巻頭インタビュー 私と住まい き 木佐 彩子 フリーアナウンサー さ あ や こ それぞれの場所で 頑張ってきた家族が 素に戻ってくつろげる。 住まいにはそんな 役割があると思うんです。 1971年東京都生まれ。子ども時代はアメリカ・ロサンゼルスですごす。青山 学院大学文学部英米文学科卒業。大学在学中から「CNNヘッドライン」な どのリポーターをつとめ、卒業後フジテレビ入社。アナウンサーとして「プロ 野球ニュース」「FNNスーパーニュース」等を担当。ヤクルトスワローズ(当 時 )所 属 の 石 井 一 久 選 手と2000 年に結 婚。出 産を機にフジテレビを退 社、アメリカへ移 住。2007年に帰 国し本 格 的にフリーアナウンサーとして 復帰。現在は毎週日曜日BS朝日「いま世界は」19:00 〜、NHK World 「Sports Japan」政府インターネットTV「 知りたいニッポン」などのMCを担当。 1 リラックスできる場所はバスルーム。ご主人や子供を早く送り 出した午前中、ゆっくりリフレッシュするのが至高の時間。 いつも家族の顔が見える アイランドキッチン 2000 年にプロ野球選手の石井一久さんと結婚。 その後は夫の大リーグ移籍にともない、再びロサン ゼルスやニューヨークでの生活を経験した。今はまた 自分なりの居心地よさを 演出する工夫が大切 「子供のころ、父の仕事の関係でロサンゼルスに住 2 東京に戻り、家事や子育てに奮闘しつつ多方面の仕 事をこなしている。両立のコツは「頑張りすぎずに楽 しむこと」 。それを助けてくれるのが、お気に入りの アイランドキッチンだ。 んでいたんです。会社が借りてくれた家には、広めの 「これなら台所仕事をしながら、 リビングやダイニングま お庭が付いていて……。小さなバラ園があり、隅っこ で何となく見渡せる。野球で言うと、 ベンチに立って球場 にはレモンやタンジェリンなどの果樹も植わっていま 全体を見ている監督のイメージかなぁ。忙しいときはこ した。原風景というと大げさだけど、私にとっては懐 の開放感が便利なんです。例えば子供がいると、平日は かしい場所ですね」 常にバタバタしているでしょう。 うちは息子が中学生で フリーアナウンサーとして活躍中の木佐彩子さん。 すが、部活や塾が忙しく、 昔みたいに向き合ってゆっくり これまで15 回近くも引っ越してきた彼女に「とりわけ 話す時間はどんどん減ってきてます。だからこそ料理し 記憶に残る住まいはどこでした?」と尋ねたところ、 ながら相手の顔が見えるカタチにこだわりたいなと」 小学 2 年生から7年をすごしたアメリカの家を挙げて 木佐さんが育ったアメリカでは、 キッチンの脇に 「ブ くれた。当時も活発な“おてんば娘” 。大きな樹によ レックファーストコーナー」と呼ばれる小テーブルをし じ登り、虫を捕まえては「よく親をびっくりさせてい つらえ、そこで朝食をとるのが一般的だったそう。今 ました」と振り返る。西海岸の明るい陽射しと緑は、 の家ではその代わりに、オープンキッチンの向こう側 木佐さんの人柄にも深い影響を与えた。 に椅子をいくつか置いている。忙しい日はカウンター 「育った環境とか気候って、やっぱり大きいんでしょ にそのまま料理を出し、そこで食べてもらうことも。 うね。今でもお日様が照ると、無条件で嬉しくなっ 「 これならダイニングまで運ぶ手間が省けるし、何 ちゃう。まるで身体が光合成しているみたいに、自然 より作りたてを出しながら主人や子 供と話せるで と力がわいてくるんです(笑) 。住まいを選ぶときもそ しょう。私自身はカウンターのこっち側に立ったまま、 う。明るさや風通しは常に意識しますね。たしかに日 手早くすませちゃう日もあります。その代わりみんな 本では、アメリカのように広い庭を持つのは難しい。 が揃う週末は、ちゃんとダイニングテーブルを囲んで でも、ちょっとした光の採り方や緑の置き方で、家 ゆっくり食事をする。こういうメリハリの付け方って、 の雰囲気はかなり変わると思います。自分なりに居心 働く主婦が居心地のいい住まいを維持する上では、 地のよさを演出する工夫も大切なのかなって」 意外に有効だと思うんですよ」 巻頭インタビュー 私と住まい 「 物件探しや家具選びは好きですね 」と木佐さん。 シックなモノトーンより、同系色の温かい色合いでま とめるのが好みだとか。 心を豊かにしてくれる ささやかな幸せ マンガを読んでいて……。私はオープンキッチンで洗 住まいとは「それぞれの場所で頑張ってきた家族 を共有できるのが、私には理想の住まいなのかもし が、素に戻ってくつろげる場所」ではないかと木佐さ れません」 ん。嫌なことやツライことがあっても気持ちをリセット 最近のちょっとした楽しみは、オリーブの鉢植え でき、明日に向けて再充電できる空間─。 を眺めること。リビングから窓に目をやると、テラ 「そのためにも頑張りすぎない。完璧を求めすぎない ことは努めて意識しています。例えば家族 3人無理や りリビングに集まって、団らんなんてしなくていいと 思うんです。むしろ主人はテレビを眺めてて、息子が い物しながら、ワイン片手にそれを見ている、みた いな(笑) 。そうやって各自がオフモードで1つの空間 スに並ぶ濃い緑が目に入る。40 歳を超えた頃から、 木々のありがたみを改めて感じるようになった。 「この頃はちゃんと実もなるようになったんですよ。窓 から入る光も、緑の葉っぱ越しだと断然気持ちいい。 随分ささやかな幸せだけど(笑) 、そういう心地よさっ て見つけた者勝ちだとも思うんですね。もしかしたら 私、子供の頃好きだったレモンやタンジェリンの樹を、 無意識に取り戻そうとしているのかもしれません (笑) 」 青空に映える、つややかなオリーブの 実。「日々、 成長を感じられるのも楽 しいです」と木佐さん。 (写真:木佐さん提供) テラスには大ぶりなオリーブの鉢植え。住む人の気 持ちを和らげてくれる、ささやかな“癒しの風景” 。 (写真:木佐さん提供) 3
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