「高校生と私と福祉」 常葉学園高等学校 二年 加藤 陽菜 「福祉」ってなん

「高校生と私と福祉」
常葉学園高等学校
二年
加藤
陽菜
「福祉」ってなんだろう?福祉について考えれば考えるほど答えは出ません。それ
はなぜか。答えは単純明快です。それは「福祉」という言葉に関係のある事柄が多す
ぎるためです。多くの辞書では「平等に与えられる幸福」という意味合いで書かれて
います。高校生の私に幸福とはなにか、と聞かれても答えられませんし、皆さんの中
でも幸福について語れる人は少ないのではないでしょうか。更に、私の好きなものを
皆さんが同様に好きだということはありえません。「福祉」つまり、幸福というのは
どうしても、自分で感じるものと他人が感じるものは全くの別物としてその人の心に
存在しているのです。
では、福祉というものをどう幸福に変換していくのか。私の経験の中で「福祉」が
幸福であると強く感じる瞬間があったのは、今年の夏休みの時でした。
私は、あるボランティア活動に参加しました。同い年くらいの障がいのある人たち
と仲良くなろうという内容の活動です。その活動で障がいのある A さんと出会いま
した。A さんからは、障害らしい障害を感じませんでした。昨日のテレビの話、好き
なアーティストの話など声高に私に教えてくれました。学校の友達と同様に、話が弾
みすぎて職員の方に注意されたのもいい思い出として私の中に残っています。
皆さん、この話を聞いてなにか感じませんか。私たちが使う「障害」という言葉は
もしかしたら、A さんには、相応しくないのかもしれません。一つの言葉が私たちに
実際とはかけ離れたイメージを植え付けていると思いませんか。以前は「障害」と漢
字で書かれていた表記は近頃、「障がい」と平仮名に改正され始めています。それは、
この言葉の中に幸福からほど遠い「害」という漢字が使われているからです。重軽度
の差異はあると思いますが、私たちが無意識で使うたった一つの言葉がその人と異な
るイメージを与えているのではないでしょうか。
例えば、私の渾名が心ない類のものだとしましょう。最初は、ふざけて笑うことが
できます。まだそれに慣れていないし、それが本気だと思ってないからです。しかし、
それがずっと続くと考えてみるとどうでしょうか。慣れ始めたその渾名を、周囲の人
は当たり前のものとして使います。もしかして、その渾名は私という人間性を表現す
るものとして皆から認識されたのではないかと、言いようのない不安を感じ始めると
思います。笑っている皆が味方だと思えない状態になるのではないかと思います。た
だ、これらのことは私の想像に過ぎません。
しかし、言葉というものほど私たちの身近な福祉はないと私は思っています。言葉
は、自分の意思を示すある種の道具です。その道具は、その人が意図せずともその人
を傷つけます。そういう経験はないですか?友達は軽い気持ちだったのでしょうが、
少なからず傷ついたという経験が。私はあります。たった一言で心を抉られるような
ことが。もしも私たちが、社会が、それを行っているとしたら、それはとても恐ろし
いことです。
皆さん、心の中で区別していませんか。彼らは自分たちと違う思考で、価値観も違
うのだと。私はそうでした。この夏の体験で会った A さんを、今思えば恥ずかしい
ことですが、偏見の目で「障害」という言葉が心にあった状態で A さんを見ていま
した。会ってみて、喋って一緒に活動した今では、あのときの私に戻りたいとは一切
思いません。むしろ、こうして変われたあの活動と A さんに誠意を持って、謝罪と
感謝を伝えたいです。
漢字の「障害」と平仮名の「障がい」共にだだの言葉です。けれど認識する時に違
いが生じます。私たちが、高校生が、その人たちにできることは、わずかな事しかあ
りません。その人たちの苦労を理解して、実際に問題として取り組むのは難しいこと
だと思います。自分のことで手一杯で将来のことだって不安でどうしようか考えてい
る私たちにできることは、どうしたって限られてしまいます。
しかし、武器になりうる言葉は、使い方次第で幸福に繋がるのだと私たちが、どこ
か心の片隅に置いておけば、なにか変わると思いませんか。「福祉」というのは、一
方通行ではなく双方向のものです。それは、A さんが苦手な細かい作業を私が手伝い、
A さんは私が苦手な絵を描くことをやってくれたという経験に似ていると思います。
高校生である私の言葉で「福祉」を感じる人が居るということは、私もどこかで「幸
福」を感じる架け橋になるのだと思います。
たったこれだけですが、身近な福祉に貢献して、私たちの、社会の笑顔にも微力な
がら繋がると考えました。日々の生活の中で言葉を大切にして頂けることを願ってい
ると同時に私自身も強く心に留めておきたいです。ご清聴頂き心から感謝させて下さ
い。本当にありがとうございました。