CASE 2 もしかして、原因は私?! 検査室の品質チェックで 食中毒菌が出ました 食中毒を引き起こす原因 もしかして… ひと口に食中毒といっても、さまざまなものがあります。その原因もさまざ まなので、食中毒を防止するためには、どのようなものが原因となるか知って おくことが大切です。 あっ ◆ 食中毒の主な原因 まずい まずい ・細菌性食中毒…細菌に感染して起こるもの 第4 章 ほかの仕事に気をとられて、置きっぱなしに していた食材が原因かも… ・ウイルス性食中毒…ウイルスに感染して起こるもの 衛生管理の手順とルール ・化学性食中毒…鉛、ヒ素などの化学物質が原因となるもの ・自然毒食中毒…フグ毒、キノコ毒などによるもの ・原虫性食中毒…寄生虫などによるもの 食中毒の原因は、大きく以上の 5 つに分けることができますが、その大半は 暑くてマスクから鼻を 出していたからな∼ 手荒れでしみるから アルコール消毒を省略 したのがまずかったかしら まぁいいか 「細菌性」か「ウイルス性」のものです。 ケタ違いに強力なノロウイルスとO-157 近年猛威をふるっているノロウイルスと O-157。死亡事故などにつながるこ ともあり、ニュースなどで耳にする機会も多いことでしょう。もし発生が確認 されれば製品の回収が必要なだけでなく、その会社のつくる製品の安全に対す る信用は大きく損なわれ、会社の存続にかかわる大きな問題となります。 今回の原因は原材料 だったそうだ ホ・・・ 一般の食中毒菌は、数十万個以上体内に入らないと発症しませんが、ノロウ イルスと O-157 は、数十個入っただけで発症します。ケタ違いに強力なのです。 ノロウイルスの特徴 ● 原因の多くは手洗い不足 か き ノロウイルスはもともと牡蠣などの二枚貝に由来するものでしたが、今では 一般的な環境に常在しています。それが手洗いの不足などにより、人の手を通 して食品に入り、食中毒につながります。 54 55 ■ 2013年 食中毒原因分析(事故件数) ● ごく小さいので拡散する ノロウイルスは、一般の細菌の数十分の一から百分の一の小ささです。この 動物性自然毒…2.3% ため、手や取っ手などを介在しなくても、少しの風でも空気中に拡散します。 植物性自然毒…5.4% ● 活性期間は冬場は 8 週間、暖かいなかでも 4 週間ほど 化学物質…1.1% これが冬に流行が多いという背景のようですが、暖かくてもかなり長期間活 サルモネラ属菌 3.7% 不明 腸炎ビブリオ…1.0% ブドウ球菌 腸管出血性大腸菌 (VT産生)…1.4% 3.1% 3.0% その他の 病原性大腸菌…1.2% アニサキス…9.5% 動し続けます。 ● 失活※ 1 温度が高い ウェルシュ菌…2.0% セレウス菌…0.9% サルコシスティス…0.1% クドア…2.3% 10℃ほど高い 85℃以上※ 2 でないと失活しません。 ノロウイルス その他のウイルス…2.5% ノロウイルスをもっていても、症状が出ない人が 3 割いるといわれています。 24.4% 35.2% 衛生管理の手順とルール ● 健康保菌者 3 割 エルシニア・ エンテロコリチカ…0.1% カンピロバク ター・ジェ ジュニ/コリ 第4 章 一般の食中毒菌は 75 ℃で死滅させることができますが、ノロウイルスは ナグビブリオ…0.3% ● 治ってもウイルスは 1 ∼ 2 週間残る その他の細菌…0.8% 症状が治まっても、しばらくは体内にウイルスが残っていて、まだ便からノ 厚生労働省「食中毒統計調査」をもとに作成 ロウイルスが出ています。 O-157の特徴 ● 食肉が原因に 牛肉が原因となることが多いのですが、豚、鶏など他の肉が原因となること ■ 細菌やウイルスの特徴 と ちく 一般的な食中毒菌 病原性大腸菌 O-157、104 など ノロウイルス 感染源、経路 食材、人、環境 牛の糞、牛肉、環境 二枚貝、人、環境 食中毒になる個数 数十万∼ 1000 万個 もあります。菌はそれらの家畜の糞に混じって出てきて、屠畜時や畜舎への出 入りなどの際に、拡散されていきます。 ● 死者も出る 強力な食中毒菌で、死者が出た例もかなりあります。 ● 肉の表面に付着するが、挿し込まれることもある ふつうは肉の中にはなく、肉の表面に付着します。しかし、スジ切りをした り、練ったり、マリネすることなどによって、肉の中にも入り込みます。 数十個程度 増殖場所 食品、人、水 人の腸管 殺菌温度 75℃ 85℃ 感染経路 洗浄や手洗いの不備、取っ手、水、環境 対策 工場内の洗浄・殺菌、手洗い、手袋、取っ手など手を触れるところの殺菌 ● 野菜やパンなどにも波及 水や人の手を介して、野菜やパンなどにも拡散します。牛舎を歩いた靴のま ま野菜畑に行けば、そこで拡散します。 ※ 1 ウイルスが活動できない状態になること。 ※ 2 厚生労働省作成の「大量調理施設衛生管理マニュアル」では、85 ∼ 90℃で 90 秒間以上。 56 57
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