医薬品の製配販3層が連携して サプライチェーンの波動を改善

共通プラットフォーム
第 33
回
医薬品の製配販3層が連携して
サプライチェーンの波動を改善
度重なる薬価改定と割安なジェネリック医薬
品の普及によって、医薬品の売上高物流コスト
は年々上昇を続けている。しかし、業界には古
い商習慣が根強く残り、標準化や効率化の取り
組みは遅れている。サプライチェーンの最適化
には、製配販3層のコラボレーションが不可欠だ。
(進行役:本誌編集部)
最大の課題は平準化
メディセオ・ 長 福「 当 社の物 流センター の納
ても、〝昔からそうなんです〟と。理由はない」
す。 なぜその数の在 庫を置いているのか尋ね
大塚倉庫 濵長一彦 社長「当社は先日、『共
通プラットフォームの進 化 ~2 回 転 配 送を実
品 精 度 は今 や
・ 9 9 9 7 % に達 し て い ま
──メディセオはそこにメスを入れました。
現してトラック不 足を解 消する仕 組み~』 と
協力にあらためて感謝しています」
能になり、劇的に標準化が実現しました。ご
認めていただいたことで、1日2回納品が可
あるメディセオさんに発 注 当 日の午 後 納 品を
主催)を受賞しました。当社最大の納品先で
クス大 賞 』( 日 本ロジスティクスシステム協 会
名 付けた取り組みで、 今 年 度の『 ロジスティ
じことを医薬品業界でもやるために当社は現
によってそれが当たり前になっています。 同
当 社のグループ会 社で日 用 品 卸 P A L T A C
検品〟にできる。既にドラッグストア業界では、
必要がなくなります。 薬 局への納 品も〝 ノー
て、その精度で出荷すれば、仕分けや検品の
す。 センターで得 意 先 別にあらかじめ仕 分け
ませんでした。 そのように、 言われてみれば
ような負 担が掛かっているのかに気 付いてい
えることもなく、 そのことでメーカー にどの
前 中でなければいけないのかという理 由を考
とそうしてきたというだけで、 なぜ翌 日の午
ることで薬局は物流業務の手間から解放され
ス化し、納品は〝ノー検品〟にする。そうす
注に切り替える。 受 発 注や決 済をペーパーレ
をシステム化して、 需 要 予 測に基づく自 動 発
を電 話やファクスで注 文してきました。 それ
「 これまで薬 局では薬 剤 師さんが本 来の業
務の合間に在庫を管理して、足りない医薬品
在、調剤薬局に対し『プレサス(PRESUS)』
と呼ぶ物流最適化モデルを提案しています」
〝目からうろこ〟という話が、医薬品のサプラ
て本来の仕事に集中できる。同時に調剤過誤
物 流センター から届いた荷 物を検 品して得 意
た結果、在庫品の欠品率を従来の約5分の1
「 実 際、 神 奈 川で調 剤 薬 局を約 1 5 0 店 舗
展 開する薬 樹は、 3 年 前にプレサスを導 入し
や在庫の無駄や品切れも防止できます」
イチェーンにはたくさんあると思います」
先ごとに仕分ける作業に、毎朝1時間もかけ
となる0・6%に削減しました。調剤時間は
% 削 減、 ヒヤリハットは半 減、 他にも発 注
わない。病院内物流にしても、一番の問題点
たので、 検 品しなくていいなどとは夢にも思
──卸側のメリットは?
して、それ以降、最高益を更新しています」
作業の削減、緊急配送の8割削減などを実現
会い検 品がある。 それが当たり前とされてき
ていました。 薬 局に納 品する際にもまた立ち
「 例えば従 来、 当 社のM S( 医 薬 品 卸 販 売
担当者)やDS(配送担当者)は、自分宛に
前 中 納 品を当たり前と考えていました。 ずっ
メディセオ 長 福 恭 弘 社 長「 大 塚 倉 庫さん
から提案を受けるまで、当社は発注翌日の午
99
は医 薬 品の在 庫と需 要が合っていないことで
15
企 画 広 告
なります」
されて、 サプライチェーン全 体の無 駄がなく
要に合わせて計 画 的に納 品すれば波 動が改 善
る方も荷 受け側も苦 労しています。 実 際の需
初に注 文が集 中してしまう。 そのことで届け
帳簿上の月末在庫を減らそうとするので、月
ると物 量が極 端に跳ね上がる。 薬 局や病 院が
予測は立てやすい。それなのに毎月月初にな
や食 品と比べると、 需 要が安 定しているので
そのことばかり言っている。医薬品は日用品
えています。実際、私は毎月の経営会議でも
そが現在の医薬品卸の最大の経営課題だと考
メディセオ・ 長 福「 波 動の改 善です。 それこ
とを当 社は得 意 先の薬 局に提 案しているわけ
メディセオ・ 長 福「 E D Iについては同じこ
いと考えています」
んにご協 力いただければ、 そのテストをした
正しなければなりません。 もしメディセオさ
提にした従来のオペレーションやシステムを修
ます。そのためには納品伝票があることを前
えられるようになり、業務が大幅に効率化し
子 化すれば、 配 送の問い合わせにも即 座に答
て記 録に残しておく。 そうやって受 領 印を電
品した商 品の写 真もスマートフォンで撮 影し
トフォンの画 面に直 接サインしてもらう。 納
設置されているので、紙の伝票ではなくスマー
にはI D 運 輸が搭 載されたスマートフォンが
「そこで、当社はメーカーの納品伝票のペー
パーレス化を考えています。 当 社の納 品 車 両
ミスが発生しています」
で、集荷側と荷受け側の双方に余計な業務や
くならないからです。 情 報を紙で伝えること
手で仕分ける、いわゆる〝かるた取り〟はな
ICTに投資しても、納品伝票を車両ごとに
納 品 伝 票が紙のまま残っている限り、 いくら
でには至っ ておりません。 それはメーカー の
実現されましたが、事務作業の業務効率化ま
の物量波動はなくなり、配送車両の効率化は
んと共に構築した結果、午前納品と午後納品
を活 用した当 日 配 送の仕 組みをメディセオさ
Tを活 用したシステムを開 発しました。 これ
す。そのために『ID運輸』と名付けてIC
カーと卸間の効率的な物流プラットフォームを
ションを進めることで、最終的には医薬品メー
「メディセオさんとのコラボレー
大塚倉庫・濵長
われわれからも働き掛けていきたい」
てわれわれは荷受けの回数が減るわけですから、
い。メーカーの共同物流にしても、それによっ
アの大きな取 引 先と進めていけば効 果も大き
た話し合いを大 塚 倉 庫さんのように物 量シェ
の無 駄はなくしたいと考えています。 そうし
メディセオ・ 長 福「 当 然、 われわれも帰り便
センターを回って集荷してもらう」
セオさんの車 両が納 品を終えた後に、 当 社の
すぐにでも実 施できるとみています。 メディ
に改善されます。トラックの帰り便利用などは、
チェーン全 体で共 有すれば荷 役の手 間が大 幅
ち のパレットを使 っ て い る。 こ れ をサプライ
付きました。例えばパレットも現在は各メーカー
よって改 善できることがたくさんある点に気
転配送を実現したことで、卸さんとの連携に
回、 メディセオさんにご協 力いただいて2 回
カーだけで物 流を考えてきました。 しかし今
大 塚 倉 庫・ 濵 長「 こ れ ま で私 た ち は、 メー
メーカーと卸が手を結ぶ
改善していく必要があります」
が気 付いていない無 駄を指 摘し合って一 緒に
チェーン全 体のコストを下げるには、 お互い
する機 会が少な過ぎました。 医 薬 品サプライ
せよ、 これまではメーカー と卸が物 流の話を
が独 自で所 有していて、 卸さんは卸で自 分た
大 塚 倉 庫・ 濵 長「 メーカーとしても、 波 動を
ですから、川上の事情も理解できます。対応
つくり上げたいと願っています」
なくすことが重 要な取り組みだと考えていま
できるか担当部署に検討させます。いずれに
握手を交わすメディセオの長福恭弘社長(左)と大塚倉庫の濵長一彦社長