産業保健 ● Book Review 働く女性と健康 ─ 多様な視点からのヘルスケア 著者:武谷雄二 発行:産業医学振興財団 定価: (1800円+税) 本書を就労する妊産婦 てフィジカルヘルスケアを網羅することができる、 の健康管理の本であると 産業保健スタッフにとっては欲しかったがこれまで 思って読み始めるとその なかった参考書となっている。是非まずは最初に通 スケールとボリューム感 読し、後には現場で汗をかきながら問題にあたった に圧倒される。産婦人科の権威である著者は産業医 ときにその項目に立ち返って読み返していただきた 学、公衆衛生学、社会学、医史学、国際医療と膨大 い。必ず問題解決のヒントあるいは回答がそこにあ で壮大な知識を惜しみなく本書に盛り込んでくれた り、著者から働く女性へ送られた応援メッセージを のではないかと思う。就労の有無に関わらない妊産 感じることができる。もちろん、働く女性自身に読 婦に限らない女性の幅広い年齢層に向けた充実した んでもらい本書をセルフケアの教科書として活用し 内容と、男女の比較、国際間の比較、過去から現代、 ていただければ、日本の就労女性の健康管理度の向 はては未来に及ぶ多面体的な構成となっている。本 上に寄与することは必至と考える。 書は働く女性の健康管理を多くの視点から整理して おり、読み終えると老若男女のメンタルヘルスそし 江畑智恵 (就労女性健康研究会、 江畑労働衛生研究所・蒼風軒) 日本で一番やさしい職場のストレス チェック制度の参考書 著者:石見忠士 発行:労働調査会 定価: (800円+税) この本を端的に示すキー ングセラーへの意欲が見える。すでに、amazonの 「経 ワードは、①「信頼性」 、② 営管理」 の「労働・総合」 カテゴリでは幾度か売上1位 「配慮(わかりやすさ・使い を記録し、重版が決定しているが、評者は、制度の やすさ) 」 、③「実務感覚」 で 運用実績も踏まえた改訂によるさらなる展開の可能 ある。制度趣旨やカウンセ 性を強く感じ、期待もしている。公的な資料を適切 リング・マインドが繰り返し強調されている点も特 に踏まえつつも、制度の普及の観点で独自の意義を 筆される。いずれも筆者の現職(巻末・p 4) 、経歴・ 感じているからである。 経験 (p93以下・102以下) 、交流相手、それらのベー 具体的な内容面では、第5章の客観的に綴られた スにある人柄や努力の反映と思われる。 制度策定の経緯と第6章の中小規模事業場を中心と 何より、従業員数50人以上の「中小企業+α」 を主 した好事例の組み合わせ(対照) が、本書の特徴をよ な対象としたところ(表紙・p5・11など) に、著者 く示している。制度に関する説明は、全体的に、法 の自信と良心をみる。現に、中小企業者が重視する 規則や実施マニュアル等のポイントの整理や図解、 傾向にある、①経済性や利益性、②わかりやすさ、 実務的観点からの解釈、実践例、相談先や研修情報 ③即応性は、おおむね充たされている。となれば、 などの情報提供から成っている。 企業規模を問わず役立つに違いない。 他方、 「参考書」 とのタイトルと実際の内容に、ロ 2015.10 第 82 号 三柴丈典 (近畿大学法学部教授、 (一社) 産業保健法学研究会) 産業保健 21 29
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