「仕事とエネルギー」

物理学
「仕事とエネルギー」
近畿大学・工学部
仕事(work)
物体に一定の力 F が作用し,力の方向に d だけ移動したとき,力のした仕事 W は
W = F d
である。
W =Fh=mgh
解説
1.物体に力を加えても物体が動かなければ(d=0)仕事は零である。
2.仕事の単位は N・m で,これを J (ジュール) という。
F
h
mg
一般に物体の移動方向と力の方向は平行とは限らないので,仕事(work)を次のように定義する。
仕事(work)
物体に一定の力 F が作用し,物体が変位 d
W = F・d = Fd cosθ
である。
したときに,この力のした仕事 W は
F
θ
d
F cosθ
Fcosθd と見なせば,力の変位方向成分×変位
である。摩擦力は変位と逆向き(θ=180°)に働くので,負の仕事をする。
仕事率(power):単位時間当たりにした仕事を仕事率(power)という。
時間 t の間にした仕事が W であれば,仕事率 P は
P = W/t
である。
解説
1.パワーがあるとは,より短い時間によりたくさんの仕事ができることである。
2.仕事率(power)の単位は J/s で,これを W(ワット)という。
エネルギー
外力が物体に働き仕事をすると物体の速度が増す。速度が増した物体は,止まるまでに仕事
をすることができる。物体の持っている仕事をする能力をエネルギーという。
energy = en(容量) + erg(仕事) 仕事容量:物体の持つ仕事をする能力
運動方程式から導かれる関係
運動の第 2 法則:運動方程式
・・・(1)
運動エネルギーの変化 = 外力のした仕事
物理学
「仕事とエネルギー」
近畿大学・工学部
例:運動エネルギーと制動距離
自動車が急ブレーキをかけ始めてから止まるまでに走る距離を制動距離という。
自動車の質量を m ,ブレーキをかける直前の自動車の速さを v0,ブレーキがかかっているとき
の路面からの摩擦力を μmg とすると
v= v0
v=0
μmg
d
速さが 2 倍になると,制動距離は 4 倍になる。つまり,時速 30 km のときの制動距離が 8 m で
あれば,時速 60 km のときの制動距離は 4×8 m = 32 m となる。
位置エネルギーU
力 F のする仕事が,道筋に依存しないで始点と終点のみで決まるとき,この力を保存力という。
保存力が働く空間で,物体を基準点 O から指定した位置 r まで加速度ゼロで移動させるのに必要
な仕事を位置エネルギーという。位置エネルギーとは,物体がその位置から基準点へその力を受
けて移動したときに基準点で持つ運動エネルギーに等しいので,位置エネルギーは物体がその位
置にいることで潜在的に持っているエネルギーであると見なすことができる。
r
-F
F
O
より,保存力の場合(1)式は以下のようになる。
・・・(2)
保存力のみが働く場合,運動エネルギーと位置エネルギーの和は一定である。これを力学的エ
ネルギー保存の法則という。
重力による位置エネルギー
より
バネの位置エネルギー
より