JICA廃棄物管理ポジションペーパーの改訂について

廃棄物管理分野ポジションペーパー(2014年度改訂)
「JICAの廃棄物管理分野の
国際協力への取り組み」
第4回 廃コン協/OECC合同セミナー
2015年3月12日
JICA地球環境部 環境管理グループ 課長
柴田 和直
調査役 奥村 憲
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環境管理セクターに係る現状認識
(1)途上国の都市では、都市の急速な成長と人口増加等にともない、
都市域の大気・水環境汚染や廃棄物の増大、温室効果ガス排出の急
増等の問題が同時発生し且つ深刻化。都市環境問題は、都市に住む
人々の生活に深刻な影響を及ぼし、人間の安全保障を脅かすものと認
識し、課題を横断的・包括的に捉えていく必要がある。
(2)2012年6月「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」では、資源制約
の克服と環境負荷の軽減を図りながら経済成長も達成する「グリーン成
長」を実現するための制度的枠組みや行動計画等を議論した。環境管
理の新たな視点として着目している。
(3)日本政府は、世界的に進む都市化を見据え、持続可能な経済社会
システムや低炭素化社会を実現する都市・地域づくりを目指す「環境未
来都市」構想を推進。国内のモデル都市での成功事例を海外に普及展
開し、都市問題の解決に貢献する方針。
環境管理セクターに係る重要課題
(1)公衆衛生の改善を目指した都市環境問題への対処
住民の公衆衛生を改善する観点から、都市の廃棄物増大への対応及
び衛生的な水環境の確保に向けた取り組みがより一層重視される。ポス
トMDGsへの貢献の観点も重要となる。
(2)「環境未来都市」構想の海外展開への貢献
地球温暖化ガス削減に向けた緩和策の推進が求められつつある中で、
環境管理の強化と温暖化ガス削減の両立(コベネフィット)が重要。エンド
オブパイプ(=排出部分)での対応のみならず、環境未来都市の実現に
向けて、上流部分(都市計画策定など)から環境管理の視点が必要とな
る。
(3)日本の環境管理制度・環境技術の海外展開の強化
日本が作り上げた各種制度や環境対策技術を、個別の国の実情に応
じて適用し、途上国の環境対策能力を高めるとともに、日本企業の環境
技術の国際展開にも寄与することが重要となる。
廃棄物管理セクターの潮流
(1)“Waste to Energy”:焼却発電、焼却ガス利用への関心
当該国の条件にとって維持可能な適正技術であるか、吟味したうえで、民間
の技術力を生かした協力を推進する。
(2)生産セクターを巻き込んだ視点の重要性(生産工程における廃棄物の
減容化)
廃棄物管理は、「廃棄物の発生・排出から最終処分まで」、 「製品の生産・
消費から最終処分まで」実施されるもの ― との認識の広がり。
(3)民間連携案件のニーズ発掘、拡大
2012年~2014年度で採択された普及・実証事業は12件(インドネシア4件
、ベトナム2件、フィリピン、南ア、スリランカ、ブラジル、ウクライナ、パラオ各
1件)
(4)リサイクルを担う静脈産業の育成・振興
途上国でも古紙、容器包装リサイクル(PET、ガラスびん)のみならず、廃家
電リや自動車のリサイクルに関する産業育成の関心が高まっている
ポジションペーパー改訂のポイント
構成
• JICAの取りうる支援メニューを対外的に、よりシャープに伝える構成に
改訂。読み手は主に国内外の支援の連携相手(自治体、民間、他ド
ナー等)を想定。
発展段階の明示
• 廃棄物管理の発展段階を三段階に体系化し、各段階の代表的な課
題・支援内容を明示した。
モデルの提示
• 途上国が抱える廃棄物管理の課題に対しJICAがどのような協力モデ
ルを実施してきたか、また今後何に力点を置いていくかを示し、民間連
携等新しい潮流も含めた。
改訂版ポジションペーパーの構成
1.JICAの基本認識
2.JICA協力の基本方針
(1) 3Rを目指した総合的廃棄物管理の実現
1) 廃棄物管理の実施体制構築を目指した協力
2) 廃棄物管理の全体のプロセスを考慮した改善策の支援
(2) 国の発展段階に応じた支援
1) 第一段階:公衆衛生の改善
2) 第二段階:環境負荷の低減・汚染防止
3) 第三段階:3Rを通じた循環型社会の構築
3.JICAの協力モデルと具体的事例
(1)包括的支援モデル
(2)自治体連携モデル
(3)民間連携モデル
1) オペレーションの民間委託
2) 民間投資と技術の促進
(4)制度構築支援モデル
基本認識
途上国の廃棄物問題
・都市化、経済成長
・人口の過密
・大量消費
・ごみのポイ捨て、廃棄物量の増大
・不法投棄
・公衆衛生の悪化
・環境破壊
・自然資源の損失
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協力の基本方針
(1) 3Rを目指した総合的廃棄物管理の実現
1)廃棄物管理の実施体制構築を目指した協力
2)廃棄物管理の全体のプロセスを考慮した改善策の支援
(2) 国の発展段階に応じた支援
第一段階
第二段階
第三段階
公衆衛生の改善
環境負荷の低減・汚
染防止
3Rを通じた循環型社
会の構築
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協力の基本方針
(1) 3Rを目指した総合的廃棄物管理の実現
総合的廃棄物管理
Integrated solid waste management (ISWM)
単に収集運搬から最終処分工程に至るまでの、いわば“End of Pipe”のみで廃棄物の
処理を考えるのではなく、廃棄物を資源と考えその循環を促進する資源マネジメントの
観点を廃棄物処理に統合する考え方
・Reduce(廃棄物の発生抑制)
・Reuse(再利用)
・Recycle(再生利用)
日本政府の“3R イニシアティブ”
2004年 シーアイランドサミットにて提唱
9
3Rを目指した総合的廃棄物管理の実現
1) 廃棄物管理の実施体制の構築を目指した協力
対象国のニーズを踏まえ主に、以下7つの側面から協力内容を検討
①
②
③
④
⑤
⑥
⑦
法制度の改善
組織の改善
財政の改善
民間セクターとの適切な連携の促進
排出事業者の取り組み促進
市民の参画促進
文化・社会への配慮
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3Rを目指した総合的廃棄物管理の実現
2)廃棄物管理の全体のプロセスを考慮した改善策の
支援
どのプロセスで課題があるかを見極める
① 生産・消費の適正化
② 発生・排出の適正化
③ 収集・運搬の改善
④ 中間処理・再利用・再生利用の促進
⑤ 最終処分の改善
•
•
焼却発電やバイオマス発電等、廃棄物処理からの熱回収(Waste to Energy)は、途
上国でも関心が高まっている分野
規模(ごみの排出量や処分場埋立量)、当該国の発展段階(技術的に高度で財政的
負担が大きく財政的に余裕のある中進国以上でないと導入が難しい場合が多い)等
の条件から、維持可能な適正技術であるか吟味のうえ、民間企業の技術力を活かし
た協力を推進
11
協力の基本方針
(2)国の発展段階に応じた支援
第一段階
第二段階
第三段階
公衆衛生の
改善
環境負荷の
低減・汚染
防止
3Rを通じた
循環型社会
の構築
日本の歩みに比べると、現在の途上国を取り巻く経済環境は、急速に消費社会、グローバル化
の波が押し寄せているため、次の段階に移行する時間が相当に圧縮されている。また、段階が
同時発生的、あるいは順序が逆になることも考えられるため、対象国のキャパシティ・課題を
適切に評価することが重要。
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国の発展段階に応じた支援
第一段階: 公衆衛生の改善
[課題]
• 都市化の進行、廃棄物管理の取り組みの初期段階
• 放置された廃棄物が公衆衛生の悪化を引き起こす
[目標]
• まず「ごみを生活空間から分離」し、衛生環境を改善
• 適切な収集事業の実施(収集率の向上、収集・運搬作業の効率化、サービス
の向上)
• 不法投棄の防止
【支援内容の例】
• 調査に基づく収集の効率化、収集方法の提案
• 収集作業者の安全管理、住民の主体的関与の喚起
• オープンダンピングからの脱却、コントロールダンピングの導入
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国の発展段階に応じた支援
第二段階: 環境負荷の低減・汚染防止
[課題]
• 産業化、特に第二次産業(工業)が進展
• 公害、環境汚染に伴う健康被害、影響の範囲の拡大
[目標]
• 有害廃棄物の適正な処理・管理による環境負荷の低減・汚染防止
• 適正な最終処分。衛生埋立(浸出水対策、メタン等の嫌気性ガス対策)の導入
【支援内容の例】
準好気性埋立構造
• いわゆる「福岡方式」。低コスト、嫌気性ガスの発生抑制、浸出水の浄化
• 各国の状況を踏まえて導入
電気・電子機器廃棄物(E-waste)
• 近年、途上国で問題が顕在化。鉛、カドミウム、水銀等有害物質を含有
• 適正な処理フロー構築を支援
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国の発展段階に応じた支援
第三段階: 3Rを通じた循環型社会の構築
[課題]
• 市民社会の成熟、人々の環境に対する意識の高まり、
• 廃棄物の量の削減から質の転換・有効利用へ
[目標]
• ごみの減容化、リサイクル等を推進し、温室効果ガスを含む環境負荷の低減、
循環型社会の構築を目指す
• 3R推進のために、国・地方政府、市民、民間セクターの協働
[支援内容の例]
• 3R推進のための国家・地方政府レベルの法制度整備・計画策定、啓蒙活動、
リサイクル産業の振興支援
• 日本の民間企業が保有する高度な再資源化、エネルギー化技術の途上国へ
の発信や、事業展開を念頭に置いた制度構築
• 気候変動対策に資する温暖化ガス削減(コンポスト化の推進、廃棄物のバイ
オガス化やバイオ燃料化)
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JICAの廃棄物管理の協力の概念
Reduce
environment
al burden
16
協力モデル
① 包括的支援モデル
 見出された課題に対して最適なスキームを組み合わせて対処
 連続的な支援 (マスタープラン策定から、能力強化に資する技術協力、最終処分場改
善等の施設整備を実施する等)
② 自治体連携モデル
 JICAのプロジェクトにおいて今後も日本の自治体との連携を強め、自治体が蓄積して
いるノウハウと人材を活かす協力を実施していく
③ 民間連携モデル
 オペレーションの民間委託を適切に推進するための行政側の能力強化
 今後は、官民連携、中小企業支援事業、本邦民間企業が有するリサイクル技術、焼却
技術、中間処理・廃棄物処理施設の運営のノウハウ等を活かす協力にも重点を置く
④ 制度構築支援モデル
 政府が国全体を統一的にコントロールを図っていくための制度構築
 ある地域の自治体で具体的な廃棄物管理の制度モデルを実証し、その国にあったモデ
ルを全国に展開していく支援
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南アジア
主要都市の廃棄物の適切な収集と処分を行い、公衆衛生を改
善することを目的として、第1段階から第2段階の到達を目指し
た協力を展開
(主な事例)
バングラデシュ 「廃棄物管理機材整備計画」無償(2014)
「ダッカ市廃棄物管理能力強化プロジェクト」
技プロ(2007-2013)
パキスタン 「グジュランワラ市廃棄物管理マスタープラン策定
プロジェクト」技プロ(2013-2015)
実施中案件 GDP per Capita (2013)
対象国
~5,000USD
(2015年1月現在)
5,001~10,000USD
10,001USD~
No Data
(※キューバは2011年の数値)
東アジア
第3段階到達を目指した協力を展開
(主な事例)
中国 「都市廃棄物循環利用推進プロジェクト」
技プロ(2010-2015)
東南アジア
1.廃棄物の減量化・リサイクル推進等の第3段階
到達を目指した協力を展開
2.環境省や地方自治体が関わる3R推進を目的
とした域内または都市間協力活動との連携
(主な事例)
マレーシア 「廃電気・電子機器リサイクルプロジェ
クト」
技プロ(2011-2013)
インドネシア 「3R及び廃棄物適正管理のための
キャパシティディベロップメント支援プロジェ
クト」
技プロ(2013-2016)
ベトナム 「循環型社会形成に向けてのハノイ市3
Rイニシアティブ活性化支援プロジェクト」
技プロ(2006-2009)
大洋州
1.大洋州の特異性を踏まえた戦略(3R+Return)に基づき、
第3段階を目指した協力を展開
2.太平洋地域環境計画(SPREP)と連携した協力の実施
(主な事例)
「大洋州地域廃棄物管理改善支援プロジェクト」技プロ
(2011-2016)
中南米
3Rに関してニーズが高い国を限定し、第3段階到達を目指した協力
を展開
(主な事例)
ドミニカ共和国 「全国廃棄物管理制度・能力強化プロジェクト」
技プロ(2014-2017)
ブラジル 「E-wasteリバースロジスティクス改善プロジェクト」
技プロ(2014-2017)
欧州
3Rに関してニーズが高い国を限定し、第3段階到達を目指した協力を
展開
(主な事例)
コソボ 「廃棄物管理向上計画」無償(2010)
「循環型社会へ向けた廃棄物管理能力向上プロジェクト」
技プロ (2011-2014)
アルバニア 「廃棄物量削減・3R促進支援プロジェクト」技プロ
(2014-2017)
中東
廃棄物の適切な収集と処分を行
い、公衆衛生を改善することにつ
いてニーズの高い都市を限定し
て、第1段階から第2段階の到達
を目指した協力を展開
(主な事例)
パレスチナ 「廃棄物管理能力
向上プロジェクト フェーズ2」
技プロ(2014-2017)
モロッコ 「ディズニット市及び
周辺コミューンにおける廃棄物
管理能力向上プロジェクト」
技プロ(2013-2016)
実施中案件 GDP per Capita (2013)
対象国
~5,000USD
(2015年1月現在)
5,001~10,000USD
10,001USD~
No Data
(※キューバは2011年の数値)
アフリカ
廃棄物の適切な収集と処分を行い、公衆衛生を改善することについてニーズの高い都市を限定し
て、第1段階から第2段階の到達を目指した協力を展開
(主な事例)
スーダン「ハルツーム州衛生環境改善事業」無償(2014)
「ハルツーム州廃棄物管理計画強化プロジェクト」技プロ(2014-2017)
ケニア「ナイロビ市廃棄物管理能力向上プロジェクト」有償附帯プロ(2012-2016)
モザンビーク「マプト市における持続可能な3R活動推進プロジェクト」技プロ(2013-2017)
ご清聴ありがとうございました。
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