[PRESS RELEASE] 細胞再生医学教室 研究成果

[PRESS RELEASE]
平 成 2 7 年 5 月 1 日
細胞再生医学教室 研究成果の発表について
ヒト皮膚細胞から低分子化合物のみで効率よく神経細胞を誘導
京都府立医科大学戴平博士らの研究グループはヒト由来の皮膚細胞に低分子化合物を加えるだけ
で神経細胞を作製する方法を発見した。
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概
要
本研究成果のポイント
○ヒトの皮膚細胞に遺伝子導入せず、低分子化合物を加えるだけで神経細胞を作製する方法を発見
した。
○ヒトの皮膚細胞に低分子化合物を加えた神経細胞培地で3週間培養すると80%以上の神経細
胞:CiN 細胞(chemical compound-induced neuronal cells)が得られた。
○ヒトの皮膚細胞の年齢・細胞老化に関係なく高い効率で CiN 細胞へ直接誘導できる。
○再現実験は、日本のタカラバイオ株式会社並びに Chinese National Compound Library にて行われ
た。
○CiN 細胞の電気生理学的機能について近日中に発表する予定。
以上
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研究の背景
これまで、神経細胞への分化誘導は、遺伝子導入によって
間接的または直接的になされてきたが、まだ、未解決の課題
が残されている。そこで、我々は遺伝子を用いることなく、
低分子化合物のみで神経細胞を得る方法について研究を重
ねた結果、ヒト皮膚細胞に6種類の低分子化合物を添加する
だけで神経細胞を作製する方法を発見した。
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研究の内容
神経細胞への分化誘導に SMAD、Wnt、MAPK 及び p53
など多くのシグナルが関わっていることが報告されている。
我々は、これらのシグナル伝達経路に関わる20種類近くの
化合物を用いて、ヒトの皮膚細胞を神経細胞へ分化誘導させ
るスクリーニング実験を行った。その結果、ヒトの皮膚細胞
を培養する際に SMAD、Wnt、MAPK 及び p53 のシグナル阻
害並びにフォルスコリン (Forskolin) による cAMP の産生促進の都合6種類の化合物の作用により、
ヒト皮膚細胞から高い効率で神経細胞を誘導できることを見出した。
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まとめと今後の展望
6種類の化合物のみによるヒト皮膚細胞から神経細胞への直接誘導は画期的であり、これまで報
告された方法と異なり、ウイルスなどの外来遺伝子を使わず、癌遺伝子は勿論、神経特異的遺伝子
も導入していない。このため、CiN 細胞は、癌化や感染の恐れを軽減し、また自己の細胞を使用す
るため、拒絶反応は起こりにくく、神経疾患研究・創薬への応用が期待される。更に安全性の高い
神経細胞が低分子化合物を添加した培地だけで短期間に効率よく容易に作製できることから、CiN
細胞はヒトの神経損傷などに対する治療用細胞としての実用化にも期待できると考えられる。
なお、本研究の成果は以下の論文として5月1日号に掲載される予定である。
発表雑誌・論文名 Journal of Clinical Biochemistry and Nutrition・Highly efficient direct conversion
of human fibroblasts to neuronal cells by chemical compounds.
参照URL https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jcbn/advpub/0/_contents
問い合わせ先
京都府立医科大学 研究支援課
担当:吉見
(電話)075-251-5208