日本人が目指すべきリーダーシップスタイル、 正しい

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日本人が目指すべきリーダーシップスタイル、
正しいリーダーシップスタイル開発の順序とは?
8600人以上の日本人管理職のリーダーシップスタイル診断データから見えるもの
概 要 Executive Summary
図 1 リーダーが発揮している * リーダーシップスタイルの国別比較
■
ヘイグループではリーダーシップを 6 つの型で定義しており、
リーダーはいくつかの型を持ち、状況に応じて発揮するのが
望ましいことがわかっている( P.3 )が、これまで、諸外国のデー
タとの比較により、日本人管理職は「ビジョン型」のリーダー
シップスタイルの発揮度合いが低い一方、
「 民主型」の発揮度
合いが高いことがわかっていた( P.3 )。
■
今回は、これまで日本人管理職 8600 人以上に実施してきた
リーダーシップおよび組織風土診断のデータを分析した。
■
リーダーが発揮しているリーダーシップスタイルの数と、業績
渇望される
ビジョン型リーダーと
日本的なリーダーの
あり方とは?
を大きく左右する「組織風土」の関係を分析した結果、効果
的なリーダーとなるには 3 つ以上のリーダーシップスタイルを
持つことが必要であり、4 つのスタイルを持てば十分良好な組
織風土を作れることがわかった( P.5 )。
■
それぞれのスタイルと組織風土の相関関係を分析した結果、
最も高いプラスの相関関係にあるのはビジョン型であるが、
民主型でも良好な組織風土は醸成できると言える( P.6 )。
■
6 つのリーダーシップスタイルがどのように開発されていくか
を分析すると、まず指示命令型、率先型に始まり、民主型、関
係重視型もしくは育成型が続き、最後にビジョン型となるこ
とがわかった( P.7 )。
■
この分析に基づき、リーダーシップ開発の道筋を、
「 視点」を
「自分視点」と「他人視点」、
「 対象」を「個人対象( 1 対 1 )」と
「グループ対象( 1 対 多数)」の軸にわけ、フレームワークとし
てまとめた( P.8 )。
■
組織の業績を高めるビジョン型のリーダーシップスタイルを
早期に獲得することは困難であり、まず日本人が得意とし、
組織風土にもプラスの影響を及ぼす民主型を開発すること
が効果的な道筋であると言える( P.8 )。
■
■
■
27%
19%
36%
59%
42%
37%
中国
45%
27%
45%
26%
28%
58%
フランス
49%
34%
33%
34%
26%
43%
ドイツ
16%
36%
37%
42%
44%
32%
インド
62%
42%
51%
36%
18%
55%
ブラジル
59%
45%
48%
55%
22%
50%
イギリス
25%
45%
44%
32%
32%
43%
米国
24%
47%
42%
31%
33%
42%
カナダ
20%
48%
45%
43%
34%
37%
イタリア
62%
48%
43%
40%
24%
48%
* 発揮している=診断スコアがグローバルで蓄積されたデータベースとの比較での 67パーセンタイル以上(データベース全体の 67%のリーダーよりも高い結果である)
の 型 で 定 義 している。指 示 命 令 型、ビジョン 型、関
の 発 揮 度 合 いが 最 も 高 く( 59 %)、日 本 人 管 理 職
係 重 視 型、民 主 型、率 先 型、育 成 型 である。ヘイグ
に特徴的なスタイルと言える。
ダーは、ビジネス 界 にとどまらずあらゆる 分 野 で 求
ループは、グローバルのリーダーシップ 診 断 のデー
ビジョン 型 リーダーが 必 要 なことは 論 を 待 たな
められている。ビジネス 界 に 目 を 向 けると、国 内 で
タベースで、この 6 つの 型 を 発 揮 している 管 理 職
いが、一 方、これからの 世 界 で 求 められる 共 創 型 の
はソフトバンクの 孫 正 義、ファーストリテイリング
の 割 合 の 国 別 比 較 を 行 った( 2013 年 - 図 1) 。その
リーダーのあり方もあり、それを可能にする民 主型
の柳井正など、海外ではアップルのスティーブ・ジョ
結 果、日 本 人 の 管 理 職 のうち、ビジョン 型 のリー
のスタイルを 日 本 人 は 得 意 としていると 考 えられ
ブス、テスラ・スペース X のイーロン・マスクなど、
ダーシップを発揮できている人は 19 %にとどまり、
る。この 2 つのリーダーの 型、またその 育 成 の 方 向
大きなビジョンを掲げて人をひきつけ、人を動かす。
比 較 した 10 カ 国 で 最 も 低 いことから、ビジョン 型
性について示唆を提供したい。
な ぜ、ビ ジ ョ ン 型 な の か? ヘ イ グ ル ー プ が、
リーダーの 育 成 には 必 ずしも 成 功 していると 言 え
2014 年 に 今 後 求 められるリーダーシップについて
著した「 Leadership 2030 」でも課題提起してい
るが、グローバル 化 の 進 展、環 境 危 機、人 口 動 態 の
業を推進することよりも、不確実な将来・事業環境
も、リーダーシップ開発が十分にされているとは言えない状況
を 所 与 とし、多 様 な 意 見 に 耳 を 傾 けた 上 で、組 織
にあることがうかがわれる( P.10 )。
として 目指すべき姿を描き、それをビジョンとして
共創型リーダーを目指せると考えられる。
日本
ビジョンで 人 を 引 っ 張 っていくビジョン 型 リー
管理職の階層レベル別にデータを見ると、レベルが上がって
型と民主型を兼ね備えた、これからの世界で強さを発揮する
育成型
である。
従来型のリーダーに求められていた確実・堅実に事
プスタイルを開発していくことによって、日本人は、ビジョン
率先型
ヘイグループではリーダーシップスタイルを 6 つ
主型、育成型であることがわかった( P.9 )。
上記のフレームワークに沿ってステップを踏んでリーダーシッ
民主型
ありそうである。例 えばビジョナリーなリーダー 像
し、不 確 実 性 がますます 高 まっている。その 結 果、
耳を傾けた上で、人と協働していく共創型のリーダーである。
関係重視型
とは 難 しい。ただ、いくつか 一 般 的 に 言 えることは
風土をつくりだす組み合わせは、ビジョン型、関係重視型、民
ヘイグループのグローバルでの調査・研究によれば、これから
ビジョン型
方 が 存 在 し、何 が 正 しいという 決 定 論 的 に 語 るこ
変 化、デジタル 社 会 などにより 世 界 は 大 きく 変 化
ビジョンを示すだけでなく、多様な人々の意見やアイデアに
2
シップスタイルのあり方についてはさまざまな考え
リーダーシップスタイルを 4 つ持つ場合に、もっとも良い組織
の変化が激しく複雑で不透明な世界で成功を収めるのは、
■
リーダーのあり方、リーダーが発揮すべきリーダー
指示命令型
語 り、人 を 巻 き 込 んで 共 創 していくことが 求 めら
れている。では、日 本 におけるビジョン 型 や 共 創 を
可 能 にする 民 主 型 のリーダー 育 成 状 況 はどうなっ
ているのだろうか?
本 ペーパーでは、ヘイグループが 蓄 積 した 管 理 職
■
6 つのリーダーシップスタイル
指示命令型
ビジョン型
関係重視型
民主型
率先型
のリーダーシップスタイルおよびその管理職が作り
出 している 組 織 風 土 の 診 断 結 果 データベースを 分
析することにより、この疑問に対する答えを探った。
ない。一 方 共 創 を 促 進 する 民 主 型 は 日 本 人 管 理 職
育成型
部下に対して「即座の服従」を求める。上司から部下への指導というよりも「何をすべ
きか」という具体的な指示、命令により部下を従わせようとする。
部下に「長期的な方向性、目指すべきビジョン」を示す。上司、部下の間に双方向の
コミュニケーションが見られ、独自のビジネス展望を持つ。
組織のメンバー同士の「調和」を求め、対立を回避しようとする。部下と友好的な関係
を築くことを最重要視し、そのことに多くの時間を割く。
部下の「積極的参画」を求める。部下の合意を得ることにより、部下から自主的な参画
意欲を引き出す。
自ら「規範」を示し、業務処理に対する高い要求水準を設定する。自分自身がモデル
となって部下や組織を牽引する。
部下の「長期的、計画的育成」に取り組む。各自の目指す姿に照らしながら、強み・弱
みを「教える」のではなく「気づく」よう部下を導く。
渇望されるビジョン型リーダーと日本的なリーダーのあり方とは?
3
“ 効果的なリーダーシップスタイルは良好な組織風土を作り出し、
よって高いパフォーマンスを生み出す
”
“ 4つのリーダーシップスタイルを持てば
良好な組織風土を作り上げることができる
”
リーダーシップスタイルと組織風土
組 織 の 業 績 はさまざまな 要 因 によって 左 右 され
ンスに対する約 30% の説明要因)。
るが、ヘイグループでは、人・組 織 の 観 点 から、組 織
ヘイグループは 組 織 風 土 を 6 つの 軸 から 診 断 し
パフォーマンスに 対 するリーダーシップスタイルと
ている。柔 軟 性、責 任、基 準、評 価・処 遇、方 向 の 明
組 織 風 土 の 影 響 度 合 いを 実 証 研 究 を 通 じて 検 証
確 性、チームコミットメントである。各 軸 はグロー
している。効 果 的 なリーダーシップスタイルは、良
バルで 蓄 積 されたデータベースと 比 較 してのベン
好 な 組 織 風 土 を 作 り 出 し、よって 高 いパフォーマ
チマーキングで、0-100% のスコアで診断している。
ンスを生み出す(リーダーシップは組織風土に対す
ゆえに 一 般 的 にスコアが 高 いほうが、より 良 好 な
る 約 70 % の 説 明 要 因、組 織 風 土 は 企 業 パフォーマ
組織風土を作り上げていると言える。
リーダーシップスタイルの数と組織風土
日 本 人 管 理 職 8612 人 のリーダーシップスタイ
アはほぼ同じであり、3 つ以上で組織風土スコアが
ルおよび組織風土の診断データで、リーダーが発揮
改 善 していく。これは 効 果 的 なリーダーとなるため
しているリーダーシップスタイルの 数 と 組 織 風 土
には 3 つ 以 上 のリーダーシップスタイルを 持 つこ
スコアの 合 計( 6 つの 軸 のスコアの 合 計 値 )の 関 係
とが 必 要 であることを 意 味 している。またリーダー
を 示 したのが 図 2 である。一 般 的 に、リーダーはさ
シップスタイルの 数 が 増 えるにつれて 組 織 風 土 ス
まざまな 状 況 に 対 処 する 必 要 があり、複 数 のリー
コアも 上 がっていくが、4 つと 5 つではほぼ 同 スコ
ダーシップスタイルを 使 い 分 けることが 求 められ
アになり、これは 4 つのスタイルを持てば効果的な
る。よって 実 践 しているリーダーシップスタイルの
リーダーシップが 発 揮 され、十 分 良 好 な 組 織 風 土
数 が 多 い 方 が、より 効 果 的 なリーダーといえる。し
を作り上げることができることを意味している。
かしながら 6 つのリーダーシップスタイルを 全 て 使
リーダーシップスタイルは 3 から 4 つ程度持つの
いこなす 必 要 があるかというと、そうではないこと
が 良 さそうである、ということがわかったが、次 の
がデータからわかる。
問 いは、ではどのようなリーダーシップを 持 つのが
図 2 を 見 ると、管 理 職 が 使 っているリーダーシッ
適切か、ということになる。
プスタイルが 1 つと 2 つの 場 合 には 組 織 風 土 スコ
図 2 発揮しているリーダーシップスタイル数別の組織風土調査スコア(N=8,612)
352
365
371
293
組織風土調査
合計スコアの平均値
(6 つの評価軸別スコアの和)
224
173
185
■ 組織風土の 6 つの軸
柔軟性
責任
自分たちに多くの 権 限 が 委 譲されているか。
基準
業 績の 向上と最 善 を尽くすことに上司が 傾 注しているか。
評価・処遇
方向の明確性
チームコミットメント
4
職 場における制 約 感 がないか。
リーダーシップスタイルと組織風土
発揮している
リーダーシップスタイルの数
サンプル数
0
1
2
3
4
5
6
842
2,521
2,006
1,276
1,293
601
73
良 い 仕事 をすれば 認 められ 処 遇されると 感じ、その 認 知 の 結 果 が 業 績 の 基 準
として 直 接 的および 差 別 化 要 因として関 係 付けられているか。
各 自 への 期 待 内 容 を 理 解し、その 期 待 が 組 織 の上 位目 標 や目 的とどのように
関 連しているかを 理 解しているか。
組 織 に所属することへの 誇り、必 要なときには 本 来 以 上の 努力を提 供し、全 員
が 共 通した目的に向かっているという信 頼を感じているか。
リーダーシップスタイルの数と組織風土
5
効果的なリーダーシップスタイル
リーダーシップ開発の道筋
6 つのリーダーシップスタイルと組織風土の関係
確 になったが、必 ずしもビジョン 型 をリーダー 全 員
リーダーシップ 開 発 にはある 一 般 的 な 道 筋 が
まず、指 示 命 令 型 もしくは 率 先 型 で 始 まり、民 主
を 見 ると( 図 3) 、組 織 風 土 に 対 して 最 も 効 果 的 な
の 最 終 ゴールとする 必 要 はなく、民 主 型 でも 良 好
あり、仮 にビジョン 型 のリーダーシップスタイルを
型、関 係 重 視 型 もしくは 育 成 型、そして 最 後 にビ
のはビジョン 型 で、次 が 民 主 型 となる。指 示 命 令 型
な組織風土をつくり上げることができると言える。
目 指 すとしても 一 足 飛 びにビジョン 型 リーダーに
ジョン 型 となることがわかる。つまり 日 本 人 にとっ
と 率 先 型 は 関 係 がマイナスになっていることから、
それぞれのスタイルが、組 織 風 土 のどの 軸 に 影 響
なるのは現実的には簡単でない。日本人のリーダー
てビジョン 型 はもっとも 獲 得 が 難 しいスタイルと
この 2 つのスタイルは 時 と 場 合 によりマイナス 影
を 与 えるかを 見 ると( 図 4 )、民 主 型 のスタイルは、
が発揮するリーダーシップスタイルの数と、リーダー
言 える 一 方、民 主 型 は 比 較 的 早 く 獲 得 のできるス
響を及ぼしてしまうスタイルと言える。
特 に 評 価・処 遇 に 対 して 好 影 響 を 与 え、また 柔 軟
シップスタイルの 出 現 率 の 関 係 が 図 5 および 図 6
タイルと言える。
ビジョン 型 がなぜ 求 められているかがこの 組 織
性、責 任、方 向 の 明 確 性 においても 好 影 響 を 与 え
である。リーダーシップスタイル獲得の順番として、
風 土 との 関 係、ひいては 業 績 への 意 味 合 いから 明
ることがわかる。
1 (N=8,612)
図 5 発揮するリーダーシップスタイル数によるリーダーシップスタイルの出現率 (%)
図 3 「リーダーシップスタイル 」と「組織風土」の相関関係(相関係数 *)
指示命令型
ビジョン型
関係重視型
民主型
育成型
率先型
1
リーダーシップ
スタイルの数
2
(N=2,521)
3
(N=2,006)
0.29
26
17
育成型
率先型
民主型
関係重視型
ビジョン型
指示命令型
育成型
率先型
民主型
関係重視型
ビジョン型
指示命令型
育成型
率先型
民主型
2 (N=8,612)
図 6 発揮するリーダーシップスタイル数によるリーダーシップスタイルの出現率 (%)
0.160.17
指示命令型
ビジョン型
100
0.12
関係重視型
民主型
98 100
100
96
90
-0.01
率先型
100
方向の明確性
チームコミットメント
評価・処遇
32
70
46
44
25 26
2
3
4
5
59
45
38
0
1
63
58
20
17
リーダーシップ
スタイルの数
99 100
90
85
60
40
育成型
100100
69
基準
責任
柔軟性
方向の明確性
チームコミットメント
評価・処遇
基準
効果的なリーダーシップスタイル
責任
6
柔軟性
方向の明確性
* 個別のリーダーシップスタイルと組織風土との偏相関係数(他のリーダーシップスタイルの影響を統計的に排除した数値)
チームコミットメント
評価・処遇
基準
責任
柔軟性
方向の明確性
チームコミットメント
評価・処遇
基準
責任
柔軟性
方向の明確性
チームコミットメント
評価・処遇
基準
方向の明確性
チームコミットメント
評価・処遇
基準
責任
柔軟性
-0.35
責任
-0.07
柔軟性
-0.11
関係重視型
ビジョン型
指示命令型
育成型
率先型
民主型
関係重視型
ビジョン型
ビジョン型
育成型
89
-0.03
-0.07 -0.06-0.06
44
38
0
-0.07
70
60
関係重視型
民主型
率先型
0.06
0.05
指示命令型
0.12
育成型
0.12
率先型
0.13
民主型
0.18
0.12
指示命令型
関係重視型
0.2 0.19
ビジョン型
0.17
指示命令型
0.18
育成型
育成型
0.26
0.11
0.070.06
0.09
率先型
率先型
0.17
0.26
0.24
0.22
0.19
民主型
16
99 100100100100100100
89
3
1
民主型
図 4 「リーダーシップスタイル 」と「組織風土」の各軸の相関関係(相関係数 *)
関係重視型
現れる
リーダーシップ
スタイル
ビジョン型
指示命令型
-0.04
0 3
25
20
(N=73)
98 100
90
45
40
18
-0.07
59
46
0.15
関係重視型
96
6
(N=601)
69
32
0.24
90
58 63
0.16
ビジョン型
5
(N=1,293)
85
0.22
指示命令型
0.27
4
(N=1,276)
6
1
3
2
18
16
3
3
4
5
6
1
1
2
3
4
5
6
1
2
3
4
5
6
1
2
3
4
5
6
1
2
3
4
5
6
ビジョン型は、4 つ以上のリーダーシップスタイルを開発できた段階で現れるスタイルで、
最も難しいリーダーシップスタイルである。
リーダーシップ開発の道筋
7
“ リーダーシップの開発には道筋があり、
リーダーは視点・対象を拡大していきながら、
効果の高いスタイルを獲得していく
”
リーダーシップ開発の道筋のフレームワーク
メインスタイルとして用いるリーダーシップと
補助的リーダーシップスタイル
リーダーシップ開発には、スタイル獲得の順番が
効 果 的 であり、出 現 率 も 44% と 最 も 高 い。ここか
あることを 見 てきたが、高 い 成 果 を 生 むリーダー
ら 言 えることは、リーダーシップが 開 発 されるにつ
シップを発揮するために、効果的なスタイルの組み
れて、組 織 風 土 にあまり 良 くない 影 響 を 与 える 指
合わせは何か? ということを考えたい。
示 命 令 型 や 率 先 型 は 次 第 に 使 わなくなっていくと
このリーダーシップ 開 発 の 道 筋 を、フレームワー
ことを 実 現 させる 支 援 を 行 う 段 階。この 段 階 での
図 8 は 4 つのリーダーシップスタイルを 獲 得 した
いうことである。
クを 使 って 考 えてみたい。フレームワークの 軸 は
スタイルは関係重視型、育成型となる。
場 合、どのスタイルの 組 み 合 わせが 最 も 効 果 的 か
では、これらの 理 想 的 な 4 つのスタイルを 持 つ
を示したものである。6 つのスタイルがあるので、4
リーダーになった 場 合、指 示 命 令 型 と 率 先 型 はど
つスタイルを 保 つ 場 合、組 み 合 わせは 15 通 りある
のように 使 っていけばいいのだろうか? 全 く 使 わ
が、出 現 率 が 3% 未 満 は 実 際 にはあまり 見 られな
ない、時折使うなど、効果的な使用方法はあるのだ
「 視 点 」を「 自 分 視 点( Own
図 7 に 示 しているが、
第 4 段階は、他者の思いを理解しつつ、それをど
interest )」と「 他 人 視 点( Other's interest )」、 のようにグループとして 実 践 していくかを 考 えて、
「対象」を「個人対象( 1 対 1 )」と「グループ対象( 1
関 係 者 の 総 意 をグループの 力 に 束 ねあげて 業 務 を
対 多 数 )」に 分 ける。
( 一 般 的 な 類 型 であり、個 々 人
推進していく段階である。この段階でのスタイルは
い組み合わせであり範例になりにくいと考えると、
ろうか? 答 えは、指 示 命 令 型 は「 基 本 は 使 わない
が必ずしもこのフレームワークに当てはまるもので
ビジョン型となる。
現 実 的 にありえる 組 み 合 わせは 6 通 りしかない。
ほうがよく、必 要 最 小 限 で 本 当 に 必 要 なときにだ
はない )
ここまでで 言 えることは、リーダーシップの 開 発
どの 組 み 合 わせが 最 も 効 果 的 かと 言 うと、組 織 風
け 用 いる 」、そして 率 先 型 は「 時 には 用 いても 悪 影
第 1 段 階 は、自 分 のやりたいことを 自 分 で 実 践
には 道 筋 があり、リーダーは 視 点、対 象 を 拡 大 して
土 との 関 係 からも 想 像 できるように、ビジョン 型、
響 はないが、あまり 頻 繁 に 用 いない 」というのがコ
していく 段 階 であり、働 きかける 対 象 は 主 に 個 人
いきながら、より効果の高いスタイルを獲得してい
関 係 重 視 型、民 主 型、育 成 型 の 組 み 合 わせが 最 も
ツのようである(図 9-1,2 )。
ベース。この 段 階 でのスタイルは 指 示 命 令 型 と 率
くという一つのガイドラインがありそうだというこ
先型となる。
とである。また、ビジョン 型 は 効 果 が 高 いスタイル
第 2 段 階 は、視 点 の 幅 が 広 がり、チームとしてや
であるものの、日 本 人 にとっては 獲 得 が 最 も 難 し
りたいことを、他 人 を 巻 き 込 みながら 実 践 してい
く、アスピレーションとしてリーダーシップの 最 終
く段階。この段階でのスタイルは民主型となる。
ゴールに 設 定 する 一 方 で、日 本 の 文 脈 では 効 果 的
第 3 段階は、よりチームのメンバーの視点に立ち、
な 民 主 型 のリーダーシップで 組 織 を 率 いていくこ
メンバーがやりたいこと、求 めていることを 深 く 理
とも 現 実 的 なリーダーシップ 開 発 の 目 標 と 言 える
解 し、チームの 個 々 人 がやりたいこと、求 めている
だろう。
図 7 リーダーシップ開発における視点と対象の変化
他人
(Other's interest)
4
ビジョン型
3
図 8 リーダーシップスタイルを 4 つ持っている場合の各組み合わせによる組織風土調査スコア
組み合わせ
指示命令型 ビジョン型 関係重視型
民主型
率先型
育成型
組織風土調査合計スコア
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
出現率(%)
407
371
356
353
348
308
302
300
297
296
293
264
44%
1%
2%
1%
8%
2%
1%
18%
14%
3%
1%
5%
出現率 3% 以上の組み合わせ
育成型
関係重視型
2
図 9-1 指示命令型の使用と組織風土調査スコア
民主型
視点
指示命令型の実践 組織風土調査合計スコア *
必要なときのみ
(33% 以下)
1
自分
(Own interest)
率先型
たまに
(34-49%)
指示命令型
時々
(50-66%)
個人
(1 対 1)
8
リーダーシップ開発の道筋のフレームワーク
対象
図 9-2 率先型の使用と組織風土調査スコア
グループ
(1 対 多数)
よく使う
(67%以上)
率先型の実践
412
385
377
374
N数
組織風土調査合計スコア *
491
必要なときのみ
(33% 以下)
198
たまに
(34-49%)
398
219
時々
(50-66%)
397
-27
251
よく使う
(67%以上)
403
380
N数
231
229
291
-17
408
* ビジョン型、関係重視型、民主型、および育成型の 4 つのリーダーシップスタイルを発揮している人における平均値
メインスタイルとして用いるリーダーシップと補助的リーダーシップスタイル
9
職位・役職別のリーダーシップ開発の現状
図 11 指示命令型または率先型のみ発揮している場合の組織風土(%)
指示命令型 リーダーシップスタイルのみ
いうことになっている可能性もある)
( 図 10 )。
うことである!( 獲 得 しているリーダーシップスタ
シニアレベルのマネジャーのスタイルをエントリー
イルの数も 2 から 2.2 とあまり増えていない。)
レベルのマネジャーと 比 較 すると、確 かにビジョン
図 12
リーダーシップスタイル
A エントリーレベル マネジャー
B 中堅レベル マネジャー
C シニアレベル マネジャー
C - A )
差( 指示命令型
24
25
27
ビジョン型
16
18
22
32
36
34
民主型
47
56
52
+5
率先型
49
48
52
+3
32
34
29
-3
2.0
2.2
2.2
関係重視型
育成型
発揮するリーダーシップ
スタイルの数
+3
+6
+2
* 診断スコアがグローバルに蓄積されたデータベースとの比較で 67パーセンタイル以上のマネジャーのパーセント
初期のリーダーシップ開発
10
1 つ目および 2 つ目のリーダーシップスタイルと組織風土
1 つ目に発揮するリーダーシップスタイルと組織風土調査スコア
図 10 職位・役職レベル別リーダーシップスタイルの発揮度 *(%)
リーダーシップスタイル 組織風土調査合計スコア
指示命令型
162
ビジョン型
関係重視型
360
223
民主型
率先型
出現率(%)
240
173
育成型
301
2 つ目に発揮するリーダーシップスタイルと組織風土調査スコア
指示命令型 ビジョン型 関係重視型 民主型
率先型
-
NA(0%)
243(2%) 237(6%) 153(26%) 231(7%)
0%
NA(0%)
-
415(1%) 318(1%) 283(1%) 245(0%)
3%
243(2%) 415(1%)
18%
237(6%) 318(1%) 273(14%)
46%
153(26%) 283(1%) 231(3%) 236(32%)
1%
231(7%) 345(0%) 264(1%) 259(5%) 235(2%)
XXX(X%)
-
273(14%) 231(3%) 264(1%)
-
236(32%) 259(5%)
-
より更に組織風土を悪くしてしまう可能性が高い
( 図 12 )。
すものであり、無 論、業 種、職 種、置 かれている 状 況
によって 開 発 すべきリーダーシップは 異 なる。しか
また、ビジョン 型 が 理 想 的 なので、ビジョン 型 を
しながら、リーダーシップ 開 発 には 一 定 の 順 番、組
早期に開発しようとしがちであるが、2 つ目のリー
み合わせがあり、闇雲に開発しても、時間を浪費す
ダーシップスタイルとして 開 発 しようとしても、そ
ることになってしまう。よってここで 示 されている
の 可 能 性 は 1 % 程 度 であり、あまり 現 実 的 でない。
のは、ヘイグループのデータベースの 分 析 によって
このようなリーダーは、ビジョンを 提 示 しようとが
導 き 出 された 効 果 的 なリーダーシップ 開 発 の 指 標
んばってみるものの空回りして、結局は開発できな
と考えていただければ幸いである。
いということになりかねない。リーダーシップスタ
リーダーシップ 開 発 は 長 い 道 のりで、キャリアを
発 しやすく 、かつ 組 織 風 土 へよい 影 響 を 及 ぼすこ
イルには 順 番、スタイル 毎 の 親 和 性・組 み 合 わせが
通 じて 少 しずつ 磨 いていくものである。しかしなが
る場合、リーダーシップスタイルは 1 つしかなく、そ
とができる 。もし 1 つ 目 が 指 示 命 令 型 の 場 合 は 民
あり、このルールを無視しての開発はかなりの困難
ら、日 本 全 体 として 優 れたリーダーの 育 成 が 急 務
のスタイルは 率 先 型 か 指 示 命 令 型 である 可 能 性 が
主 型 か 育 成 型 が 望 ましい 。間 違 ってはいけないの
を伴うと考えていただきたい。
と 言 われており、また 個 人 のレベルでも 充 実 した
プスタイルを 持 つ 場 合 に 、得 意 である 、業 務 に 必
しくない可能性が高い(図 11 )。
要 であるからといって 、もう 片 方 のリーダーシップ
では 、もしあなたの 1 つ 目 のリーダーシップスタ
イルが 率 先 型 の 場 合 、次 にどのリーダーシップスタ
職位・役職別のリーダーシップ開発の現状
-
出現率
イルを 開 発 すべきか ? 関 係 重 視 型 か 民 主 型 が 開
は 率 先 型 か 指 示 命 令 型 のどちらかのリーダーシッ
235(2%)
組織風土調査スコア
く 長 い 道 のりである。あなたが 初 期 のリーダーであ
高 い( 率 先 型 の 可 能 性 は 46% 、指 示 命 令 型 の 可 能
育成型
32%
リーダーシップ開発はキャリアを通じて行ってい
性 は 32% )。そしてその 時 の 組 織 風 土 の 状 況 は 芳
17
チームコミットメント
ず、リーダーとしての 進 化 はあまりしていないとい
方向の明確性
立 場 を 踏 まえて、 そろそろ 上 の 職 位・役 職 に と
評価・処遇
役職が上がってもリーダーシップスタイルは変わら
必要とされる下限値 (35)
22
基準
ルを 使 用 している。つまり、全 体 的 に 見 ると 職 位・
る( もしくはリーダーシップに 関 係 なく、年 齢 など
責任
リーダーシップを開発できていないと言えそうであ
22
17
柔軟性
型の比率も上がっており、引き続きこれらのスタイ
32
28
チームコミットメント
理 職 に 関 しては、必 ずしも、理 想 とするレベルまで
19
28
27
方向の明確性
の 開 発 は 不 十 分 である。また、指 示 命 令 型 と 率 先
27
評価・処遇
とが 望 ましい。しかしデータを 見 る 限 り、日 本 の 管
必要とされる下限値 (35)
51
43
基準
や 育 成 型 といった 上 位 リーダーに 必 要 なスタイル
責任
型 を 発 揮 する 人 が 増 えているものの、ビジョン 型
高 度 なリーダーシップが 期 待 され、発 揮 しているこ
柔軟性
理 想 的 には 職 位・役 職 が 上 がるに 連 れて、より
率先型 リーダーシップスタイルのみ
キャリアの追及が求められている現在において、効
リーダーシップ開発にむけて
率 的 にリーダーシップを 開 発 してくことの 重 要 性
スタイルを 開 発 してしまうことである( 率 先 + 指
ここで 述 べてきたことは、リーダーシップ 開 発、
らも皆様のリーダーシップ開発のパートナーとして、
示 命 令 型 )。この 組 み 合 わせはどちらか 片 方 の 時
特 にリーダーシップスタイルの 開 発 の 一 般 論 を 示
貢献していきたいと考えている。
はますます 高 まっている。ヘイグループは、これか
初期のリーダーシップ開発
11
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