センデ―ロ・ルミノソ

<発表要旨>
センデーロ・ルミノソ
ーその成立と展開過程一
天理大学上谷博
今日、なお散発的ではあるが、リマ市をはじめとして、諸地域で各種のテロ活
動を展開している武装革命組織、センデーロ・ルミノソの党組織の形成とその活
動の展開について、以下の要領で発表した。
(1)
1.1960年前後の世界の政治.経済状勢の分析
・資本主義勢力の伸張と再編成の進展(主としてアメリカ資本主義による世
界資本主義市場の支配と強化)。
。第三世界を中心とした民族主義の高揚とキューバ解放闘争の進展。
。社会主義諸国の計画経済の発展と、中・ソ論争の深化、平和共存政策。
2.ペルー国内の政治経済状況分析
・半封建的、植民地的政治、経済社会構造の存在と第二次世界大戦後のアメ
リカ帝国主義の新たな経済政策による既存構造の深化。
。国内経済の、は行的発展による社会的諸矛盾の拡大(都市の特定産業、輸
出産業の発展と農村経済の停滞)。
。親米的政治.経済的諸政策に対する反発の増大と民族主義の高揚。ブルジ
ョワの覚醒。
。キューバ革命の成功による国内反体制勢力の伸張と再編成(ゲリラ闘争激
化)。
(Ⅱ)世界政治経済環境の変化と国内諸政治勢力の主体的対応(1962~1969)
1.体制維持勢力
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゜民族主義的政策の採用と民主化政策の促進(農地改革の部分的実施、教育
の民主化、産業分野における民族主義的諸施策など)。
。経済的諸改革の推進(税制の改革、金融組織の改編、工業化の促進)、イ
ンフラ整備、外資規制。
2.反体制勢力
・労働者、農民の組織化の進展。
。農民の土地占拠闘争の拡大。
゜労働者大衆の政治闘争の拡大。
。国民各層における政治意識の高揚による権利闘争の激化。
(Ⅲ)センデーロ・ルミノソの結党と展開
1.名称の由来
・ワマンガ大学学生革命戦線(1961年創立)の戦闘スローガン。
2.結党動機(第三次ペルー共産党分裂に由来)
・ペルー共産党の分裂と新党結成の過程。
。闘争路線の対立(革命理論と闘争手段の相違)。
。分裂と路線対立と国内経済政治状況の分析の相違(第一次分裂原因と結果、
第二次分裂の原因と結果、第三次分裂の原因と結果)。
3.アピマエル・グスマン、レイノソ
・思想形成(学生時代より共産党の活動家)。
。マルクス理論の研究と実践。
。実践の場としてのアヤクチョでの特に、パンデーラ・ロハ地域委員会青年
部での活動。
゜ワマンガ農民連合の結成活動。
。中国訪問と毛沢東思想の修得。
。』C、マリアテギ思想の研究と実践。
(Ⅳ)
1.国内の政治経済社会分析。
。1960年代、半封建的かつ外部従属的社会。
。1970年代、半封建的かつ植民地的社会。
。軍事政権(ベラスコ、モラレス)の性格=ファシスト的かつ帝国主義的で
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改良主義政権、国家資本主義社会建設を企図する協同組合主義政権、反動
的反労農主義政権。
2.A.グスマンの革命思想
・国家社会の抜本的変革と新民主主義的人民国家建設。
。マルクス、レーニン、毛沢東、LCマリアテギ的思想による変革を志向。
。農民革命と都市プロレタリアートを中心とした民族革命と社会主義革命を
推進。
゜革命主体(農民と労働者)。
。革命思想形成時期区分。
1960年代毛沢東思想研究
1970年代毛沢東思想研究の深化と部分的実践期
』.C・マリアテギ思想研究とその深化とマルクス・レーニン思
想の国内的再解釈期
1980年代初期ゴンサロス思想(グスマン思想)の確立期、独自理論構築
(v)革命闘争の拠点としてのアヤクチョ
・政治経済社会的状況(市場経済の拡大で社会的諸矛盾が集中的に現出、軍
事政権下での大規模な状況変化)。
。A・グスマンの1960年代よりの主要な政治活動の場としてのワマンガ大学
(学生の組織化、アヤクチョ地域における各種闘争組織の結成)。
。伝統的農民闘争の拠点として。
。革命闘争の理想的拠点として。
(Ⅵ)革命の戦略と戦術
1.革命戦略
・現政権を打倒し、政治経済構造の抜本的変革を実現し、社会主義経済制度
と人民的政治権力を確立すること。
。農村社会における半封建勢力打倒し、都市部および輸出産業地域の親帝国
主義勢力を打破し、全国的レベルのブルジョワ勢力を壊滅させること。
。そのために、あらゆる外部左翼勢力と団結すること(MOTC、MFP、
アヤクチョではFPC、cc)。
。農民、労働者大衆を政治化し組織化をすること。
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。政治・経済中枢の機能の停止を招来するあらゆる手段を取ること。
。革命は武力闘争の形態をとり、農村から都市を包囲すること。
。都市では各種暴力を用い、現体制の権力維持と発展を阻害すること。
゜全国レベルにおいて展開中の武力闘争組織と連携すること。
2.革命戦術
・センデーロ革命思想の教宣活動。
人民情報センター機関誌……革命学生戦線、各大学学生組織を通じて、革
命理論の研究、国内政治経済の教育(分析と学習)。
。全国と地方レベルにおける革命グループの組織化と既存組織の強化(特に
1971年~1972年)。アヤクチョ地方における生活防衛組織の構築.
。学生、教員組織への重点的支配工作。
。人民委員会の結成(各種任務の分担、全国および地域レベルで構成)。
。人民軍(都市と農村部)の創設……構成と役割、人民ゲリラ軍と人民防衛
革命軍。
。革命指令部の創設(内部機能と構成)。
。暴力とゲリラ闘争の一般化による革命状況の創出と革命の遂行。
。革命支援の基地の建設(農村部)。
゜都市における破壊活動の恒常化。
。前面的人民持久論による都市包囲作戦の展開の支援手段の構築(スト、サ
ボタージュ、抗議)。
。戦闘手段(武器、弾薬の調達方法の確立)。
。原住民共同体への革命勢力の浸透と共同体内での革命組織の形成のための
要員養成組織の構築(反政府宣伝と活動)。
。戦闘要因の確保(主勢力と補助勢力)。
。具体的戦術。農村部一行政機構の破壊、各種心理作戦。都市部一各種
スト、行政妨害。企業公共機関に対するテロ活動。
。選択的特定人物殺害と誘拐。
。公企業、外資系企業の生産活動の妨害。
゜教宣活動とテロ等の行為により人身を撹乱すること(心理戦争、サボター
ジュ)。
。武力攻撃は同時多発的に行い、その効果を最大にすること。
゜農民学校開設による教宣活動の活発化。
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(Ⅶ)
l_、闘争の展開(1980~1991)
(A)1980年代客観的政治経済状況
・国家資本主義的政策の巧妙な強化。
。ブルジョワ勢力への権力委譲。
。総選挙による政治的空白状況の出現。
。左派勢力のバルカン化。
。労働者大衆の生活条件の悪化。
。ブルジョワ政治権力下でのテロ行為による大衆の人権抑圧の頻発。
。ブルジョワ政権の諸政策の外部勢力への迎合。
(B)革命勢力(センデーロ・ルミノソ)の主体的闘争条件の整備完了
・革命思想の完成。
。闘争条件の成熟(組織の完成、戦闘能力の向上、客観的条件の有利な展開
への確信)。
。教宣工作効果の顕在化。
(・闘争組織体の構成。
。党中央執行部→小数精鋭、秘密主義、政策決定。
。地域執行委員会(県単位)。
。県内地域委員会、同サブ地域委員会、各種任務分担。
。党員確保。
貧農農民、一般労働者、貧困層出身学生、有名私立大学生(情報収集のた
め)、中小ブルジョワジー層、労働組合活動家(指導者)。
゜各種活動組織。
政治組織。軍事組織。(都市部と農村部)各組織の人員構成と役割分担。
。構成員の武闘技術教育。
(D)闘争拠点としての農村部
・客観的条件の一層の成熟化。
゜2方面における闘争の展開(農民共同体および都市化地域)。
。攻撃対象……都市化地域→小反動ブルジョワ層、原住民共同体→伝統的支
配者層、小地主、小商人。
。攻撃手段→生活道路の破壊、市場閉鎖、政府機関および軍.警察施設の破
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壊。
(E)闘争拠点としての都市部
・客観的条件の成熟化(特に支持基盤の拡大、地方都市での変革条件の進展)
゜攻撃目標と対象……行政機関と多国籍企業など輸出産業関連の大企業およ
び政府要人、大企業家。
。攻撃手段……テロ、サボタージュ、爆破、殺人、誘拐、その他各種手段。
(Ⅷ)政府のゲリラ対策
1.
(A>政治対応
法的措置、開発事業の促進、自警団の創設、隔離政策。
(B)軍事的対応
軍隊、警察隊の投入、特殊部隊の編成(シンチ部隊)。
2.対策の効果的執行の欠如
政策決定における政府と軍部との見解の相違、政府内の所轄争い、紛争地
域における二重権力構造、軍部と警察権力との間の権力闘争、情報収集能
力の欠如、情報分析と対応能力の欠如、人権問題。
(Ⅸ)ゲリラ活動の終結
1.理論的側面における原因
・毛沢東、マリアテギ理論に固執、また理論展開の未熟(教条的、主観的展
開)。
。アカデミニム。
。排他主義。
。A・グスマンの性格的偏狭による十二分な討論の不足、また秘密主義によ
り、各種レベルの指導者の教育が不十分であったこと。
2.戦略的側面における原因
・政治、経済分析の不十分さ……農民社会の階層分化の進展についての認識
不足、共同体間の利害関係の複雑化、革命主体内部における意見対立、支
持基盤の拡大に失敗、他共闘集団との意見調整の不十分さ、命令・指揮系
統の未整備、欠員調達補充の欠如、解放地域の維持と拡大に失敗、武器調
達ルートの瓦解。
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3.政府の反撃
・地方自治体の民主化、適切な農民対策(ゲリラの隔離、自衛組織の創設、
軍隊と警察との有機的作戦の復活、情報収集活動の活発化、両軍隊の大量
投入)。
(X) 結論
失敗
壜r::。;溌鶴…
政府の効果的対策。
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