感染症:抗菌薬・抗生物質(解答) テストは難しめに作成しています。テキストや講義、解答と照らし合わせて復習していただけれ ばと思います。なお、採点を目的としていないので点数は設定していません。 また、記述式の解答は答えが一つとは限りません。私の答案よりも良い解答があることは十分に 考えられますので、参考解答として認識していただければと思います。 第一章.感染症とは 第一問:感染症成立のための三大要因について、下の( )に当てはまる言葉を記入してく ださい。 要因 特徴 ( 病原菌 ) ・感染症を引き起こす原因微生物 ( 感染経路 ) ・病原体が新たに感染を起こす経路 ( 感受性宿主 ) ・宿主の免疫力が関与 ・特に小児の感染症では、年齢などの要因も関係 第二問:感染症を予防するためには、第一問で答えた要因をどのようにすれば良いかを説明して ください。 ○ 解答例) どれか一つの要因でも取り除くことが出来れば感染症に罹ることはない。そのため、これらの 要因を取り除くことが感染症対策に繋がる。 1 第三問:病原微生物はその大きさによって、いくつかの種類に分けることができます。この大き さによる分類に関して、( ウイルス )に当てはまる病原微生物の種類を記入してください。 細菌 真菌 第四問:細菌は見た目(形状の違い)によって大きく三つに分けることができます。この見た目 による分類に関して、( )に当てはまる種類を記入してください。 桿菌 らせん菌 第五問:細菌は「増殖に酸素が必要かどうか」の分類によって三つに分けることができます。こ の分類に関して、( )に当てはまる種類を記入してください。 好気性菌 嫌気性菌 2 第六問:細菌は「グラム染色法」と呼ばれる方法によっても分類分けされます。この分類に関し て、グラム染色法は細菌のどのような違いを見分けることができるかを説明してください。 ○ 解答例) 細菌の細胞表面の大まかな構造の違いを見分ける 第七問:例えば「グラム陰性嫌気性球菌」と表現されたとき、この細菌は一体どのような種類の 菌であるかを中学生でも分かるように説明してください。 ○ 解答例) グラム染色と呼ばれる方法によって染まらず、空気(酸素)がない状態でのみ成長でき、球形 の丸い形をしている細菌 第二章.抗生物質(抗菌薬)の基礎知識 第八問:世界で最初に発見された抗生物質の名前を下枠に記入してください。 ペニシリン 第九問:抗生物質の定義を説明して下さい。 ○ 解答例) 微生物が産生した化学物質 第十問:抗菌薬と抗生物質の違いを説明して下さい。 ○ 解答例) 人工合成によって作られた化学物質など、全てを含めて抗菌薬と呼ばれる。この抗菌薬の中で、 「微生物によって作られた化学物質」に当てはまるものを抗生物質と呼ぶ。 3 第十一問:構造上の違いを利用して「特定の生物のみに毒性を発揮すること」を何と呼ぶか下枠 に記入してください。 選択毒性 第十二問:右図に示した細菌の構造について、それぞれどの ような働きをする器官か簡単に説明してください。 ・細胞壁 ○ 解答例) 細胞の周りを丈夫に固める壁であり、この壁があること によって細菌は形を保つことができる。 ・リボソーム ○ 解答例) タンパク質を合成するための器官である。 ・核酸 ○ 解答例) 私達の体を作る設計図である DNA や RNA などの遺伝情報の集まりである。 4 第十三問:細胞壁合成阻害薬がどのように選択毒性を示すかについて、下図を参考にしながら説 明してください。 ○ 解答例) ヒトに細胞壁は存在しないが、細菌には細胞壁が存在する。この細胞壁が作られる過程を阻害 する薬として細胞壁合成阻害薬がある。 これによって、細菌は細胞壁を新たに作ることができなくなって溶解する。 第十四問:細胞壁合成阻害薬の種類としてどのようなものがあるか、( )に当てはまる言 葉を記入してください。 細胞壁合成阻害薬 β-ラクタム系 ( ペニシリン系 β-ラクタム系 ) ( β-ラクタム系 (ペネム系) セフェム系 β-ラクタム系 ) グリコペプチド系 ( バンコマイシン ) (カルバペネム系) ホスホマイシン系 5 第十五問:「細胞膜の膜透過性が高まる」とは、簡単に表現すれば一体どのような作用であるか を分かりやすく説明してください。 ○ 解答例) 細胞内の物質が細胞外へと漏出すること 第十六問:タンパク質合成阻害薬はタンパク質合成に関わるリボソームの働きを抑制します。し かし、リボソームはヒトの細胞にも存在します。そこで、 「なぜリボソームを阻害することによって 細菌だけに選択毒性を表すことができるか」について説明してください。 ○ 解答例) 「ヒトのリボソーム」と「細菌のリボソーム」は種類が違うため。 第十七問:タンパク質合成阻害薬としてどのようなものがあるか、( )に当てはまる言葉 を記入してください。 タンパク質合成阻害薬 ( マクロライド系 ) ( テトラサイクリン系 ) アミノグリコシド系 6 第十八問:核酸合成阻害薬に関して、なぜ核酸合成を抑制すると細菌の増殖を抑制できるかにつ いて下図を参考にして説明してください。 ○ 解答例) タンパク質の合成の際には DNA や RNA などの核酸から「タンパク質を合成するための設計図」 を読み取る必要がある。 そのため、これら核酸の合成が抑制されるとタンパク質合成が止まるため、細菌の増殖を抑制 することができる。 第十九問:核酸合成阻害薬としてどのような種類があるか、下枠に記入してください。 ニューキノロン系 第二十問:「抗菌薬によって細菌の増殖を抑制することのできる最小濃度」を何と呼ぶか、下枠 に記入してください。 MIC(最小発育阻止濃度) 第二十一問:下の文章について、( )の中で正しい方を○で囲ってください。 MIC の値が低いほど抗菌薬の作用が( 弱い ・ 強い ) 7 第二十二問:抗菌薬による静菌的作用と殺菌的作用について、それぞれの特徴を下枠に記入して ください。 抗菌薬の作用 静菌的作用 殺菌的作用 特徴 細菌の増殖を抑える作用である。感染症からの回復には患者さん自身の免 疫力が重要になる。 細菌を死滅させる作用である。 第二十三問:時間依存性の抗菌薬の効果を最大化させるためにはどのようにすれば良いか、下図 を参考にして理由まで含めて説明してください。 ○ 解答例) 時間依存性の抗菌薬は血液中の薬物濃度がある一定以上を超えると、その作用が頭打ちとな る。 そのため、血液中の薬物濃度を高くするのではなくて「MIC(最小発育阻止濃度)以上の血液 中濃度をどれだけの時間維持させるか」が重要となる。 8 第二十四問:濃度依存性の抗菌薬の効果を最大化させるためにはどのようにすれば良いか、下図 を参考にして理由まで含めて説明してください。 ○ 解答例) 濃度依存性の抗菌薬は、細菌とどれだけ接触したかによって殺菌効果が変わってくる。 つまり、血液中の薬物濃度が高ければ高いほど強い殺菌作用を得ることができる。そのため、 副作用が出ないように調節しながら一回の投与量を最大にして、投与回数を減らすことが重要と なる。 9 第三章.耐性菌の出現 第二十五問:以下の耐性菌に関する文章について、次の( )に当てはまる言葉を記入して ください。なお、同じ言葉が何度も使われることもあります。 感染症にかかった時、 ( 抗菌薬 )が使用される。抗菌薬が病原微生物を殺してくれるため、私 たちは感染症から回復することができる。 しかし、抗菌薬の使用を考える上で必ず問題となるものがある。それは、抗菌薬が効きにくい ( 耐性菌 )の問題であり、抗菌薬を投与しても感染症から改善しない。 これら耐性菌の中でも、特に多くの薬剤に耐性を示す( 多剤耐性菌 )が問題となる。 一つの抗菌薬に耐性を持つだけであれば、他の種類の抗菌薬へ変えれば良い。しかし、多くの抗 菌薬が効かない状態であると、そもそも感染症の治療ができなくなってしまう。 このとき抗菌薬を変えたとしても、 ( 多剤耐性菌 )は既にその薬に対しても薬剤耐性を獲得し ている。 第二十六問:耐性菌の種類について、( 耐性菌の種類 )に当てはまる耐性菌を記入してください。 特徴 ( MRSA ) ・1961 年に初めて報告されたメチシリンが効かない耐性菌 ( VRE ) ・1986 年に初めて報告されたバンコマイシンが効かない耐性菌 10 第二十七問:薬剤耐性のメカニズムについて、下の空欄に耐性菌が発生するそれぞれの機構の特 徴を記入してください。 耐性菌が発生する機構 薬剤の不活性化 薬剤作用点の変異 薬剤を細胞外へ排出 特徴 薬の効果をなくすための酵素を細菌が産生し、これによって抗菌薬が不活 性化される 抗菌薬が作用していた病原菌の構造が変化することで、抗菌薬が作用でき なくなる。 細菌が「薬剤を排出するポンプ」を獲得する機構であり、一つのポンプが 多くの抗菌薬を外へ排出することもある。 第二十八問:次の耐性菌に関する基礎知識について正しいものには○を、間違っているものには ×を( )内に記入してください。 ①( ○ )薬剤耐性の遺伝子は違う種類の菌であっても伝わっていく ②( ○ )抗菌薬を使用していない自然条件化であったとしても、一定数の耐性菌が発生してい る ③( × )抗菌薬を低濃度で使用しても耐性菌は発生しにくい 耐性菌が発生しやすくなります ④( ○ )治療直前で抗菌薬投与を中断すると、耐性菌が発生しやすくなる ⑤( × )同じ抗菌薬を長期間投与するほど耐性菌が発生しにくくなる 耐性菌が発生しやすくなります ⑥( ○ )VRE が報告される以前において、バンコマイシンは耐性菌が発生しないと考えられて いた ⑦( ○ )院内感染において耐性菌が大きな問題となる ⑧( × )健常人であっても耐性菌に感染すると重篤な症状が起こる 耐性菌に感染しても、健常人では大きな問題となりません ⑨( × )抗菌薬の開発は 2000 年以降も増え続けている 抗菌薬の開発はあまり進んでいません 11 第二十九問:病原微生物の薬剤耐性には二種類あります。それぞれの種類について、( ) に当てはまる言葉を記入してください。 薬剤耐性の種類 特徴 ( 自然耐性 ) ・元から備わっている薬剤耐性 ( 獲得耐性 ) ・後天的に獲得した薬剤耐性 第三十問:薬剤の耐性機構について、下図を参考にしながら表の中で空欄になっている部分のメ カニズムを説明してください。 薬剤耐性の種類 特徴 抗菌薬は病原微生物に作用することで菌を殺すため、抗菌薬が取 り込まれなければ作用することができない。 薬剤の取り込み阻害 耐性菌は抗菌薬を細胞内に取り込みにくくしているため、薬が効 きにくくなっている。 12 ○ 解答例) 取り込まれた薬剤の排出 薬が細胞内に取り込まれたとしても、その薬が細胞の外へと排出 されれば意味がない。この細胞の外へと排出するポンプとして薬剤 排出ポンプがある。 ○ 解答例) 薬剤の分解・修飾 抗菌薬の作用をなくしてしまう酵素を細菌が産生し、これによっ て薬がすぐに無効化されてしまう。 ○ 解答例) 薬剤標的部位の構造変化 受容体の構造が少しでも変わってしまうと、薬は受容体に結合で きなくなる。そこで、病原微生物は抗菌薬が作用するための受容体 の構造を変化させることで、抗菌薬に対する耐性を獲得している。 バイオフィルムとは細菌などによって作られる菌膜のことであ る。 バイオフィルムの形成 このバイオフィルムが形成されると、薬が細菌へ届きにくくなる。 その結果、薬の効果が減弱する。 13 第三十一問:耐性菌に対する抗菌薬の作用を復活させる方法として、どのようなものがあるか下 図を参考にして説明してください。 ○ 解答例) β-ラクタム環を分解する酵素をβ-ラクタマーゼと呼び、この酵素をもつ細菌にはペニシリン 系抗生物質が効きにくい。 しかし、β-ラクタマーゼ阻害薬とペニシリン系抗生物質を同時に服用すれば、β -ラクタマー ゼをもつ細菌に対しても抗菌薬の作用が復活するようになる。 第四章.抗真菌薬 第三十二問:真菌の種類としてどのようなものがあるか、下の( )に当てはまる言葉を記 入してください。 キノコ 酵母 14 第三十三問:真菌による感染症について、下の( )に当てはまる言葉を記入してください。 真菌症の種類 表在性真菌症 深在性皮膚真菌症 (深部皮膚真菌症) 深在性真菌症 (内臓真菌症) 特徴 ・真菌による感染が( 皮膚表面 )や角質で留まる ・外用薬として塗り薬を使用 ・真菌による感染が皮下組織や( 爪 )などに及ぶ ・外用薬で治療困難な場合、内服薬(飲み薬)を使用 ・体内の( 臓器 )にまで及ぶ真菌症 ・抗がん剤や免疫抑制剤の投与している患者で起こりやすい 第三十四問:真菌の細胞膜の主な構成成分を下枠に記入してください。 エルゴステロール 第三十五問:次の真菌に関する基礎知識について正しいものには○を、間違っているものには× を( ①( )内に記入してください。 × )健康な人であっても、真菌が体内に入ると重篤な感染症を引き起こしてしまう 健康な人で害になることはほとんどありません ②( ○ )細菌と真菌の最も大きな違いとして「核の有無」がある ③( ○ )真菌のように核をもつ生物を真核生物と呼ぶ ④( ○ )ヒトの細胞膜は主にコレステロールで構成されている 15 第三十六問:抗真菌薬の作用機序に関して、表の中で空欄になっている部分についてそれぞれの メカニズムを簡単に説明してください。 真菌症の種類 ポリエン系抗真菌薬 特徴 真菌の細胞膜を構成しているエルゴステロールを破壊する。これに よって細胞膜に穴を開け、真菌を死滅させる。 ○ 解答例) アゾール系抗真菌薬 真菌の細胞膜に必要なエルゴステロール合成を阻害し、真菌の増殖 を抑制する。 ○ 解答例) キャンディン系抗真菌薬 真菌の細胞には細胞壁が存在し、この細胞壁合成を阻害することで 抗真菌作用を示す。 16 第三十七問:下にある表について、( )の中に入る言葉を記入して表を完成させてくださ い。 ○ 主な抗菌薬(抗生物質) 薬の種類 一般名 商品名 アモキシシリン + ペニシリン系抗生物質 + クラブラン酸 β-ラクタマーゼ阻害薬 アンピシリン + オーグメンチン ユナシン スルバクタム セフカペン フロモックス セフジトレン メイアクト MS カルバペネム系 メロペネム メロペン ペネム系 ファロペネム ファロム グリコペプチド系 バンコマイシン バンコマイシン ( クラリスロマイシン ) クラリス セフェム系 マクロライド系 アジスロマイシン テトラサイクリン系 ( ミノサイクリン ( レボフロキサシン シタフロキサシン ジスロマック ) ミノマイシン ) クラビット ( グレースビット ) ニューキノロン系 ガレノキサシン ジェニナック トスフロキサシン オゼックス 17 ○ 主な抗真菌薬 薬の種類 一般名 商品名 ポリエン系抗真菌薬 アムホテリシン B ファンギゾン ミコナゾール フロリード ケトコナゾール ニゾラール ビホナゾール マイコスポール アゾール系抗真菌薬 イトラコナゾール キャンディン系抗真菌薬 ミカファンギン ( イトリゾール ) ファンガード 18
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