RAW 264.7細胞株のトランスフェクションにおける継代数の効果

Protein Expression コーナー
細胞株のトランスフェクションにおける継代数の効果
Linda Jacobsen1 and Peyton Hughes2
1Roche Applied Science, Indianapolis, USA; 2ATCC, Manassas, USA
トランスフェクション実験を成功させるための
ンプレックス(5:2の試薬/DNA比)の3種類の容量
重要なファクターの一つは、細胞の品質です。実
(4μl、6μl、10μl)を細胞に加えました。両方
験の主要な一部として、細胞株は結果の信頼性や
の継代数において、同様の発現レベルがトランス
再現性を左右する、最も高い変動性を持つファク
フェクションの24時間後に観察されました。しか
ターとなります。
しながら、高継代数の細胞ではトランスフェクシ
ョンの48時間後にルシフェラーゼの発現が顕著に
トランスフェクション実験において、細胞の継
減少していました(図1a)。細胞増殖の最小限の
代数はトランスフェクション効率だけではなく、
阻害が、3種類の容量のコンプレックスで見られま
タンパク質発現にも影響します。これらの心配を
した。それに対して、6-10μlのコンプレックスを
取り除くために、ロシュ・ダイアグノスティック
加えた場合に、高継代数の細胞で増殖阻害が見ら
スではATCCから保証された細胞株を新たに入手し、
れました。増殖におけるこの効果はコンプレック
継代数をモニターしながら使用することを推奨し
ス量が少ない場合は観察されませんでした(図1b)。
ています。細胞株は標準的な実験における試薬で
あり、生命科学研究における高い信頼性と再現性
継代数の効果や品質保証の無い細胞を使用した
を保証するための、必須の成分であるとの認識が
際の問題についての詳細は、
高まってきています[1-4]。高品質の生命科学製
www.atcc.org/cellBioResource.cfmのATCCオンラ
品を作るメーカーは製品の開発と至適化において、
インセルリソースをご覧ください。
ルーチン的かつ全面的にATCC細胞株を使用してい
リファレンス
ます。
1. Hartung T et al. (2002) ATLA 30:407-414
図1のデータは低及び高継代数のRAW 264.7(ATCC
2. Chatterjee R (2007) Science 315 :928-931
TIB-71)細胞が同様に十分にトランスフェクショ
3. Nardone RM (2006) Eradication of
ンされるが、タンパク質発現においては高継代数
cross-contaminated cell lines : A call to
の細胞が顕著に減少していることを示しています。
action. available at;
RAW 264.7細胞は第5継代(低継代数)と第74継代
http://biotrac.com/pages/authentication.html
(高継代数)のときに、ルシフェラーゼを発現す
4. O’Brien SJ (2001) Proc Natl Acad Sci USA
®
るプラスミドが、FuGENE HDトランスフェクション
試薬でトランスフェクションされました。同じコ
98:7656-7658
Protein Expression コーナー
図1:タンパク質発現と増殖における継代数の影響。
低及び高継代数のRAW 264.7 (ATCC TIB-71)細胞を3
種類の容量のトランスフェクションコンプレックスでトラ
ンスフェクションしました。(a) トランスフェクション効率
とタンパク質発現。(b) 細胞増殖。