平成 27 年度統計入門 I . 第 8 回「条件付確率・離散確率変数」 原 尚幸 . 新潟大・経済 http://www.econ.niigata-u.ac.jp/˜hara/stat1/ [email protected] H. Hara (Niigata U.) 条件付確率と離散確率変数 Jun 9, 2015 1 / 24 条件付確率 5 本中 2 本が「あたり」3 本が「はずれ」という くじを A と B の二人がくじを一回引く. 2 どちらも当たりを引く確率は . 5 B が先に「あたり」を引いたとしよう. そのとき A が 1 4 3 「はずれ」を引く確率は 4 「あたり」を引く確率は B が「あたり」を引いたという条件の下での 条件付確率という. H. Hara (Niigata U.) 条件付確率と離散確率変数 Jun 9, 2015 2 / 24 条件付確率 条件付確率 事象 B が起きたという条件の下で事象 A が起こる 確率のことを, 事象 B が与えられたときの事象 A の 条件付確率といい P (A | B) と書き P (A | B) = P (A ∩ B) P (B) . と定義する (P (B) 6= 0). Ω B 標本空間を B に制限したときの A の確率 H. Hara (Niigata U.) 条件付確率と離散確率変数 A Jun 9, 2015 3 / 24 条件付確率 条件付確率 事象 B が起きたという条件の下で事象 A が起こる 確率のことを, 事象 B が与えられたときの事象 A の 条件付確率といい P (A | B) と書き P (A | B) = P (A ∩ B) P (B) . と定義する (P (B) 6= 0). Ω B 標本空間を B に制限したときの A の確率 H. Hara (Niigata U.) 条件付確率と離散確率変数 A∩B A Jun 9, 2015 3 / 24 条件付確率 5 本中 2 本が「あたり」3 本が「はずれ」のくじ A : A が「あたり」, B : B が「あたり」 2 P (B) = 5 5 本から 2 本選ぶ選び方は 5 C2 = 10 なので P (A ∩ B) = 1 10 B が「あたり」を引いたという条件の下で A も「あたり」を引く条件付確率は P (A ∩ B) P (A | B) = = P (B) H. Hara (Niigata U.) 条件付確率と離散確率変数 1 10 2 5 = 1 4 Jun 9, 2015 4 / 24 条件付確率 さいころを 2 回振る. Ω = {(1, 1), . . . , (6, 6)} : 36 個の要素 A : 少なくとも 1 回は 4 以上 B : 2 回の出た目の和が 6 B = {(1, 5), (2, 4), (3, 3), (4, 2), (5, 1)} P (B) = 5/36 P (A ∩ B) = 4/36 P (A | B) は P (A | B) = H. Hara (Niigata U.) P (A ∩ B) 4 = P (B) 5 条件付確率と離散確率変数 Jun 9, 2015 5 / 24 乗法公式 乗法公式 条件付確率の定義 P (A | B) = P (A ∩ B) P (B) より P (A ∩ B) = P (A | B)P (B). これを乗法公式という. H. Hara (Niigata U.) 条件付確率と離散確率変数 . Jun 9, 2015 6 / 24 複数の事象の独立性 コインを 2 回投げる. A = {1 回目に表が出る } B = {2 回目に表が出る } 1 回目に表が出たからと言って, 2 回目に表が出やすくなるわけではない . A と B の起こり方は無関係. このようなとき, 事象 A と B は独立であると いう. H. Hara (Niigata U.) 条件付確率と離散確率変数 Jun 9, 2015 7 / 24 複数の事象の独立性 事象の独立性 P (A ∩ B) = P (A)P (B) . が成り立つとき, 事象 A, B は独立であるという. 2 回のコイント スで 2 回とも表が出る確率 . 1 1 1 P (A ∩ B) = P (A)P (B) = · = . 2 2 4 乗法公式から P (A ∩ B) = P (A | B)P (B) = P (A)P (B). H. Hara (Niigata U.) 条件付確率と離散確率変数 Jun 9, 2015 8 / 24 複数の事象の独立性 乗法公式から P (A ∩ B) = P (A | B)P (B) = P (A)P (B). これは P (A | B) = P (A) と等価. 条件付確率が条件によらない . ⇒ A と B の起こり方が無関係. ⇒ A と B が独立. H. Hara (Niigata U.) 条件付確率と離散確率変数 Jun 9, 2015 9 / 24 演習 1 演習 1 サイコロを 2 回振るという試行を考える 1 B = { 少なくとも 1 回は 6 が出る } という条件の 下で , A = { 目の和が 10 である } が起こる確率を 求めよ. 2 C = { 1 回目に 6 が出る } という条件の下で , A = { 目の和が 10 である } が起こる確率を求 めよ. . H. Hara (Niigata U.) 条件付確率と離散確率変数 Jun 9, 2015 10 / 24 解答例 1 B = {{1, 6}, . . . , {6, 6}, {6, 1}, {6, 2}, . . . , {6, 5}} B は 11 個の要素からなる Ω は 36 個の要素からなるので P (B) = 11/36. 一方, A ∩ B = {(4, 6), (6, 4)} なので , P (A ∩ B) = 2/36. 以上より条件付確率 P (A | B) は P (A ∩ B) P (A | B) = = P (B) H. Hara (Niigata U.) 条件付確率と離散確率変数 2 36 11 36 = 2 . 11 Jun 9, 2015 11 / 24 解答例 2 B = {{6, 1}, . . . , {6, 6}} より P (B) = 6/36. 一方, A ∩ B = {(6, 4)} なので , P (A ∩ B) = 1/36. 以上より条件付確率 P (A | B) は P (A ∩ B) P (A | B) = = P (B) H. Hara (Niigata U.) 条件付確率と離散確率変数 1 36 6 36 1 = . 6 Jun 9, 2015 12 / 24 確率変数 : 例 コイン投げ X : 出た目 表が出る事象 : {X = 1} 裏が出る事象 : {X = 0} X の取りうる値の全体は Ω = {0, 1} 1 P (X = 1) = P (X = 0) = 2 X のように, 確率的に変動する変数を確率変数と いう. H. Hara (Niigata U.) 条件付確率と離散確率変数 Jun 9, 2015 13 / 24 確率変数 確率変数 確率的に変動する X があって, 1 2 X のとりうる値の全体 Ω がわかっている, Ω の各標本点に確率が与えられている, をみたすとき, X を確率変数という. 実際に観測された値を確率変数 X の実現値と .いう . Ω を X の 値域 とも言う. . . . . H. Hara (Niigata U.) 条件付確率と離散確率変数 Jun 9, 2015 14 / 24 確率変数と実現値 コイン投げ X : 出た目 (確率変数) 投げたら表が出た : X = 1 「確率変数 X の実現値は 1 である」という. {X = 1} : 「確率変数 X の実現値が 1 」 という事象 H. Hara (Niigata U.) 条件付確率と離散確率変数 Jun 9, 2015 15 / 24 離散・連続確率変数 確率変数には大きく二つのタイプがある. X の標本空間が離散的である (とびとびの値をと る) とき, X を離散確率変数という. コイン投げ:Ω = {0, 1} サイコロ投げ:Ω = {1, . . . , 6} 就労の有無:Ω = { 就労している, 就労していない } X が連続の値を取るとき, X を連続確率変数と いう. GDP 為替レート 電力消費量 H. Hara (Niigata U.) 条件付確率と離散確率変数 Jun 9, 2015 16 / 24 離散確率変数 離散確率変数 X の標本空間が離散的である (とびとびの値をとる) と き, すなわち, Ω = {x1 , x2 , . . . , xK } . となるとき, X を離散確率変数という. Ω はとびとびの無限集合のこともある. Ω = {x1 , x2 , . . .} 非負の整数 Ω = {0, 1, . . .} H. Hara (Niigata U.) 条件付確率と離散確率変数 . Jun 9, 2015 17 / 24 離散確率分布 離散確率変数 X :確率的に変動する変数 Ω = {x1 , x2 , . . . , xK } Xは P (X = x1 ), . . . , P (X = xK ) という確率法則にしたがって実現値が定まる. この確率法則のことを離散確率分布という. pk = P (X = xk ), k = 1, . . . , K を確率関数という. 離散確率分布をひとつ定める ⇔ 確率関数をひとつ定める H. Hara (Niigata U.) 条件付確率と離散確率変数 Jun 9, 2015 18 / 24 離散確率分布:例 サイコロ投げ X : 出た目 Ω = {1, 2, . . . , 6} 確率関数 1 1 P (X = 1) = , . . . , P (X = 6) = 6 6 この確率法則がサイコロ投げの確率分布. H. Hara (Niigata U.) 条件付確率と離散確率変数 Jun 9, 2015 19 / 24 演習 2 演習 2 コイント スをして 表が出たら 1 点 裏が出たら 0 点 というゲームをする. X をコインを 4 回投げたときの合計得点をあらわす. . 確率変数としたとき, X の確率関数を求めよ. 標本空間 : Ω = {0, 1, 2, 3, 4} 確率関数 : p(a) = P (X = a), a = 0, 1, 2, 3, 4 H. Hara (Niigata U.) 条件付確率と離散確率変数 Jun 9, 2015 20 / 24 解答例 p(0) = P (X p(1) = P (X p(2) = P (X p(3) = P (X p(4) = P (X = 0) = 1/16 = 1) = 1/4 = 2) = 3/8 = 3) = 1/4 = 4) = 1/16 0.3 0.2 0.1 0 0 H. Hara (Niigata U.) 1 2 3 条件付確率と離散確率変数 4 Jun 9, 2015 21 / 24 確率関数の性質 定理 X を離散確率変数として, Ω = {x1 , . . . , xK } とする. 1 P (X = xk ) ≥ 0, k = 1, 2 . . . , K. K ∑ 2 P (X = xk ) = 1. . k=1 1 2 確率の非負性より明らか . 演習 3 ヒント :事象 {X = x1 }, . . . , {X = xK } は 互いに排反. . H. Hara (Niigata U.) 条件付確率と離散確率変数 Jun 9, 2015 22 / 24 解答例 X は x1 , . . . , xK のいずれかをとるので P ({X = x1 } ∪ · · · ∪ {X = xK }) = 1. {X = x1 }, . . . , {X = xK } は互いに排反なので , P ({X = x1 } ∪ · · · ∪ {X = xK }) = K ∑ P (X = xk ) = 1. k=1 H. Hara (Niigata U.) 条件付確率と離散確率変数 Jun 9, 2015 23 / 24 まとめ 登場した用語・概念 1 2 3 条件付確率・乗法公式・事象の独立性 確率変数・実現値・確率分布 離散確率変数・離散確率分布・確率関数 . . . . . H. Hara (Niigata U.) 条件付確率と離散確率変数 Jun 9, 2015 24 / 24
© Copyright 2024 ExpyDoc