横笛の詩

紀州かつらぎ・ふるさとオペラ
かつらぎ
総合文化会館
開館20周年
記念事業
よ
こぶ
え のう
天野の里に
伝わる
娘
「横笛」
の
悲恋物語
た
合 唱 出 演 者 募 集 !!
かつらぎ総合文化会館は、来年度 開館20周年を迎えます。
その20周年を記念して、かつらぎ町に伝わる民話『横笛』を、平成24年度に ふるさとオペラ
「横笛の詩」
として、かつらぎ総合文化会館大ホールでの上演を計画しています。上演にあたり、
皆様のご協力をいただき、合唱に参加いただける方を募集します。
横笛の詩 あらすじ
むかし治承4年(1180年)、都の西八条殿で花見のとき、おきさきに仕える横笛が、あでやかに「春うぐいすのさえずり」の
ひとさしを舞っていた。そのとき、小松の内大臣・平重盛の家来23才の齋藤滝口時頼は、美しい横笛の舞い姿に強く心ひかれ、
おたがいに愛し合うようになるが、このことを知った父親は、平家一門の侍と舞姫の身分の違いをタテに取って時頼を厳しく
いさめた。時頼は深く傷ついた心で、くる日もくる日も苦しみ悩み続けた。
ついに嵯峨野の往生院で出家することを決心し、名を滝口入道と改めた。
横笛は熱い思いをおさえきれず、嵯峨野のお寺を訪ねる。「滝口どの、わたくし横笛……」と、とびらに両手をかけ、心を込め
て訴えたがお堂の滝口入道は、
「この世の一切のかかわりを捨てた私だ」と、冷たく拒んで出てこようとしない。
ただおごそかな かねの音とお経の声が静かな庭に響くだけ…。
泣く泣くお寺を去った横笛は、やがて奈良の法華寺で長い黒髪を切り落とし仏門に入る。
「この世のえにしを離れた わが身だ」と、心ならずも断った滝口入道もまた横笛と同じ思
いであった。
自分のあさはかさに気づいた入道は、間もなく女人禁制の高野山に登り、そこでさらに
厳しい修行を重ねて、大円院というりっぱなお寺の第八代住職・阿浄律師となった。
滝口入道のことを風のたよりに聞いた横笛は、はるばると高野山に近い天野の里を訪ね
庵を結び、今ひとたび会える日を待っていた。
たまたま天野を通った僧から、横笛の話しを聞いた阿浄律師は心の証の和歌をおくった。
そるまでは うらみしかども あずさ弓
まことの道に 入るぞうれしき
横笛はこの和歌を受けて、
そるとても なにかうらみん あずさ弓
引きとどむべき 心ならねば と、優しく応えた。
せめて、女人禁制の高野山のふもと天野の里に住めばと、切なく恋したったけれども、
その願いもむなしく横笛は19才の春に、村人に看取られて哀れにもこの世を去った。
横笛の病の床に、滝口入道から送られてきた和歌は
高野山 名をだに知らで 過ぎぬべし
うきよよそなる わが身なりせば
それにこたえて横笛は
やよや君 死すればのぼる 高野山
恋もぼだいの たねとこそなれ
この和歌のとおりに亡くなった横笛は、一羽のウグイスとなって大円院の梅の木に止まり、しばらく美しい声で囀っていた。
やがて、弱々しく二、三度はばたくと庭の井戸に落ちて水に沈んだ。はっと夢から覚めた入道は、井戸からウグイスを掬い上げ、
変わり果てた横笛の姿に無念の泪を流した。滝口入道は真心こめて阿弥陀如来の仏像を造り、その中にウグイスのなきがらを
納め、あの世の幸せを祈った。
※高野町の大円院には今も、ウグイスの弥陀と梅の木、それに井戸が残されている。
また、天野の里(かつらぎ町)には村人が哀れんでとむらった「横笛の恋塚」がある。
「横笛の詩」
制作準備委員会
委員長 / 防 野 宗 和