新興国ものしりコラム 2015 年 4 月 15 日 インドネシアのパーム油産業 インドネシアはユドヨノ前大統領の任期(2004 年∼2014 年)中に、1997 年のアジア通貨・金融危 機、1998 年のスハルト政権崩壊による政治危機からの完全復活を果たし、実質国内総生産(GDP) 成長率を 6%台の安定的成長軌道に乗せることに成功しました。但し、ユドヨノ政権最後の 2、3 年 は主要輸出相手国である中国やインドの景気減速の影響を受け、成長率は 5%程度にまで下がっ てきています。このようなインドネシアの経済復活を支えたのは、ユドヨノ政権下での政治的安定や 消費者信頼感の回復などですが、この間、中国やインドの成長が加速した結果、資源価格が上昇し、 資源国であるインドネシアが潤ったことも大きく影響しています。 インドネシアは昔から、石油・天然ガス、石炭、銅、スズなどの鉱物資源やゴム、木材、魚類などの 農林水産物を豊富に産出する資源国として存在感を示してきましたが、過去 10 年余りのインドネシ ア経済の回復を支えたのは、従来からの資源というよりは、食用パーム油と火力発電用燃料炭の生 産・輸出急増であったことは疑いの余地がありません。2000 年代は中国やインドなど高成長を続け る資源消費国からの膨大な資源需要を背景として、資源価格、特に石油価格が暴騰しましたが、こ れが、石油の代替エネルギー開発を促し、中でも、植物から作られるエタノールや、世界的に埋蔵量 が豊富で価格が安い火力発電用燃料炭の需要増加をもたらしました。エタノールについては、米国 がトウモロコシを原料とするエタノール生産にインセンティブを与えたことから、食糧・飼料としても需 要のあるトウモロコシ、大豆などの価格上昇を招きました。これが、トウモロコシに代わる食用油とし てのパーム油需要に火をつけたという訳です。この様に、インドネシアはニッチな資源に対する新た な需要の急拡大から恩恵を受けました。 インドネシアのパーム油生産量の推移ですが、1965 年に 17.4 万 MT(メトリック・トン)、1975 年 43.4 万 MT、1985 年 128 万 MT、1995 年 485 万 MT と緩やかに増加してきましたが、2000 年以降は、 2000 年 830 万 MT、2005 年 1,558 万 MT、2010 年 2,360 万 MT、2014 年 3,350 万 MT にまで急速に 拡大しました。2014 年の生産量は 1965 年の 192 倍と凄まじいばかりの成長です。世界食糧機構 (FAO)の統計では、2012 年のパーム油の世界生産量は約 5,000 万 MT で、同年のインドネシアの 生産量は 2,850 万 MT ですから、一ヶ国で世界生産の半分以上を占めています。もちろん、インドネ シアは世界最大のパーム油生産国ですが(2 位はマレーシア)、今後も生産量は拡大する見込みで、 2020 年には 4,000 万 MT に達すると見られています(資料:Index mundi、インドネシア農業省など)。 2013 年のパーム油の輸出は 192 億米ドルで、インドネシアの輸出全体の 10.5%を占め、非石油・ 天然ガス輸出の中で 2 番目の品目になっています。因みに、鉱物性燃料(燃料炭)の輸出は 247 億 米ドルでシェアは 13.6%、最大の輸出品目です。 1 世界銀行によれば、パーム油の約 50%は未精製の原油(Crude Palm Oil)として輸出され、国内 で精製されるパーム油の約 50%がクッキングオイルに、残りはエタノールやバイオケミカル用に精 製され、輸出及び国内消費されています。パーム油は、インドでは主に菜種油に代わるクッキング油 として消費されるようですが、中国などでは大豆油、菜種油に代わるクッキング油として利用される 他、インスタント食品やチョコレートなどの食品加工・製造用油として利用されている様です。特に、 食品加工・製造用油としての需要は世界的に伸びていると言われます。また、今後、バイオエタノー ル、バイオケミカルの分野での利用拡大が期待されています。いずれにしても、インドネシアの課題 は、国内の精製能力を高め、付加価値をつけたパーム油製品の輸出を拡大していくことではないか と思います。 パーム油生産に使われるアブラヤシは、成長すれば長い間次々と実を着けることから、生産効率 が高い植物です。また、アブラヤシは赤道に近い緯度の熱帯で生育することから、インドネシアやマ レーシアが地理的優位性を有するとされます。そのため、インドネシアではスマトラ島やカリマンタン 島の熱帯雨林を切り拓いて大規模なプランテーションが次々とできています。 他方、2000 年代のパーム油ブームに乗って、国営企業や大手財閥系企業がパーム油事業に参 入すると共に、中小規模の農家も参入したため、熱帯雨林の乱開発が問題になっています。そのた め、世界自然保護基金(WWF)、業界団体、大手企業を中心として、2004 年に持続可能性を確保す る組織と制度が創設されました。「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」がその組織で、 この組織が、「原則と基準」を定め、これに沿って「持続可能なパーム油認証」が出来ています。ただ し、認証制度を中小業者にまで広げて行くことが今後の課題と言えます。 <関連するファンドに関わる事項> 投資信託は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象としており、当該資産の市場に おける取引価格の変動や為替の変動等により、基準価額が変動し損失が生じる可能性があります。従いまし て、投資元本が保証されているものではありません。投資信託は、預金または保険契約ではなく、預金保険 機構または保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。また、登録金融機関でご購入の投資信託は、 投資者保護基金の保護の対象ではありません。購入の申込みにあたりましては「投資信託説明書(交付目論 見書)」および「契約締結前交付書面(目論見書補完書面等)」を販売会社からお受け取りの上、十分にその 内容をご確認いただき、ご自身でご判断ください。 お客様には投資信託のご購入にあたり、以下の費用をご負担いただきます。 購入時に直接ご負担頂く費用 - 購入時手数料 上限 3.78%(税込) 換金時に直接ご負担頂く費用 - 信託財産留保額 上限 0.50% 投資信託の保有期間中に間接的にご負担頂く費用 - 運用管理費用(信託報酬) 上限年 2.16% (税込) その他費用 - 上記以外に保有期間などに応じてご負担頂く費用があります。「投資信託説明書(交付目論見書)」、「契約 締結前交付書面(目論見書補完書面等)」などでご確認ください。 *上記に記載のリスクや費用につきましては、一般的な投資信託を想定しております。費用の料率につきまし ては、HSBC 投信が運用する全ての投資信託のうち、徴収するそれぞれの費用項目における最高の料率を 2 記載しております。投資信託に係るリスクや費用はそれぞれの投資信託により異なりますので、ご投資をされ る際には、かならず「投資信託説明書(交付目論見書)」をご覧ください。 HSBC 投信株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 308 号 一般社団法人 投資信託協会会員 / 一般社団法人 日本投資顧問業協会会員 当資料のお取扱いにおけるご注意 当資料は、HSBC投信株式会社(以下、当社)が投資者の皆さまへの情報提供を目的として作成したものであり、特定 の投資信託等の売買を推奨・勧誘するものではありません。 当資料は信頼に足ると判断した情報に基づき作成していますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありませ ん。また、データ等は過去の実績あるいは予想を示したものであり、将来の成果を示唆するものではありません。 当資料の記載内容等は作成時点のものであり、今後変更されることがあります。 当社は、当資料に含まれている情報について更新する義務を一切負いません。 3
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