各種基準類における地盤浸透破壊に対する安全率算定方法と考え方 284

神戸大学都市安全研究センター
研究報告,第19号,平成27年 3 月
各種基準類における地盤浸透破壊に対する安全率算
定方法と考え方
Standards, manuals, and evaluation methods for seepage failure of soil
–An estimation of safety factors and critical hydraulic head differences–
田中
勉 1)
Tsutomu Tanaka
永井
茂 2)
Shigeru Nagai
廣瀬
哲夫 3)
Tetsuo Hirose
三木
昂史 4)
Takashi Miki
概要:地下水位の高い地点における地盤の締切り掘削では浸透破壊が問題となる。浸透破壊に対する安定性評価
には各種基準類が用いられている。ここでは, 地盤浸透破壊に対する 43 件の各種基準類について調査した。この
うちの 16 件は著者らの一部が以前まとめたものであり, 27 件が今回新たに追加調査したものである。そのうちの
14 件が前回調査時点の 2002 年以前に出版されたものであり, 13 件がその後 2003 年以降に出版されたものである。
まず, 流れの条件及び浸透破壊安定性の考え方について述べ, 基準類を 6 つのカテゴリーに分類した。そして, 6 つ
のカテゴリーに対して, 安全率 Fs 及び限界水頭差 Hc の算定式を示した。Hc の算定式を示すにあたり, ここでは, 浸
透破壊安全率 Fs を Fs=Hc/H と定義した。ここに, H は考えている地盤・水理条件における水頭差である。そして, 各
種基準類を使用するにあたって注意すべき事項について述べた。
キーワード:地盤浸透破壊, 基準類, 流れの条件, 安全率, 限界水頭差
1.序論
地下水位の高い地点における地盤の締切り掘削では浸透破壊が問題となる。浸透破壊に対する安定性評価には
各種基準類が用いられている。現在までに提案されている基準類を集積し, その考え方を分析するとともに, 問題
点を明らかにすることは, 浸透破壊理論の進展に欠かせない。著者らの一部は, 以前, 同じ問題についてまとめた
ところであるが, その後集積した基準類, 新しく制定された基準類をまとめて考察することは, 近年の動向を知る
うえでも重要である。ここでは, まず, 浸透破壊の考え方について述べ, それに基づいて基準類を分類し, 最近の
動向について考えるとともに, 浸透破壊安全率及び限界水頭差の算定式を示す。Hc の算定式を示すにあたり, ここ
では, 浸透破壊安全率 Fs を Fs=Hc/H と定義した。ここに, H は考えている地盤・水理条件における水頭差である。
また, 典型的な掘削なし及びあり地盤について, 各分類法に従い限界水頭差を求めその関係について考察を行う。
今回調査した基準類は次に示す①~㊸の 43 件である。①~⑯は, 以前, 田中ら
44)
がまとめたものであり, ⑰~
㊶は今回新たに追加調査したものである。追加調査した基準類のうち, ⑰~㉚は前回調査の 2002 年以前に出版さ
― 284 ―
れたものであり, ㉛~㊶はその後 2003 年以降に出版されたものである。⑮及び㊷, ㊸は, それ自体が独自基準では
ないが, 基準類の考え方の分類において基礎となった文献である。
① 山留め設計施工指針(日本建築学会, 2002)
② 仮設構造物の計画と施工(土木学会, 2000)
③ トンネル標準示方書〔開削工法編〕・同解説(土木学会, 1996)
④ 道路土工 -擁壁・カルバート・仮設構造物工指針 1977 年版(日本道路協会, 1977)
⑤ 道路土工 -擁壁・カルバート・仮設構造物工指針 1987 年版(日本道路協会, 1987)
⑥ 道路土工 -仮設構造物工指針 1999 年版(日本道路協会, 1999)
⑦ 共同溝設計指針(日本道路協会, 1986)
⑧ 仮設構造物設計要領(首都高速道路公団, 2003)
⑨ 鉄道構造物等設計標準・同解説 開削トンネル付属資料:掘削土留め工の設計(国土交通省鉄道局監修・鉄道
総合技術研究所, 2001)
⑩ 大深度土留め設計・施工指針(案)(先端建設技術センター, 1994)
⑪ 土木工事仮設計画ガイドブック(I) -計画から積算条件整備まで-(建設大臣官房技術調査室監修・日本建設
情報総合センター企画・全日本建設技術協会, 1997)
⑫ 設計要領第二集第 6 編Ⅲ仮設構造物(日本道路公団, 1990)
⑬ 土木工事仮設マニュアル(国土交通省北陸地方整備局, 1999)
⑭ 掘削土留め工設計指針(案)(建設省土木研究所構造橋梁部基礎研究室, 1982)
⑮ 根切り工事と地下水-調査・設計から施工まで-(地盤工学会, 1994)
⑯ Canadian Geotechnical Engineering Manual (Canadian Geotechnical Society ed., 1992)
⑰ 山留め設計施工指針(日本建築学会, 1988)
⑱ 開削トンネル指針【昭和 52 年制定】(土木学会, 1977)
⑲ トンネル標準示方書(開削編)・同解説(土木学会, 1986)
⑳ 仮設構造物設計規準(首都高速道路公団, 1972)
㉑ 首都高速道路 仮設構造物設計基準(首都高速道路厚生会, 1990)
㉒ 深い掘削土留工設計法(日本鉄道技術協会, 1993)
㉓ 深い掘削土留工設計法(深い掘削土留工設計指針研究会編(日本鉄道技術協会), 2000)
㉔ 掘削土留工設計指針(鉄道総合技術研究所, 1987)
㉕ 仮設構造物設計指針(案)(地下鉄技術協議会, 1974)
㉖ 土木関係「仮設構造物設計要領そのⅠ(案)」(国鉄東京第一工事局, 1971)
㉗ 駐車場設計施工指針(日本道路協会, 1992)
㉘ LNG 地下式貯槽指針(日本ガス協会, 1981)
㉙ 地中送電用深部立坑・洞道の調査, 設計, 施工, 計測指針(日本トンネル技術協会, 1982)
㉚ 土地改良事業計画設計基準
設計 水路工(農業土木学会, 2001)
㉛ 仮設構造物の計画と施工(土木学会, 2010)
㉜ トンネル標準示方書〔開削工法〕・同解説, 2006 年制定(土木学会, 2006)
㉝ 仮設構造物設計要領(首都高速道路株式会社, 2007)
㉞ 土木工事仮設計画ガイドブック(I) -計画から積算条件整備まで-(日本建設情報総合センター, 2011)
㉟ 設計要領第二集 橋梁建設編(NEXCO 中央研究所, 2006)
㊱ 設計要領第二集 橋梁建設編(東日本・中日本・西日本高速道路株式会社, NEXCO 総研, 高速道路総合技術研
究所, 2013)
㊲ LNG 地下式貯槽指針(日本ガス協会, 2012)
㊳ 開削トンネル設計指針(阪神高速道路株式会社, 2008)
㊴ 設計便覧(案) 第 1 編土木工事共通編(近畿地方整備局, 2012)
㊵ 土木工事設計要領 第 1 編共通編(九州地方整備局, 2011)
㊶ 土地改良事業計画設計基準及び運用・解説
設計「頭首工」基準, 基準の運用, 基準及び運用の解説, 技術書(農
業農村工学会, 2009)
㊷ 大深度地下使用技術指針・同解説(国土交通省, 2001)
㊸ 仮設構造物の設計と施工【土留め工】(土木施工管理技士会編, 2007)
― 285 ―
H
d
H
D1
D
D
T1
T
T
(a) 掘削なし地盤
(b) 掘削地盤
Fig.1
2D flow
B
B
H
H
d
D
D1
T
T1
(a) 掘削なし地盤
D
T
(b) 掘削地盤
Fig.2
2DC flow
2.種々の流れ条件
浸透破壊に関する詳細な考察から, 浸透破壊現象は流れの条件によって大きく影響されることがわかった
45)
。
Fig.1 に示すように単列矢板における地盤の場合には浸透流は二次元流(2D flow)となり, Fig.2 に示すように複列矢
板内の地盤の場合には浸透流は両側から中央地盤底面に流れ込む状態となり二次元集中流(2DC flow)となる。二次
元集中流の状態になると, 地盤は二次元流の場合よりも浸透破壊に対する安定性が低下することが予測される。さ
らに, 複列矢板で奥行き方向の長さが短くなると Fig.3 に示すように三次元的な浸透流の集中(3D flow)がおこり,
浸透破壊に対する安定性はさらに低下すると考えられる。三次元的な浸透流は Fig.4 に示すような軸対称流(AXS
flow)に置き換えて考察される 46) 47)。また, 地下水位の高い地点で, 円筒形の立坑などを構築する場合には, まさに
軸対称流の条件となる。Figs.3, 4 は, 実験装置について, それぞれ, 上は平面図, 下は正面図を表す。
各協会や学会などにおいては, 地盤浸透破壊に対する設計に必要な各種基準類や設計マニュアルが出されてい
るところであるが, 基準類では上述の流れの条件に分けて取り扱われるようになってきた。ここでは, 設計時にお
ける, 地盤浸透破壊に対する安全率及び限界水頭差について, 流れの条件(2D flow, 2DC flow, 3D flow, AXS flow)を
踏まえながら, 各種基準類の考え方について現状分析と考察を行う。
3.地盤浸透破壊に対する安定解析法
地盤浸透破壊に対する安定解析法について, 各種基準類の現状を精査するにあたり, 基本となる考え方や方法
について考察する。浸透破壊に対する安定解析法には種々の方法があるが, ここではその中でも慣用的な方法のう
― 286 ―
L1
L
W/2
R
L
L
B/2
R
D
D
T
T
Fig.3 3D Flow
Fig.4
AXS flow
ち代表的なもの,
(1) Harza の方法
(2) Terzaghi の方法
(3) Prismatic failure の考え方
(4) Bligh 及び Lane の方法
について述べる。
3.1 Harza の方法 48)
Fig.5 のように地盤に矢板が打込まれている
場合を考える。Harza48) は, 浸透水の出口部分
の動水勾配, すなわち出口動水勾配(Escape
gradient) ie について考えた。ie の最大値, すな
わち最大出口動水勾配 ie max が砂の限界動水勾
配 ic より大きくなると地盤表層でボイリング
が発生すると考える。ボイリングの発生に対
Fig.5
する安全率 Fs は,
Fs 
ic
出口動水勾配 (Harza の方法)
(1)
i e max
となる。ここで, 限界動水勾配 ic は次のようにして求められる 49)。地盤表層では, 限界状態は「上向きの浸透力 iw」
が「下向きに働く重力すなわち地盤の水中単位体積重量’」と釣合ったときに生じると考えることができる。した
がって, 限界状態のとき,
ic  w   '
 ic 
 ' Gs  1

w
1 e
(2)
が成り立つ。ここに,
― 287 ―
Gs: 土粒子の比重
e: 間隙比
である。
複素関数論によると, 深さ方向に有限な厚さ T の地盤について, 最大出口動水勾配 ie
max は矢板の前面に接する
地盤表面で生じ,
i e max 
H
(3)
4TaK ( a 2 )
と表される 50) 51) 52) 53)。ここに,
K(a2): 第一種完全楕円積分
 D 
a  sin 
 : 係数
 2T 
(4)
H: 矢板の前後にかかる水頭差
T: 地盤の全層厚
D: 矢板の根入れ深さ
である。(1)式を用いると Fig.5 の場合について地盤の浸透破壊に対する安全率 Fs が求まり,
Fs 
 ' 2D
4TaK (a 2 )  '
 1.67
 H w
w H
(5)
となる。また, Harza による限界水頭差 HH は Fs=1.0 のときに対応する水頭差 H の値として求まり, (5)式から,
H H  1.67
'
2D
w
(複素関数論による) (Harza の方法による, Fs=1.0 のとき)
(6)
となる。Harza の方法は表層でボイリングが生じるときの条件を求める方法である。表層で上向きの動水勾配が限
界動水勾配を越えたとき, 土粒子が浮き上がり土粒子の移動(パイピング)による破壊が起こると考える。
さて, Fig.5 のような締切り矢板の場合には表層でボイリングが生じるよりも小さな水頭差で矢板に接する下流
側の土塊が全体的な力の釣合いを失い上昇破壊することが知られている。したがって, この場合には, 次に述べる
Terzaghi の方法が有効となる。
3.2 Terzaghi の方法 54) 55)
Terzaghi は, モデル実験などから, Fig.6 のように
破壊は矢板壁に接した幅 D/2, 深さ D0 (0  D0  D)
の角柱土塊が力の釣合いを失って持ち上がるとき
に破壊が起こると考えた。ここに, D は止水壁の根
入れ深さである。この角柱土塊の持ち上がりに抵抗
する力は , 角柱土塊の重量と鉛直な側面に働くせ
ん断抵抗力(摩擦力と粘着力)である。しかし, 崩壊
の瞬間には角柱に水平方向に働く有効応力はほぼ
0 とみなすことができるので, 結局, この場合には,
角柱の底面に働く過剰間隙水圧が角柱の水中重量
より大きくなったときに角柱土塊の上昇 ( 浸透破
壊)が起こることになる。土塊の上昇に対する安全
率 Fs は, 考える土塊の深さ D0 によって変化するが,
その最小値がその地盤の浸透破壊に対する安全率
Fs min となる 54)。
Fig.6 に示すような均質な地盤の場合には, 浸透
破壊に対する安全率はプリズムの下端が矢板の下
端と一致したときに最小値となる(Fig.7 参照)55)。こ
Fig.6 Terzaghi の方法
のとき, 浸透破壊に対する安全率 Fs は,
Fs 
W '  'D

U e ha  w
(7)
となる。ここに,
― 288 ―
W '
D
D ' : 角柱土塊の水中単位体積重量
2
Ue 
1
 w D ha : 角柱の底面(幅 D/2)に働く過剰間隙水
2
圧の合力
’: 土の水中単位体積重量
w: 水の単位体積重量
ha: 角柱の底面に働く平均過剰間隙水圧
である。ha の値は, 流線網を描いて求めたり, FEM 浸透
流解析から求めることができる。
3.3 Prismatic failure concept
Prismatic failure の考え方 56)
57)
は, Terzaghi の考え方
を拡張したものである。Prismatic failure の考え方では,
矢板壁に接した任意の幅, 任意の深さのプリズムを考え,
そのプリズムの力の釣合いについて考える。Fig.8 に示
すような二次元均質地盤において, 例えば矢板に接
Fig.7 Terzaghi の破壊土塊
したプリズム OABC を考える。このプリズムには,
Fig.9 のように, プリズム自体の水中重量 W’のほか,
プリズムの左右側面において摩擦力 FL, FR, 及び ,
下端面において過剰間隙水圧の合力 Ue が作用する。
このとき, プリズムの上昇に対する安全率 Fs は,
W ' FL  FR
Fs 
(8)
Ue
と定義することができる。ここで, (8)式右辺の諸量
は,
W '   ' bl
Ue  
(9)
x0  b
x0
FL  
z0 l
z0
FR  
x'
z0 l
z0
ue
x'
z  z0
x  x0
dx
(10)
tan  1dz
(11)
x  x0 b
tan  2 dz
Fig.8 Prismatic failure の考え方
(12)
である。ここに,
':砂の水中単位体積重量
b:プリズムの幅
l:プリズムの長さ
x0,z0:プリズムの左下点 O の座標 (Fig.9 参照)
ue:z 地点における過剰間隙水圧
1:プリズム(砂)と左側面(矢板)の摩擦角
2:プリズム(砂)と右側面(砂)の摩擦角
である。
矢板の前後にかかる水頭差を徐々に増加させてい
ったときに, すべてのプリズムについて上昇破壊に
対する安全率 Fs を計算し, その最小値 Fs
min がちょ
うど 1.0 になったときのプリズムを限界プリズムと
呼ぶ。ここでは, 安全率の考え方について, Kälin58)
による最小基準の原理(Minimum criterion)を用いて
いる。そして, 水頭差が限界水頭差を越えて増加し
Fig.9
たとき限界プリズムがまず最初に上昇し地盤が破壊
― 289 ―
プリズムに作用する力
するものと考える。側面の摩擦を考える場合と考えない場合に分けられる。限界プリズムは, 摩擦を考慮しない場
合矢板に接した幅のないプリズムとなるが, 摩擦を考慮した場合ある幅をもってくる。ここでは, 二次元版 pfc-2D
について述べたが, 軸対称版 pfc-AXS 59)及び三次元版 pfc-3D60) についても同様である。
3.4
Bligh 及び Lane の方法 61) 62)
透水性地盤上に堰を設けると, 上下流の水頭差 H によって, 基礎地盤内に浸透流が生じる。この水流によって,
地盤を構成する細土粒子が浸透水の出口部分から移動, 流失し, 地盤内に水孔が生じることがある。水孔が基礎地
盤上流側へ進行し空洞ができ, それが上流側の浸透水流入部分に達すると基礎は破壊に至る。このようにパイプ状
の水みちができる現象をパイピング(貫孔作用)という。ブライ(Bligh)61), 及び, レーン(Lane)62) は, 構造物と基
礎地盤の接触面(基礎面)に沿う浸透が最も危険であると考えた。そして, パイピングの防止のためには, 堰基礎面
(Fig.10 参照)に沿う浸透路長(クリープ長)を確保する必要があると考えた。
1  45

 2  45
Fig.10 ブライ及びレーンの浸透路
ブライ及びレーンは, 破壊した構造物, 破壊していない構造物について統計的に整理し, 次のような結論を得た。
(1) ブライ(Bligh)の方法
クリープ比(Plain creep ratio) Cc を,
Cc 
L
H
(13)
と定義する。ここに,
L: 堰の基礎面に沿って測った浸透路長(実際の浸透路とは異なる)
H: 上下流の最大水位差
である。パイピングを防ぐためには, クリープ比(Plain creep ratio) Cc が基礎地盤の土質に応じて定められた値 C
(Table 163)参照)以上であればよいとされる。
Cc  C
(14)
(2) レーン(Lane)の方法
地盤の鉛直方向と水平方向の透水性を加味して, 次のような重みつきクリープ比(Weighted creep raio) Cw を考え
る。
Cw 
Lw
H
(15)
ここに,
Lw 
kv
Lh  Lv : 重みつきクリープ長(Weighted creep length)
kh
kh: 水平方向の透水係数
kv: 鉛直方向の透水係数
Lh: 水平, または, ゆるい傾斜 (45°以下)のクリープ長
Lv: 鉛直, または, きつい傾斜 (45°以上)のクリープ長
― 290 ―
である。一般に, kv/kh=1/3 が用いられる。パイピングを防ぐためには, (1)と同じように, 重みつきクリープ比 Cw が
基礎地盤の土質に応じて定められた値 C’(Table 163)参照)以上であればよいとされる。
Cw  C'
(16)
確保すべき浸透路長は, (14), (16)式を満たすように決定するものとする。また, (14), (16)式にはすでに安全率が考
慮されて入っているものとする。
Fig.10 に示すような場合, 浸透路長は次のように計算することができる。
ブライ:L (Plain creep length)
L  AB  BC  CD  DE  EF  FG  GH  HI  IJ  JK
(17)
レーン:Lw (Weighted creep length)
Lw 
Table 1
1
(BC  EF  GH  HI  IJ)  (AB  CD  DE  FG  JK )
3
(18)
Bligh の C と Lane の重みつきクリープ比 C’
Bligh の C
Lane の C’
微細砂または沈泥
18
8.5
細砂
15
7.0
中砂
–
6.0
粗砂
12
5.0
微粒礫
–
4.0
中粒礫
–
3.5
礫及び砂の混合
9
–
玉石を含んだ粗粒礫
–
3.0
玉石と礫を含んだ転石
–
2.5
基礎地盤
転石, 礫と砂
4~6
–
軟粘土
–
3.0
中粘土
–
2.0
重粘土
–
1.8
硬粘土
–
1.6
沈泥, 微細砂, 細砂, 中砂, 粗砂の粒径は Table 263) に示すとおりである。
Table 2
基礎地盤の材料と透水係数の関係(概略値)
基礎地盤材料
平均粒径 d (mm)
透水係数 (cm/s)
粘土
0.00~0.01
0.000003
沈泥
0.01~0.05
0.00045
微細砂
0.05~0.10
0.0035
細砂
0.10~0.25
0.015
中砂
0.25~0.50
0.085
粗砂
0.50~1.00
0.35
小砂利
1.00~5.00
3.0
4.基準類の考え方と分類
各種基準類における考え方を 6 つのカテゴリーに分類して述べる。○囲み数字は, 第1章の基準類番号を示す。
4.1 Terzaghi の方法に基づくもの
まず, 二次元単列矢板条件における地盤を, Fig.11 に示すように, (a) 掘削のない地盤, 及び, (b) 掘削のある地盤
に分類する。
この方法では, 下流側については矢板の根入れ深さ D を考え, 上流側については下流側根入れ深さ D と同じ厚
さの地盤を考え, それより上の土の部分 d における水頭損失を考えない(国土交通省鉄道局監修・鉄道総合技術研
究所編, 2001)。これは, Fig.11(b)を Fig.11(a)と同じ問題として取り扱うことを意味する。
― 291 ―
H
d
H
D1
D
D
T1
T
T
(a) 掘削のない地盤
(b) 掘削のある地盤
Fig.11 二次元単列矢板条件における地盤
(1)-1 法(⑥⑧⑨⑪⑬⑭㉜㉝㉞㊳㊴㊵) 前述した Terzaghi の方法において, 複素関数論から破壊土塊下部の過剰
間隙水圧分布を台形近似して, ha=1.57H/4 と考える。安全率 Fs は(19)式で表される。
'
1
2D
Fs  1.27
w
H
(19)
(1)-2 法(①②③⑤⑦⑧⑩⑫⑰⑱⑲⑳㉑㉒㉓㉔㉖㉗㉘㉙㉛㉝㉟㊱) Terzaghi の方法において, 安全側の考慮から,
破壊土塊の幅を 0 と仮定して, ha = H/2 であると考える。このとき, (7)式から, 安全率 Fs は次のように表される。
'
1
Fs  1.0
2D
(20)
w
H
4.2 限界動水勾配によるもの
下流側地盤を一次元的に考え, 動水勾配 i が限界動水勾配 ic = ’/w と等しくなったときを限界状態と考える。水
頭差を H, 浸透路長を L としたとき, 動水勾配 i として, i = H/L を考える。浸透破壊に対する安全率 Fs を Fs = ic/i
と定義する。浸透路長 L の取り方には次に示すように 2 つの方法がある。
(2)-1 法(①②④⑩⑰⑲㉕㉙㉛) 地下水面下において, 土が矢板に接する上下流側の壁面をすべて有効な浸透路
長と考え, L = 2D+d として次のように定式化する。
( 2 D  d ) ' 1
Fs 
w
H
(21)
(2)-2 法(①⑩⑲㉕㉖㉚) 下流側地盤における締切り矢板の根入れ深さ D 及びそれと等しい上流側地盤の厚さ D
(= D1  d) のみが浸透路長として有効であると考え, L = 2D として次のように定式化する。
2 D ' 1
Fs 
w H
(22)
この方法は, 式の上では (1)-2 法と同一となる。
4.3 クリープ比によるもの
この考え方は, 通常, フローティングタイプの取水堰の基礎地盤のように水平方向のクリープ線が卓越する問
題に適用されているが 63), 鉛直方向のクリープ線が卓越する締切り矢板の問題に適用したものである。クリープ線
の長さ(クリープ長または浸透路長)を L とし, 構造物の上下流に作用する水頭差を H としたとき, クリープ比 Cc
を Cc=L/H と定義する 63)。パイピングを防ぐには, クリープ比 Cc が地盤の土質に応じて定められた値 Cr 以上にな
ればよいとする 63)。基準では, Cr として 2.0((3)-1, 2 法)がとられている。すなわち, 地盤にかかる平均動水勾
配 iavg を iavg = H/L として, パイピングに対する安定条件を iavg  0.5 としていることになる。’/w = 1.0 の地盤に対
しては安全率 Fs = 2.0 をとったことと同等になる。ここでは, まず, 原著論文 61) 62) に基づく検討式について再掲し
(3.4 節参照), 次に, 締切り矢板の問題に適用された検討式について述べる。
(3)-0 法
原著論文 22) によると, フローティングタイプの取水堰の基礎地盤のように水平方向のクリープ線が卓
越する問題に対して, 構造物と基礎地盤に接する浸透路長に関して次のように検討される。
― 292 ―
(3)-0a 法 (Bligh の方法)(㊶)
すべての浸透路長が水頭損失に対して同じ効果をもつと考える。そして,
Cc = L/H  C
(14)
とする。ここに,
L: 浸透路長(Plain creep length)
H: 取水堰の前後にかかる水頭差
C: 地盤の種類によって与えられる限界値 (Table 1 参照)
である。
(3)-0b 法 (Lane の方法)(㊶)
水平方向の浸透路長の方が鉛直方向のものより効果が小さいと考える。そして,
Cw = Lw/H  C’
(16)
とする。ここに,
Lw = (kv/kh) Lh + Lv: 重みつき浸透路長(通常 kv/kh =1/3 が用いられる)
Lh: 水平方向の浸透路長
Lv: 鉛直方向の浸透路長
C’: 地盤の種類によって与えられる限界値 (Table 1 参照)
である。
(3)-1 法
上述の㊶以外の基準類では, 次のように, (3)-1a 法, (3)-1b 法として分類することができる。
(3)-1a 法(③⑥⑧⑪⑫⑲⑳㉑㉜㉝㉞㉟㊱㊳㊴)
(2 D  d )
Hc 
Cr
(3)-1b 法(⑧㊳)
Hc 
2D
Cr
この場合, 浸透路長を L = 2D+d と考える。
(Cr  2.0)
(23)
この場合, 浸透路長を L = 2D と考える。
(Cr  2.0)
(24)
4.4 土留め形状による補正
4.4.1 道路土工-仮設構造物工指針(案)(1999)
道路土工-仮設構造物工指針(案)(1999 年版)6), 仮設構造物設計要領 8), 及び, 土木工事仮設計画ガイドブック(I)
-計画から積算条件整備まで-11) において形状補正に関して同一の記述がある。土留め壁下端位置に発生する過
剰間隙水圧は, 掘削幅, 土留め形状などの影響を強く受けることが知られている。Terzaghi の考え方を基本にして,
過剰間隙水圧の合力の算定式に土留め形状に関する補正係数を導入し, 次に示すように, 二次元単列矢板条件の
場合(2D flow), 矩形形状土留めの場合(3D flow)及び円形形状土留めの場合(AXS flow)を考慮できるようにしてい
る。
Fs=w/u
(25)
ここに,
w=’D: 土の有効重量
である。この方法では, (7)式において, 土留め壁下端位置に作用する平均過剰間隙水圧 u (=haw)を,
u  ha  w  
1.57 w H
4
(26)
とする。ここに,
: 土留め形状に関する補正係数
H: 水頭差 (m)
である。ここで, 道路土工-仮設構造物工指針(案)(1999 年版)6) によって, 土留め形状による補正を行う場合を
(4)-1 法と表し, 考慮された流れの条件によって, a 二次元の場合, b 矩形形状の場合, c 円形形状の場合と細分類し
た。の値は土留め形状に対応して, 次のように与えられている。
(4)-1a 法: 二次元の場合
この場合, 本質的に(1)-1 法と同じである。
=
1.0
(4)-1b 法: 矩形形状の場合
(27)
この場合, の値は,
=1 2
1=1.300.7(B/D)0.45 (ただし, 1<1.5 のときは1=1.5 とする。)
― 293 ―
(28a)
(28b)
2=0.950.09{(L/B) 0.37}2
(28c)
と与えられる。ここに,
1: 掘削幅に関する補正係数
2: 平面形状に関する補正係数
L/B: 土留めの平面形状を表す長辺(全幅 L)と短辺(全幅 B)の比
である。
この場合, の値は,
=0.22.2(2R/D)0.2 (ただし, <1.6 のときは=1.6 とする。)
(4)-1c 法: 円形形状の場合
(29)
と与えられる。ここに,
R: 円形土留め壁の半径 (m)
である。ここで, (4)-1a, b, c 法として⑥⑧⑪㉜㉝㉞㊳㊴㊵, (4)-1c 法として㊲がリストアップされる。
4.4.2 鉄道構造物等設計標準・同解説(2001)
鉄道構造物等設計標準・同解説において, 形状補正に関する記述がある。Fig.12 に示すような掘削地盤について
考える。掘削が大深度に及ぶ場合や狭隘な掘削において, Terzaghi の考え方を用いると, 土塊の下端に作用する過
剰間隙水圧に整合性が得られなくなる。掘削形状を表す掘削幅と矢板の根入れ深さをパラメータとして, 平均過剰
間隙水圧(水頭表示) ha を算出することによって, 二次元集中流(2DC flow)及び三次元浸透流(3D flow)に対応した算
定式を提示している。ここで用いられている形状補正の方法は , 上述 4.4.1 の道路土工-仮設構造物工指針
(案)(1999)のものとは異なっている。安全率として,
'D
W'
Fs 

(1.5)
U e  w ha
(30)
と定義し,
ha =  a (B/D)b H
(31a)
a = 0.57  0.0026 H
(31b)
b = 0.27 + 0.0029 H
(31c)
d
H
D1
とする。ここに,
D
 : 三次元効果に対する補正係数
である。ここで, 鉄道構造物等設計標準・同解説(2001)によって,
T1
土留め形状による補正を行う場合を(4)-2 法と表し, 考慮された
T
流れの条件によって, a 二次元複列矢板条件の場合, b 三次元浸透
流の場合と細分類した。(31a)式における の値は, 土留め壁の形
状に応じて次のように決める。
(4)-2a 法: 二次元複列矢板条件の場合
=1
(32)
Fig.12 掘削地盤 (陸上掘削)
(4)-2b 法: 三次元浸透流の場合
=1.25
ここで, (4)-2a, b 法として⑨がリストアップされる。
(33)
この方法は , 背後の地盤の損失水頭を考慮するものであり , 掘削ありの地盤に対してのみ適用される。また ,
(31a), (31b), (31c)式は無次元化されていないので(すなわち, ha, a, b は次元をもっているので), 適用範囲は提案式の
計算条件に制限される。これら提案式の計算条件は, d=5~10m, D=5~15m, TD=20m, B/2=45m, B/D=1.0~2.0 であ
るので, 本基準はこれらの条件の近傍でのみ適用できることに注意すべきである。
4.5 Canadian Geotechnical Engineering Manual (Canadian Geotechnical Society, 1992)15) 16)
地盤工学会発行の 「根切り工事と地下水 -調査・設計から施工まで-(地盤工学会編, 1994)」15) においてこの方
法が紹介されている。出口動水勾配 ie が, 通常の場合 1.0, きれいな砂の場合 0.5~0.75 になると人が作業したり機
械を操作したりするのに支障をきたすとし, 十分な矢板の根入れが必要であるとしている。Fig.13(a)に, 本方法で
考える地盤の条件を示す。ここに,
T1, T2: 矢板背後及び前方における地盤の層厚
d1, d2: 矢板背後及び前方における矢板の根入れ深さ
b: 複列矢板半幅
― 294 ―
B(=2b): 複列矢板全幅
である。最大出口動水勾配 ie max を,
ie max  A
H 2
D 1   2
(34)
と表し,
A: 掘削形状による補正係数
1 , 2: Fig.13(b)から求められる係数
D = d2
(a) Notation
と す る 。 こ こ で , Canadian Geotechnical Engineering
4.0
Manual (1992)によって, 土留め形状による補正を行う
場合を(5)-1 法と表し, 考慮された流れの条件によっ
て, a 複列矢板の場合, b 円形形状の場合, c 正方形形状
3.0
の場合と細分類した。 A の値は, 土留めの形状に応じ
  2
て, 次のように与えられている。
(5)-1a 法: 複列矢板の場合
(35)
A=1.0
(5)-1b 法: 円形形状の場合
1.0
(36)
A=1.3
2.0
(5)-1c 法: 正方形形状の場合
A=1.3 (壁中央)
(37a)
A=1.7 (隅角部)
(37b)
0.0
ここで, 限界動水勾配 ic を,
ic 
'
w
0.0
0.2
0.4
0.6
d1/T1 & d2/T2
0.8
1.0
(b) Relationships between d1/T1 & 1 and d2/T2 & 2
Fig.13 1, 2 の値
Values of 1 and 2 (Canadian Geotechnical Society, 1994)
(38)
とすると, 表層地盤のボイリングに対する安全率 Fs は,
i
Fs  c
ie max
(39)
となる。Canadian Geotechnical Engineering Manual (1992)では, ic < 0.5~0.75 を推奨しているが, この条件は, ’/w =
0.8 及び’ /w = 1.0 に対して,
’/w = 0.8 のとき, Fs > 1.07~1.60
’ /w = 1.0 のとき, Fs > 1.33~2.00
を意味している。ここで, (5)-1a, b, c 法として⑯, (5)-1a 法として㊶がリストアップされる。
この方法は, 本質的に, Harza48) または Kochina50) の方法と同一の考え方であり, 掘削地盤における表層ボイリ
ング発生に対する安定性を算定する方法となっている。Harza48) は, 浸透水の出口部分の動水勾配, すなわち出口
動水勾配(Escape gradient)ie について考えた。3.4 節で述べたように, ie の最大値, すなわち最大出口動水勾配 ie
max
が砂の限界動水勾配 ic より大きくなると, 地盤表層でボイリングが発生すると考える。表層ボイリングの発生に対
する安全率 Fs は(39)式となる。
4.6 Prismatic failure concept
締切り矢板下流側の地盤について考える。浸透破壊に対する安全率は,
W ' FL  FR
Fs 
Ue
(40)
と表される。ここに,
W': プリズムの水中重量,
FL, FR: プリズムの左右側面における摩擦抵抗
Ue: プリズム下端面に作用する過剰間隙水圧の合力
と定義される
56) 57)
。矢板の前後にかかる水頭差を徐々に増加させていったときに, すべてのプリズムについて上
昇破壊に対する安全率 Fs を計算し, その最小値 Fs min がちょうど 1.0 になったときのプリズムを限界プリズムと呼
ぶ。そして, 水頭差が限界水頭差を越えて増加したとき, 限界プリズムがまず, 最初に, 上昇し地盤が破壊するも
のと考える。
― 295 ―
Table 3 基準類による Fs の算定式
ボイリングの検討
(1) Terzaghi の方法によるもの
(1)-1 法(1999)
(1)-2 法(1987)
Fs =1.27’(2D)/w H
Fs =1.0’(2D)/w H
(2) 限界動水勾配によるもの
(2)-1 法(1977)
(2)-2 法
Fs =(2D + d)’ /w H
Fs =2D ’/w H
(4) Terzaghi の考え方に対して詳細解析等を加えたもの
(4)-1 法
(4)-2 法
Fs =(1/)1.27’(2D)/w H (: 形状係数)
Fs= ’D/w ha
ha= a (B/D)b H
(4)-1a 法 (二次元) [(1)-1 法と同じ]
  1.0
a=0.570.0026H
(4)-1b 法 (矩形)
b=0.27+0.0029H
  12
 : 三次元効果に対する補正係数
1: 掘削幅に関する係数,
(4)-2a 法: 二次元複列矢板条件の場合
1=1.300.7(B/D)0.45
=1
2: 平面形状に関する係数
(4)-2b 法: 三次元浸透流の場合
2=0.950.09{(L/B) 0.37}2
=1.25
(ただし, 1<1.5 のときは1=1.5 )
(4)-1c 法 (円形)
=0.22.2(2R/D)0.2
(ただし, <1.6 のときは=1.6)
(5) Canadian Geotechnical Engineering Manual
Fs =ic/ie max
ic=r’/rw
ie max=A(H/D) (2/(1+2))
(5)-1a 法(複列矢板)
A=1.0
(5)-1b 法(円形)
(5)-1c 法(正方形)
A=1.3
A=1.3(壁中央)
A=1.7(隅角部)
(6) Prismatic failure concept
Fs =Hc/H
(6)-1a 法 (2D flow (無限地盤))
Fs =2.846635 D’/Hw
(6)-1b 法 (2DC flow (無限地盤))
Fs = (0.4826ln(B/D) + 1.9678) D’/Hw
(0.3≦B/D≦5.0)
(6)-1c 法 (AXS flow (無限地盤))
Fs = (0.378ln(R/D) + 1.5452) D’/Hw
(0.3≦R/D ≦5.0)
パイピングの検討
(3) クリープ比によるもの*
(3)-0a 法(Bligh の方法)
(3)-0b 法(Lane の方法)
Cc=L/H
Cw={(kv/kh)Lh+Lv}/H
CcC
CwC’
(3)-1a 法
(3)-1b 法
L  2D  d
L  2D
Cr=(2D+d)/H
Cr=2D/H
* 出口動水勾配を水頭差と浸透路長から平均的に求めたと考えると, C, C', Cr は表層ボイリングに対する安全率となる。
― 296 ―
Table 4 基準類による Hc の算定式
ボイリングの検討
(1) Terzaghi の方法によるもの
(1)-1 法(1999)
(1)-2 法(1987)
Hc=1.27’(2D)/w
Hc=1.0’(2D)/w
(2) 限界動水勾配によるもの
(2)-1 法(1977)
(2)-2 法
(Fs = Hc/H と定義)
Hc=(2D + d)’ /w
Hc=2D ’/w
(4) Terzaghi の考え方に対して詳細解析等を加えたもの
(4)-1 法
(4)-2 法*
Hc=(1/)1.27’(2D)/w (: 形状係数)
(Fs = Hc/H と定義) (d = H)
Hc= ’D/w 
 = a (B/D)b
(4)-1a 法 (二次元) [(1)-1 法と同じ]
  1.0
a = 0.570.0026 d
(4)-1b 法 (矩形)
b = 0.27+0.0029 d
  12
 : 三次元効果に対する補正係数
1: 掘削幅に関する係数,
(4)-2a 法: 二次元複列矢板条件の場合
1=1.300.7(B/D)0.45
=1
2: 平面形状に関する係数
(4)-2b 法: 三次元浸透流の場合
2=0.950.09{(L/B) 0.37}2
=1.25
(ただし, 1<1.5 のときは1=1.5 )
(4)-1c 法 (円形)
=0.22.2(2R/D)0.2
(ただし, <1.6 のときは=1.6)
(5) Canadian Geotechnical Engineering Manual
Hc =ic(1/A) {(1+2)/2)} D
ic=’/w
ie max=A(H/D){2/(1+2)}
(5)-1a 法(複列矢板)
A=1.0
(5)-1b 法(円形)
(5)-1c 法(正方形)
A=1.3
A=1.3(壁中央)
A=1.7(隅角部)
(6) Prismatic failure concept
(6)-1a 法 (2D flow (無限地盤))
Hc = 2.846635 D’/w
(6)-1b 法 (2DC flow (無限地盤))
Hc = {0.4826ln(B/D) + 1.9678} D’/w
(0.3≦B/D≦5.0)
(6)-1c 法 (AXS flow (無限地盤))
Hc = {0.378ln(R/D) + 1.5452} D’/w
(0.3≦R/D ≦5.0)
パイピングの検討
(3) クリープ比によるもの
(3)-0a 法(Bligh の方法)
Hc =L/Cc
(3)-1a 法
(3)-0b 法(Lane の方法)
Hc ={(kv/kh)Lh+Lv}/C’
(Fs = Hc/H と定義)
Hc =(2D+d)/Cr
(Cr=2.0)
(3)-1b 法
Hc =2D/Cr
(Cr=2.0)
* Fs = Hc/H と定義すると, ha は H に線形関係となるので,  = a (B/D)b において, a = a (d), b = b (d)となる(  H =d)。
したがって, a = 0.570.0026 d, b = 0.27+0.0029 d となる。
― 297 ―
深さ方向及び左右方向に無限の広がりをもつ地盤, すなわち, 半無限地盤に対して, 次に示すように, 限界水頭
差の無次元量 Hcw/D’ が与えられ, Fs が限界水頭差と地盤にかかる水頭差 H の比 Hc/H として計算される。
(6)-1a 法: 二次元流(2D flow)の場合(半無限地盤)
Hcw/D’ =2.846635
(41)
Fs =2.846635 D’/Hw
(42)
(6)-1b 法: 二次元集中流(2DC flow)の場合(半無限地盤)
Hcw/D’ = 0.4826ln(b/D) + 1.9678
(0.3≦b/D≦5.0)
Fs = {0.4826ln(b/D) + 1.9678} D’/Hw
(43)
(0.3≦b/D≦5.0)
(44)
(6)-1c 法: 軸対称流(AXS flow)の場合(半無限地盤)
Hcw/D’ = 0.378ln(R/D) + 1.5452
(0.3≦R/D ≦5.0)
Fs = {0.378ln(R/D) + 1.5452} D’/Hw
(45)
(0.3≦R/D ≦5.0)
(46)
ここで, (6)-1a, b, c 法として㊶がリストアップされる。
4.7 まとめ
(1), (2), (4)-(6)法は掘削底面のボイリングに対する検討手法であり, (3)法は矢板壁に沿ったパイピングに対
する検討手法である。基準類による Fs 及び Hc の算定式をまとめると, それぞれ, Table 3, 4 となる。また, 今回調
査した基準類を安全率算定の考え方にしたがって分けると Table 5 となる。Table 5 から, ボイリングに対して,
(1)-2 法の適用が多いこと, 近年, (4)-1 法が基準として採用されることが多くなってきたことが読み取れる。また,
パイピングに対しては, クリープ比による(3)-1 法が多く採用されていることがわかる。Table 6 に各方法と安全率
の関係をまとめている。Table 6 から, 一般的に, ボイリングに対する安全率は 1.2~1.5 が多くとられていること,
パイピングに対する安全率は 2.0 が多くとられていることがわかる。また, 水平方向の流れが卓越した河川構造物
などの特殊な場合には 3~5 がとられていることわかる。以前は, 「最小でも 5, 一般的には 8~12 が勧められてい
た」64) ことから考えると, 安全率として, 近年次第に小さな値が設定されるようになってきたことがわかる。
5.安全率の考え方
5.1 安全率の定義
ここでは、Fig.14 に示すような二次元地盤について考える。
まず, Fig.14 に示される (a) 掘削なし地盤, (b) 掘削地盤(水中掘削), (c) 掘削あり地盤(d の部分の水頭損失を無
Table 5
ボ
イ
リ
ン
グ
基準類に適用される安全率算定の考え方
考 え 方
Terzaghi の考え方
限界動水勾配による方法
Terzaghi の考え方(詳細解析)
Harza (or Kochina)の考え方
パ
イ
ピ
ン
グ
Prismatic failure concept
Bligh’s and Lane’s methods
(Original creep ratio)
クリープ比による方法 (簡易
法)
(1)-1 法
基 準 の
⑥⑧⑨⑪⑬⑭㉜㉝㉞㊳
㊴㊵
分
類
(2)-1 法
(4)-1a,b,c 法
(4)-1c 法
(5)-1a,b,c 法
(5)-1a 法
(6)-1a,b,c 法
(3)-0a 法
①②④⑩⑰⑲㉕㉙㉛
⑥⑧⑪㉜㉝㉞㊳㊴㊵
㊲
⑯
㊶
㊶*
㊶
(2)-2 法
(4)-2a,b 法
①②③⑤⑦⑧⑩⑫
⑰⑱⑲⑳㉑㉒㉓㉔
㉖㉗㉘㉙㉛㉝㉟㊱
①⑩⑲㉕㉖㉚
⑨
(3)-0b 法
㊶
(3)-1a 法
③⑥⑧⑪⑫⑲⑳㉑㉜㉝
㉞㉟㊱㊳㊴
(3)-1b 法
⑧㊳
(1)-2 法
* 説明のみ (Prismatic failure concept の説明が行われている)
青㉛~㊲・・・既出改訂版
赤㊳~㊶・・・新たな基準
(4)-1a,b,c 法を採用した基準については、二次元地盤の式((1)-1 法の式)を基本としているので、(1)-1 法にも入れた。
(4)-1a 法は基本的に(1)-1 法と同等とみなす。
― 298 ―
Table 6
各方法と安全率の関係
安全率
分類
(1)-1
Terzaghi
(1)-2
ボイリング
限界動水
勾配
Terzaghi
(詳細解析)
Harza
pfc
1.2
⑥⑧⑪⑬⑭㉜
㉝㉞㊳㊴㊵
1.2-1.5
①㉒㉓㉔㉖㉙
1.5
(4)-1a,b,c
(4)-1c
(4)-2a,b
②③
⑲㉛
⑤⑦⑧⑫⑳㉑
㉗㉘㉝㉟㊱
記述なし
④
㉕㉖
⑥⑧⑪㉜㉝㉞
㊳㊴㊵
㊲
⑩⑰⑱
①②⑩⑰⑲
㉛
①⑩⑲
㉕㉙
㉚
⑨
(5)-1a,b,c
⑯
(5)-1a
(6)-1a,b,c
㊶(Fs=3~5)
㊶
パイピング
㊶(C, C'は
表による)
(3)-0a,b
クリープ
比
その他
⑨
(2)-1
(2)-2
2.0
(3)-1a
③⑥⑧⑪⑫
⑲⑳㉜㉝㉞
㉟㊱㊳㊴
(3)-1b
⑧㊳
⑲(Cr=3.5)
㉑(Cr=3.0)
青㉛~㊲・・・既出改訂版
赤㊳~㊴・・・新たな基準
⑲(3)-1a 法について、Cr=3.5(河川の締切り)、Cr=2.0(首都高速道路公団の基準)
㉑(3)-1a 法について、Fs=1.5、Cr=2.0  実質的な安全率は 3.0 となる。
㊶(3)-0a,b 法について、C, C'は表による。(5)-1a 法について、Fs=3~5 が与えられている。(6)-1a,b,c 法について、引用はないが、
説明は Prismatic failure concept を参考にしている。
pfc・・・Prismatic failure concept
Harza・・・Harza(1935) or Kochina(1962)の考え方
視)の場合について考える。水頭差 H の増加に対して, 地盤内水頭値 h の変化が線形となっているので, これらの
場合について Table 3 に示した方法(プリズムの力の釣合いなど)から求めた安全率 Fs は, 別の定義 Fs = Hc/H から求
めた安全率と本質的に同一の値となる。すなわち, 「Table 3 の安全率の定義式で求めた安全率 Fs」と「Table 4 の
計算式による Hc とその時点の H から求めた安全率 Fs (= Hc/H)」は同値となる。
次に, Fig.14 に示される (d) 掘削あり地盤(陸上掘削)の場合について考える。これは, 上流側掘削残土 d の部分
の水頭損失を考慮する場合を意味し, (2)-1 法, (4)-2 法, (3)-1 法の考え方が該当する。ここで, Figs.15(a), (b)を参
照して, 例えば, (2)-1 法について考える。(2)-1 法によると, Fs = ('/w)/{H/(2D+d)}において, Hc は Fs = 1 に対応す
る H の値として定義されるので,
Hc = ('/w)  (2D+d)
(47)
と計算される。Fig.15(a)の場合, 限界時の水位は上流側地盤内にあるので(47)式において H  Hc, d  d+d0 (= Hc)
となり, Fig.15(b)の場合, 限界時の水位は上流側地盤表面より上方になるので H  Hc0, d  d+d0 ( Hc0)となる。
(1) H =Hc のときに締切り矢板背後において地下水面が地中にある場合
Fig.15(a)より, (47)式において, H = d = Hc
とおけるので,
Hc = 2D'/(w')
(48)
となる。(48)式から, Hc について,
' = w のとき, 解なし。
' > w のとき, Hc < 0 となり, 不合理である。
' < w のとき, とくにw と'が近い値をとると Hc は大変大きな値となり(現実的でなくなり), この場合も不合理
となる。
― 299 ―
H
H
d
D1
D
D
T1
T
T
(a) 掘削なしの地盤
(b) 掘削ありの地盤(水中掘削の場合)
水頭損失を無視
する領域
d
H
H
D1
D
D
T1
T
(c) 陸上掘削(背後地盤の水頭損失を無視)
Fig.14
T
(d) 陸上掘削(背後地盤の水頭損失を考慮)
二次元地盤における各種の状態
(2) H =Hc のときに締切り矢板背後において地下水面が地表に出る場合
Fig.15(b)より, (47)式において, H  Hc0,
d  d+d0 とおくと,
Hc0 = ('/w) (d0+d+2D)
(49)
となる。このとき, 安全率は, Fs = Hc0/H と計算される。(2)の場合, このように, 状況の変化を正確に把握しなけれ
ばならず計算は煩雑なものとなる。
5.2 安全率の提案
5.1 節で述べたような不合理で煩雑な計算を避けるため, 著者らは, Fig.14(d)の場合にも, 安全率として, Fs =
Hc/H と定義することを提案する。これは, Figs.15(a),(b)において, 上流側掘削残土 d0 の部分の水頭損失を無視する
ことを意味し, 矢板背後において d よりも上の d0 の部分に水頭損失がないと考えることを意味する。すなわち,
Fig.14(d)が Fig.14(b)と同一条件であると考えることと同値となる。この仮定をおくと, H の増加に対して, 地盤内
水頭値の変化が線形となるので, Fs = Hc/H と考えることができる。この仮定は, d0 の部分の水頭損失を無視するこ
とになるので, 浸透破壊問題に関しては安全側の考慮となる。(2)-1 法, (4)-2 法, (3)-1 法について, Table 4 の Hc
の値はこの考え方に基づいて定式化したものである。例えば, (2)-1 法に関して, Fs = Hc/H =' (d+2D)/wH であるの
で, Fs = 1 とおくことによって, Hc = ' (d+2D) /w と算定することができる。
6.典型的な 2 つの例題についての基準類各法による Hc の値と考察
ここでは, 締切り矢板地盤におけるボイリングに対する検討結果について考察する。2つの典型的な例題:掘削
― 300 ―
d0
d0
d
H
Hc
d
Hc0
H
D1
D1
D
D
T1
T1
T
(a) 限界時の水位が上流側地盤内にある場合
T
(b) 限界時の水位が上流側地盤表面より上方にある場合
Fig.15 上流側掘削残土部分の水頭損失を考慮する場合(2D flow)
なし地盤(40, 40)及び掘削あり地盤(40, 30)について, Hc の値を, 第4章で示した各方法によって, 第2章で述べた 4
つの流れの条件(2D, 2DC, AXS, 3D flows)に分けて算出した。ここで, 地盤条件を(上流側層厚 T1 (m), 下流側層厚 T
(m))と表し, また例えば, 二次元地盤(40, 30)を 2D4030 と表すものとする。各種流れの条件における地盤の諸条件
は, それぞれ, Figs.1-4 に示されている記号にしたがって次の通りである。
二次元流:2D4040(T=40 m, D=20 m), 2D4030(T1=40 m, D1=20 m, T=30 m, D=10 m)
二次元集中流:2DC4040(T=40 m, D=20 m, B/2=20 m), 2DC4030(T1=40 m, D1=20 m, T=30 m, D=10 m, B/2=20 m)
軸対称流:AXS4040(T=40 m, D=20 m, R=20 m), AXS4030(T1=40 m, D1=20 m, T=30 m, D=10 m, R=20 m)
三次元流:3D4040(T=40 m, D=20 m, B/2=20 m, W/2=40 m), 3D4030(T1=40 m, D1=20 m, T=30 m, D=10 m, B/2=20 m,
W/2=40 m)
平面形状の対称性から, 軸対称流では 1/4 円, 三次元流では 1/4 矩形を解析領域(実験装置と相似な形状)とした。
また, 両側面境界は不透水性境界とし, 2D, 2DC, AXS flow の場合 L=2T= 80 m, 3D flow の場合 L=80 m, L1=60 m とし
た。計算結果を Tables 7(a)-(d)に示す。4 つの流れ条件について, これまでに行った掘削なし地盤(40, 40)及び掘削
地盤(40, 30)に対する 1/100 模型を用いた実験結果によると, 変形開始時水頭差 Hy が Prismatic failure の考え方によ
る理論限界水頭差 Hc によって精度良く算定できることが示されている 65) 66)。したがって, Prismatic failure の考え
方による Hc と基準類算定式による Hc の比は, 実質的に, Fs (Formula)  Fs (Residual soil d)の大きさを表すことにな
る 67) 68)。ここに, Fs (Formula)は算定式に含まれる安全率, Fs (Residual soil d)は上流側掘削地盤 d の部分による安全
率であり, 掘削なし地盤の場合 Fs (Residual soil d) = 1.0, 掘削地盤の場合 Fs (Residual soil d) > 1.0 である。Table 7 に
は「((6)法による Hc) / (各法による Hc)」の値を示している。ここに, (6)法による Hc は Prismatic failure concept (pfc) に
よる計算値を意味しており, この値をここでは正解値と考えている。Table 7 から次の事柄がいえる。
6.1 二次元流の場合
Table 7(a)から, 二次元流について, 掘削なし地盤(2D4040)の場合には合理的な値が与えられることがわかる。ま
た, 掘削地盤(2D4030)の場合には(2)-1 法を除いてやや安全側の値を与えられることがわかる。設計安全率として,
Fs (Design)=1.2~1.5 をとると, 実質的な安全率 Fs (True) = Fs (Design) Fs (Formula) Fs (Residual soil d) は, 2D4040
の場合 1.40~2.22, 2D4030 の場合 1.55~2.47 となることがわかる。
これまで我が国では, 上述の通り, いろいろな機関において浸透破壊に関する種々の基準類が規定され, それを
用いて実際に施工が行われてきた。二次元地盤の場合, 地盤の不均質性や異方性など特殊な条件が問題となる場合
を除き, これらの基準に基づいて行われた施工がうまくいっているという観点から, これらの基準類によって計
算される水頭差は, 使用限界状態の限界値(安全施工限界水頭差)に対して一つの目安または推定値を与えるもの
であると考えることができる 44)。
― 301 ―
Table 7 典型的な 2 つの例題における Hc (m)の算定値 (’/w=1.0 の場合)
(a) 2D flow の場合
方法
(1)-1 法
(1)-2 法
(2)-1 法
(2)-2 法
(4)-1a 法
(4)-2 法
(5)-1 法
(6)法
2D4040
50.955
40.000
40.000
40.000
50.955
59.278
(6)法/各法
1.16
1.48
1.48
1.48
1.16
1.00
2D4030
25.478
20.000
30.000
20.000
25.478
32.945
(6)法/各法
1.29
1.65
1.10
1.65
1.29
1.00
(6)法/各法
0.88
1.11
1.11
1.11
1.51
1.11
1.00
2DC4030
25.478
20.000
30.000
20.000
16.010
27.824
22.721
28.700
(6)法/各法
1.13
1.43
0.96
1.43
1.79
1.03
1.26
1.00
AXS4040
50.955
40.000
40.000
40.000
29.708
30.769
31.013
(6)法/各法
0.61
0.78
0.78
0.78
1.04
1.01
1.00
AXS4030
25.478
20.000
30.000
20.000
17.364
17.478
19.319
(6)法/各法
0.76
0.97
0.64
0.97
1.11
1.11
1.00
3D4040
50.955
40.000
40.000
40.000
29.103
32.039
(6)法/各法
0.63
0.80
0.80
0.80
1.10
1.00
3D4030
25.478
20.000
30.000
20.000
15.744
22.259
18.279
(6)法/各法
0.72
0.91
0.61
0.91
1.16
0.82
1.00
備考
pfc 解析値
(b) 2DC flow の場合
方法
(1)-1 法
(1)-2 法
(2)-1 法
(2)-2 法
(4)-1b 法
(4)-2a 法
(5)-1a 法
(6)法
2DC4040
50.955
40.000
40.000
40.000
29.594
40.000
44.588
備考
pfc 解析値
(c) AXS flow の場合
方法
(1)-1 法
(1)-2 法
(2)-1 法
(2)-2 法
(4)-1c 法
(4)-2 法
(5)-1b 法
(6)法
備考
pfc 解析値
(d) 3D flow の場合
方法
(1)-1 法
(1)-2 法
(2)-1 法
(2)-2 法
(4)-1b 法
(4)-2b 法
(5)法
(6)法
備考
三次元効果*
正方形のみ
pfc
* 三次元効果(詳細な形状について特に記述なし)
6.2 二次元集中流の場合
Table 7(b)から, 二次元集中流について, 掘削なし地盤(2DC4040)の場合には(1)-1 法を除いて合理的な値が与えら
れることがわかる。(1)-1 法を用いるのは危険である。また, 掘削あり地盤(2DC4030)の場合には(2)-1 法を除いて合
理的な値を与えられることがわかる。(2)-1 法を用いるのは危険である。(4)-2a 法によると Hc は正解値に近い値が
与えられるので, 設計にあたっては安全率の設定等において注意する必要がある。
― 302 ―
6.3 軸対称流の場合
Table 7(c)から, 軸対称流について, 掘削なし地盤(AXS4040)の場合には(1)-1, 2 法, (2)-1, 2 法を用いるのは危険で
あることがわかる。(4)-1c 法, (5)-1b 法によると合理的であるが, 正解値に近い Hc の値が与えられるので, 設計にあ
たっては安全率の設定等において注意する必要がある。
掘削地盤(AXS4030)の場合には(1)-1, 2 法, (2)-1, 2 法を用いるのは危険である。(4)-1c 法, (5)-1b 法によると合理的
であるが, 正解値に近い Hc の値が与えられるので, 設計にあたっては安全率の設定等において注意する必要があ
る。
6.4 三次元流の場合
Table 7(d)から, 三次元流について, 掘削なし地盤(3D4040)の場合には(1)-1, 2 法, (2)-1, 2 法を用いるのは危険であ
ることがわかる。(4)-1b 法によると合理的であるが, 正解値に近い Hc の値が与えられるので, 設計にあたっては安
全率の設定等において注意する必要がある。
掘削あり地盤(3D4030)の場合には(1)-1, 2 法, (2)-1, 2 法, (4)-2b 法を用いるのは危険である。(4)-1b 法によると合理
的であるが, 正解値に近い Hc の値が与えられるので, 設計にあたっては安全率の設定等において注意する必要が
ある。
6.5 まとめ
第6章をまとめると次のようになる。
(1) 2D flow については, いずれの方法を用いても合理的な結果を与える。
(2) 2DC flow については, 掘削なし地盤では(1)-1 法, 掘削あり地盤では(2)-1 法を用いない方がよい。
(3) AXS flow, 及び, 3D flow については, (1)法, 及び, (2)法を用いない方がよい。
(4) 2DC, AXS, 及び, 3D flow については, (4)法, 及び, (5)法を用いるのがよい。これらの方法によると, 正解値に近
い Hc の値が与えられるので, 設計にあたっては安全率の設定等において注意する必要がある。
(5) 3D flow については, (4)-2b 法を用いない方がよい。
(6) 限界水頭差 Hc に関して, 実験結果は Prismatic failure の考え方によって精度良く算定できることから, (6)法すな
わち Prismatic failure の考え方に基づく値は実際(正解値)に近い値を与える。この方法で Hc を計算する場合には, 設
計にあたって安全率の設定に注意すべきである。この場合, 算定式に含まれる安全率は Fs (Formula)はほぼ 1.0 とな
り, とくに上流側掘削残土を考慮した解析では, 上流側掘削地盤 d の部分による安全率 Fs (Residual soil d)もほぼ
1.0 となるので, これまでの基準類算定式による場合とは異なり安全率に余裕がなくなる。実際の安全率は, 設計
安全率 Fs (Design)のみとなり, この値にすべてを含めておかなければならない。掘削地盤における構造物構築時の
一時的な安全率の低下 69) などを考慮すると, 総合的判断から, 一思案として Fs =2.5~3.0 以上が妥当な値であると
考えられる。
7.結論
地下水位の高い地点における地盤の締切り掘削では浸透破壊が問題となる。ここでは, 浸透破壊に対する安定性
評価手法として, 合計 43 件の基準類について文献を収集し考察した。このうち, 16 件は著者らの一部が以前まと
めたものであり, 27 件が今回新たに追加調査したものである。ここでは, まず, 流れの条件を 4 種類:二次元流(2D
flow), 二次元集中流(2DC flow) , 三次元流(3D flow), 軸対称流(AXS flow) に分けて考えた。そして, 各種基準類算
定式を, その基礎となる考え方に基づいて, 次の 6 つのカテゴリーに分類した。
(1) Terzaghi の方法に基づくもの((1)-1 法, (1)-2 法)
(2) 限界動水勾配によるもの((2)-1 法, (2)-2 法)
(3) クリープ比によるもの((3)-1 法, (3)-2 法)
(4) Terzaghi の方法と FEM 浸透流解析に基づくもの((4)-1 法, (4)-2 法)
(5) Harza または Kochina の方法によるもの((5)-1 法)
(6) Prismatic failure の考え方に基づくもの((6)-1 法)
ここで, (1), (2), (4)-(6)法はボイリングに関する安定解析法, (3)法はパイピングに関する安定解析法である。また,
(4)-(6)法は, 基本的に Terzaghi の方法に基づいており, 地盤内水頭値 h を FEM 浸透流解析で求め, その値を用いて
浸透破壊に対する限界水頭差を算出する方法である。(1)-(3)法は 2D flow に対応するものであり, (4), (6)法は 2D,
2DC, 3D または AXS flow に対応しようとするものである。
― 303 ―
ここでは, 上述の 6 つのカテゴリーについて, 浸透破壊に対する限界水頭差 Hc, 安全率 Fs の算定方法を示した。
安全率 Fs については, Fs= Hc/H と定義した。ここに, H は考えている地盤・水理条件における水頭差である。そして,
Hc の値を, 掘削なし及びありの地盤について, 各方法に基づいて求め, 実際の値(ここでは Prismatic failure の考え
方に基づく値)と比較検討し, 各種基準類を使用するにあたって注意すべき事項について述べた。ここで, 実験結果
は Prismatic failure の考え方によって精度良く算定できることから, Prismatic failure の考え方に基づく値を実際の値
(正解値)と仮定している。
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著者
1) 田中 勉, 神戸大学大学院農学研究科, 教授
2) 永井 茂, 神戸大学大学院農学研究科博士課程後期過程, 学生
3) 廣瀬哲夫, 堺市役所危機管理室.
4) 三木昂史, 神戸大学大学院農学研究科博士課程前期過程, 学生
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Standards, manuals, and evaluation methods for seepage
failure of soil
–An estimation of safety factors and critical hydraulic
head differences–
Tsutomu Tanaka
Shigeru Nagai
Tetsuo Hirose
Takashi Miki
Abstract
The standards, manuals, and evaluation methods for seepage failure of soil within a cofferdam are
discussed. A total of 43 references were analyzed, 27 of which were added to the 16 references already
assessed in 2003. The seepage flow conditions are categorized into 4 groups: two dimensional flow (2D
flow), two-dimensional concentrated flow within double sheet pile walls (2DC flow), axisymmetric flow
into a circular-shaped cofferdam (AXS flow), and three-dimensional flow into a rectangular-shaped
cofferdam (3D flow). Evaluation methods were classified into 6 techniques:
(1) Terzaghi's method (Methods (1)-1 and (1)-2),
(2) Critical hydraulic gradient (Methods (2)-1 and (2)-2),
(3) Creep ratio (Methods (3)-1 and (3)-2)
(4) Terzaghi's method and FEM seepage flow (Methods (4)-1 and (4)-2)
(5) Harza's or Kochina's method (Method (5)-1)
(6) Prismatic failure concept (pfc) (Method (6)-1)
Methods (1), (2), and (4)-(6) are concerned with boiling, and Method (3) with piping. Methods (4)-(6) are
basically based on Terzaghi's method, in which hydraulic heads in soil, h, are calculated using FEM
seepage flow analyses and critical hydraulic head differences, Hc, are estimated. Methods (1)-(3) are given
only for 2D flow condition, and Methods (4)-(6) are given for 2D, 2DC, AXS, or 3D flow conditions.
In this paper, the methods for estimating critical hydraulic head differences, Hc, and safety factors
against seepage failure, Fs, are given for the above 6 methods. The safety factor against seepage failure, Fs,
is defined here as Fs=Hc/H, where H is the current hydraulic head difference between the up- and
downstream sides of a cofferdam. The Hc values are also calculated for soils with and without excavation,
and, for various flow conditions, comparisons and examinations of estimated Hc values are made. The
discussions are based on Hc values calculated using the Prismatic failure concept, because the hydraulic
head differences at deformation in experiments, Hy, are nearly equal to the theoretical critical hydraulic
head differences based on the Prismatic failure concept, Hc, for the same cases.
Key words: Seepage failure of soil, Design standards or manuals, Flow conditions, Safety factor, Critical hydraulic
head difference
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