(公社)福岡市食品衛生協会FAX情報サービス 平成27年 2月 182号 発酵食品と賞味期限について 当検査センターでは、食品の賞味期限を決定する際に科学 的根拠の一助となる食品細菌検査や保存検査を実施していま す。しかしその際に問題になるのが、キムチや漬け物、納豆 などの発酵食品です。 これらの発酵食品は、元々細菌や酵母などが多い食品で、 一般細菌数(生菌数)による判断では、食品の腐敗具合や日 持ち等が判断できないからです。 今回は、これらの発酵食品と賞味期限について解説します。 1.発酵と腐敗の違い ・どちらも微生物の作用によって起こる食品の変化ですが、人間の生活に有用な場 合を「発酵」、有害な場合を「腐敗」と呼んでいます ・発酵とは、細菌・酵母等の微生物が、食品を分解してアルコール、有機酸、炭酸 ガス等を生ずる過程を言い、ヨーグルトや酒等の糖類が分解されて乳酸やアルコ ールに変化するような状態をさします。多くは乳酸菌や酵母が関わっています ・腐敗とは、食品等が細菌によって分解され、有毒な物質や悪臭のある気体を生ず る変化で、具体的には魚や肉のタンパク質やアミノ酸が分解され、硫化水素やア ンモニアのような腐敗臭を出し、最後は食べられなくなる現象です ・腐敗した場合、食べられなくなりますが、必ずしも食中毒菌が増えるというわけ ではありません 2.賞味期限を決めるには? ・微生物検査・理化学検査・官能検査の3つの検査結果を参考にして、製造者もし くは販売者自身が賞味期限(消費期限)を決定します。 ・微生物検査の場合は、食品衛生法や衛生規範等の国の基準、各自治体の衛生条例 や指導基準などの数値が参考になります お菓子の例 (厚生労働省「洋生菓子の衛生規範」の数値) 一般細菌数(/g) 大腸菌群 黄色ブドウ球菌 油脂の酸価 油脂の過酸化物価 100,000以下 陰性 陰性 3以下 30以下 ・上記の数値の中で、最も参考になるのが一般細菌数です。お菓子の場合では、 100,000 個を一つの目安として、日持ち等を判断することが多いようです ・しかし、漬け物やキムチ、納豆などの発酵食品では、元々細菌や酵母を多く含む ため、一般細菌数による判断ができません。食品中に含まれる全ての細菌や酵母 を詳細に調べて、有害か無害かを区分することは、現実には不可能だからです 3.発酵食品の保存で気をつけること ・発酵食品は、定められた保存方法(冷蔵庫等)や賞味期限を守りましょう ・漬け物、キムチ等も賞味期限が長いように思われますが、保存状態により、日持 ちする期間が異なるようです。賞味期限が表示されている物はこれに従いますが、 「色」、「臭い」、「味」など、五感をフルに活用し食べる際の参考にしましょう ・納豆も元々発酵している食品なのに、スーパーの店頭で見ると、賞味期限が1週 間程度だったりします。もちろん賞味期限ですから、これを過ぎても食べられな いことはありませんが、納豆菌の分解が進むと臭いが鼻についたり、糸引きが悪 くなったりして、美味しく食べられなくなるようです
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