北方山草 25 (2008) アイヌ民族が利用したシダ植物 札幌市松井 洋 シヨロマなど)、蕨(同トハなど)の 3 種であ シダ槌物の和名と学名 今号の小特集テーマがシダ植物というと る。後述するシダ植物の種数からすると少 ともあって、アイヌ民族がシダ植物を食用 ないが、アイヌの生活の中でもっとも重要 や薬用など、どのように利用していたか諸 なシダ植物であったのか、それとも通辞の 文献を基に考察をしてみる乙とにする。 シダ積物に対する識別能力とも考えられる。 筆旨 lは本誌に『江戸時代後期の植物名と 明治になり植物学者の宮部金吾と地質学 蝦夷語(アイヌ語)の資料集成木本編』 者の神保小虎の共著で『北海道アイヌ語植 ( 2 0 0 6 )を発表した。この時、次の 5点の日 物名詳表~ 本語一蝦夷諮辞書より植物名語禁を抽出し スギナ(ツクシ)、ヌマドクサ、 トウゲシバ、 現在の植物分類に基づいて標準和名と学名 クサソテツ(コゴミ)、オウレンシダ、コタ を添えて集成を試みた。 ニワタリが収録されている。これには収録 された語集の地域名が記録されている。 5点の辞書は上原熊次郎(有次)の著作 『藻汐草~ (寛政 4) 、『蝦夷話集~ (明治 2 5 )を著し、上記3種の他に (文政 7 )、 キリスト教伝導者のジョン・バチエラー 『蝦夷語築~ (嘉永 7 ) 、および能登尿円吉の著 JohnB a t c h e l o rは『アイヌ・英・和辞典』 作『蝦夷語集録~ (文久4 ) 、『番人円吉蝦夷 を著した。初版は 1889(明治 2 2 )年、第2版 記~ (慶応4 )である。 は 1905(明治 3 8 ) 年、第3版は 1926(大正 まずはとの 5点に収録されているシダ植 1 5 )年、第4版は 1938(昭和 1 3 )年である。 物についてまとめたのが表 I になる。砥草 上記2 書の他にイヌスギナ、クジャクシダ、 (アイヌ語名チユプチユプなど)、紫穣(同 エゾメンマが f Hてくる。知里が指摘してい 表 1シダ植物のアイヌ語名(江戸時代後期の 5 出典より) 出典 和名 アイヌ語名 和名 アイヌ語名 和名 藻汐草(1792) 砥草 チユプチユプ 紫摘、ぜんまい シヨロマ 蕨わらぴ アイヌ語名 トハ セプマキナ 般夷詩集(1824) 治l c o 間 yピシピ ぜ 然 , . . 蔽 【 ショ口マ チュプチュプ(東ドl 蕨 ッ ー ヮ 品 t ' i チェフ'マキナ セプセプ〈西) 幸 詰 シヨロマ 蕨 トハ : 1 ) 恒夷語集録(186, トイモホ2 シヒシヒ 手 妻 シミヨロマ 蕨 トア、セフ子キナ 番人円吉鍍爽 ~G(1868) 砥草 シヒシヒ 紫詰 カムエシヨロマ 蕨 トア 蝦実話隻(1854) ,(西)は東蝦実地西般実地を指;註1.(東 l 註2 トイモは方言でナガイモを指すヒ y ヒシはほ草を意味するので、参考まで記す 25
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