一般演題6 SPECT‐CT融合像で肺局所機能を評価した 多発性肺動静脈

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1003724/医学カンファレンス記録集第42号/P17→5校(原田)
一般演題6
SPECT‐CT融合像で肺局所機能を評価した
多発性肺動静脈瘻の1例
河上康彦、菅 一能、松永尚文
はじめに
肺動静脈瘻における肺血流異常の検討は、肺血流
シンチグラフィ・プラナー像を主体に行なわれて
おり、動静脈瘻と肺局所の血流異常の詳細な対
比・検討の報告は少ない。
今回、多発性肺動静脈瘻の1例で、深吸気息止め
肺血流SPECT‐CT融合像により、肺動静脈瘻が肺
局所血流に及ぼす影響を肺断面上で詳細に検討し
得たので報告する。
症例
10歳台、男児。
学校健診で胸部単純X線写真にて右上肺野腫瘤影を
指摘され近医を受診。胸部造影CTで動静脈瘻を指
摘され精査加療目的で紹介受診。
胸部CTでは右上葉に2個(長径:7mm、15mm、図1)
、
右中葉に1個(長径:11mm、図2)の肺動静脈瘻を
認める。
肺動脈撮影(図3):右上葉に2箇所の肺動静脈瘻
を認める。中葉の病変は描出されていない。
肺血流シンチグラフィ(図4):右上肺野で血流欠
損・低下部があるように見えるが詳細は不明であ
る。全身像では脳、脾臓、肝臓などの描出があり
右左短絡の存在が確認される。
肺血流シンチグラフィ全身像から右左短絡率の算
出を行った。肺血流シンチグラフィ前後面像それ
ぞれの放射能カウントを加算し、肺野は最大ピク
セルカウントの10%を閾値として関心領域を設定
し[(全身のカウント−全肺のカウント)/全肺カ
ウント]×100%として右左短絡率の計算を行った。
本症例の右左短絡率は21.3%であった。
深吸気息止めSPECT(図5)では通常のSPECTで描
出されなかった小さな血流低下領域が明瞭に描出
されている。
深吸気肺血流SPECT-CT融合像(図6)では、動静
脈瘻と血流欠損・低下部の位置関係が明瞭に把握
できる。複数の病変が存在する右上葉では、全体
的に不均等が血流低下が認められ盗血現象を反映
した所見と思われた。
また、左下葉では通常のSPECTにて同定困難な血
流低下部が認められ病変の存在が疑われた(図7)。
CTを詳細に見直すと、小瘤状に拡張した血管が認
められ、小さい動静脈瘻の存在が示唆された(図8)
。
図1
図2
山口大学医学部 放射線科
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(原田)
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まとめ
肺動静脈瘻例で、深吸気息止め肺血流SPECT-CT融
合像を使用し瘻と肺動脈血流欠損・低下部との対
比を行った。
2個の瘻が存在する右上葉では、全体的に不均等な
血流低下が認められ、複数の瘻が存在する肺葉で
は、盗血現象が相乗的に働き血流低下が強まる可
能性が示唆された。
融合像により、動静脈瘻による肺局所血流異常の
詳細な評価ができ、CT像と詳細に対比することに
より小病変の検出に補助的役割を果たす可能性が
ある。
図3
図4
図5
図6
図7
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