HHT JAPAN 2015 HHTの肝病変について 大須賀慶悟(おおすが けいご) 大阪大学大学院医学系研究科放射線医学講座 遺伝性出血性末梢血管拡張症(HHT)では、肝血管奇形が32-78%の患者で認められ、特に ACVRLK1遺伝子変異を持つHHT2で頻度が高い。肝血管奇形の大半は無症状だが、約8%の患者 で症状が出現する。肝血管奇形による症状は、肝内の短絡の種類と短絡量に依存し、AVシャント に伴う高拍出性心不全や胆管虚血による胆管拡張やbiloma等の胆管障害、APシャントに伴う門脈 圧亢進症、そしてPVシャントに伴う肝性脳症などが含まれる。肝血管奇形の画像評価には造影CT や超音波が主に用いられるが、限局性結節性過形成(FNH)や結節性再生性過形成(NRH)など付随 する結節性病変も検出され、稀に肝細胞癌の合併もある。 無症状の肝血管奇形は通常治療は不要で経過観察される。一方、有症状の患者では、内科的治療、 肝動脈塞栓術、肝移植が選択肢となる。内科的治療は、心不全、腹水、食道静脈瘤、胆管炎など への対症療法である。近年では抗VEGF製剤であるbevacizumabの有効性が注目されており、胆 管虚血の改善例や、肝移植の回避例の報告がある。一方、bevacizumab投与による消化管穿孔、 出血、ネフローゼなどの副作用報告もあり、長期成績や至適投与量について今後の研究が待たれ る。肝動脈塞栓術は、肝梗塞や治療関連死の頻度が高く、第一選択にすべきではない。肝移植は、 内科的治療抵抗例に対する根治的治療となり得るが、適正な移植時期については未確立である。 肝血管奇形の増悪が心不全増悪を引き起こすことはLiver HHT‒cardiac consequenceとして知ら れており、前向き研究では総肝動脈の動脈径と心係数との相関が判明している。また、Mayo Clinicのグループからは臨床症状出現の危険因子(年齢、性別、Hb、ALP)のスコア化が提唱され ており、肝病変を有するHHT患者のリスク評価や今後の薬物療法などの臨床試験における適格規 準への応用が期待される。 Key word: hepatic vascular malformations, high-output cardiac failure, embolization, liver transplantation, angiogenesis inhibitor Osuga K
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