(2) 高分子溶液の理論� Flory-Huggins理論(1955年)� �溶媒に溶けた高分子の溶液を記述する統計力学的理 論を紹介する。多くの実験事実を説明できた理論である。 �統計力学で、どのように自由エネルギーを計算するか?� P. J. Flory (1965年ノーベル化学賞)高分子化学の分野� フローリー・ハギンス理論� 高分子溶液の理論(高分子と溶媒分子の2成分系)� ●○ ○● ● ○● ● ● ● ●○ ○ ○ ●○ ○ ● ●○ ○ ● ○○ 系の体積� ● ○ ○ ○ ● ● ● ○ ● ● ● ● ● ○ ● ○ ○ ○ 高分子の1セグメントの体積と溶 媒の大きさは同じとする。� a 3 Nt : 1格子点の体積 =1セグメントの体積� =全格子点の総数� €V = a 3 N t N 0 溶媒の分子数� € € N1 € 高分子の分子数(鎖の本数)� n 高分子の重合度(セグメント数)� 格子点の総数� 系の全体積� N t = N 0 + nN1 V = a 3 N t = a 3 (N 0 + nN1 ) € € 以下、βは� β = 1/(k BT ) のように定義する。� k B = 1.38 ×10 −23 J / K € は、ボルツマン定数である。� € 高分子の体積分率 � a 3nN1 a 3nN1 nN1 φ1 = = 3 = V a Nt Nt 溶媒の体積分率� € a3N0 N0 φ0 = = V Nt 非圧縮性の条件� € φ0 + φ1 = 1 分配関数は、以下の式で与えられる。� z(N 0 , N1 ,T ) = Ω(N 0 , N1 )exp[−βE(N 0 , N1 )] ミクロな状態の数� 平均のエネルギー� 分配関数が解れば自由エネルギーが計算できる。 ヘルムホルツ自由エネルギーは以下で与えられる。� F = −k BT ln z = E − k BT lnΩ エントロピー� S = k B lnΩ € (Boltzmannの関係式)� 高分子を格子点上に配置させる、状態数(場合の 数)を求めよう。� Ω(N 0 , N1 ) 高分子に番号をつける。1,2,3,4、、� N1 € ν j+1 j番目の高分子を格子上に配置させたとき、(j+1)番 目の高分子を配置させる、場合の数を示す。� € 従って、� N 1 −1 1 Ω= ν j+1 ∏ N1! j=0 € で与えられる。� € ν j+1�を求めよう。� € (1) j本の高分子がすでに格子上に置かれていて、(j+1)番目の高 分子の第1セグメントを配置する場合の数は� N t − nj € ● (2) j+1番目の高分子の第2セグメントを配置する場合の数は、� z R j1 z Rj k € 最近接格子点数� 単純立方格子なら、z=6, € € ● j本の高分子とj+1番目の高分子の最初のk 個のセグメントはすでに配置されているとき、 このk番セグメントの最近接格子点のうち、 一個が空である確立、を示す。 k=1,2,3,,,n-1 (3) j+1番目の高分子の第3セグメントを配置する場合の数 は、� (z −1)R j 2 ●�● ● € (4) j+1番目の高分子の第4セグメントを配置する場 合の数は、� (z −1)R j 3 € (i) j+1番目の高分子の第iセグメントを配置する場合の数 は、� (z −1)R ji i=1,2,3,,,,n-1 € 場合の数の計算� ν j +1 = (N t − nj) z R j1 (z −1)R j 2 (z −1)R j 3 ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ (z −1)R ji ⋅ ⋅ ⋅ ⋅ (z −1)R jn−1 € € € € €n−2 = (N t − nj)z(z −1) n−1 ∏R k=1 € € n−1 = (N t − nj)z0 ∏ R jk k=1 € € z0 = z(z −1)n−2 jk 第0次近似� �自分自身のk個のセグメントを無視して考え れば、j本の高分子を配置させた時の,空いてい る格子点の体積分率(確率)で近似する。� N t − nj nj R jk = = (1− ) Nt Nt € 代入すると� z0 nj n ν j+1 = N t (1− ) σ Nt �σは対称数� € �σ=1(非対称高分子) �σ=2(対称高分子)� 状態数Ωは� N 1 −1 1 Ω= ν j+1 ∏ N1! j=0 N1 € N1 ⎛ z0 ⎞ ⎛ N t ⎞ ⎛ N t ⎞ ≈ ⎜ ⎟ ⎜ ⎟ ⎜ ⎟ ⎝ σ ⎠ ⎝ N1 ⎠ ⎝ N 0 ⎠ N0 計算して確かめる。� ここで、スターリングの公式� ln x!= x ln x − x € を用いた。� € € エントロピーは次のようになる。� S(N 0 , N1 ) / k B = lnΩ Nt Nt nz0 = N 0 ln + N1 ln + N1 ln( n−1 ) N0 N1 σe S(N 0 , 0) = 0 € nz0 S(0, N1 ) = k B N1 ln( n−1 ) σe 一本の高分子のもつエントロピー� 混合によるエントロピー変化� S(N 0 , N1 ) ΔS:混合によるエントロピー変化� € € S(0, N1 ) S(N 0 , 0) 純粋高分子� 純粋溶媒� € 混合エントロピー� ΔS = S(N 0 , N1 ) − S(0, N1 ) − S(N 0 , 0) = −k B (N 0 ln φ0 + N1 ln φ1 ) φ1 = −k B N t (φ0 ln φ0 + ln φ1 ) n € € 第1項:�溶媒分子の並進エントロピー� 第2項:�高分子の並進エントロピー� € n=∞の極限では溶媒の並進エントロピーだけとなる。� 混合エネルギー� 分子間の相互作用を考える。相互作用は隣り合う分 子だけを考える。� N ij i分子とj分子が隣り合っている総数� ○ ● € ε ij �i j 0 0 0 1 1 0 1 1 0は溶媒分子 1は高分子セグメント� i分子とj分子の相互作用エネルギー� 分子間相互作用のうち、最近接だけを考える。� ε ij € a r − ε ij セグメントのサイズ程度� € € 分子間の相互作用エネルギーは以下のように書くこ とが出来る。� E = ε 00 N 00 + ε11 (N11 − (n −1)N1 ) + ε 01 N 01 ボンド間の相互作用は 考えない。� € (0)最近接格子点の総数� 1 zN = N 00 + N 01 + N11 2 (1) 0からでるペアの数� zN 0 = 2N 00 + N 01 (2) 1からでるペアの数� zN1 = 2N11 + N 01 € したがって、� € 1 N 00 = (zN 0 − N 01 ) 2 1 N11 = (zN1 − N 01 ) 2 € Eへ代入する:� z z E = ε 00 ( )N 0 + ε11 ( − (n −1))N1 + Δε N 01 2 2 1 Δε = ε 01 − (ε 00 + ε11 ) 2 € € 混合によるエネルギー変化� ΔEmix = E(N 0 , N1 ) − E(0, N1 ) − E(N 0 , 0) = N 01Δε = ΔH mix € € € (V, P 一定の条件下では、dE=dHがなりたつ)� Δεの意味� 1 Δε = ε 01 − (ε 00 + ε11 ) 2 ●○ ○○ ●● € 2種類のセグメントを隣り合わせて置いた ときのエネルギーの差を比べる。� Δε > 0 Δε < 0 € ●○のペアが出来るとエネルギー的に損を する。(混ざりにくい)。� 同じ種類の分子が横に来るとエネルギー的に 損をする。(混ざりやすい)� ○と●の分子が隣り合う数は以下のように近似する。� N 01 = [(z − 2)n + 2]N1 RN1 ,0 最近接格子点の総数(近似)� = znN1φ0 ここで、� € nN1 RN1 ,0 = (1− ) Nt を用いた。� 従って、混合によるエネルギー変化は以下のようになる。� ΔEmix = zΔεnN1φ0 = zΔεnN 0φ1 = k BT χ N 0φ1 ここで、χは� € χ = zΔε / k BT € と定義した。� Flory-Hugginsのχパラメーターとよぶ。� € € 高分子と溶媒の間の相互作用を示す、現象論的な相互作 用パラメーターである。� χ = zΔε / k BT �χの値が大きいとは、高分子と溶媒分子の間の相互 作用〔斥力)が大きいと考える。 �χの値が大きくなるにつれて、高分子と溶媒の相性が 悪くなる。� 混合による自由エネルギー変化 (ヘルムホルツの自由エネルギー)� ΔFmix = ΔEmix − TΔSmix = k BT { N 0 ln φ0 + N1 ln φ1 + χN 0φ1} ⎧ ⎫ φ1 = N t k BT ⎨φ0 ln φ 0 + ln φ1 + χφ0φ1 ⎬ ⎩ ⎭ n € € 高分子セグメントの連結の効果� € エントロピー項� エネルギー項� 分子量nが大きくなるにつれて、エントロピー項の寄与が無く なる。n=∞の極限では、相互作用の項だけとなる。 � 多成分系への応用。� i=0,1,2,,,,c (成分数)� € € € € Ni i成分の分子数� ni i成分の重合度� ni N i φi = Nt I成分の体積分率� c N t = ∑ ni N i i=0 全格子点数� 多成分系の自由エネルギー� c φi ΔFmix / N t k BT = ∑ lnφi + χ ijφ iφ j i=0 ni ε ii + ε jj z χ ij = (ε ij − ) k BT 2 c ∑φ € i=0 i =1 € 溶媒(0)高分子(1)高分子(2)の3成分系の自由エネル ギー� φ1 φ2 ΔFmix / N t k BT = φ0 ln φ0 + ln φ1 + ln φ2 n1 n2 + χ 01φ0φ1 + χ 02φ0φ 2 + χ12φ1φ2 φ0 + φ1 + φ2 = 1
© Copyright 2024 ExpyDoc