平成26年度(後期) 昆虫生態学 II 試験問題 解答例

平 成 2 6 年 度(後期)
昆虫生態学 II 試験問題
問題1
25点
解答例
(各和訳2点、意味3点)
1)婚姻贈呈:交尾に際して、雄が雌に餌や精包など栄養物を渡す行動
2)ゲノム刷り込み(ゲノムインプリンティングでも可)
:個体内の2つの対立遺伝子のうち、
父方由来の遺伝子と母方由来の遺伝子で発現が異なること
3)繁殖分化可塑性(分化万能性でも可)
:社会性昆虫のワーカーが繁殖(繁殖分化)できる
能力
4)包括適応度:自分の子から得られる直接適応度と血縁者から得られる間接適応度の和
5)局所的配偶競争:雄の分散性が低いために兄弟間で生じる交尾相手を巡る競争
問題2
25点
(1)Coleoptera
2点
(2)雄の体サイズは一山型の分布であるが、ツノ(頭長)のサイズは二山型となっており、
雄の闘争形質であるツノに 2 型がある。5点
(3)配偶相手を巡る雄同士の闘争において、大きなツノを持つ雄が有利だと考えられる。そ
のため体サイズの大きな雄は大きなツノを持つように資源を配分している。一方、闘争に不利
な体サイズの小さな雄は、ツノを発達させることによる利益を得にくいので、闘争ではなく、
スニーキングによって交尾機会を得るように進化した。このように体サイズによって異なる戦
略をとるようになったために雄の闘争形質に二型が生じたと考えられる。進化生態学的に合理
的な推測なら可とする。8点
(4)体サイズに対するツノの相対サイズと闘争実験の勝敗の関係を分析し、戦略の切り替え
が起きている閾値と比較してみる。小型の雄が翅や飛翔筋など移動形質により資源配分してい
るか検証する。RNAi など遺伝子発現操作によりツノのサイズを人為的に変え、闘争の勝率に与
える効果を評価するなど。
(3)で立てた仮説に対して合理的な検証法が示されていれば可とす
る。10点
問題3
20点
(1)Asexual queen succession 5点
(2)個体からゲノム DNA を抽出し、親子判定に用いるために十分な多型のあるマイクロサテラ
イト遺伝子座のプライマーを用いて PCR を行い、遺伝子型を特定する。母系(女王由来)の対立
遺伝子のみをもっていれば単為生殖、父系(王由来)の対立遺伝子をもっていれば有性生殖の個体
と判定できる。また、シロアリの単為生殖は末端融合型のオートミクシスであるため、複数の遺伝
子座がすべてホモ型になっていることも、単為生殖由来の個体であることを示す強い証拠となる。
5点
(3)単為生殖によって生産される二次女王は巣の構造やワーカー、兵アリによって天敵や病気か
ら強固に守られており、自分で労働を行うことはない。一方、ワーカーや有翅虫は採餌、育児、営
巣、防衛、衛生管理などあらゆる労働を行わなければならい。そのため、個体のヘテローシス、集
団の遺伝的多様性を高く維持することが労働効率や病気への抵抗性を維持する上で必要であり、有
性生殖によって生産されると考えられる。10点
問題4
30点
(1)A: 1/2, B: 5/16 各2点
(2) rwn 
11 1
  
42 n
8点
(3)ワーカーからみて自分の息子は血縁度 1/2、女王が産む雄卵(兄弟)の血縁度は 1/4、これ
に対して他のワーカーが産む雄卵(甥)の血縁度は 5/32 と低い。そのため、ワーカーは自分で雄
卵を産みたいが、他のワーカーには産ませたくないという対立が生じる。8点
(4)1/4,
1/4 各5点