事業統合 の 定義 ・ 概要 と ス キ ー ム ご と の 留意点

活用事例も参考に
事業統合の定義・概要と
スキームごとの留意点
企業が事業を統合する目的は大き
く2つに分けられる。1つは規模が
必要なケースである。近年のめまぐ
るしい環境変化のなか、事業を継続
していくうえで規模がないと生き残
れない。技術の国といわれた日本で
はあるが、製造業においては特に研
究開発や設備投資に多額の資金を要
することから一定の規模が必要とな
新興国の経済成長が著しく、最近で
される一方で、世界に目を向ければ
ては少子高齢化と需要の縮小が懸念
く変わろうとしている。国内におい
わが国をとりまく経営環境は大き
ウンドのM&Aが増加しており日本
とが背景にあろう。近年はアウトバ
勝 ち 残 る こ と が で き な い 」と い う こ
部 分 で は「 日 本 国 内 の み で は 競 争 に
社によって異なるものの、本質的な
数の目的がある。M&Aの目的は会
チェーンの効率化および強化など複
技 術 の 獲 得 で あ っ た り、 バ リ ュ ー
なわち既存の消費財の裏側にある
あったり、自社にない商材の獲得す
合という側面に焦点をあてて、その
る。国内の再編が進むなかで事業統
ますます増えてくるものと思われ
経営資源を統合する事例が、今後も
企業との競争に打ち勝つべく他社と
環境が醸成され、海外のグローバル
こうした政策により事業再編を促す
優 遇 措 置 が 採 ら れ る よ う に な っ た。
れ、合弁会社の設立などの面で税制
制改正で事業再編促進税制が創設さ
税制面においても、2014年度税
る。日本においてはまだ少ない印象
させることを目的とした統合であ
ジネスモデルそのものを大幅に転換
も う 1 つ は 規 模 追 求 で は な く、 ビ
えよう。
統合した事例は、代表例の1つとい
のグローバル競争で勝ち残るために
ミタルなどの世界の鉄鋼メーカーと
業の統合のように、アルセロール・
をはじめ、新日本製鐵と住友金属工
研究開発投資を必要とする製薬業界
合が行われている。たとえば多額の
り、そうした規模の追求のために統
)と い
はIoT
( Internet of Things
われるように産業構造の変化が急速
企業が海外企業を買収するケースが
活用事例も紹介しつつ解説したい。
小林 武司
に進展しようとしている。こうした
多いが、日本国内に目を向けてみる
GCA FAS㈱
公認会計士
なか、日本企業も変化する環境に柔
とそこには事業再編の一環として他
を 例 に 挙 げ る と、
著 で あ り、 Google
ではあるが、特に海外においては顕
軟に対応し、規模と収益で上回る欧
社との経営統合や事業統合がみられ
その課題の解決策の1つとして最
日本における産業活動の新陳代謝を
2010」を掲げ、2014年には、
に 経 済 産 業 省 が「 産 業 構 造 ビ ジ ョ ン
国 の 政 策 と し て も、 2 0 1 0 年
で国際競争力を強化していかなけれ
る。他社の経営資源と統合すること
の利益率が低くなってしまってい
くのプレーヤーが存在し、その個々
わが国では1つの事業に対して多
域のバリューチェーン全体をカバー
形になっている。こうした1事業領
ドまで1つの事業領域をカバーする
の買収などによりハード
Mobility
ウェアにも進出し、ソフトからハー
統合する目的
米企業や目覚ましい発展を遂げるア
ている。
早M&Aはなくてはならない手段と
活性化し事業再編の円滑化を図るべ
ばならない。
これまでに YouTube
や DoubleClick
な ど を 買 収 し、 そ の 後 は Motorola
して位置づけられている。M&Aに
く、
産業競争力強化法が施行された。
なっている。
は、 地 域 す な わ ち 新 市 場 の 獲 得 で
より一層の事業基盤の強化が課題と
ジ ア 企 業 と の 競 争 に 勝 ち 抜 く た め、
はじめに
第1章
10
経理情報●2015.11.10(No.1429)