技術紹介 ダウンサイジング直噴過給エンジン用インジェクタ ダウンサイジング直噴過給エンジン用インジェクタ※ Injector for Downsized Direct-Injection Supercharged Engines 安 田 敬 弘*1 Takahiro YASUDA 鍋 島 保 彦*1 宮 下 純 一*1 Yasuhiko NABESHIMA Junichi MIYASITA 森 谷 昌 輝*1 Masateru MORIYA 猪 又 茂*1 Yutaka INOMATA 工 藤 浩*2 Hiroshi KUDOU Compared with natural aspiration engine injectors, supercharge engine injectors are required to have large flow rate and large dynamic flow range. In order to prevent the flow deviation at low injection time, we selected a control technique of clearance area between armature and lower stopper. As a result, DFR (Dynamic Flow Ratio) increased by 23%. 1.はじめに 2.目標値 世界各国での排出ガス規制強化や環境意識 NA-DI と TC-DI に要求される燃料噴射特 の高まりを受け,小排気量で燃費性能と動力 性の比較を Fig. 2 に示す.TC-DI の DFR 拡 性能を両立できるダウンサイジング直噴過給 大を達成するためには,応答性を高めること, エンジン搭載車の拡大が見込まれている. および短い燃料噴射時間における燃料流量 過 給 エ ン ジ ン 用 直 噴 イ ン ジ ェ ク タ( 以 下 の変動を抑えることが重要である.TC-DI の TC-DI)は,自然吸気エンジン用直噴インジェ D F R 目標値は,最大噴射燃圧を N A - D I 同等 クタ(以下 NA-DI) に対し,動的流量比(DFR: とした場合に 20% の向上を設定した. Dynamic Flow Ratio)の拡大が要求される.本 報では応答性の向上と変動率の抑制により, Flow rate (mm3/st) DFR の拡大を達成した Fig. 1 に示す直噴イン Target Value Max Q ジェクタの技術内容を紹介する. DFR とは,任意の燃料噴射時間における最 大燃圧時の最大噴射流量(Q MAX)を最小燃圧時 の最小噴射流量(QMIN)で割った値を示す. ure I -D ress TC el P Fu gh Hi ure -DI NA l Press I e TC-D Pressure u hF Fuel w Hig o L NA-DI ssure el Pre Low Fu Max Q Min Q Target Value Qmax Dynamic Flow Ratio = Qmin Tmin Tmin Tmax Ti (ms) Fig. 2 DFR comparison 3.技術的取り組み Fig. 3 に示すハンマリング構造を用いたバ ルブ駆動方式においては,油種や温度等の環境 Fig. 1 因子により応答性の変動が大きいことが確認 Appearance of direct injector ※2015 年 6 月 1 日受付 *1 開発本部 第三開発部 *2 生産本部 生産技術五部 - 40 - ケーヒン技報 Vol.4 (2015) されている.これはバルブ駆動時にアーマチュ た.最終的に D F R は 23% の向上を達成する アがロアストッパとの間の微小な隙間に粘性 ことができた. 抵抗力の影響を受け応答時間が変動するため である.粘性抵抗力の影響を Fig. 4 に示す. Response time [msec] そこで,油種や温度等の環境因子による粘 性抵抗力の影響を低減する方法として,アー マチュアとロアストッパ間の当接面積に対し 最適化をおこなった.粘性抵抗力の低減方法 として面粗度の最適化も検討したが,生産性 NA-DI Responsiveness increase TC-DI Deviation decrease Contact area decrease および検査基準の観点から当接面積を管理す 20% る手法を選択した. 40% 60% 80% 100% 120% Contact area of armature and lower stopper [%] TC-DI におけるアーマチュアの応答性を評 Fig. 5 価した結果を Fig. 5 に示す.実機環境化での Relationship of armature contact area and needle valve responsiveness 高温・高燃圧相当の条件における粘性特性を導 4.まとめ き出し,応答性と最大作動燃圧が両立できる ように当接面積の最適化をおこなった. 結果としてアーマチュアの応答性は 4.3% ハンマリング構造を用いた T C - D I におい 向上し,変動率は 20% 低減した.これにより, て高い DFR の達成手段として,応答性向上の MIN Q が低減し DFR 目標値の達成につながっ ためにアーマチュアおよびロアストッパ間の 微小な隙間に対して当接面積の最適化をおこ Main spring なった.その効果,DFR は 23% の向上が実現 Coil できた.また最大作動燃圧についても両立が Guide collar 可能となり,ダウンサイジング直噴過給エン Stator ジンに対応できる仕様となった. Damper spring 著 者 Armature Upper stopper Lower stopper Valve rod Needle valve Valve ball Fig. 3 Construction of needle Fmag 安田敬弘 Fmag 自然吸気エンジン用直噴インジェクタを元 Fstick にスタートした開発でした.よい手本を参考 Fstick にできたことで目標の達成が可能となりまし た.ダウンサイジング直噴過給エンジン用直 Contact area NA-DI Fig. 4 噴インジェクタとして量産できたこと,また Contact area 皆様のお力添えにより今回紹介できる機会を TC-DI 与えて頂いたことにお礼申し上げます. (安田) Viscosity peeling resistance - 41 -
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