留学体験記 ペンシルベニア大学交換留学 一橋大学経済学部4年 中村

留学体験記
ペンシルベニア大学交換留学
一橋大学経済学部4年
中村優太
Ivy League という東海岸における名門と呼ばれるペンシルベニア大学で一年間
交換留学をしたことで学んだことを本レポートで大きく①学習面、②生活面、③
今後の展望と分けて書くことで今回の留学の意義を再確認したいと思う。
①学習面
私はこの一年間で主に経済学部の授業と数学系の授業をとった。アメリカで一
般の教育しか受けていないと、数学が他と比べてできないのでいくら名門といえ
どレベルが低いのではないかということが考えられるが、そんなことは毛頭ない。
世界中から数学ができる人材が集まっているので、数学系の授業をとっても十分
クラスの仲間を切磋琢磨できる環境が整っている。基本的には毎週数学の課題に
追われ、金曜日にギリギリに出した後、疲れて動けなくなるということが続いた。
中間テストでは一回一生懸命勉強したのに一回42点中13点をたたき出して、
冷や汗をかいた。経済学部の授業においては一橋で勉強したことが生かされて、
そこまで苦労するということはなかった。エキストラカリキュラムという日本で
いうところのサークル活動はクウィディッチと呼ばれるスポーツのサークルに入
った。主に2000年代のベストセラーシリーズとなったハリーポッターに出て
くる魔法使いたちのスポーツなのだが、箒にのってボールを枠の中に入れると得
点できる。それを真似して、箒にまたがって実際は地面を走るのだが、通りすが
る小学生に笑われながらやっていた。やってみるとすごく楽しい。これが本当に
息抜きになった。
②生活面
生活面で一番多くを学んだことは間違いない。日本人の私より日本のことをよ
く知っている人、実社会に出たことがあって私より何倍も人生経験がある人、数
学に関しての本物の天才に出会って、彼らの考えている社会の仕組みから何から
色々学んだ。そのような突出した人たちと多く友達になることで、話す機会を増
やし、自分が気になることについて質問をできるだけ多くして聞いていた。と、
自分一人では気づかなかった様々なことが、普通に生活をしているだけでも見え
てくる。僕の場合は次のようなことに気づいた。
日本にいて大学生といただけでは気づかなかったことだが、アメリカにいると
お金を持っている人は社会的階級の高い人だと気づくようになる。実際にハーバ
ード大学であれば約一億円寄付金を払えば入学することができる。日本人として
最初はそんなことがあってたまるかという考えが先行するが、それは「生き残る」
ということが視野に入っていないからであると気づく。今これを書いている段階
で、私はバングラデッシュという国でインターンシップをしているのだが、途上
国にいくと「生き残る」という視点はもっと顕著に見えてくる。
さらに自由は、与えられるものではなく、社会と戦って得るものであるという
考えをもつようになった。社会はそれ自体として動いているから、新しい道を作
りたいならば社会に普通とは違った形で還元できるようにならないといけない。
例えば日本の場合だったら、新卒一括採用というような仕組みに反対して、別の
道を通ろうとするなら、社会に貢献できる形を考えなくてはならない。また、空
気を読まない発言をするのなら、人に嫌われることを恐れてはならない。
そして最後に、リスクなくしてリターンはないということである。リスクヘッ
ジをする必要はあるが、何も考えないでリスクをとらないのも、とっていないと
思っているだけで実は大きなリスクをとっている。だからこれからも様々な人か
ら意見を聞いて情報を得ないといけない。
という三つのことに関して学んだ。これはアメリカのどこにいってもそうであ
ることを知っているのだが、アメリカにいる人(国籍関わらず)は競争が大変好
きである点で日本と大きく違う。生まれてからずっと競争にさらされている人た
ちと切磋琢磨することは、結果に関わらずすごく重要なことであると思うので、
これから行く人たちにも競争を多くすることをおすすめしたい。
またこれは人と話しているうちというよりは、様々な人をみているうちに日本
の国際的なプレゼンスは着実に薄れてきていて、今や過去の国際的な信用に頼っ
ている部分がほとんどであることにも気づいた。単なる事実として述べるが、国
際的にみると世界第二位の経済大国から、人材すらもない国になり下がろうとし
ている。
③今後の展望
将来私は研究者になると思って、大々的にフェイスブックで留学に行く前に告
知をしてアメリカにきた。しかし、日本からペンシルベニア大学に研究するため
にきた人たちと話をするうちに「もっと一生を過ごす上で楽しいことがあるので
はないだろうか」という思いを捨てることができなくなって、一旦研究者の道は
脇へ置いておくことにした。しかし、他の道が決まったわけではない。とりあえ
ずは会社に入るなり、起業するなり、進学するなり自分の市場価値を上げること
に専念したいと思う。将来人のニーズに応えながら、何か面白いことをいつも考
えて、その実現に奔走できるような人間になりたい。そのためにも今自分はもっ
と情報を得て、理解して、何を社会は必要としているのかをもっと知る必要があ
ると感じている。