共通プラットフォーム 25 三笠製薬がプラットフォーム参画 BCP対応と輸送品質の向上を評価 第 回 「ゼノール」ブランドの製造元として知られる湿布薬 メーカーの三笠製薬が大塚倉庫の医薬品共通プラット フォームに新たに参画する。コストを抑えつつBCPに対 応し、輸送品質も向上したいという荷主企業の要望に 対して、 大塚倉庫の既存施設を利用した在庫の分散と共 同配送を提案して合意を得た。 (進行役:本誌編集部) 東日本大震災をきっかけに ──まずは三笠製薬の物流の概略から。 三笠製薬 青野甲子郎 取締役常務執行役員 生産物流本部長「生産拠点は静岡県掛川市の 『 掛 川 工 場 』 1カ所で、 工 場と同じ敷 地 内に ある『 静 岡 物 流センター』 から全 国に製 品を 医薬品を届けたいのに、元請けの特積み会社 が寸 断してしまった。 少しでも早く被 災 地に た。直接的な被害はなかったのですが、物流 を経験したことで、BCP(事 「さらに3・ 業継続計画)が大きな経営課題に浮上しまし ていました」 した場合の津波による被害を以前から懸念し トルの場所にあることから、東海地震が発生 を向 上するための改 革を進める形でB C Pに はなく、 逆に物 流コストを削 減し、 物 流 品 質 です。 コストを掛けてB C Pを整 備するので 対応できないか、大塚倉庫さんに相談したん りませんでした。そこで物流面からBCPに うのでその取り扱い免 許も要る。 ランニング 剤師を置かなければならないし、危険物を扱 の工場を造るとなると、製造管理者として薬 供給しています。工場は海岸から約500メー や地元の協力物流会社にどれだけ頼んでも『燃 対応できないか、と」 コストが大 幅に増えてしまい、 現 実 的ではあ 料 が な く て 行 け な い 』 と 言 う。 八 方 手 を 尽 ──かなりの難題ですね。 大塚倉庫 溝内順一 執行役員 営業本部長 ( 兼 ) 営 業 2 部 長「 まずは在 庫の分 散をご提 それまで取 引は全くなかったのですが、 ン車を1 台 回してくれました。 そのトラック プした場合でも供給を切らさずに済む。徳島 案しました。工場倉庫とは別に当社の徳島の いても提案をいただくようになりました」 は静 岡に比べて保 管 料が安い上、 当 社のネッ に医 薬 品だけでなく、 水や食 糧、 簡 易トイレ ──物流会社にBCP対応を相談したのは? トワーク上にある施 設ですので、 何かあっ た 施設に一定の在庫を保管しておくことで、掛 三笠製薬・青野「本来であれば工場を津波の ときにもすぐに在庫を動かせます」 など、 積める物を全て積んで被 災 地まで運ん 心配のない高台などに移してしまいたいとこ 三笠製薬・青野「それまで在庫の分散は考え 川 工 場と静 岡 物 流センター が万が一、 ストッ ろなのですが、それには大変な投資が必要に ていなかったのですが、 確かに一 定の在 庫が でもらいました。そのご縁でBCP対応につ なります。 メーン製 品の生 産だけを分 散する 別の場所にあれば、その在庫で急場を凌いで ト くしてたどり着いたのが大塚倉庫さんでした。 大塚倉庫 溝内順一 執行役 員 営業本部長(兼)営業2部長 ことも検討したのですが、小規模でも医薬品 10 11 企 画 広 告 ンター側ではトータルピッキングで取り出した ラベル貼りと仕 分け作 業を当 社 側に移し、 セ ベルを貼って出荷していました。それをやめて、 オーダーピッキングし た製 品 に、 一 つ一 つラ まで同センター では卸からの注 文に合わせて 流センターにおける荷 役の効 率 化です。 それ くかに知恵を絞りました。その一つが静岡物 も必 要になる。 そのコストをどう吸 収してい 大塚倉庫・溝内「 確かにそのままではコスト が上がってしまうのでは? ──しかし、 単 純に在 庫を分 散すればコスト て、残り0・4カ月分を分散する格好です」 工 場 在 庫は1カ月 分を切らないように管 理し のうち0・5カ月分は卸が持ってくれますので、 庫を持つという方針が出ているのですが、 そ た め にサプライチェーン全 体 で2カ月 分 の在 ました。医薬品は厚生労働省から安定供給の て大塚倉庫の施設で保管してもらうことにし ができます。その期間を0・4カ月と見積もっ いる間に工 場や物 流センター を復 旧すること 送 品 質にばらつきがあり、 顧 客からのクレー して委 託してきたのですが、 地 域によって輸 への配 送は元 請け会 社に配 車まで含めて一 括 せているところだったんです。 これまで全 国 を望んでいました。実は輸送品質に頭を悩ま 三 笠 製 薬・ 青 野「 む し ろ、 わ れ わ れ も そ れ んでしたか。 ──共同配送への切り替えに抵抗はありませ 輸送クレームがなくなった ウハウを吸収しようとする意欲を感じました」 した。 それだけでなく積 極 的にわれわれのノ ますが、 全て合 意していただくことができま 製 薬さんにとっては大きな決 断だったと思い ケースの仕 様に変 更していただくなど、 三 笠 トの導 入や、 誰でも作 業ができるような外 装 化を進める上で、業界標準型のレンタルパレッ できない運 営になっていました。 両 社の共 同 ると、 商 品を知り尽くしたプロでないと対 応 大塚倉庫・溝内「その結果、われわれから見 はずっと自前主義できました」 最後はやはり人ですので、配送を除けば物流 たいと考えています」 つなげることで皆さんに成 果を還 元していき カーを増やしていき、 それを新たな効 率 化に で、また一歩前に進みます。今後も参加メー フォームは三 笠 製 薬さんに参 加いただくこと 大塚倉庫・溝内「 当 社の医 薬 品 共 通プラット 春には新体制に完全に移行できる見込みです」 し進める大きな原 動 力になっています。 この 業部門も大変に喜んで、そのことが改革を推 ムは一 件も出ていません。 これには当 社の営 ちらもクレームがなくなっ た。 テストを始め は関東地区も共配に切り替えたのですが、こ 送クレームが全くなくなりました。 昨 年 秋に 「そこで昨年夏にテスト的に関西の一部で大 塚倉庫の共同配送を利用してみたところ、輸 しまう。解決策を見いだせずにいました」 ない。 一 時 的に良くなってもすぐ元に戻って 当する会社に注意を促しても、一向に改善し われわれが元 請けやクレームが出た地 区を担 してほしい〟と要請されていました。しかし、 ければならないので、営業部門から〝何とか 営 業マンがおわびに上がり、 始 末 書を書かな 大塚倉庫株式会社 大塚製薬をはじめ大塚グルー プ各社の物流を担う。食品分 野では全国約50カ所にストック ポイントを設置。そのインフラ をベースとして、近年はグルー プ以外の企業との共同物流「共 通プラットフォーム」事業を展 開している。 てから半 年 以 上たちますが、 これまでクレー 在庫をパレットごとフィルムでラッピングする ムが絶えませんでした。そのたびに各支店の 1945年、東京都練馬区にて 湿布薬「ゼノール」を製造販 売する製薬会社として創業。 現在は外用消炎鎮痛剤の「ゼ ノール」ブランドを主力として いる。工場および物流センター は静岡県掛川市にある。2014 年度の売上高は約73億円。 アップになります。 新たな在 庫 管 理システム だけで出 荷できるようにする。 それによって 三笠製薬株式会社 センター のスタッフを5 人から2 人に削 減で きると試算しました」 ──もともと庫内作業は自社運営なのですか。 三笠製薬・青野「 庫 内スタッフは全 員が当 社 の正社員です。医薬品の物流には何より品質 が求められます。 そのためにセンター には商 品の製 造 番 号や使 用 期 限を一つ一つカメラで 撮影するなどの管理設備を導入していますが、 三笠製薬 青野甲子郎 取締役 常務執行役員 生産物流本部長
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