2012 年 8 月吉日 「メタンハイドレート開発とガスエネルギー小委員会の目指す 課題」 一般社団法人・国家ビジョン研究会 代表理事 中西真彦 ○我が国家ビジョン研究会・ガスエネルギー小委員会(GEC)の目指すものは、国家 のエネルギー政策の柱とこれまで位置付けられていた原子力発電が、福島原発事故 により大きく揺らいだことを受けて、国のエネルギー政策の見直しに関して、政府 の進める作業は尊重しながら、民の立場から自由な視点で、あるべき政策提言を行 わんとするものである。 ○議論の主戦場は、これまで国策として日本のエネルギー源の中心であり続けた原発 に替わりうる、安定供給性と継続性とを備えたボリュームのある強力なエネルギー 源を何に求めるかということである。この課題は実現に至るには一定の時間を必要 とするものであり、従って今、直ちに取り組まねばならぬものである。原発の再稼 働の是非論も重要ではあるが、それは局地戦の議論である。GEC はこの主戦場の 議論に真正面から取り組む。 我々の狙うターゲットはずばり言って、日本の経済水域に眠るメタンハイドレート (非在来型天然ガス)である。客観的な実証を重んじる自然科学でも初めに前提と して仮説が立てられる如く、我々の主張も、現時点では一つの仮説ではあるが、こ の狙いは先見性を備えたものであると確信している。 ○メタンハイドレートとは、海底に眠る天然ガスの一種であり、十数年前の昔、資源 エネルギー庁による試掘で正式にその存在が公表された非在来型のエネルギー資 源である。膨大な可採埋蔵量があると推定されており、この商業生産に成功すれば、 「資源立国日本」を現実化する可能性すら秘めたものである。 ○国は『メタンハイドレート資源開発基本計画』を策定し、2000年度から開発を 進めているが、遺憾ながら国策としてこの重要資源開発に相応しい予算と人材など が投入されてきたとは言えない。 厳しい研究・開発環境にも関わらず、世界に先駆けて減圧法が開発され、世界初の 陸上産出試験が成功裏に実施されたことは、高く評価されるものであり、資源エネ ルギー庁、産業技術総合研究所、石油天然ガス・金属鉱物資源機構などを始めとす る関係各位のご努力に敬意を表したい。 現在、伊勢湾沖で採掘のための技術基盤の確立と商業ベースに至る世界初の海洋産 出試験も動き出している。 問題は、その基本計画が福島原発事故と言うエネルギーの国家的危機の遥か前の、 90年代末期の原子力発電全盛時代に立てられ、そのタイムスケジュールで現在も 進められているということである。 我が GEC としては、この政策の対応はちょっとおかしいのではないか、タイム スケジュールも早め、予算も人材も飛躍的に増大し開発プロジェクトの枠組みも大 幅に変えるべきではないかと、その具体策も含めて先般、経産省資源エネルギー庁 の高原長官に面談して提言したところである。 ○我が国の貿易収支は、超円高で産業界が輸出競争力を喪失し、逆に原発の稼働停止 でエネルギー資源を輸入する支出は増え、急速に悪化している。国家財政も 1 千兆 円を超える赤字国債残高にあえいでいる。まさに八方塞がりであり、国家は没落へ の道をたどっていると懸念される。原発に替わるものとして喧伝されている自然再 生エネルギーも、それぞれ長所もあるが、ずばり言って出力の安定性に欠け、ボリ ューム面と設備のコスト面で弱点も多い。特に特定の企業が仕掛けた、風力発電と 太陽光発電による発電量の全量を無理に電力会社に買い取らせるという、「固定価 格買取り制度」はちょっと、きな臭いと言わざるをえない。なぜなら、このチャー ジは電気料金に上乗せされ、家庭や企業の出費がかさむ仕組みだからである。 ○我が国家ビジョン研究会のエネルギー政策は、一言で表現すると“日本を海から甦 らせる”と言うものである。自らの国の庭ともいえる海底に眠るメタンハイドレー トには、今後開発しなければならない未知の分野の技術上の壁があり、また大きな イニシャルコストはかかるが、我々はすでに関係企業が集まり、政府系の機関であ る日本エネルギー経済研究所や産業技術総合研究所などとも連携しながらチャレ ンジを始めている。何よりも声を大にして訴えたいのは、それは自分の庭から湧い て出る宝物であり、アラブの産油国並みの富と豊さを我が国にもたらし、ひいては 「海洋資源立国」を現実化できる可能性を秘めた素晴らしい自然からの贈り物であ るということである。 かつて英国のサッチャー首相が、当時、中東からアラビアンライトを買った方が安 くつくとの反対論も押しきり、自らの先見性を信じて北海油田開発に踏み切り、英 国を没落から救ったごとく、今、日本に求められるものは海洋資源立国を目指して、 メタンハイドレート開発プロジェクトを、より明確に「国策」と位置付け予算と人 材を投入し、官民力を合わせて挑戦することであろう。 以上
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