Russell Global Markets Exploration 2015 年 3 月号 「モメンタム:順張りの銘柄選択を代表するスマート・ベータ」 Case No.74 ~ラッセル高効率ファクター指数で見たモメンタム株式の特性 「人は、自分が一旦信じた考えを修正するのに時間を要する」。「株式市場で新しい情報が得られた場合でも、投資 家は、従来の情報に基づく価値観を徐々にしか変更できない」。 「情報は瞬時に株価に反映される」とする効率的市場仮説とは相反する行動ファイナンス上の考え方で、好調な銘 柄をさらに買い増す順張りの「モメンタム戦略」が株式市場で有効に機能するとの主張の根拠となっています。 ラッセルはスマート・ベータ指数として「高効率ファクター指数シリーズ」を提供しており、「モメンタム」は同シリーズを 構成する 4 つのファクター指数の一角を占めています。今号の世界株式探検隊では、この指数を通して、グローバル 市場におけるモメンタム株式のポートフォリオ特性およびパフォーマンス特性を探ります。 (小原沢 則之) 調査結果(概要) 「モメンタム指数」は、ラッセル高効率ファクター指数シリーズを構成するファクター指数の一つで、年 2 回 の銘柄入替時における各銘柄の騰勢に応じてアクティブ・ウェイトを加減した代替加重指数です。 「モメンタム指数」の国別構成上位国の順位やセクター構成は、それぞれのセグメントの実績収益率格差の 影響を受け、親指数の構成との間に一定の相違が見られます。 「モメンタム指数」は、親指数に対して「成長かつダイナミック」寄りのスタイル・バイアスを持っています。 「モメンタム指数」は、過去 3 年以上の期間で親指数を上回るパフォーマンスを実現しています。 先進国・新興国共に、好況期に比較的高い超過収益率を挙げる傾向が見られました。 リターン/リスク比では「低ボラティリティ指数」、情報レシオでは「バリュー指数」との相性が最高です。 《ラッセル高効率モメンタム指数の概要》 騰勢の強い銘柄に比重をおいた代替加重指数 高効率モメンタム指数(以下、「モメンタム指数」また は「モメンタム」と表記)は、ラッセル高効率ファクター 指数シリーズを構成する指数の一つで、各銘柄の騰 勢に応じて構成銘柄の時価総額ウェイトにアクティブ・ ウェイトを加減させた代替加重指数です。 構成銘柄の「騰勢」は、年に 2 回の銘柄入替時にお ける過去 12 ヵ月のパフォーマンスから当月の分を除 いた 11 ヵ月の累積収益率を指標とした「モメンタム・ス コア」によって定義します。右図に見るように、その騰 勢が強い銘柄ほどアクティブ・ウェイトが高まりますの で、好ましい情報が市場で信認されるのに時間を要 するなど、順張りの銘柄選択が有効な市場環境の中 で有効に働くファクター指数となっています。 以下では、「先進国大型」および「新興国大型」市場 の「モメンタム指数」を例に、そのポートフォリオおよび パフォーマンスの特性を見ていきます。 親指数構成銘柄の モメンタム・スコアとアクティブ・ウェイト 1.0 0.8 アクティブ・ ウェイト(%) 0.6 0.4 0.2 0.0 モメンタム・ スコア -0.2 -0.4 -0.6 -0.8 -1.0 -1 -0.8 -0.6 -0.4 -0.2 ■お問い合わせ窓口 ラッセル・インベストメント株式会社 マーケティング&コミュニケーション部 TEL: 03-5411-3790 Russell Investments // 世界株式探検隊 / p1 Email: [email protected] 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 Russell Global Markets Exploration 2015 年 3 月号 《 モメンタム指数の構成比率上位 10 カ国》 ほぼ同様の顔ぶれながら、順位に若干の相違 右の表は、先進国および新興国の各大型「モメ ンタム指数」の国別構成比率上位 10 カ国を、そ れぞれの親指数と比較したものです。先進国で は上位 8 カ国まで、新興国では 7 カ国の顔ぶれ が共通しています。しかし、国別収益率格差の影 響を受け、順位には若干の相違が見られます。 1 月末時点で「モメンタム指数」のほうが比較的 ウェイトの大きかった国は、先進国では「日本 (3.3%ポイント)」、新興国では「インド(6.6%ポイ ント)」で、逆に「モメンタム指数」のほうが相対的 にウェイトの小さかった国は、先進国では「米国 (-3.6%ポイント)」、新興国では「韓国(-4.7%ポ イント)」、「中国(-4.4%ポイント)」でした。 構成比率上位 10カ国 (2015年1月末) 先進国 大型 テクノロジー ヘルスケア 米国 日本 英国 カナダ 54.9 10.8 5.8 4.6 中国 韓国 台湾 ブラジル 25.2 13.7 11.2 8.4 フランス 3.6 スイス 3.4 インド 8.3 カナダ 3.6 フランス 2.9 南アフリ カ ドイツ 3.4 オースト ラリア 2.4 メキシコ オースト ラリア 2.6 ドイツ オランダ 1.6 スペイン 1.3 スウェー デン 香港 中国 インド 台湾 韓国 南アフリ カ 20.8 14.9 10.3 9.0 7.6 ブラジル 6.9 4.5 タイ 4.4 インドネ シア 4.2 2.4 マレーシア 3.9 2.2 ロシア 2.0 タイ 8.1 3.6 フィリピン 3.6 2.6 トルコ 3.2 《モメンタム指数のセクター構成》 モメンタム モメンタム 11.6 12.9 12.2 15.7 19.7 2.2 17.8 4.2 一般消費財・ サービス 13.7 14.6 10.3 10.6 必需消費財 エネルギー 原材料・加工 8.8 7.5 5.9 9.6 1.6 5.4 7.4 8.7 7.5 5.3 5.3 6.3 生産者向け 耐久財 11.4 11.3 5.9 9.8 金融サービス 公益 21.6 6.6 22.3 7.3 28.1 10.3 30.2 10.6 同 先進国・新興国共に「エネルギー」が小さめ 「モメンタム指数」のセクター構成も、銘柄入替ま での過去約 1 年のセクター間のパフォーマンス格差 の影響を受けます。左の表は、先進国および新興国 の「モメンタム指数」における各セクターの構成比率 を親指数のそれと比較してみたものですが、「モメン タム指数」の「エネルギー」の比率が、先進国および 新興国に共通して、親指数よりも小さいことが分かり ます。これは 2014 年を通して「エネルギー」セクター が低パフォーマンスで推移した状況を反映した結果 に相違ありません。逆に「モメンタム指数」の構成比 率が相対的に大きいのは、先進国では「ヘルスケ ア」、新興国では「生産者向け耐久財」でした。 《モメンタム指数のスタイル》 クオリティ指数のスタイル (2015 年 1 月末) ダイナミック 新興国モ メンタム 新興国 先進国モ メンタム 先進国 ディフェンシブ 相対的にやや「成長かつダイナミック」寄りのスタイル 右の図は、先進国および新興国の「モメンタム指数」お よびそれぞれの親指数について、各構成銘柄のスタイル を積み上げて指数全体のスタイル比率を計算し、横軸に 「割安」と「成長」、縦軸に「ディフェンシブ」と「ダイナミック」 を配した「スタイル・マップ」にプロットしたものです。 先進国の親指数がほぼニュートラルな位置にあるのに 対して、新興国の親指数は基本的に「成長かつダイナミ ック」なバイアスを持っています。そして「モメンタム指数」 は、その順張り傾向の性格から、それぞれの親指数よりも さらに「成長かつダイナミック」寄りに位置しています。 新興国の「モメンタム指数」に特に強い「成長」傾向のバ イアスが見られるのは、過去 1 年に新興国市場で成長株 が割安株を大きく上回るパフォーマンスで推移してきたこ とが影響していると思われます。 Russell Investments // 世界株式探検隊 / p2 同 モメンタム 58.5 7.5 7.4 3.8 新興国 大型 同 新興国 大型 米国 日本 英国 スイス セクター構成比率 (2015年1月末) 先進国 大型 同 モメンタム 割安 成長 Russell Global Markets Exploration 2015 年 3 月号 《モメンタム指数の過去のパフォーマンス》 過去のパフォーマンス (2015年1月末時点、円建て、年率) 先進国 大型 モメンタム 新興国 大型 モメンタム 年率収益率%: 過去1年 24.0 21.6 12.1 14.3 過去3年 31.6 33.4 21.6 24.8 過去5年 17.7 20.2 8.0 11.3 過去10年 8.3 10.0 10.8 12.6 過去15年 5.0 6.9 7.6 9.6 標準偏差% 19.0 19.2 25.9 25.9 リターン/リスク比 0.26 0.36 0.29 0.37 - 0.38 - 0.48 情報レシオ 同 同 先進国・新興国共に親指数を上回る効率性 左の表で「モメンタム指数」の過去のパフォーマン スを見ると、先進国では過去 3 年から過去 15 年の期 間で、新興国では過去 1 年も含めてすべての期間 で、「モメンタム指数」の年率収益率が親指数のそれ を上回っていることが分かります。過去 15 年の標準 偏差は、先進国・新興国共に、親指数とほとんど同 水準ですので、同期間のリターン/リスク比は親指数 よりも大幅に効率的な数値となっています。 過去 15 年の超過収益率とトラッキング・エラーの比 で見た情報レシオは、トラッキング・エラーがやや小 さめの新興国が、先進国のそれを上回る効率性を 示しています。 標準偏差%以降の項目は過去 15年の収益率や標準偏差等に基づく値 《モメンタムの超過収益率の分布》 モメンタムの 12ヵ月超過収益率の分布 (2015年1月末時点、過去180期間、円建て) 先進国大型モメンタム 親指数 期間 収益率区分 数 算術 平均 20% 超 59 2.2 0% - 20% 59 (-15%) - 0% (-15%)未満 新興国大型モメンタム 親指数 期間 収益率区分 数 21% 超 算術 平均 66 4.5 3.8 0% - 21% 64 3.0 31 0.8 (-22%) - 0% 26 0.9 31 2.2 (-22%)未満 24 -1.3 1ヵ月ずらしの 12ヵ月収益率を正と負に分け、それぞれサンプル がほぼ半数になる収益率水準で区分 《モメンタムと他指数との組み合わせ効果》 モメンタムと他指数との組み合わせ効果 (2015年1月末時点、過去15年、円建て) 先進国大型 新興国大型 リターン/ 情報 リスク比 レシオ リターン/ 情報 リスク比 レシオ モメンタム単体 0.359 0.348 0.359 0.469 + 親指数 0.316 0.359 0.319 0.477 + 小型 0.373 0.434 0.332 0.304 + 割安 0.369 0.635 0.368 0.625 + 成長 0.258 -0.007 0.273 0.042 + ディフェンシブ 0.403 0.447 0.412 0.466 + ダイナミック 0.229 0.039 0.286 0.260 + 低ボラティリティ 0.493 0.581 0.446 0.572 + クオリティ 0.361 0.472 0.360 0.544 + バリュー 0.441 0.987 0.394 1.024 + ファンダメンタル 0.431 0.956 0.415 0.839 モメンタムと他指数との組み合わせ収益率は、それぞれの月次収 益率を 50: 50の比で組み合わせて計算 Russell Investments // 世界株式探検隊 / p3 好況期に超過収益率が高い傾向 左の表は、親指数の 1 ヵ月ずらし過去 180 期間の 12 ヵ月収益率を、正負それぞれについて大小で二つ のグループに分け、「モメンタム指数」の親指数に対 する超過収益率の単純平均をそれぞれのグループ毎 に算出した結果です。親指数の収益率が高い好況期 ほど超過収益率が高い傾向が、特に新興国に顕著に 見られます。先進国でも、市場収益率がプラスの期間 の超過収益率がマイナスの期間のそれを明らかに上 回っています。「モメンタム指数」が順張り傾向のファク ター指数であることが、ここでも確認できます。 低ボラティリティ、バリューなどと好相性 モメンタム・ファクターをポートフォリオに組み入れた 時に相性の良いスタイルやファクターは何でしょうか? 過去 15 年のデータを基に「モメンタム指数」と 50:50 で組み合わせたポートフォリオのパフォーマンスを計 算し、組み合わせるスタイルやファクターによって効率 性がどのように異なるかを試算したのが左の表です。 まずリターン/リスク比を見ると、先進国と新興国共に、 「低ボラティリティ指数(高効率低ボラティリティ指数)」 が「モメンタム指数」との組み合わせで最も効率性を高 めたことが分かります。これに次ぐのが、先進国では 「バリュー指数(高効率バリュー指数)」、新興国では 「ファンダメンタル指数」でした。情報レシオで見た効 率性は、先進国と新興国共に、「バリュー指数」との組 み合わせが最高で、これに「ファンダメンタル指数」と の組み合わせが続きました。スタイル・マップで見た 「モメンタム指数」の「成長かつダイナミック」寄りのバイ アスを、これらの指数が補完した様が窺えます。 Russell Global Markets Exploration 2015 年 3 月号 お宝データ (2015 年 2 月末現在) ラッセル・グローバル株インデックスで見た世界株式市場 地域別・大型小型別の収益率順位 (円建て収益率、単位:%、先進国およびAPAC※先進国は「除く日本」) 2015年2月 地域 過去3ヵ月 収益率 地域 7.4 グローバル グローバル 先進国小型 先進国大型 日本 新興国大型 新興国小型 欧州先進国大型 北米大型 欧州圏新興国大型 APAC先進国大型 中南米大型 アジア新興国大型 8.4 7.8 7.6 4.6 4.1 8.3 7.7 7.4 6.6 5.8 3.7 年度初来 収益率 地域 3.0 グローバル 8.1 5.3 2.9 1.0 -1.2 日本 先進国小型 先進国大型 新興国小型 新興国大型 北米大型 APAC先進国大型 欧州先進国大型 アジア新興国大型 欧州圏新興国大型 中南米大型 2.9 2.9 2.8 2.1 -4.6 -10.6 日本 先進国大型 先進国小型 新興国大型 新興国小型 北米大型 アジア新興国大型 APAC先進国大型 欧州先進国大型 欧州圏新興国大型 中南米大型 過去1年 収益率 地域 収益率 24.3 グローバル 25.8 32.2 24.8 20.1 19.3 17.4 28.0 26.9 23.1 19.8 17.1 31.4 29.1 16.3 12.6 8.8 -2.8 日本 先進国大型 新興国大型 新興国小型 先進国小型 北米大型 アジア新興国大型 APAC先進国大型 欧州先進国大型 欧州圏新興国大型 中南米大型 33.3 31.0 22.4 14.4 9.8 8.6 ( ※APAC:アジア太平洋) 国別の収益率上位・下位5カ国 (円建て収益率、単位:%、20銘柄以上の国でのランキング) 2015年2月 国 ロシア ギリシャ オーストリア アイルランド イタリア 韓国 シンガポール 香港 コロンビア トルコ 過去 3ヵ月 収益率 24.0 21.5 14.8 13.7 10.5 2.8 2.2 1.7 -2.2 -6.5 国 アイルランド フィリピン 日本 ベルギー スウェーデン ポーランド トルコ ブラジル コロンビア ギリシャ 年度初来 収益率 10.1 8.8 8.1 6.7 6.1 -9.2 -13.3 -14.4 -18.0 -21.7 国 インド 中国 フィリピン アイルランド 米国 ポーランド ロシア ブラジル コロンビア ギリシャ 過去 1年 収益率 54.5 38.0 36.0 32.9 32.7 -1.6 -5.1 -10.0 -21.5 -38.1 国 インド タイ フィリピン トルコ 南アフリカ オーストリア ポーランド コロンビア ロシア ギリシャ 収益率 69.5 44.3 44.1 38.6 33.8 -2.8 -4.5 -7.0 -13.9 -43.0 グローバル株式のセクター別の収益率順位(グローバル総合) (円建て収益率、単位:%) 2015年2月 セクター 過去 3ヵ月 収益率 原材料・加工 テクノロジー 8.9 8.8 一般消費財・サービス 8.7 8.2 7.9 7.7 6.6 5.5 2.3 エネルギー 生産者向け耐久財 金融サービス ヘルスケア 必需消費財 公益 セクター 年度初来 収益率 セクター 過去1年 収益率 一般消費財・サービス ヘルスケア 5.8 5.7 ヘルスケア テクノロジー 40.5 37.4 原材料・加工 4.9 3.7 3.4 3.4 1.2 -0.8 -1.6 一般消費財・サービス 31.0 26.7 23.8 22.4 20.7 14.1 -5.7 生産者向け耐久財 テクノロジー 必需消費財 金融サービス 公益 エネルギー 必需消費財 金融サービス 生産者向け耐久財 公益 原材料・加工 エネルギー セクター 収益率 ヘルスケア テクノロジー 37.6 36.1 必需消費財 32.6 27.8 26.0 25.6 23.7 14.8 1.1 一般消費財・サービス 金融サービス 公益 生産者向け耐久財 原材料・加工 エネルギー 当資料中「ラッセル・インベストメント グループ」、「ラッセル・インベストメント」及び「ラッセル」は、フランク・ラッセル・カンパニー及びその子会社等の総称です。ラッセル による事前の書面による許可がない限り、資料の全部又は一部の複製、転用、配布はいかなる形式においてもご遠慮ください。当資料は、当社が信頼できると判断した 情報に基づき作成しておりますが、その情報の正確性や完全性についてこれを保証するものではありません。ラッセル・インデックスに関連するトレードマーク、サービスマ ークおよび著作権は、ラッセル・インベストメントに帰属します。インデックスは資産運用管理の対象とはなりません。またインデックス自体は、直接投資の対象となるもので はありません。インデックスを対象とした金融商品への投資は、その商品に関わる経費や運用報酬などにより、そのインデックスと同一のパフォーマンスを提供するもので はありません。他の投資同様、上場投資信託(ETF)への投資にはリスクが伴います。投資の前にこれらのリスクを十分に検討してください。当資料のいかなる内容も、投資 アドバイスの性質を持つものではなく、投資アドバイスを提供するものではありません。当資料は、「ラッセル・インデックス」の説明を唯一の目的としており、特定の運用商 品やサービスの提供、勧誘、推奨を目的としたものではありません。分散投資は、収益を保証するものでも、市場環境の変化による損失を防ぐものでもありません。 特段記載の無い限り、当資料に記載されているデータの出所は、ラッセル・インベストメント グループです。 Copyright © 2015. 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