CT 最も勧められる検査
血液検査
80%で好中球、CRPの軽度上昇を認める
高度炎症所見が見られた場合は食道穿孔を疑う
※Boerhaave症候群による縦隔気腫では致死率30-50%
治 療

気腫そのものはエアリークが持続しない限り数日で軽快する。

気胸合併例には胸腔ドレナージ

気管・食道損傷に起因するものは早期に外科治療

緊張性縦隔気腫の場合は胸骨上窩切開を加えドレーン留置

感染に対する抗生剤については一定の見解はない
Take-home message
バイタル安定、気腫が進行しなければ
放置で治る