種々の基地組織を有するレアアースレス球状 黒鉛鋳鉄の疲労強度

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種々の基地組織を有するレアアースレス球状黒鉛鋳鉄の疲労強度
研究論文 特集 「鋳造品の高強度化技術と評価法」
種々の基地組織を有するレアアースレス球状
黒鉛鋳鉄の疲労強度
船 曳 崇 史* 清 水 一 道* 河 合 秀 樹* 山 本 将 大**
Research Article
J. JFS, Vol. 87, No. 6(2015)pp. 369 ~ 374
Special Issue on the Latest Studies and Technologies to Evaluate Castings
Fatigue Strength of Rare Earth-Less Spheroidal Graphite Cast
Iron with Various Matrix Structures
Takafumi Funabiki*, Kazumichi Shimizu*,
Hideki Kawai* and Masahiro Yamamoto**
Spheroidal graphite cast iron is widely used for various purposes due to its excellent mechanical properties. As the
spheroidization ratio of graphite influences the mechanical properties, rare earth is used as a graphite nodularizer to improve spheroidization. However, given that the supply of rare earth mainly relies on imports from overseas, there is need for
the development of spheroidal graphite cast iron with reduced rare earth. For this reason, this study investigated the fatigue
strength of spheroidal graphite cast irons without using rare earth.
Specimens of spheroidal graphite cast iron containing rare earth and those not containing rare earth were used. The matrices were all ferrite, pearlite ratio 30%, and all perlite. Fatigue test was carried out using a plane bending fatigue test machine. The stop condition of fatigue test was after 107 time repetitions or fracture of specimen. The load stress of specimens
that did not fracture was taken to be the fatigue strength.
The results of the fatigue test showed that the σw of specimens not containing rare earth was reduced compared to those
containing rare earth for each matrix. Casting defects existed inside the specimens. The effects of casting defects on fatigue
strength were evaluated using a
parameter model, stress intensity factor range ∆K, and threshold stress intensity
factor ∆Kth. As a result, it was found that the difference between the ∆K and ∆Kth of specimens not containing rare earth
increased, resulting in reduced fatigue strength.
Keywords : spheroidal graphite cast iron, rare earth, fatigue strength, casting defect,
parameter model
成分として Si や Mg,そして,Ce や La などの希土類元素
1.緒 言
(レアアース)が含有されている.主な元素の効果として,
球状黒鉛鋳鉄はフェライトやパーライトなどの基地組
Mg は脱酸,脱硫によって O や S との化合物を生成し黒鉛
織と球状の黒鉛から構成されており,片状黒鉛鋳鉄と比較
の核となる効果がある.そして,レアアース(以下,RE)
して基地組織の連続性が高いため,引張強さや伸びなど
に関しても,添加量が微少ながら黒鉛の球状化を安定させ
1)
の機械的性質に優れている .そのため,強度部材として
る作用があり,球状黒鉛の核生成や球状化阻害元素の中和
自動車部品等に幅広く用いられており,使用される部材に
などによって黒鉛の球状化率が向上し,黒鉛粒数が増加す
よって基地組織も異なる.球状黒鉛鋳鉄の機械的性質に影
る.そのため,高品質な球状黒鉛鋳鉄を製造するために,
響を与える要素の一つとして,黒鉛の球状化率や粒数があ
RE は欠かせない存在となっている .
2)
り ,球状化率が 80% 以上で良好な性質を示すことが知ら
3)
4)
しかしながら,日本国内における RE の生産量はわずか
れている .
であり,海外からの輸入に頼っているのが現状であるた
良好な機械的性質を有する球状黒鉛鋳鉄を製造する際
め,今後,安定した供給が困難となる可能性がある .以
に用いられるのが黒鉛の球状化剤であり,球状化剤の主
上の理由から,球状化剤の RE 含有量を低減した場合でも,
5)
受付日:平成 27 年 1 月 22 日,受理日:平成 27 年 5 月 11 日(Received on January 22, 2015; Accepted on May 11, 2015)
*
**
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室蘭工業大学大学院工学研究科 Graduate School of Engineering, Muroran Institute of Technology
佐藤鋳工
(株)
Sato Chuko Co., Ltd.
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鋳 造 工 学 第 87 巻(2015)第 6 号
機械的性質が劣らない球状黒鉛鋳鉄の開発が必要となって
Table 3 Chemical composition of molten metals(mass%).
溶湯の化学成分.
いる.
球状黒鉛鋳鉄が多く使用される自動車部品は薄肉である
場合が多いことから,RE を低減させることでひけ巣が生
6)
じやすくなる .ひけ巣の有無による影響が大きい機械的
性質の一つとして疲労強度があり,機械構造用部品の破損
原因の大半が金属疲労によるものであることから,疲労強
度の測定は重要となっている
7, 8)
.
そこで本研究では,一般的に使用されている RE を含有
Sample
FDI
RE
PDI(30)
0%
PDI
FDI
RE
PDI(30)
2.0%
PDI
C
3.84
3.84
3.83
3.80
3.80
3.82
Si
2.54
2.54
2.60
2.62
2.62
2.60
Mn
0.39
0.39
0.55
0.34
0.34
0.57
S
0.006
0.006
0.007
0.007
0.007
0.007
Mg
0.037
0.037
0.037
0.038
0.038
0.038
P
0.015
0.015
0.016
0.016
0.016
0.017
した球状化剤と RE を含有していない球状化剤を使用し,
種々の基地組織を有する球状黒鉛鋳鉄の疲労強度を平面曲
黒鉛の球状化率と粒数を確認後,供試材を 3% ナイター
げ疲労試験によって評価を行うことで,RE の有無によっ
ルで腐食し,光学顕微鏡を用いた 200 倍と走査型電子顕微
て疲労強度に及ぼす影響について調査した.
鏡を用いた 2000 倍にて組織観察を行った.
2. 2 引張試験及び硬さ試験
2.実験方法
万能試験機を使用し,各供試材において引張試験にて
2. 1 供試材の溶製と組織観察
引張強度を測定した.引張試験片は JISZ2201 に規定され
RE 含有量を 0%,2.0% の球状化剤を用いて薄肉板状供
ている平行部直径 14mm,平行部の長さ 60mm,標点距離
試材を溶製した.使用した各球状化剤の化学成分を Table 1
50mm とした JIS4 号試験片を使用した.
に示す.供試材として用いた球状黒鉛鋳鉄は,原材料であ
硬さ試験にはビッカース硬さ試験機を使用した.対面角
る鉄スクラップに加炭材を加えて溶解後,サンドイッチ法
136deg. のダイヤモンド正四角錘圧子にて試験荷重を 30kgf,
にて球状化処理を行った.接種剤は Table 2 に示す化学成
荷重保持時間 10s として 10 点平均にて測定を行った.測定
分のものを,取鍋接種及び注湯流接種にて統一して使用し
したビッカース硬さをブリネル硬さに換算を行った.
た.供試材を 120×40×6mm の薄肉板状とし,砂型に出湯
2. 3 疲労試験と疲労破面観察
温度 1650K にて注湯した.各供試材の基地組織はフェライ
溶製した薄肉板状供試材を Fig. 1 に示す寸法の平板平
ト地(以下,FDI)
,パーライト地率約 30% のブルスアイ(以
滑試験片に加工した.疲労試験には,平面曲げ疲労試験機
下,PDI(30)
)
,パーライト地(以下,PDI)の 3 種類とし
を用いた.実験条件は応力比-1 の両振りとし,繰返し速
た.FDI と PDI は熱処理を施し,組織の調整を行った.熱
度 20Hz の正弦波荷重として,室温大気中にて平面曲げ疲
処理条件として,FDI は 1183K で 3h 保持した後,623K ま
労試験を行った.試験停止条件を試験片の負荷応力が試
で 80K/h の割合で炉冷を行った後,空冷とした.PDI の熱
保持した後,強制空冷とした.各供試材の球状化処理後の
��
����
溶湯における化学成分を Table 3 に示す.
����
������� �
�
各供試材における黒鉛の球状化率及び粒数の測定を行っ
�
処理条件は 1153K で 1h 保持し,1073K まで炉冷し更に 1h
���
��
��
を 100 倍とした写真を 5 視野撮影し,黒鉛測定用の画像処
��
た.測定方法は JISG5502 に準じ,光学顕微鏡にて,倍率
理ソフトにて算出した.
��
���
Table 1 Chemical composition of nodularizer(mass%).
�
���
�
球状化剤の化学成分.
Sample Si
Mg
RE0% 46.27 5.80
RE2.0% 46.62 5.95
Ca
3.02
2.36
Al
0.81
-
RE
2.03
Table 2 Chemical composition of inoculant(mass%).
接種剤の化学成分.
Si
73.7
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Ca
1.75
370
Ba
0.93
Al
2.06
Fe
Bal.
�
�
���
� ��
�
��
��
��
��
unit : mm
Fig. 1 Shape and dimension of plane bending fatigue
specimen.
平面曲げ疲労試験片の形状と寸法.
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種々の基地組織を有するレアアースレス球状黒鉛鋳鉄の疲労強度
験開始時における負荷応力の 70% まで低下 , または繰返
7
し数が 1×10 回に達した場合とし,未破断であった試験
片の負荷応力を疲労強度 σw とした.負荷応力が低下した
Table 4 Spheroidization, nodule count, and static
mechanical properties of each specimen.
各供試材の黒鉛球状化率,黒鉛粒数及び静的機械的
性質.
試験片をエタノールとドライアイスを用いて 223K 以下で
5 分間保持して冷却後,衝撃を加えることで脆性破壊させ
た.破断した試験片の破面をマクロ観察及び走査型電子顕
微鏡を用いたミクロ観察を行った.
FDI
RE
0%
PDI(30)
RE
2.0%
PDI(30)
PDI
3.実験結果及び考察
3. 1 供試材の組織及び静的機械的性質
Fig. 2 及び Fig. 3 に各供試材における 200 倍と 2000 倍
Spheroidization
[%]
Sample
FDI
PDI
88
88
92
85
83
89
Nodule
count
[counts/mm2]
Tensile
strength
[MPa]
291
271
236
280
278
253
Elongation
[%]
440
518
935
431
504
965
22
17
9
24
19
8
Brinell
hardness
[HB]
140
179
293
140
170
302
の組織写真を示す.Fig. 2,Fig. 3 より RE の有無によって
各基地組織に大きな変化は確認されず,鋳放し材である
質を示した.黒鉛粒数については RE0% では FDI で 291
PDI(30)において,チルは生じていなかった.
個 /mm ,PDI(30)で 271 個 /mm ,PDI で 236 個 /mm と
2
2
2
2
Table 4 に供試材における黒鉛の球状化率,黒鉛粒数お
な り,RE2.0% で は FDI で 280 個 /mm ,PDI(30)で 278
よび各機械的性質を示す.引張強度と伸びについては Y
PDI で 253 個 /mm となっており,
RE の有無によっ
個 /mm ,
ブロックから採取した試験片による試験結果であるが,疲
て粒数に変化は生じていなかった.
2
2
労試験に使用した薄肉供試材と各基地組織に大きな変化は
RE の有無によって引張強度,伸び,硬さ等,各機械的
確認されなかったため,薄肉供試材においても同程度の数
性質に差は生じなかった.
値を有していると考えられる.Table 4 より球状化率に関
3. 2 各組織における疲労特性に及ぼすひけ巣欠陥の影響
しては各 RE 含有量において 80% 以上となり,良好な性
平面曲げ疲労試験によって得られた各供試材の試験結
果について横軸を繰り返し数,縦軸を片側の応力振幅と
FDI
PDI(30)
した S-N 線図を Fig. 4 に示す.Fig. 4 より,各疲労強度は
RE2.0% において FDI で σw =250MPa,PDI(30)で σw =310
PDI
MPa,PDI で σw =390MPa となり,RE0% では FDI で σw =
RE
0%
220MPa,
PDI(30)で σw =270MPa,
PDI で σw =300MPaとなっ
た.各供試材の RE の有無による疲労強度の低下率は FDI で
10%,PDI(30)で 13%,PDI で 23% となり,PDI の低下率
が FDI,PDI(30)と比較して大きくなった.
RE
2.0%
100μm
PDI (RE2.0%)
PDI (RE0%)
PDI(30) (RE2.0%)
PDI(30) (RE0%)
FDI (RE2.0%)
FDI (RE0%)
500
Fig. 2 Microstructure of specimens by optical microscope.
450
光学顕微鏡による試験片の組織写真.
FDI
PDI(30)
Stress , MPa
400
PDI
RE
0%
390MPa
350
310MPa
300MPa
300
270MPa
250
250MPa
220MPa
200
RE
2.0%
10μm
Fig. 3 Microstructure of specimens by scanning electron microscope.
SEM による試験片の組織写真.
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150 4
10
10
5
6
10
10
7
10
8
Number of cycles to failure , cycles
Fig. 4 S-N diagram.
S-N 線図.
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RE0%
さによる相関性も確認されなかった.
RE2.0%
破面のミクロ観察により確認された各 RE 含有量 にお
FDI
ける鋳造欠陥を Fig. 6 に示す.RE2.0% では各組織におい
PDI(30)
て,微少な欠陥が少数確認され,RE0% では RE2.0% の試
験片と比較して,大きな鋳造欠陥が確認された.試験片内
PDI
部に存在する鋳造欠陥は,き裂の発生起点や進展速度に
2mm
影響し破断に至る原因となる . そこで,村上らが提案した
9)
パラメータモデルから,鋳造欠陥の評価を行った .
Fig. 5 Macro observation of fracture surface.
パラメータモデルは鋳造欠陥が内接する矩形範囲面
破面のマクロ観察.
積の平方根のことであり,欠陥の面積をき裂長さに代替す
ることができる.これを用いることで形状が複雑な鋳造欠
各試験片における破面のマクロ観察結果の一部を Fig. 5
陥でも比較が可能になり,この値が大きくなると,き裂
に示す.Fig. 5 における RE2.0% の PDI など試験片によっ
の起点となりやすくなる.
ては,凹凸が顕著なものが存在したが,これは RE2.0%,
した結果,各組織において RE 含有量 2.0 % の試験片では
RE0% の両方で確認されたため,RE 使用の有無には依存
していないと考えられる.また,応力の高低と凹凸の大き
FDI
パラメータモデルを適用
が 30 ~ 50μm であるのに比較して RE0% の試験片で
は 50 ~ 250μm の大きな鋳造欠陥が確認された.
PDI(30)
PDI
RE
0%
100μm
100μm
100μm
25μm
25μm
25μm
RE
2.0%
Fig. 6 Observed casting defect.
観察された鋳造欠陥.
FDI
PDI(30)
PDI
50μm
Fig. 7 Casting defect of maximum measurement in RE0%.
RE0% における最大寸法の鋳造欠陥.
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種々の基地組織を有するレアアースレス球状黒鉛鋳鉄の疲労強度
の値が最大となった鋳造欠陥において以下の(1)式
10)
を用いて各試験片における疲労強度 σw の推定を行った .
HV は(1)式と同様に各試験片のビッカース硬さ試験に
Fig. 7 に RE0% の各試験片における最大寸法の鋳造欠陥を
最小の ∆K を示しており,∆K が ∆Kth を上回った場合,そ
示す.RE2.0% の試験片においては Fig. 6 に示した鋳造欠陥
の欠陥からき裂が伝播し破断に至る原因となった可能性
が最大寸法となっていた.
がある.これら
(1)
α は欠陥位置による係数で表面近傍では 1.43,内部では 1.56
よって得られた値を使用した.∆Kth は,き裂が伝播する
の値から ∆K,∆Kth を算出し,疲労
強度低下との関連性について調査を行った.
各試験片における最大寸法の鋳造欠陥における
,
∆K,∆Kth を Table 5 に示す.Table 5 より RE2.0% の試験
である.HV は各試験片のビッカース硬さ試験によって得ら
片では ∆K/∆Kth が 1.0 以下となり,疲労強度に与える影響
れた値を使用した.Fig. 8 に(1)式によって推定した疲労
は小さいと推察される.RE0% の試験片に存在する鋳造欠
強度と疲労試験によって得られた疲労強度を示す.Fig. 8 よ
陥 の ∆K/∆Kth の 値 は FDI で 1.24,PDI(30)で 1.37,PDI
り疲労強度が各供試材において,実験値よりも推定値が低
で 1.47 となり,このことが RE2.0% の試験片と比較して
くなる傾向となっており,PDI では RE の有無による疲労
疲労強度を低下させた要因と考えられる.
強度の低下率は同等であったが,FDI, PDI(30)において
PDI において疲労強度の低下率が大きくなった要因とし
RE0% では RE2.0% と比較して低下率が大きくなった.
て,∆K/∆Kth の値が FDI,PDI(30)と比較して大きくなっ
次に
ていたことに加えて,パーライト基地材では切欠き感度が
の値を用いて,最大寸法の鋳造欠陥におけ
る応力場の強さを表す応力拡大係数範囲 ∆K を算出した.
11)
高く,ひけ巣による応力集中によってき裂が生じやすいこ
13)
∆K は以下の(2)式から求めた .
とが知られており ,RE0% の試験片において鋳造欠陥が
(2)
大きくなることで疲労強度の低下率が大きくなったと推
ここで α は鋳造欠陥の存在位置による定数であり,内部欠陥
の場合は α=0.5,表面近傍部に存在する欠陥の場合は α=
察される.
0.65 である.また,応力範囲 Δσ は計測対象の鋳造欠陥が存
Table 5 Parameters of casting defects with maximum
measurements.
在した試験片における表面の応力値 σmax-σmin の値を代入し
最大寸法の鋳造欠陥におけるパラメータ.
た.試験片表面からの内部欠陥の位置を考慮した場合には
代入する応力値が小さくなり,∆K の値は低下するが,各供
試材において内部欠陥の存在していた位置に大きな変化が
なかったため,低下率は同程度であると考えられる.さらに,
∆K の比較対象として,下限界応力拡大係数範囲 ∆Kth を算
12)
出した.∆Kth は以下の(3)式から求めた .
(3)
Estimate value
Experimental value
500
[μm]
ΔKmax
[MPa
]
ΔKthmax
[MPa
]
ΔK/ΔKth
FDI
253
6.94
5.59
1.24
PDI(30)
170
7.74
5.63
1.37
PDI
211
12.42
8.43
1.47
FDI
45
2.79
3.14
0.89
PDI(30)
31
2.89
3.21
0.90
PDI
44
4.70
4.99
0.94
Sample
RE
0%
RE
2.0%
max
Fatigue strength , MPa
4.結 言
400
球状化剤中の RE を 2.0% と 0% とした球状黒鉛鋳鉄を
使用して平面曲げ疲労試験を行うことで疲労強度に及ぼ
300
す RE の有無による影響について調べた結果,以下のこと
を明確にした.
1) RE0% の疲労強度は,FDI で 220MPa,PDI(30)で
200
270MPa,PDI で 300MPa となり,RE2.0% の試験片と
比較して FDI では 12%,PDI(30)では 13%,PDI で
100
は 23% 低下した.
2) 破面に確認された鋳造欠陥を ∆K,∆Kth で評価した
0
RE 0%
結果,RE0% の試験片における鋳造欠陥の ∆K/∆Kth の
2.0%
FDI
0% 2.0%
PDI(30)
0%
2.0%
PDI
Fig. 8 Comparison of estimate value and experimental
value.
推定値と実験値の比較.
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値が 1.24 ~ 1.47 となり,1.0 以下であった RE2.0% の
試験片と比較して大きくなり,疲労強度が低下したと
推察される.
3)
PDI における疲労強度の低下率が大きくなった要因
として,∆K/∆Kth の値が大きくなっており,更にパー
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ライト率が高いほどひけ巣による切欠き感受性が高
6)山本展也,辻寛明:鋳造工学 84(2012)732
くなることが要因として推察される.
7)田中真人,清水一道,伊藤大二郎,成瀬健:鋳造工学
82(2010)344
8)田村宏,杉山好弘,白木尚人,松坂慶太,梅原努,宇
謝辞
最後に,試験片製作に協力戴いた株式会社真岡製作所
安西雄一郎氏,実験に協力戴いた室蘭工業大学大学院 戸
舘海灯氏に感謝申し上げます.
佐見兵衛:鋳造工学 73(2001)605
9)村上敬宜:金属疲労微小欠陥と介在物の影響(養賢堂)
(1993)54
10)白木尚人,渡辺拓也,菅野利猛:鋳造工学 86(2014)
参考文献
1)中江秀雄:新版 鋳造工学(産業図書)
(2008)48
2)鈴木勇佑,鈴木孝夫:鋳造工学 84(2012)671
3)藤田忠男:鋳物 40(1968)300
4)小綿利憲,平塚貞人,千葉雅則,鹿毛秀彦,藤島晋平
鋳造工学 84(2012)675
454
11)村上敬宜:金属疲労微小欠陥と介在物の影響(養賢堂)
(1993)17
12)村上敬宜:金属疲労微小欠陥と介在物の影響(養賢堂)
(1993)58
13)鈴木秀人:日本機械学会論文集 A58(1992)2028
5)中 山英明, 趙 柏 榮, 岡 田 和 彦: 鋳 造 工 学 84(2012)
695
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