新興国ものしりコラム 2015 年 5 月 1 日 中国の壮大な夢、21 世紀のシルクロード 2014 年 11 月 10 日から 11 日にかけて、習近平中国国家主席がホスト役を務めてアジア太平洋 経済協力(APEC)首脳会議が開催されました。APEC は環太平洋 21 ヶ国・地域の首脳が一堂に会 するとあって、ホスト役の習近平主席の意気込みを感じさせるもので、北京周辺の工場の一時操業 停止や自家用車の市中心部からの締め出しなどの強硬手段によって、普段は深刻な大気汚染で灰 色に霞む北京の空を、この時ばかりは澄み渡る青空に変えてしまいました。 この会議で、習近平主席が行った基調演説は、中国がアジア太平洋地域の経済発展の中心的役 割を担うことを高らかに謳い上げたものでした。共産党機関紙の人民網は、APEC での成果を「十大 収穫」として列挙しましたが、そのトップに挙げられたアジア太平洋自由貿易協定(FTAAP)の実現と 並んで、中国が「一帯一路」と呼ぶ「21 世紀のシルクロード」構想が注目を集めました。習近平主席 が 2012 年 11 月の総書記就任以来打ち出していた「中国の夢(中華民族の偉大なる復興)」の理念 は、翌年の共産党全国代表大会(全人代)において共産党の新しい「統治理念」となりましたが、「21 世紀のシルクロード」はその具体的構想の一つです。 「一帯一路」と呼ばれる「21 世紀のシルクロード」構想は、中国、中央アジア、欧州を結ぶ陸の「シ ルクロード経済圏(ベルト=帯)」と、中国、東南アジア、南アジア、アフリカ、中近東、欧州を結ぶ「海 のシルクロード(路)」によって構成されています。 「シルクロード経済圏」は、中国の新疆ウィグル自治区のウルムチを起点として(ウルムチまでは 高速鉄道が既に開業済み)、中国の西北国境イリ・カザフ自治州ホルゴスを経て、カザフスタン、ウ ズベキスタン、イラン、トルコ、ドイツを繋ぐ「中亜高速鉄道」構想、北京を起点としてロシアのハバロ フスクからシベリア鉄道を経由してロンドンに至る「欧亜高速鉄道」構想の 2 つからなります。厳密に は、「中亜高速鉄道」構想が「シルクロード経済圏」と呼ぶに相応しいものでしょう。 古代のシルクロードは、中国の長安(現在の西安)から、現在の新疆ウィグル自治区を通り、中央 アジア、トルコを経てローマに至る通商路であると共に、インドに通じた仏教伝来の路でもありました。 古代シルクロードには、タクラマカン砂漠の南麓を通りパミール高原に至る「西域南道」、天山山脈の 南麓を通りカシュガルを経てパミール高原に至る「天山南路」、天山山脈の北麓を通りサマルカンド に至る「天山北路」の 3 つのルートがあります。 筆者は 20 年近く前に、西安から「天山北路」を利用して、敦煌、蘭州、トルファン、ウルムチ、クチ ャまで約 2 週間をかけて旅行したことがありますが、これは仏教伝来のルートを辿ったもので、シル クロードのほんの一部を踏破したにすぎません。「シルクロード経済圏」の「中亜高速鉄道」構想はこ の「天山北路」に沿ったルートと言えると思います。 中国にとり「シルクロード経済圏」が経済的に意味があるのは、「中亜高速鉄道」が中国から欧州 に至る鉄道輸送ルートであり、船舶での輸送に比べて大幅な輸送日数の短縮に繋がること、既に完 成している新疆ウィグル自治区と中国沿岸部を結ぶ天然ガス・石油パイプラインを、更に、中央アジ ア、中近東の石油・天然ガス産出地帯と結ぶことができることにあります。道路・鉄道、パイプライン を繋ぐことによって沿線一帯を経済圏として結びつけることができる訳です。 1 中国はこの「シルクロード経済圏」のインフラ開発のため、400 億米ドル規模の「シルクロード基 金」の創設を提案していますが、それだけ「シルクロート経済圏」の経済効果が大きいと見ているた めでしょう。 「海のシルクロード」は、コロンブスのアメリカ発見前に、中国から出航して南アジアを経由してアフ リカ、中東に到達した(北米に到達したという説もある)という明朝時代の「鄭和(ていわ)の大航海」 を辿るもので、起点を中国南部福建省の福州とし、ベトナムのハノイ、インドネシアのジャカルタ、スリ ランカのコロンボ、インドのコルコタを経て、インド洋を横断し、アフリカ大陸はケニアのナイロビ、中 東の紅海、スエズ運河を経て地中海に入り、ギリシャのアテネ、イタリアのヴェニスと繋ぎ、欧州大陸 に上陸、陸路北上してオランダのロッテルダムに至るという長大なルートです。中国はこの構想に基 づき、既にスリランカやギリシャでの港湾整備で資金協力を行っています。 この海のシルクロード建設には、同じく中国が提唱し設立準備が進められている「アジアインフラ 投資銀行(AIIB)」(資本金 1,000 億米ドル、2015 年 3 月末に申込みが締め切られた創設メンバーは 57 ヶ国となった模様)が資金協力をするものと見られています。 「21 世紀のシルクロード」が完成した暁には、中国はアジアの超大国の地位を盤石にしていること でしょう。 <関連するファンドに関わる事項> 投資信託は、主に国内外の株式や公社債等の値動きのある証券を投資対象としており、当該資産の市場に おける取引価格の変動や為替の変動等により、基準価額が変動し損失が生じる可能性があります。従いまし て、投資元本が保証されているものではありません。投資信託は、預金または保険契約ではなく、預金保険 機構または保険契約者保護機構の保護の対象ではありません。また、登録金融機関でご購入の投資信託は、 投資者保護基金の保護の対象ではありません。購入の申込みにあたりましては「投資信託説明書(交付目論 見書)」および「契約締結前交付書面(目論見書補完書面等)」を販売会社からお受け取りの上、十分にその 内容をご確認いただき、ご自身でご判断ください。 お客様には投資信託のご購入にあたり、以下の費用をご負担いただきます。 購入時に直接ご負担頂く費用 - 購入時手数料 上限 3.78%(税込) 換金時に直接ご負担頂く費用 - 信託財産留保額 上限 0.50% 投資信託の保有期間中に間接的にご負担頂く費用 - 運用管理費用(信託報酬) 上限年 2.16% (税込) その他費用 - 上記以外に保有期間などに応じてご負担頂く費用があります。「投資信託説明書(交付目論見書)」、「契約 締結前交付書面(目論見書補完書面等)」などでご確認ください。 *上記に記載のリスクや費用につきましては、一般的な投資信託を想定しております。費用の料率につきまし ては、HSBC 投信が運用する全ての投資信託のうち、徴収するそれぞれの費用項目における最高の料率を 記載しております。投資信託に係るリスクや費用はそれぞれの投資信託により異なりますので、ご投資をされ る際には、かならず「投資信託説明書(交付目論見書)」をご覧ください。 HSBC 投信株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 308 号 一般社団法人 投資信託協会会員 / 一般社団法人 日本投資顧問業協会会員 2 当資料のお取扱いにおけるご注意 当資料は、HSBC投信株式会社(以下、当社)が投資者の皆さまへの情報提供を目的として作成したものであり、特定 の投資信託等の売買を推奨・勧誘するものではありません。 当資料は信頼に足ると判断した情報に基づき作成していますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありませ ん。また、データ等は過去の実績あるいは予想を示したものであり、将来の成果を示唆するものではありません。 当資料の記載内容等は作成時点のものであり、今後変更されることがあります。 当社は、当資料に含まれている情報について更新する義務を一切負いません。 3
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