3-1. スマートな交通を「伝える」~「ダービン」

スマートな交通を「伝える」
∼個人マーケティングの活用∼
都 市 名
ダービン
人 口 130,000人
面 積 53km2
目
的
人々の交通意識や行動様式を自主的に変化させ、車の代替交通手段の利用を促進すること
期
間
2004年3月∼2005年3月(事前調査及び事後調査を含む)
事業内容
トラベルスマート事業は、オーストラリア政府や州の資金協力や公共交通機関等の協力
で自治体が行う、徒歩や自転車、公共交通機関利用促進のための事業である。オースト
ラリアの全州と首都特別地域で実施されている。
個人マーケティング手法「IndiMark®1」を開発したソーシャルデータ社が、トラベルス
マート事業を受託し実行している。この手法は次のような特徴を持っている:
◇コミュニティーの全ての対象者に直接(電話及び訪問にて)接触する
◇交通に対する対応を考えるように誘導する
◇対応に応じて、必要な情報を与える
ダービンは、ヴィクトリア州メルボルンの中心街から北に20分の距離に位置する郊外
都市である。ダービンは、トラベルスマート事務局をヴィクトリア州都市整備局内に置
き、
◇参加目標世帯 30,000世帯
◇車の使用率を10%減らすこと
を目標にして事業を実行した。
トラベルスマート事業のプロセス:
①活動を行うコミュニティーを特定し、コミュニティーの各世帯に参加を募る。
②参加に関心のある世帯との電話での接触及び訪問。
公共交通を上手く利用している人やウォーキング・サイクリング愛好家などがアド
バイザーになって、対象世帯への接触を図っている。
③アンケート回答から、参加世帯がどのような情報が必要かを見極める。
1 IndiMark®:委託先であるソーシャルデータが開発したマーケティング手法の名称
50 > 第3部 オーストラリア
ダービン
④有益な情報をまとめたサービスパックやお礼の品物の直接提供。
⑤将来必要なサービスを予測する(訪問を含む)
⑥満足度調査
トラベルスマート事業のプロセス
コミュニティーの特定
電話による、全世帯への接触
集団の細分化
環境にやさしい
交通手段を利用
アンケート実施
(回答者にお礼を提供)
活動に興味があるか?
環境にやさしい
交通手段に
興味がある
興味なし
直接接触による動機付け
情報提供
ない
あり
直接訪問
無料チケット・追加情報の提供
追加情報提供
直接訪問調査
新たな接触なし
移動手段変更に関する評価
情報や品物の提供
楽しく快適に歩き、自転車に乗り、公共交通を利用するために、次のような資料や品
物を提供した:
第3部 オーストラリア > 51
>公共交通の情報(交通関連会社製作)
>サイクリングの情報(関連団体製作)
>ウォーキングの情報(関連団体製作)
>上記3つを統合したダービン市内の地図(ヴィクトリア州政府提供)
>アンケート回答のお礼として傘、サイクリング情報、万歩計の提供(ヴィクトリア
州政府提供)
提供する品物を入れる
布製バック
事 業 費
自転車などの様々な情報
(サービスパック)
アンケート回答へのお礼
300万豪ドル
うち ヴィクトリア州政府 200万豪ドル
オーストラリア政府 100万豪ドル
スタッフ
協力団体
ソーシャルデータに事業を委託。事業費用の殆どは人件費である。
ヴィクトリア州政府
オーストラリア政府
メルボルン乗客率向上イニシアティブ
ヤラトラム(鉄道会社)
コンネックストラム(鉄道会社)
ダービンバス会社
結
果
インタビュー調査時は、集計中だったためダービンの結果は紹介できないが、2003年
に実行したアルメインでの結果と、米国ポートランドの結果を参考情報として次に記載
する。また参考情報3では、ダービンが持続可能な交通に向けて実行している諸対策を
紹介する。
52 > 第3部 オーストラリア
ダービン
参考情報1
アルメイン トラベルスマート事業の結果(2003年実施)
>予算 630,000豪ドル
>対象 鉄道周辺400m内の地域に住む6,310世帯
>電話での質問への回答
興味がある
37%
すでに公共交通を利用している
26%
興味がない
37%
>アンケート用紙の回答率 80%
>サービスパックを受け取った世帯
2,900世帯
>事業の成果
参考情報2
車の利用
15%減少
公共交通機関の利用
27%上昇
アメリカ・ポートランドでの結果
2002∼04年
ソーシャルデータに委託して実施
対象 600世帯
予算 150,000米ドル
結果 9%車の使用が減った
2004∼05年
ソーシャルデータに委託して実施
対象 43,000世帯
予算 520,000米ドル
結果 集計中
2005年∼ ポートランド独自に実施
対象 20,000世帯
予算 150,000米ドル
ウォーキングの情報や買い物割引券
ポートランド市が参加者に提供した
バック、万歩計、傘
第3部 オーストラリア > 53
参考情報3
ダービン市の持続可能な交通対策官と統合交通対策プラン
① 持続可能な交通対策官(Sustainable Transport Officer)の設置
数年前から、ダービンを始め多くのオーストラリアの自治体に、持続可能な交通対
策官という新しいポストが設置された。単なる交通量削減対策や、乗用車利用を単
独で考えるのではなく、交通の便や移動性、安全性等を包括的に検討する新しいポ
ストで、自治体の持続可能性をめざす統合的交通対策の第1歩となるものである。
行政区域内の全ての人を対象に、公共交通機関、サイクリング、ウォーキングにつ
いて考え利用するように、教育し、促進する役割を担っている。
② 「統合交通対策プラン」の策定
プランの策定: 2000年
予算: 210,000豪ドル
目的:市民と共に、交通行動の変化を働きかける対策を実行すること
③ 主な対策と実行状況
>グリーントラベルプラン(2001年∼)
◇目的
2008年までに職員の自動車利用を50%削減し、より持続可能な交通手段の
利用を促進すること
◇対象
自治体職員(全職員数は1,100名)
◇活動内容
相乗り調整サービス、駐輪場の整備、出張のための無料メットカード(プリペ
イドカード)の提供、インセンティブプラン等
◇インセンティブプラン
職員は、業務で公共交通機関を利用した場合、役所内のイントラネットにログ
インし、ポイントを加算。100豪ドルの商品券が提供される。このイントラ
ネット利用システムは市販されていて、関心のある他の自治体も利用すること
ができる。
◇2004年の実績
2001年に比べ10%の自動車利用の減少
>カーシェアリング(2004年∼実施中)
メルボルン都市圏では初めて、2004年11月から開始。市役所内に組織を設立。
>サイクリング戦略(2004∼05年)
地域の利害関係者と協議中
>外に出よう(2004∼05年)
高齢者が、ボランティアと一緒に公共交通機関を利用し外出することを支援する
事業。事業資金はトラベルスマートから得ている。
>グリーントラベルガイドライン(2004∼05年)
観光業者のためのグリーントラベルガイドラインを作成中
54 > 第3部 オーストラリア
ダービン
詳しい情報を
知りたい方は
>http://www.darebin.vic.gov.au/Page/Page.asp?Page_Id=1049&h=1
ダービン市のウェブサイト内、TDM(交通需要マネジメント)方針についてのページ
>http://www.travelsmart.gov.au/
オーストラリア各地のトラベルスマート事業に関する情報が入手できる
第3部 オーストラリア > 55