2009年度「未成年者飲酒予防基金」活動報告

2009年度「未成年者飲酒予防基金」活動報告
【研究の目的】
メディア情報が溢れる今日、その影響を受け、青少年が暴力、性行動、喫煙、飲酒等の
危険行動をとる可能性が危惧されている。
本研究においては、メディア情報を主体的に読み解く能力(メディアリテラシー)形成に
焦点を当てた飲酒防止教育プログラム開発のための基礎資料を得ることを目的としている。
平成21年度の具体的な目標は以下の通りであった。
1.
1)
2)
3)
効性
2.
3.
国内外の、以下の文献をレビューする。
メディアが青少年の飲酒を含む危険行動に及ぼす影響
メディアリテラシーの測定・評価
メディアリテラシー形成に焦点を当てた飲酒を含む危険行動防止プログラムの有
小学校高学年から中学生を対象とした調査票を開発する。
小学5年生~中学3年生を対象とした質問紙調査を実施する。
【研究内容と成果】
1.研究方法
新潟県、兵庫県の小学校2校の 582 人、茨城県、愛知県、兵庫県、愛媛県の中学校5校
の 2,033 人を対象とし、2009 年 11 月から 12 月にかけて無記名の自記入式質問紙調査を実
施した。主な質問項目は、セルフエスティーム(友人、家族、全般)
、社会的スキル(向社
会的スキル、引っ込み思案行動、攻撃行動)、意志決定スキル、メディア暴露量、メディア
リテラシー、喫煙、飲酒に関する態度及び行動であった。
2.研究結果
1)男女別及び学年別にみたライフスキルとメディアリテラシーの得点
友人に関するセルフエスティームは、小学生と中学1年生においては男子の得点が女子
より高かった。家族に関するセルフエスティームは、中学生の男女においては学年が上が
るに従って得点が低くなる傾向にあった。全般的セルフエスティームは、中学生男子にお
いては学年が上がるに従って得点が低くなる傾向にあった。
社会的スキルのうち向社会的スキルは、全体的に女子の得点が男子より高い傾向にあった。
引っ込み思案行動は、小学生においては女子の得点が男子より高かった。攻撃行動は、中
学2年生と3年生においては女子の得点が男子より低かった。
意志決定スキルは、中学2年生においては女子の得点が高かった。
メディアリテラシーは、中学生の男女においては有意な学年差があり、学年が上がるに
従って得点が高くなる傾向にあった。
2)男女別及び学年別にみたメディア暴露量
ビデオ・DVD に関しては、平日・休日ともに男女差・学年差はなかった。テレビに関して
は、平日では、全体的に女子のより長く視聴する者の割合が高い傾向にあった。休日にお
いても、全体的に女子が男子より長く視聴する傾向にあった。マンガは、中学生において
は男子が女子より多く読む傾向にあった。また、中学生男子においては学年が上がるに従
ってより多く読む傾向にあった。雑誌は、小学5年生から中学3年生の全学年において女
子が男子より多く読む傾向にあった。
3)男女別及び学年別にみた危険行動
生涯飲酒は、中学3年生を除いて、全体的に男子の経験者率が高い傾向にあり、中学生
女子においては学年が上がるに従って経験者率が増加していた。友人の飲酒は、中学生男
子においては学年が上がるに従って、「飲酒をする親しい友だちがいる」と回答した者の割
合が高くなる傾向にあった。
生涯喫煙は、男子の経験率が女子より高い傾向にあった。中学生男子においては学年が上
がるに従って経験者率が高くなる傾向にあった。友人の喫煙は、中学生の男女においては
学年が上がるに従って「タバコを吸う親しい友だちがいる」と回答した者の割合が高くな
る傾向にあった。
4)危険行動経験別にみた、ライフスキル・メディアリテラシー得点
小学生男子の生涯飲酒に関しては、経験あり群の攻撃行動の得点が有意に高く、意志決
定スキルの得点が有意に低かった。月飲酒に関しては、経験あり群のメディアリテラシー
の得点が有意に低かった。生涯喫煙に関しては、経験あり群の引っ込み思案行動と意志決
定スキルの得点が有意に低かった。月喫煙に関しては、いずれの項目についても両群間に
有意な差は認められなかった。
小学生女子の生涯飲酒に関しては、経験あり群の家族に関するセルフエスティーム、全般
的セルフエスティーム、意志決定スキルの得点が有意に低く、攻撃行動の得点が有意に高
かった。月飲酒に関しては、経験あり群の友人に関するセルフエスティーム、全般的セル
フエスティーム、意志決定スキルの得点が有意に低く、引っ込み思案行動、攻撃行動の得
点が有意に高かった。生涯喫煙に関しては、経験あり群の向社会的スキル、意志決定スキ
ルの得点が有意に低く、攻撃行動の得点が有意に高かった。月喫煙に関しては、経験あり
群の意志決定スキルの得点が有意に低かった。
中学生男子の生涯飲酒に関しては、経験あり群の家族に関するセルフエスティーム、意志
決定スキルの得点が有意に低く、攻撃行動の得点が有意に高かった。月飲酒に関しては、
経験あり群の家族に関するセルフエスティーム、意志決定スキル、メディアリテラシーの
得点が有意に低かった。生涯喫煙に関しては、経験あり群の家族に関するセルフエスティ
ーム、向社会的スキル、意志決定スキルの得点が有意に低く、攻撃行動の得点が有意に高
かった。月喫煙に関しては、経験あり群の家族に関するセルフエスティーム、向社会的ス
キル、意志決定スキル、メディアリテラシーの得点が有意に低かった。
中学生女子の生涯飲酒に関しては、経験あり群の家族に関するセルフエスティーム、全般
的セルフエスティーム、向社会的スキル、引っ込み思案行動、意志決定スキルの得点が有
意に低く、攻撃行動の得点が有意に高かった。月飲酒に関しては、経験あり群の家族に関
するセルフエスティーム、向社会的スキル、引っ込み思案行動、意志決定スキルの得点が
有意に低く、攻撃行動の得点が有意に高かった。生涯喫煙に関しては、経験あり群の家族
に関するセルフエスティーム、全般的セルフエスティーム、意志決定スキル、メディアリ
テラシーの得点が有意に低く、攻撃行動の得点が有意に高かった。月喫煙に関しては、い
ずれの項目についても両群間に有意な差は認められなかった。
5)メディアリテラシー尺度の妥当性に関する検討
小学生・中学生の酒類の広告を分析できる自信、タバコの広告を分析できる自信のいず
れにおいても、「できる」と回答した者のメディアリテラシー得点が「できない」と回答し
た者のメディアリテラシー得点よりも有意に高かった。
3.結論
本研究の結果によれば、メディアの中ではとりわけテレビの利用が多く、小・中学校、
男女の別を問わず、平日でも一日4時間以上利用する者が 20%程度いた。男女差が認められ
たのは、マンガと雑誌であり、男子はマンガを、女子は雑誌をよく利用していた。
本研究において開発したメディアリテラシー尺度は信頼性と妥当性を有することが確認
された。メディアリテラシー尺度の得点には男女差は認められなかった。しかし、学年差
が認められ、学年が進むにつれて得点は上昇する傾向にあった。
小・中学生の飲酒及び喫煙行動とライフスキルとの間には、これまでの研究結果と同様
に、密接な関係が認められ、こうした危険行動をとる子どもはとらない子どもに比べて、
セルフエスティーム、向社会的スキル、意志決定スキルの得点が低く、対人関係における
攻撃行動の得点が高かった。また、危険行動をとる子どもは、とらない子どもに比べて、
メディアリテラシーの得点が低いことも明らかになった。
以上の結果は、青少年の飲酒や喫煙行動を防止するためには、ライフスキルやメディア
リテラシーを高めることが重要であることを示唆するものである。
今後はさらに解析を進め、メディアへの暴露量と飲酒、喫煙行動との関係や、保護要因
としてのライフスキルやメディアリテラシーが果たす役割について、更に詳細な検討を行
う予定である。