三笠製薬がプラットフォーム参画 BCP対応と輸送品質の向上

共通プラットフォーム
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三笠製薬がプラットフォーム参画
BCP対応と輸送品質の向上を評価
第 回
「ゼノール」ブランドの製造元として知られる湿布薬
メーカーの三笠製薬が大塚倉庫の医薬品共通プラット
フォームに新たに参画する。コストを抑えつつBCPに対
応し、輸送品質も向上したいという荷主企業の要望に
対して、
大塚倉庫の既存施設を利用した在庫の分散と共
同配送を提案して合意を得た。
(進行役:本誌編集部)
東日本大震災をきっかけに
──まずは三笠製薬の物流の概略から。
三笠製薬 青野甲子郎 取締役常務執行役員
生産物流本部長「生産拠点は静岡県掛川市の
『 掛 川 工 場 』 1カ所で、 工 場と同じ敷 地 内に
ある『 静 岡 物 流センター』 から全 国に製 品を
医薬品を届けたいのに、元請けの特積み会社
が寸 断してしまった。 少しでも早く被 災 地に
た。直接的な被害はなかったのですが、物流
を経験したことで、BCP(事
「さらに3・
業継続計画)が大きな経営課題に浮上しまし
ていました」
した場合の津波による被害を以前から懸念し
トルの場所にあることから、東海地震が発生
を向 上するための改 革を進める形でB C Pに
はなく、 逆に物 流コストを削 減し、 物 流 品 質
です。 コストを掛けてB C Pを整 備するので
対応できないか、大塚倉庫さんに相談したん
りませんでした。そこで物流面からBCPに
うのでその取り扱い免 許も要る。 ランニング
剤師を置かなければならないし、危険物を扱
の工場を造るとなると、製造管理者として薬
供給しています。工場は海岸から約500メー
や地元の協力物流会社にどれだけ頼んでも『燃
対応できないか、と」
コストが大 幅に増えてしまい、 現 実 的ではあ
料 が な く て 行 け な い 』 と 言 う。 八 方 手 を 尽
──かなりの難題ですね。
大塚倉庫 溝内順一 執行役員 営業本部長
( 兼 ) 営 業 2 部 長「 まずは在 庫の分 散をご提
それまで取 引は全くなかったのですが、
ン車を1 台 回してくれました。 そのトラック
プした場合でも供給を切らさずに済む。徳島
案しました。工場倉庫とは別に当社の徳島の
いても提案をいただくようになりました」
は静 岡に比べて保 管 料が安い上、 当 社のネッ
に医 薬 品だけでなく、 水や食 糧、 簡 易トイレ
──物流会社にBCP対応を相談したのは?
トワーク上にある施 設ですので、 何かあっ た
施設に一定の在庫を保管しておくことで、掛
三笠製薬・青野「本来であれば工場を津波の
ときにもすぐに在庫を動かせます」
など、 積める物を全て積んで被 災 地まで運ん
心配のない高台などに移してしまいたいとこ
三笠製薬・青野「それまで在庫の分散は考え
川 工 場と静 岡 物 流センター が万が一、 ストッ
ろなのですが、それには大変な投資が必要に
ていなかったのですが、 確かに一 定の在 庫が
でもらいました。そのご縁でBCP対応につ
なります。 メーン製 品の生 産だけを分 散する
別の場所にあれば、その在庫で急場を凌いで
ト
くしてたどり着いたのが大塚倉庫さんでした。
大塚倉庫 溝内順一 執行役
員 営業本部長(兼)営業2部長
ことも検討したのですが、小規模でも医薬品
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企 画 広 告
ンター側ではトータルピッキングで取り出した
ラベル貼りと仕 分け作 業を当 社 側に移し、 セ
ベルを貼って出荷していました。それをやめて、
オーダーピッキングし た製 品 に、 一 つ一 つラ
まで同センター では卸からの注 文に合わせて
流センターにおける荷 役の効 率 化です。 それ
くかに知恵を絞りました。その一つが静岡物
も必 要になる。 そのコストをどう吸 収してい
大塚倉庫・溝内「 確かにそのままではコスト
が上がってしまうのでは?
──しかし、 単 純に在 庫を分 散すればコスト
て、残り0・4カ月分を分散する格好です」
工 場 在 庫は1カ月 分を切らないように管 理し
のうち0・5カ月分は卸が持ってくれますので、
庫を持つという方針が出ているのですが、 そ
た め にサプライチェーン全 体 で2カ月 分 の在
ました。医薬品は厚生労働省から安定供給の
て大塚倉庫の施設で保管してもらうことにし
ができます。その期間を0・4カ月と見積もっ
いる間に工 場や物 流センター を復 旧すること
送 品 質にばらつきがあり、 顧 客からのクレー
して委 託してきたのですが、 地 域によって輸
への配 送は元 請け会 社に配 車まで含めて一 括
せているところだったんです。 これまで全 国
を望んでいました。実は輸送品質に頭を悩ま
三 笠 製 薬・ 青 野「 む し ろ、 わ れ わ れ も そ れ
んでしたか。
──共同配送への切り替えに抵抗はありませ
輸送クレームがなくなった
ウハウを吸収しようとする意欲を感じました」
した。 それだけでなく積 極 的にわれわれのノ
ますが、 全て合 意していただくことができま
製 薬さんにとっては大きな決 断だったと思い
ケースの仕 様に変 更していただくなど、 三 笠
トの導 入や、 誰でも作 業ができるような外 装
化を進める上で、業界標準型のレンタルパレッ
できない運 営になっていました。 両 社の共 同
ると、 商 品を知り尽くしたプロでないと対 応
大塚倉庫・溝内「その結果、われわれから見
はずっと自前主義できました」
最後はやはり人ですので、配送を除けば物流
たいと考えています」
つなげることで皆さんに成 果を還 元していき
カーを増やしていき、 それを新たな効 率 化に
で、また一歩前に進みます。今後も参加メー
フォームは三 笠 製 薬さんに参 加いただくこと
大塚倉庫・溝内「 当 社の医 薬 品 共 通プラット
春には新体制に完全に移行できる見込みです」
し進める大きな原 動 力になっています。 この
業部門も大変に喜んで、そのことが改革を推
ムは一 件も出ていません。 これには当 社の営
ちらもクレームがなくなっ た。 テストを始め
は関東地区も共配に切り替えたのですが、こ
送クレームが全くなくなりました。 昨 年 秋に
「そこで昨年夏にテスト的に関西の一部で大
塚倉庫の共同配送を利用してみたところ、輸
しまう。解決策を見いだせずにいました」
ない。 一 時 的に良くなってもすぐ元に戻って
当する会社に注意を促しても、一向に改善し
われわれが元 請けやクレームが出た地 区を担
してほしい〟と要請されていました。しかし、
ければならないので、営業部門から〝何とか
営 業マンがおわびに上がり、 始 末 書を書かな
大塚倉庫株式会社
大塚製薬をはじめ大塚グルー
プ各社の物流を担う。食品分
野では全国約50カ所にストック
ポイントを設置。そのインフラ
をベースとして、近年はグルー
プ以外の企業との共同物流「共
通プラットフォーム」事業を展
開している。
てから半 年 以 上たちますが、 これまでクレー
在庫をパレットごとフィルムでラッピングする
ムが絶えませんでした。そのたびに各支店の
1945年、東京都練馬区にて
湿布薬「ゼノール」を製造販
売する製薬会社として創業。
現在は外用消炎鎮痛剤の「ゼ
ノール」ブランドを主力として
いる。工場および物流センター
は静岡県掛川市にある。2014
年度の売上高は約73億円。
アップになります。 新たな在 庫 管 理システム
だけで出 荷できるようにする。 それによって
三笠製薬株式会社
センター のスタッフを5 人から2 人に削 減で
きると試算しました」
──もともと庫内作業は自社運営なのですか。
三笠製薬・青野「 庫 内スタッフは全 員が当 社
の正社員です。医薬品の物流には何より品質
が求められます。 そのためにセンター には商
品の製 造 番 号や使 用 期 限を一つ一つカメラで
撮影するなどの管理設備を導入していますが、
三笠製薬 青野甲子郎 取締役
常務執行役員 生産物流本部長