医法研・被験者の健康被害補償に関するガイドライン(改定案) 1. 総則 1-1 本ガイドラインは、GCP 省令(平成 9 年厚生省令第 28 号「医薬品の臨床試験の実 施 の 基 準 に 関 す る 省 令 」、 以 後 の 改 正 を 含 む 。) 第 1 条 、 第 1 4 条 及 び 第 5 6 条 に 則 っ て 、 治 験 及 び 製 造 販 売 後 臨 床 試 験 ( 以 下 、「 治 験 」 と い う 。) に 係 る 被 験 者 に 生 じ た 健康被害について、適切かつ迅速に被験者を救済するための指針である。 【解説】 GCP省 令14 条には「 治 験の依頼を しよう とす る者は、あ らかじ め、 治験に係る 被験者 に生 じた健康被害(受託者の業務により生じたものを含む。)の補償のために、保険その他の必 要な措置を講じておかなければならない。」とあり、保険の措置を講じる大前提として、治 験依頼者は治験に参加する被験者に対して補償を提供することが要請されているといえる。 本ガイドラ インは 、治 験依頼者が GCP 省令14条に則った 補償規 定を 自社におい て作成 する 際に参考とすることができる、補償規定の考え方につき医法研の考え方を示した指針である。 GCP 省令のみでなく、2013 年に改訂された世界医師会のヘルシンキ宣言においても、人間 を 対 象 と する 医 学 研究に お い て は “Appropriate compensation and treatment for subjects who are harmed as a result of participating in research must be ensured.”と、適切な補償 を 提 供 す る こ と が 求 め ら れ て い る 。 G C P 省 令 1 4 条 の ガ イ ダ ン ス 注 1 ) に は 、「 治 験 に 関 連 し て被験者に健康被害が生じた場合には、過失によるものであるか否かを問わず、被験者の損 失を適切に補償すること。その際、因果関係の証明等について被験者に負担を課すことがな い よ う に す る こ と 。」 と あ る 。「 過 失 に よ る も の で あ る か 否 か を 問 わ ず 」 に つ い て は 、 本 ガ イ ドラインにおいては損害賠償責任がある場合を対象としていないが、過失に基づいた損害賠 償責任があるかどうか不明であるような場合には第一次的に補償の支払いをすることと整理 し た 。「 適 切 に 補 償 す る こ と 」 に つ い て は 、 上 記 ヘ ル シ ン キ 宣 言 の 趣 旨 に 沿 っ た も の で あ り 、 この“appropriate”と「適切」について、適切な時期、手続き金額及び範囲で補償されるこ と と 整 理 し た 。「 因 果 関 係 の 証 明 等 に つ い て 被 験 者 に 負 担 を 課 す こ と が な い よ う に す る こ と 」 については、治験依頼者がデータ等を集め、因果関係の判断も治験依頼者が行うことと整理 した。 本ガイドラインでは、平成 21 年ガイドラインで用いた文言「治験に起因して」を「治験に 係る」に変更している。これは、因果関係を不要とする趣旨ではなく、GCP 省令の文言に合 わせることにより、範囲が GCP 省令と同様であることを明確化したものである。 更に、GCP省令第56条の製造販売後臨床試験に関する省令の読み替え規定により、GCP省 令第14条の文言は「治験」を「製造販売後臨床試験」と読み替えられる。製造販売後臨床試 験に係る被験者に生じた健康被害は補償の対象となる。すなわち、白箱(製品ではなく当該 試験用に製造・包装された製造販売後臨床試験薬)を使用するか否かに拘らず、製造販売後 臨床試験で生じた健康被害への補償は、医薬品副作用被害救済制度の対象ではなく、製造販 売後臨床試験依頼者が対応する必要がある。 1 1-2 治験依頼者は、本ガイドラインを参考にして、治験に係る被験者に生じた健康被害を補 償するための要件及び手続等を定めた補償規定を定める。 【解説】 治験依頼者は、補償の範囲や補償の金額等につき自己の裁量で決定する。 2. 定義 2 - 1 本 ガ イ ド ラ イ ン に お い て 、「 製 造 販 売 後 臨 床 試 験 」、「 説 明 文 書 」、「 対 照 薬 」、「 治 験 」、 「 治 験 依 頼 者 」、「 治 験 薬 」、「 治 験 実 施 機 関 」、「 治 験 実 施 計 画 書 」、「 治 験 責 任 医 師 」、「 被 験 者 」、「 被 験 薬 」、「 有 害 事 象 」、「 副 作 用 」、 そ の 他 本 ガ イ ド ラ イ ン に お い て 使 用 さ れ る 用語は別途定義されない限り、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等 に 関 す る 法 律 ( 昭 和 三 十 五 年 法 律 第 百 四 十 五 号 。 以 後 の 改 正 を 含 む 。 以 下 、「 薬 機 法 」 と い う 。)、 G C P 省 令 及 び 同 運 用 通 知 上 の 定 義 と 同 一 の 定 義 を 有 す る 。( 表 1 を 参 照 ) 【解説】 用語の定義については、表 1 に示す。 2-2「補償規定」とは、GCP 省令第 14 条に従い、また本ガイドラインを参考にして、被験 者に生じた治験に係る健康被害を補償するため、治験依頼者及び製造販売後臨床試験 依 頼 者 ( 以 下 、「 治 験 依 頼 者 」 と い う 。) が 定 め た 規 定 の こ と を い う 。 【解説】 治験依頼者は自社独自の補償規定を策定する。その際には本ガイドラインを参考にするこ とができる。 2-3 「治験に係る被験者に生じた健康被害」とは、被験者に生じた有害事象のうち治験薬及び治 験実施計画書に定めた計画の実施と因果関係の認められるものをいう。 【解説】 「治験に係る被験者に生じた健康被害」には、治験薬の他、治験実施計画書で定めた薬剤 の 投 与 、 臨 床 上 の 介 入 や 手 順 に よ り 生 じ た 健 康 被 害 が 含 ま れ 、「 治 験 」 と 因 果 関 係 の 認 め ら れ る健康被害のことをいう。 2-4 「補償」とは、治験に係る被験者に生じた健康被害によって被験者の被った損失を適切に補 てんするため、治験依頼者が定めた補償規定に基づく金銭その他の給付をいう。補償の内容 は、「医療費」「医療手当」「補償金」とする。 【解説】 GCP省令14条ガイダンス注1)には「治験の依頼をしようとする者は、治験に関連して被験 2 者に生じた健康被害(略)の治療に要する費用その他の損失を補償するための手順を定める ( 略 ) 」 と あ り 、 補 償 の 内 容 は 、 「 治 療 に 要 す る 費 用 」 と し て 「 医 療 費 」「 医 療 手 当 」、「 そ の 他の損失」として「補償金」ということになる。 3. 補償の原則 3-1 治験依頼者は、治験に係る被験者に生じた健康被害につき、補償規定を定め、被験者の請求 に基づき、その補償規定に従って補償する。 【解説】 被験者から治験依頼者への補償の請求権の根拠は、治験依頼者自身の補償規定であり、本 ガイドラインではない。 治験依頼者が作成した治験補償の内容が盛り込まれた「補償の概要」が治験実施機関を介 して被験者に手交されており、治験依頼者は契約上の責任の一端を担う。被験者に対しては、 この治験補償契約により治験依頼者の補償規定に従って補償がなされることになる。 3-2 治験依頼者は、補償規定を求めに応じて被験者に提供することとし、これを分かりやすく説 明した治験依頼者による補償の要件及び手続等に関する概要説明書を作成し、治験責任 医師が被験者から治験参加についての同意説明文書とともに被験者に交付する。 【解説】 3-1の解説で述べた通り、治験補償は契約に基づくものであるといえることから、契約の相 手方である被験者に治験補償契約の内容を正しく理解してもらう必要がある。従って、治験 依頼者から治験責任医師を通じて被験者に手渡される補償の概要を説明した文書に治験補償 契約の要素がしっかりと記載されていることが重要となる。医法研においては、別途、補償 の概要文書についても参考例を提供する。 3-3 被験者は、治験依頼者の補償規定に基づく補償を受けた場合であっても、治験依頼者、医 療機関その他の第三者に対する過失に基づく損害賠償請求権を行使することができる。 【解説】 治験補償は、損害賠償とは異なるものであり、治験補償においては損害賠償責任の主体の 代わりに補償を支払うことはしない。なお、被験者が、補償の支払いを受けた場合であって も、治験依頼者、医療機関その他の第三者に対して損害賠償を請求することは妨げられない。 但し、6-3 にて規定する通り、治験依頼者は損害賠償請求債権につき、被験者に支払った金額 の範囲内で一部譲渡を予め受けることになるため、支払金額については損害賠償の責任主体 に対して被験者に支払った金額の範囲内で自己に支払うよう請求することができる。 3-4 補償規定は治験実施計画書ごとに設定することができる。但し、国内の同一の治験実施計 画書における治験については同一の補償規定を適用する。 3 【解説】 同じ治験実施計画書の下で治験に参加する全ての被験者に対して同一、一律の補償規定が 提供される。企業治験であるため、他施設共同治験においても同一の補償規定を適用させる ことが可能である。 4. 補償の範囲 4-1 補償しない場合 次の場合は、補償を行わない。 4-1-1 治験薬及び治験実施計画書に定めた計画の実施と健康被害との間に因果関係が認め られない場合。治験依頼者が治験薬及び治験実施計画書に定めた計画の実施と被験 者に生じた健康被害との間の因果関係が認められるかどうか判断する。なお、その 際は、GCP 省令第 2 条の GCP 運用ガイダンスに示された個別症例に基づく判断基 準(表 1 の「副作用」の定義を参照)や、治験が開発の後期である場合には、集積 された集団のデータを参考に事案に応じて判断要素や判断基準を設定する。 【解説】 G C P 省 令 1 4 条 の ガ イ ダ ン ス 注 1 ) に は 「( 略 ) 因 果 関 係 の 証 明 等 に つ い て 被 験 者 に 負 担 を 課すことがないようにすること」とあり、この趣旨を反映した規定である。補償実務におい て最も量が多く、実務的な問題があるのは、実務運用の段階である。また、GCP 省令、その ガイダンス、本ガイドラインいずれも民事訴訟における立証責任を転換するまでの機能も権 限も有しておらず、もともと実務運用のみに着目し、それを整理して指針を示すものに過ぎ ない。そのため、従来の該当条項は裁判における立証活動を念頭においた条項であるように も読むことができたが、本ガイドラインでは実務運用に着目した条項に表現を整理した。因 果関係があることを立証、因果関係がないことを立証という表現は裁判段階の表現であるた め、そのような表現は使っていない。 補償の実務運用の場面で被験者に因果関係があることを証明し、説明せよというのは現実 的ではないため、データ等については治験依頼者が集め、因果関係の判断も治験依頼者が行 うこととしている。実際の補償の実務運用に沿った表現にしている。 なお、補償の実務運用においては、因果関係は治験依頼者がこれを認めるか認めないかの 二者択一であり、因果関係があるかないかがよく分からないことを理由に案件が放置されて い る と い う 場 面 は 実 際 に は 存 在 し な い ( は ず で あ る )。 治 験 依 頼 者 の 方 で 因 果 関 係 が 認 め ら れ ると判断すれば補償することになるし、認められないと判断すればその旨を被験者に通知す ることになる。その判断に納得できない被験者は、7-1 に従い(この条項を当該特定の治験依 頼者が自社の補償規定に盛り込んでいることが前提であるが)第三者である専門家からセカ ンドオピニオンを求めることとなる。被験者はそのオピニオンを検討した上で、更に不服が あれば、民事訴訟を提起するかどうかを決定することになる。 治験依頼者が判断する際は、GCP 省令 2 条の副作用に関するガイダンスに列挙されている 具体的な判断基準を参考にして合理的に判断することとした。恣意的な判断を行ってはなら ないことはいうまでもない。開発後期については、データが集積されていることから、それ 4 らのデータを判断する際に加えてよいとした。もちろん、適切な判断基準があれば、それを 使えばよい。なお、副作用に関するガイダンスは、治験薬(これは対照薬も含んで定義され ている)と健康被害との因果関係についてのガイダンスである。治験補償は、治験薬のみな らず治験実施計画書に定めた計画の実施と因果関係の認められる健康被害が対象であるから、 同ガイダンスで対応できない場合もある。従って、このような意味でも同ガイダンスは参考 であり、適切な判断要素や判断基準があれば、それを用いて因果関係が認められるといえる かどうかについて判断するのがよい。 平成21年ガイドラインに記載のあった機会原因、すなわち、通院途中における交通事故等 の場合については、こうした事情によって治験薬及び治験実施計画書の実施と、健康被害と の間の因果関係が切断されており、因果関係はないといえ、因果関係がない場合に吸収され る。この結果、重複記載となるため改定案からは削除した。もちろん、自社の補償規定にお いて引き続き言及することは差し支えない。 4-1-2 治験依頼者、実施医療機関又は第三者に損害賠償責任がある場合。但し 、補償の請求 時から合理的な期間内にかかる損害賠償責任の存在をありと判断できない場合は、補償 の対象とする。 【解説】 治験依頼者、実施医療機関、第三者に賠償責任(契約上の賠償責任又は不法行為責任)が ある場合には、補償の対象外となることを明確にした上で、但し書きにより、被験者が賠償 金の支払いを請求してから合理的な期間内の間に賠償責任が存在することが不明であれば、 補償の対象とするとした。この部分で、適切な補償、すなわち迅速な補償というGCP省令の ガイダンスの要請に応えている。 4-1-3 薬剤の予期した効果又はその他の利益を提供できなかった場合(例:効能不発揮)。 【解説】 効能不発揮による治験の対象疾患の悪化は、特段の事情がない限り補償しない。薬の投与 は承認された市販後の医薬品であっても治癒という効果を必ずしも保証するものではなく、 将来有効性が確認されて承認される可能性のある治験薬の場合であっても同様である。また、 ワクチンや予防薬(脳梗塞、AIDS など)の治験においては、治験参加時には被験者は治験の 対象疾患に罹患していないが、治験参加後に治験の対象疾患に罹患したという場合でも「効 能不発揮による治験の対象疾患の悪化」として補償しない。 しかし、例外として、例えば、効能不発揮による治験の対象疾患の悪化が、通常プロトコ ルに従えば起こりうると想定される程度を著しく超えて重篤又は回復不能な程度に著しく悪 化したと判断される等、特段の事情がある場合は、個々の患者における蓋然性も考慮の上、 治験依頼者は補償の対象とすることを考慮する。 5 4-1-4 プラセボを投与した被験者に治療上の利益を提供できなかった場合。 【解説】 プラセボ投与による治験の対象疾患の悪化は、特段の事情がない限り補償しない。標準治 療がない場合のプラセボ対照試験では、もとより治療上の利益を提供する手段がない患者が 対象となっているため当然である。 しかし、プラセボ投与による治験の対象疾患の悪化を全て補償しないというわけではない。 標準治療がある場合のプラセボ対照試験に関しては、ヘルシンキ宣言や CIOMS の倫理原則に お い て 、「 科 学 的 に 避 け ら れ な い 理 由 が あ る こ と 」 と 「 重 篤 か 回 復 不 能 な 害 の リ ス ク が 増 加 し ないこと」の二つの条件が満たされた場合にのみ実施が許容されているが、これらの条件に ついて十分に検討されたにも拘わらず、被験者が治験に参加したことにより、例えば、治験 の対象疾患で一般的に知られている自然経過よりも急激に悪化した、又は逆に進行が極めて 緩慢で治験の中断・中止のタイミングの判断が経験豊富な医師でも困難であった等の場合に あって、治験の対象疾患が重篤又は回復不能な程度に著しく悪化したと判断される等、特段 の事情ある場合は、個々の患者における蓋然性も考慮の上、例外として補償の対象とするこ とを考慮する。 4-1-5 被験者自身の故意によって健康被害が生じた場合。 【解説】 平成 21 年ガイドラインを踏襲し、被験者の重過失によって生じた場合については対象外と せず、対象外とするものを故意行為のみに限定した。被験者に故意行為がある場合には、当 該被験者は補償の支払いを受ける資格がないといえる。 4-2. 補償を制限する場合 次の場合は、補償の支払金額を減額するか補償しない。 4-2-1 治験同意書その他治験依頼者又は治験担当医師から受領した文書や治験依頼者又は治験 担当医師による指示に従わないことについて被験者に重大な過失がある場合。 【解説】 平成21年ガイドラインを踏襲した。 4-2-2 その他、補償金を減額すること、又は補償しないことに合理的な理由のある場合。 【解説】 補償金の金額、補償の対象範囲につき見直しを行ったこととの関係で、補償の支払いを減 6 額する、又は補償しないという調整条項を置いた。 5. 補償の支払い 5-1 医療費:治験に係る健康被害が生じた場合は、高額療養費の自己負担額を上限として健康保 険等からの給付を除いた被験者の自己負担額を支払う。治験依頼者は計算方法などの合理 的根拠を説明し、個別に被験者の同意を得た上で、今後発生すると予想される医療費を含め て一括で支払うことができるものとする。 【解説】 健康人を対象とする治験であって健康保険が使用できないP1施設で治療を行う場合という のはあくまで応急的な治療と考えられる。その場合は、医療費の全額を治験依頼者が負担す る。健康保険が使用可能なP1施設(併設される医療機関を含む)又はP1施設の紹介状を持っ て他の(転院先の)医療機関で治療を行う場合は、被害の迅速な救済の立場から被験者に健 康保険を使用していただき、被験者の自己負担分を治験依頼者が負担する。 5-2 医療手当: 治験に係る健康被害が生じ た場合で、入院を必要とするような健康被害にあって は、医薬品副作用被害救済制度の給付に準じて、医療手当を支払う。 【解説】 医療手当は、「病院往復の交通費、入院に伴う諸雑費をみる」という趣旨で支払う。 支払い額は、医薬品副作用被害救済制度の給付額に準じて設定する。必ずしも、医薬品副 作用被害救済制度の給付額の改訂に合わせて変更する必要はないが、適宜見直しは行う。但 し、同一治験及び同一条件では、同一とする。 5-3 補償金:健康人を対象とする治験は予防接種健康被害救済制度及び労災保険制度の給付額 を参考に、患者を対象とする治験は医薬品副作用被害救済制度の給付額を参考に、各社で 定める。 【解説】 日本における「補償」は、実際に発生した損害をそのまま填補し、場合によっては逸失利 益や慰謝料等も対象となるような海外の事例とは異なり、補償する側が予め定めた基準に基 づき一律・定額の補償を行うのが一般的である。 本ガイドラインの諸規定は、治験依頼者が補償措置を講ずるための指針を示すものであり、 治験等に対する社会的な信頼を確保すること、治験等を実施する事業者全体の社会的な信頼 を確保すること、治験等の適切な促進を図ること又は紛争を未然に回避すること等をその目 的としている。 そ し て 、 3 - 4 に は 、「 補 償 規 定 は 治 験 実 施 計 画 書 ご と に 設 定 す る 」 こ と を 定 め 、 更 に 、「 同 一 プロトコルの治験については同一の補償規定を適用する」としているが、本条項で定める 「補償の支払い」に関しても、治験依頼者がその内容を検討するに際して、様々なプロトコ ルの内容に対応して使用できる参考例を示すことが前掲の目的を達成するためにも望ましい。 7 【参考資料】の表 2~4 にこれまでの治験補償における支払の実績、保険会社で運用する補償 金テーブルならびにアカデミアや法律専門家等のステークホルダー意見を参考にして設定し た補償金の目安の一覧表を示した。今後、特段の事情がある場合には見直しを行うこととす る。 5-3-1 健康人を対象とする治験の補償金: 健康人対象治験における補償金の項目は、遺族補償金、障害補償金及び休業補償金である。 【遺族補償金】 予防接種健康被害救済制度(A 類疾病)で定める死亡一時金(定額)を同一生計にあった遺 族のうち最優先順位の遺族に一括で支払う。但し、治験依頼者は予め補償規定において年金 払いを定めておくことができる。遺族の優先順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉 妹の順とする。(配偶者には、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。) 【障害補償金】 被験者が一定程度の障害の状態(表 1 の「障害補償金」の定義を参照)となった場合、予防接 種健康被害救済制度(A 類疾病)の 1 級~3 級又は労災保険制度で定める 8 級~14 級の給 付額を参考にして障害補償金を一括で支払う。但し、治験依頼者は予め補償規定において年 金払いを定めておくことができる。 【休業補償金】 以下の全ての条件に該当する場合、被験者が健康保険の傷病手当金を申請しないことを条 件として、休業 4 日目より、休業 1 日あたり給付基礎日額(最高限度額)の 80%を休業期間に 亘り支払う。「休業補償金」の支払は健康被害の症状固定日又はそれに準ずる日までとする。 治験に起因する健康被害により療養していること その療養のために労働することができないこと 労働することができないため賃金を受けていないこと 【解説】 労災保険制度の 8 級~14 級に該当する後遺障害の場合は、労災保険制度で定める 8 級~14 級 の 障 害 補 償 一 時 金 ( 給 付 基 礎 日 額 の 5 0 3 日 ~ 5 6 日 分 )、 特 別 支 給 金 ( 障 害 等 級 に 応 じ た 定 額)及び障害特別一時金(算定基礎日額の 503 日~56 日分)を一括で支払う。計算に用いる 給付基礎日額は労災保険制度で定める最高限度額を、算定基礎日額は給付基礎日額の最高限 度額の 20%とする。 5-3-2 患者を対象とする治験の補償金 患者対象治験における補償金の項目は、遺族補償金、障害補償金、障害児養育補償金である。 【遺族補償金】 医薬品副作用被害救済制度で定める遺族年金の 10 年分を同一生計にあった遺族のうち最 優先順位の遺族に一括で支払う。遺族の優先順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟 姉妹の順とする。(配偶者には、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。) 8 【障害補償金】 被験者が一定程度の障害の状態(表 1 の「障害補償金」の定義を参照)となった場合は、医薬 品副作用 被害制度の給付額を参考にして障害補償金を一括で支払う。 【障害児養育補償金】 18 才未満の被験者が一定程度の障害の状態(表 1 の「障害補償金」の定義を参照)になった場 合は、医薬品副作用被害制度の給付額を参考にして障害児養育補償金を養育する者又は被験 者本人に一括で支払う。 【解説】 本ガイドラインでは参考として新たに 3 級の障害の障害補償金及び障害児養育補償金を 1 級の給付額の 60%(2 級の給付額の 75%)を目安として設定した。 障害児養育補償金と当該被験者が 18 才に達した際の障害補償金の支払いは以下の 2 通りが 考えられる。 ① 障害児養育補償金は原則養育する者に支払う。更に当該被験者が 18 才に達した際に一 定程度の障害が残っている場合は、障害補償金を被験者本人に支払う。 ② 障害児養育補償金と当該被験者が 18 才に達した時に一定程度の障害が残っていると仮 定した障害補償金を被験者に一括で支払う。 5-4 特別な治験に関する補償金 5-4-1 抗がん剤、免疫抑制剤等の治験 抗がん剤、免疫抑制剤、希少疾患や難病を対象とする薬剤の場合には、個々の治験実施計画書 ごとに、被験者の受ける便益や負担するリスクを評価し、治験の相や対象となる被験者の状態など も考慮の上で、補償金の額を減額するか支払わないことができる。この場合、治験審査委員会の 承認を得るとともに、被験者に対し十分に説明し同意を得る。 【解説】 従来の医法研・補償ガイドラインにおいては、抗がん剤について次のような取り扱いをし て い た 。 す な わ ち 、 平 成 11 年 に 策 定 さ れ た ガ イ ド ラ イ ン で は 条 文 に 「 別 途 対 処 す る 。」 と 規 定 し た 上 で 、 コ メ ン ト に お い て 「 治 療 費 の み 治 験 依 頼 者 の 負 担 と す る こ と で よ い 。」 と 記 載 す る。平成 21 年の改定ガイドラインではその解説に「抗がん剤であることを理由に、一様に、 治療費(医療費・医療手当)のみを負担し、補償金は支払わないとするのは必ずしも適切な 補 償 対 応 と は い え な い 。」 と 記 載 し た 上 で 、「 そ の 他 の 医 薬 品 と は 別 に 対 処 す る 。 そ の 場 合 、 医薬品や対象疾患の特性、被験者の受ける便益や負担するリスク等を評価した上で、治験実 施 計 画 書 毎 に 補 償 基 準 を 定 め る べ き で あ る 。」 と 規 定 し た 。 こ う し た 従 来 の ガ イ ド ラ イ ン に お ける規定は、改定された最新のヘルシンキ宣言において、除外される医薬品について特に触 れることなく治験全般に適切な補償を求めていることや、GCP 省令においても同様の取り扱 いとしていることに沿っているものであり、今後も維持する方向性が正しいものといえる。 9 従 っ て 、 今 回 の 改 定 に あ た り 、 抗 が ん 剤 の 治 験 に つ い て は 従 来 の 考 え 方 を 踏 襲 し 、「 個 々 の 治験実施計画書ごとに、被験者の受ける便益や負担するリスクを評価し、治験の相や対象と な る 被 験 者 の 状 態 な ど も 考 慮 の 上 で 、 補 償 金 の 額 を 減 額 し 又 は 支 払 わ な い こ と が で き る 。」 と した。 なお、抗がん剤に関する治験が増加してきており、治験依頼者の側で抗がん剤に関する補 償について検討が必要とされる場面が増えている実務運用に対応する必要が生じている。但 し、抗がん剤は多種多様なものがあるため、すなわち、毒性の高いものから低いものがある ために一括りにできず、また抗がん剤ではない医薬品と異なり、治験の相など開発の段階に よって被験者の受ける便益や負担するリスクが大きく異なり、被験者は自身の病期や全身状 態(パフォーマンスステータス:PS)により治験薬に期待できる効果(有効性)と副作用によ る健康被害(安全性)のリスクが異なり、また患者の側の気持ちとしてもこうしたリスクを 引き受けた上でそれでもなお治験への参加を希望する等という特色がある。 ここでは、幾つかの区分に場面を分けて、医法研の考え方を示す。 1. 健康人を対象に第 I 相試験を行えるような毒性の低い治験薬の場合 健康人に対して第 I 相試験を行えるような重篤な副作用による健康被害の起こる可能性又 は頻度が低い抗がん剤については、その毒性の低さから一般の治験薬の治験と同様に考え、 「5-3-2 患者を対象とする治験」と同様に補償金を支払うことが適切であるといえる。 2. 非臨床試験結果や治験薬の薬理作用により健康人を対象に第 I 相試験を行うことが適切で はない治験薬の場合 抗がん剤の場合は、安全域がないか狭いために重篤な副作用による健康被害の起こる可能 性又は頻度が一般の医薬品より高い。抗がん剤の治験のほとんどは患者を対象に第 I 相試験 を行うことが多いものであるが、こうした特色を有する抗がん剤の治験に関しては補償金の 金額について更に場面を分けて検討した。 2-1. 開発の前期段階の治験の場合 例えば、第 I 相又は第 II 相試験の場合は、適切な用法用量を模索する段階であり、必ずし も治験薬が被験者に医薬品の効果という直接的な便益をもたらすとはいえない(国際医科学 団 体 協 議 会 「 人 を 対 象 と す る 生 物 医 学 研 究 の 国 際 倫 理 指 針 :CIOMS の 指 針 2002 年 版 」 の 1 9 の 「 解 説 」 参 照 )。 そ の 一 方 で 、 試 験 の 性 質 上 、 ど ん な に 慎 重 を 期 し て 実 施 し て も 予 期 で きない副作用の発現を完全に防ぐことはできず、その未知副作用によって致命的な健康被害 が発生するリスクが存在する。すなわち、承認された市販薬による治療の場合や開発の後期 段階の治験の場合と比較して被験者の受ける便益よりも負担するリスクの方が大きいという ことができる。 従って、この場合には、治療費の他に補償金を支払うのが望ましいということができるが、 前述の通り、抗がん剤は重篤な副作用による健康被害の起こる可能性又は頻度が一般の医薬 品より高いという特色を持つものであり、治験に参加する被験者もそれを納得した上で治験 に 参 加 す る こ と か ら 、「 5 - 3 - 2 患 者 を 対 象 と す る 治 験 」 で 規 定 す る 補 償 金 の 全 額 を 支 払 う 必 要 まではなく、減額した上で支払うのが適切であるといえる(北欧諸国における補償制度に関 10 す る 「 参 考 資 料 」 を 参 照 )。 特に、対象のがんが極めて難治性である場合や、状態が悪い被験者(例えば、PS が 2 以上) を対象とする治験において、被験者自身が自己の病期や全身状態をよく理解し、治験薬及び 選択肢にある治療法(治療選択肢がない場合も含めて)によってもたらされる便益と危険性 を比較した上で、高度の危険性があること及び副作用が生じた場合の健康被害の補償内容に ついて必要かつ十分な説明を受け同意の上治験に参加する場合にあっては、補償金を大幅に 減額することや補償金を支払わないとすることも許容されるといえる。 2-2. 開発の後期段階の治験の場合 例えば、第Ⅲ相又は第Ⅳ相試験の場合は、開発の前期段階と比較すると、適切な用法用量 を探索する段階は一応終わっているから、これを一般化すると被験者の受ける便益と負担す るリスクについては市販薬による治療を受けた場合と大きく異ならないと判断することも可 能である。そうした場合には補償金を支払わないとすることもできるといえる。 また、免疫抑制剤の治験及び希少疾患・難病を対象とする治験に関しても、ここに記載し た考え方が当てはまるものであれば、同様に補償金の減額や補償金を支払わないとすること ができるといえる。 5-4-2 予防を目的としたワクチンの治験 疾病の予防を目的としたワクチン試験の補償金の項目は、遺族補償金、障害補償金、障害児 養育補償金である。 予防接種法に定める A 類疾病を対象とする治験の場合には予防接種健康被害救済制度 A 類疾病の項で定められた死亡一時金、障害年金、障害児養育年金の給付額を参考にして、また 同 B 類疾病及びその他の疾病を対象とする治験の場合には予防接種健康被害救済制度 B 類 疾病の項で定められた遺族年金、障害年金、障害児養育年金の給付額を参考にして、遺族補償 金、障害補償金、障害児養育補償金を一括で支払う。 【解説】 ワクチンの補償金に関する留意点は、以下のとおりである。 ① A 類疾病を参考にした場合:本ガイドラインの “5-3-1 健康人を対象とする治験の補 償金” を参考にすること。但し、障害補償金は 1 級~3 級に限定され、また休業補償 金は支払いの対象外となる。 ② B 類疾病を参考にした場合:予防接種健康被害救済制度 B 類疾病と医薬品副作用被害 救済制度は同一の給付水準であるので、本ガイドラインの“5-3-2 患者を対象とする治 験の補償金”を参考にする。 ③ 遺族補償金の支払い先は、同一生計にあった遺族のうち最優先順位の遺族とし、その優先 順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順とする。(配偶者には、事実上婚姻 関係と同様の事情にあった者を含む。) ④ 本ガイドラインでは、予防接種健康被害救済制度 A 類疾病で定める障害児養育年金 の 1 級の 60%(2 級の 75%)を新たに 3 級の障害児養育補償金として参考までに設 定した。 11 ⑤ 同様に、予防接種健康被害救済制度 B 類疾病の 1 級の 60%(2 級の 75%)を新たに 3 級の障害補償金、障害児養育補償金として参考までに設定した。 ⑥ 障害児養育補償金と当該被験者が 18 才に達した際の障害補償金の支払いは、以下の 2 通りが考えられる。 i) 障害児養育補償金は原則養育する者に支払う。更に、当該被験者が 18 才に達し た際に一定程度の障害が残っている場合は、障害補償金を被験者本人に支払う。 ii) 障害児養育補償金と当該被験者が 18 才に達した時に一定程度の障害が残ってい ると仮定した障害補償金を被験者に一括で支払う。 なお、予防接種健康被害救済制度の A 類疾病の補償額を参考とするか、B 類疾病の補償額 を参考とするかは治験依頼者が試験毎に決定する。 6. 補償の手続き 6-1 治験依頼者は、補償請求を受けたときは補償規定に基づいて遅滞なく補償の要否及び補償 の支払金額を決定する。但し、因果関係の判断が困難で、これを一時的に保留せざるを 得ない合理的な理由がある場合は、医療費・医療手当については迅速に支払うことと する。 【解説】 「遅滞なく」は、事案に応じて、3ヶ月程度の期間を努力目標とする。 しかし、判断を保留する間に、医療費・医療手当を支払ったからといって、因果関係が認 められることを治験依頼者が自認するものではない。 6-2 治験依頼者は、因果関係の存在について、補償の要否の決定時点よりも正確な判断が可能 となった場合、補償の支払いを終了すること又は被験者の請求に基づき補償の支払いを開 始することができる。 【解説】 補償の因果関係についてデータの蓄積によって蓄積の未了であった時点よりも正確な結論 (もちろん、これも中間的な結論に過ぎないが)がでることがあるだろう。そのような場合 に、従来のより不正確であった判断を覆し、将来打ち切るとの判断をすることを可能にした。 加えて、従来の不正確であった判断に基づいて補償の支払いをしていなかった場合に、より 正確な判断が可能となった時点以降、将来効として補償の支払いを開始するとの対応も可能 であり、遡及的に支払いが発生することはないとした。但し、ここは考え方次第であり、治 験依頼者の考え方に従って各社の補償規定を作成すればよい。また、補償の支払いの終了は 将来効とし、遡及的に返還請求することはないとした。 6-3 被験者の健康被害について、実施医療機関又は第三者に損害賠償責任( 契約上の賠償責 任又は不法行為責任)が明らかになった場合は、被験者に補償を支払った治験依頼者は、そ の支払金額の範囲内で、当該実施医療機関又は当該第三者に対して請求することができる。 12 【解説】 実施医療機関又は第三者賠償責任がある場合には、本来であれば、これらの責任の主体が 被験者に対して損害賠償責任を負うべきである。従って、補償としての支払いを行った治験 依頼者は、支払った補償の支払いの金額を上限として、損害賠償責任の主体に対して求償す ることを明確にした。補償の概要書の中で損害賠償責任の主体が存在する場合にはその主体 に対する損害賠償債権について譲渡を受けることになると記載しておくこととする。 7. 外部専門家による判定 7-1 被験者が治験依頼者による補償の支払いに関する決定の前提となる、因果関係又は障害等 級等の判断につき不服がある場合には、外部の専門家又は委員会に、中立的な立場からの 判定を求めることができる。判定に要する費用は治験依頼者の負担とする。 【解説】 本ガイドラインに関連して医法研が会員会社に対して行ったアンケートの結果(35社から 回答)によれば、中立的な第三者の意見を求める条項を入れている製薬会社が多かったため、 本ガイドラインでも引き続き維持することとした。なお、専門家については、医学専門家、 弁護士、業界のOB等が多い模様であった。 補償の金額については補償規定により一定の金額が決まっているため、これについては判 断の対象とはならず、判断の対象については「因果関係」「障害等級」「故意過失」等の判 断がこれに該当することになる。 この手続は、セカンドオピニオンを取得するようなイメージであり、紛争外解決手続きそ のものではない。この判断に拘束されることもなく、またこの判断とは別に訴えを提起する ことも禁止していない。被験者に外部の専門家又は委員会を探して判定を依頼することは困 難であることから、これらの専門家又は委員会については治験依頼者が紹介することとなる だろう。治験依頼者が社外に委員会を設置している場合は中立的な判定をすることを前提に、 そうした社外委員会を利用することも差し支えない。 また、費用については、「因果関係等の立証について被験者に負担を負わせない」という GCP省令のガイダンスに則っているため、治験依頼者の負担としている。 13 表 1 用語と定義 用語 定義 製造販売後 医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準に関する 臨床試験 省令(平成 16 年厚生労働省令第 171 号)第 2 条第 4 項に 規定する製造販売後臨床試験 説明文書 治験責任医師となるべき者に対して、GCP 第 50 条第 1 項 の規定により説明を行うために用いられる文書 対照薬 治験又は製造販売後臨床試験において被験薬と比較する目 的で用いられる既承認有効成分若しくは未承認有効成分を 含む製剤又はプラセボ 治験 医薬品・医療機器等の製造販売についての厚生労働大臣の 承認を受けるために申請時に添付すべき資料のうち、臨床 試験の試験成績に関する資料の収集を目的とする試験の実 施 治験依頼者 治験の依頼をした者 治験薬 被験薬及び対照薬(治験に係るものに限る) 治験実施機 関 治験実施計 画書 治験責任医 師 被験者 治験又は製造販売後臨床試験を行う医療機関 被験薬 有害事象 副作用 治験の計画書(いわゆるプロトコル) 出典 GCP 省令第 2 条第 1項 GCP 省令第 9 条 GCP 運用通知第 2 条解説の 2 薬機法第 2 条第 17 項 GCP 省令第 2 条第 16 項 GCP 省令第 2 条第 1項 GCP 省令第 2 条第 2項 GCP 省令第 2 条第 16 項 GCP 省令第 2 条第 3項 GCP 省令第 2 条第 9項 GCP 省令第 2 条 5 項 GCP 運用通知第 2 条解説の 10 実施医療機関において治験に係る業務を統括する医師又は 歯科医師 治験薬若しくは製造販売後臨床試験薬を投与される者又は 当該者の対照とされる者 治験の対象とされる薬物又は製造販売後臨床試験の対象と される医薬品 治験薬又は製造販売後臨床試験薬を投与された被験者に生 じたすべての好ましくない又は意図しない疾病又はその徴 候 ( 臨 床 検 査 値 の 以 上 を 含 む 。) を い い 、 当 該 治 験 薬 又 は 製 造販売後臨床試験薬との因果関係の有無を問わない。 治 験 薬 ( 対 照 薬 と し て 用 い ら れ る 市 販 薬 を 除 く 。) に つ い て G C P 運 用 通 知 第 2 は以下のとおり: 条解説 15 の 投与量に拘わらず、投与された治験薬に対するあらゆる有 (10) 害 で 意 図 し な い 反 応 ( 臨 床 検 査 値 の 異 常 を 含 む 。)。 す な わ ち、当該治験薬と有害事象との間の因果関係について、尐 なくとも合理的な可能性があり、因果関係を否定できない 反応を指す。因果関係の判定を行う際には、投与中止後の 消失、投与再開後の再発、既に当該被験薬又は類薬におい て因果関係が確立、交絡するリスク因子がない、曝露量・ 曝露期間との整合性がある、正確な既往歴の裏付けにより 被験薬の関与がほぼ間違いなく説明可能、併用治療が原因 である合理的な可能性がみられない等を参考にすることが できる。 市販薬については以下のとおり: 疾病の予防、診断、治療又は生理機能の調整のために用い られる通常の投与量範囲で投与された医薬品に対するあら ゆ る 有 害 で 意 図 し な い 反 応 ( 臨 床 検 査 値 の 異 常 を 含 む 。)。 14 用語 医療費 医療手当 補償金 遺族補償金 障害補償金 障害児養育 補償金 休業補償金 定義 すなわち、当該医薬品と有害事象との間の因果関係につい て、少なくとも合理的な可能性があり、因果関係を否定で きない反応を指す。 (なお、本ガイドラインにおいては、副作用という用語 を、副作用の中で主作用に対する副作用を意味する英語の side effect ではなく、薬物有害反応 adverse drug reaction に 対 応 す る 意 味 で 用 い て い る 。) 被験者に生じた治験に係る健康被害の治療に要した費用を 実費補償するものをいう。 被験者に生じた治験に係る健康被害のうち、入院を必要と するような健康被害に対して治療に伴う医療費以外の費用 の負担に着目して支払われるものをいう。定額補償をい う。 被験者が死亡又は一定程度の障害の状態となった場合に、 本人又は家族の生活補償などを目的として支払われる金銭 的補償のことをいう。 「補償金」のうち、被験者が死亡した場合に、その遺族の 生活の立て直し等を目的として支払われるものをいう。 「補償金」のうち、被験者が一定程度(患者対象治験では 国民年金・厚生年金保険制度障害認定基準で定める 1 級~ 3 級の場合、健康人対象治験では同 1 級~3 級又は政府労災 保険の第 8 級~第 14 級の場合)の障害の状態となった場 合に本人の生活補償などを目的として支払われるものをい う。障害の状態とは、症状が固定し治療の効果が期待でき ない状態又は症状が固定しないまま副作用による疾病につ いて初めて治療を受けた日から、原則として 1 年 6 ヶ月を 経過した後の状態をいう。 「補償金」のうち、18 歳未満の被験者が一定程度の障害の 状態となった場合(同上)に、障害児の養育などを目的と して養育する者又は被験者本人に対して支払われるものを いう。 被験者に生じた治験に係る健康被害に対する療養のため労 働することができず、そのために賃金を受けていないと き、その第 4 日目から支払われるものをいう。 15 出典 【参考資料】 表2 健康人対象治験における遺族補償金及び障害補償金の目安 (単位:万円) 表3 患者対象治験における障害補償金(1 級~3 級)及び遺族補償金の目安 (単位:万円) 表4 ワクチン治験における障害補償金、障害児養育補償金及び遺族補償金の目安 (単位:万円) 16
© Copyright 2024 ExpyDoc