微視的核反応論の最前線

原子核三者若手夏の学校 原子核パート研究会
微視的核反応論の最前線
大阪大学 核物理研究センター(RCNP)
蓑茂 工将
ホテルたつき (愛知県蒲郡市)
21 August, 2015
自己紹介
蓑茂 工将 (みのも こうしょう)
出身: 熊本県人吉市
(県立人吉高校卒業)
略歴
2013年 3月
博士号取得 (九大)
2013年4月-2014年3月
学振特別研究員DC2
2013年 4月
九大 学振特別研究員PD
2014年 4月
阪大RCNP ポスドク
2015年 4月~
阪大RCNP 特任助教
http://www.qsr.mlit.go.jp/s_top/soshiki/syozai-map.html
RCNP理論部メンバー (2015年4月)
革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)
Impulsing Paradigm Change through Disruptive Technologies Program
2014年度から12個のプログラムが開始されている
Keyword: high risk and high impact
「核変換による高レベル放射性廃棄物の大幅な低減・資源化」
ぜひ検索してみてください!
ImPACT
微視的核反応論が活躍する絶好の機会
RIST, JAEA, 筑波大, 北大の方々と, 理論的側面から研究を進めている
Contents I.  導入
II.  多重散乱理論に基づく微視的核反応論
III.  微視的核反応論が切り拓く物理
i. 
全反応断面積の解析による変形ハロー構造の決定
ii.  QCDに立脚した新しい有効相互作用
iii.  核変換プロジェクトへの貢献
IV.  総括
Contents I.  導入
II.  多重散乱理論に基づく微視的核反応論
III.  微視的核反応論が切り拓く物理
i. 
全反応断面積の解析による変形ハロー構造の決定
ii.  QCDに立脚した新しい有効相互作用
iii.  核変換プロジェクトへの貢献
IV.  総括
Microscopic reaction theories
反応の微視的な記述は, 核物理学者の大きな夢
ü  少数粒子系 (d+p 散乱等)
Ab initio計算
cf ) Faddeev理論
ü  核物質中でのNN散乱
g行列計算
Brueckner-Bethe-Goldstone理論
ü  有限多体系
さまざまなモデル計算
畳み込み模型, Glauber模型, …
あらゆる反応を統一的に記述する模型は未完成
さまざまな反応
弾性散乱
非弾性散乱
分解反応
ノックアウト反応
荷電交換反応
移行反応
入射エネルギーが数MeV/nucleon以上では直接反応が主
反応には少数の自由度が関与
弾性散乱の現象論的記述
ü  光学模型
弾性散乱を
光学ポテンシャル
実部
虚部
(虚部は弾性散乱以外へのfluxの流出を表す)
によって表現
U は弾性散乱実験を再現するよう現象論的に決定
eg)
光学ポテンシャルの理論的な基礎づけ, 構築は?
Feshbach理論, 多重散乱理論
研究の概要
・興味がある現象は, 多体系の直接反応全般
・有効相互作用に基づく微視的理論 (構造はまた別)
2核子間相互作用に立脚する理論
インプットとなるのは核力. 現象論ではない!
「予言力を持つ理論の構築」
トークでの目標: 物理の詳細に踏み込むことはせず,
微視的核反応論がどのように活躍するかを紹介する
・さまざまな核反応の微視的記述
・反応現象を通じた, 相互作用や核構造の解析
・物理の基礎的研究に限らない応用
Contents I.  導入
II.  多重散乱理論に基づく微視的核反応論
III.  微視的核反応論が切り拓く物理
i. 
全反応断面積の解析による変形ハロー構造の決定
ii.  QCDに立脚した新しい有効相互作用
iii.  核変換プロジェクトへの貢献
IV.  総括
多重散乱理論
ü  裸の核力に基づく多体のSchrödinger方程式
Multistep of
between
th nucleon in projectile and
th nucleon in target
⇒
は媒質効果を含む
M. Yahiro, KM, K. Ogata, and M. Kawai, PTP120, 767 (2008). 多重散乱理論
ü  裸の核力に基づく多体のSchrödinger方程式
Multistep of
between
th nucleon in projectile and
th nucleon in target
⇒
は媒質効果を含む
M. Yahiro, KM, K. Ogata, and M. Kawai, PTP120, 767 (2008). g行列相互作用の導入
有効相互作用
多体の演算子であるため, 実際の計算は困難
多くの場合, 有効相互作用としてg行列相互作用が用いられる
Brueckner-Bethe-Goldstone方程式 (g行列方程式)
媒質効果
Pauli禁止則
核物質中で感じるポテンシャル
密度および入射エネルギー依存型の複素相互作用
g行列畳み込み模型
ü  g行列相互作用に基づくSchrödinger方程式
畳み込みポテンシャル:
(微視的光学ポテンシャル)
Frozen density近似
インプットは相互作用と入射・標的核の密度
核力と有効相互作用の発展(の一部)
Nuclear force
Effective interaction (g-matrix)
1935 Yukawa theory
1960
1970
1980
1990
2000
2010
OPEP/OBEP
1955 Brueckner theory
1962 Hamada-Johnston
1968 Reid
Meson exchange theory
1980 Paris
1984 Argonne v14
1987 Bonn
1994 Nijmegen
1995 Argonne v18
1997 Urbana IX 3NF
2001 CD-Bonn
2006 ESC
QCD-based
2000~ Ch-EFT
(Very recently) Lattice QCD
Primitive g-matrices
1977 JLM (Reid)
1977 Oxford (HJ/Reid)
1977 M3Y (Reid)
1983 CEG (HJ)
More accurate interactions
1996 Full-folding (Paris)
2000 Melbourne (Bonn)
2007 Full-folding (AV18, CD-Bonn, …)
2008 CEG07 (ESC+3NF eff.)
2013 AMU (AV18+Urbana IX)
2015 Kyushu (Ch-EFT)
3NF
effects
陽子散乱での成功例
Melbourne g行列相互作用
現象論的密度(電子散乱)
K. Amos, et al., ANP25, 275 (2000).
H. de Vries, et al., ADNDT36, 495 (1987).
p scattering@65MeV
Melbourne相互作用は, 調整パラメータなしに陽子弾性散乱を系統的に再現
→ 不安定核を含めたさまざまな反応解析に応用
Contents I.  導入
II.  多重散乱理論に基づく微視的核反応論
III.  微視的核反応論が切り拓く物理
i. 
全反応断面積の解析による変形ハロー構造の決定
ii.  QCDに立脚した新しい有効相互作用
iii.  核変換プロジェクトへの貢献
IV.  総括
全反応断面積 と核半径
ü  全反応断面積の定義
弾性散乱
非弾性散乱
分解反応
核子移行反応
融合反応
…
相互作用断面積
(入射核 放出核)
全反応断面積
(狭義の“反応”の断面積)
ü  全反応断面積 ⇒ 原子核の“大きさ”を強く反映
2つの重い核が高エネルギーで衝突すれば
何かしらの反応を起こすと考えると…
全反応断面積の幾何学的表現
ドリップライン近傍の物理
大きな変形? ハロー構造?
ü  中性子過剰Ne同位体の相互作用断面積測定
M. Takechi, et al., NPA834, 412c (2010).
大きな差
安定核の傾向
∝A2/3
安定核の傾向とかけ離れた非常に大きな断面積
→ 変形やハロー構造の可能性を強く示唆
全反応断面積の解析による変形ハロー構造の決定
KM et al., PRL108, 052503 (2012).
三位一体の“純”微視的理論計算
微視的構造理論である反対称化
分子動力学(AMD)との接続
変形効果
AMD(-RGM) vs spherical HF
変形により全反応断面積が増大
中性子ドリップライン近傍核では
変形が本質的に重要
中性子過剰Ne同位体の基底状態の構造を決定
さらに, Mg同位体などのより重い不安定核の解析が進んでいる
Contents I.  導入
II.  多重散乱理論に基づく微視的核反応論
III.  微視的核反応論が切り拓く物理
i. 
全反応断面積の解析による変形ハロー構造の決定
ii.  QCDに立脚した新しい有効相互作用
iii.  核変換プロジェクトへの貢献
IV.  総括
核-核弾性散乱における問題
全反応断面積はほぼ理解できた.
ほかの物理量はどうか?
12C-12C
scattering@85 MeV/nucleon
大きな散乱角では
ポテンシャル内部が重要
2つの核が重なり密度が高くなると,
最大で
3核子力効果が効き得る
Melbourne
実験との不一致は, Melbourne相互作用が
3核子力効果を陽には含んでいない結果?
散乱における3核子力効果の探求
(現象論的)3核子力を含む散乱系のg行列
CEG07
T. Furumoto et al., PRC78, 044610 (2008);
PRC79, 011601 (2009).
Multi-Pomeron
Y. Yamamoto et al., PRC88, 022801 (2013);
PRC90, 045805 (2014).
AV18 + Urbana IX
S. Rafi et al., PRC87, 014003 (2013).
核物質状態方程式とも密接に関連
(中性子星の物理)
反応現象を通じた核力(有効相互作用)の妥当性の検証
→ 特に高密度中での相互作用の性質を探れるのは,
多体の反応ならではの特徴
カイラル相互作用を用いた3核子力効果の探索
ü  カイラル有効場理論による核力の導出
E. Epelbaum et al., NPA747, 362 (2005); RMP81, 1773 (2009)
K. Hebeler et al., PRC83, 031301 (2011).
R. Machleidt et al., PR503, 1 (2011).
より信頼性の高い核力
ü  3核子力効果の議論
P. Navratil et al., PRL99, 042501 (2007).
M. Kohno, PRC88, 064005 (2013).
J. W. Holt et al., PRC88, 024614 (2013).
有効相互作用としての3NFの性質は?
→ カイラル相互作用から出発する微視的反応論の構築に取り組む
g行列計算と3核子力
g行列方程式
媒質効果
Pauli禁止則
核物質中で感じるポテンシャル
3核子力に基づく有効2核子力の導入
Chiral interaction: N3LO v12, N2LO v123 (Λ=550 MeV)
E. Epelbaum et al., NPA747, 362 (2005);
RMP81, 1773 (2009)
弾性散乱角分布におけるカイラル3核子力の効果
M. Toyokawa et al., J. Phys. G42, 025104 (2014).
KM et al., Phys. Rev. C90, 051601 (2014).
p scattering@65MeV
M. Toyokawa et al., arXiv:1507.02807 (2015).
3核子力効果
3核子力効果によって実験との一致が改善
チャネル結合を取り入れた精密計算
チャネル結合効果による改善
Preliminary
核-核散乱も非常に良い精度で記述できつつある
Contents I.  導入
II.  多重散乱理論に基づく微視的核反応論
III.  微視的核反応論が切り拓く物理
i. 
全反応断面積の解析による変形ハロー構造の決定
ii.  QCDに立脚した新しい有効相互作用
iii.  核変換プロジェクトへの貢献
IV.  総括
核変換プロジェクト
ImPACTプログラム
「核変換による高レベル放射性廃棄物の大幅な低減・資源化」
微視的核反応論が活躍する絶好の機会
RIST, JAEA, 筑波大, 北大の方々と, 理論的側面から研究を進めている
微視的核反応論を用いた核子散乱の計算
入射エネルギー65MeVの陽子弾性散乱
208Pb
208Pb標的の中性子弾性散乱の
入射エネルギー依存性
40
90Zr Ca
16O
58Ni
116Sn
225
95 7565 (MeV)
127.5 85
155 107.5
185
陽子散乱と中性子散乱を全く同じ精度で記述できることが理論の長所
長寿命放射性核の反応の予言には,
微視的核反応論による弾性散乱データ(光学ポテンシャル)が必須
弾性散乱以外への応用
ü  (n,2n)などのノックアウト反応
歪曲波インパルス近似に基づく遷移行列
ポテンシャルの影響を受けた歪曲波
ü  2体や3体への分解反応
微視的核反応論を駆使して, さまざまな核変換パスの予言を行う
Contents I.  導入
II.  多重散乱理論に基づく微視的核反応論
III.  微視的核反応論が切り拓く物理
i. 
全反応断面積の解析による変形ハロー構造の決定
ii.  QCDに立脚した新しい有効相互作用
iii.  核変換プロジェクトへの貢献
IV.  総括
総括
「微視的核反応論の最前線」
ü  微視的核反応論の基礎
多重散乱理論による有効相互作用の導入
g行列畳み込み模型による核子弾性散乱の記述の成功
ü  微視的核反応論の活躍
全反応断面積の解析
構造理論と組み合わせた純微視的理論を用いて, Ne同位体の構造を決定
カイラル有効場理論の核力に基づく微視的核反応論
3核子力を含めた定量的議論
将来的には格子QCDによる核力との接続も(?)
核変換プロジェクトへの挑戦
核物理の, ある意味での集大成
Collaborators RCNP
K. Yoshida, M. Kohno, K. Ogata
Kyushu University
M. Toyokawa, M. Yahiro
Tsukuba University
K. Washiyama, T. Nakatsukasa
Hokkaido University
S. Ebata
本研究は、総合科学技術・イノベーション会議により制度設計された
革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)により、科学技術振興機構を
通して委託されたものです。