三浦市初声町初声土地改良区について [横須賀三浦支部] 横須賀三浦地域県政総合センター 農地課 【地区の概要】 市の北西部に位置する初声土地改良区は、初声町の和田、下宮田、入江、高円坊にまたがる 111ヘクタールの耕地で、平成26年12月現在、組合員総数391名と、面積、組合員数 ともに三浦半島最大の土地改良区である。 地区内には川幅2メートル程の下市川と庄司川が流れ、周囲を標高30メートルから40メ ートル程の畑作台地に囲まれた平坦地である。 【地区の歴史】 和田に館を構えていた鎌倉時代の武将、和田義盛は、壇ノ浦で平家討伐に加わり大勝を収め、 城内で領民を交えた祝いの酒席で 戦勝の舞「初声」を演じたとされており、「初声」の地名 も、これに由来するといわれている。 ここ、初声耕地は、当時としては、三浦半島有数の穀倉地帯で、三浦一族の居城である衣笠 城の食糧庫として、三浦一族の繁栄を支える大切な役割を果たしてきた。 また、地区の北側には、義盛が地蔵尊参拝の折に立ち寄り、垢離を取り、身を清めたという 霊泉の史跡もあり、昔を偲ぶことができる。 【過去に実施した土地改良事業】 初声耕地は、かつて湿田地帯のため、生産性は低く、道路の整備も遅れていたことから、谷 戸田では、大部分を人肩による田越し運搬を余儀なくされ、台地の畑作の忙しい時期には、労 力のかかる水田に手をかける者は少なかったと聞いている。 こうした状況の中、昭和39年に初声土地改良区が設立し、昭和41年までに第一次農業構 造改善事業により104ヘクタール余りの水田の区画整理を竣工した 初声耕地は、全般的に重粘土質水田土壌で、過湿田の場所も多く、接地圧の少ない超湿地ブ ルが、しばしば押土作業中に立ち往生する難工事であったことが記録に残されている。 昭和46年度には、団体営水田転換特別事業により11ヘクタールの客土工が実施され、昭 和50年代に入ると、国の農業政策も減反から転作へと大きな転換期を迎え、これに伴い排水 路の再整備、客土による畑地化が急速に進んだ。 その後、農道舗装等の整備も進められたが、昭和54年度から59年度にかけて実施した土 地改良総合整備事業では、今までの事業を補完すべく畑地かんがい14ヘクタール及び農道舗 装3キロメートル余りを整備し、農業生産資材の搬出入及び農産物の運搬の合理化、商品価値 の低下防止のほか、野菜の品質向上による個別経営農家の所得増大が図られ、現在の秋冬ダイ コンと春キャベツの産地になった。 昭和 54年度から 57 年度にかけて実施した県営排水対策特別事業では、本地区の中央を流 れる庄司川と下市川は、まだ土水路で、国道 134 号線の横断箇所も含め、断面が狭小な上、潮 位や河口閉塞の影響を受ける感潮河川で、豪雨時には排水不良をきたし、湛水被害をもたらし ていた。 このため、断面を広げ排水能力を高めるとともに、安定した通水能力を確保する 3 面張り のコンクリート水路や底盤に栗石を敷き環境に配慮した 2 面張りコンクリート水路など、約 3,300メートルを改修した。 【最近の土地改良事業】 最近では、平成15年度から25年度にかけて農村振興総合整備事業を実施したが、国の事 業採択は、平成15年度から19年度までが1期、平成20年度から25年度までが2期に分 割されている。 初声土地改良区は、2期が中心で、揚水機整備2ヶ所、給水栓10ヶ所、道路工 1,196 メー トルを実施し、事業費 174,719 千円を費やして整備した。 また、耕作土が河川に流入し、堆積することから、毎年、農家が多大な労力をかけて泥さら いを行っているが、少しでも農家の労力軽減を図るため、重機による土砂撤去ができるよう、 下市川の下流に沈砂池を設置した。 平成26年度からは、地元要望が国の採択要件を満たさない 内容であることから、県営土地改良基幹施設整備事業を導入し、 下市川の管理用道路がない366メートルの区間で、2面張り 水路の底盤を施工するとともに右岸側に管理用道路と併せて土 留擁壁を施工している。 このように土地改良事業が、半世紀にわたり導入できたのは、 地元農家の高い営農意欲と地域の固い結束力、そして代々の土 平成 27 年度 土地改良基幹施設整備事業 竣工写真 地改良区理事長及び役員の苦労の賜であるが、地元の要望を真摯に受けとめ、初声地域の農業 振興に尽力を惜しまず、行政との橋渡しを行ってきた三浦市農業協同組合土地改良対策室の職 員の働きを忘れてはならない。 【新たなソフト事業】 近年、農村地域で、地域の共同活動によって支えられてきた農業用水路や農道の保全管理が困 難になってきている状況から、国では、地域主体の保全管理の取組を強化する、農地・水保全管 理支払交付金を創設したが、初声地区でも平成20年度から導入し、地区内の道路法面の草刈り や水路の土砂さらい等の活動に活用している。事業主体は協議会となっているが、事実上は土地 改良区が行っており、市内で実施している5地区のうち、当該地区が最も活発に活動している。 平成 27 年の 4 月からは。法制化された多面的機能支払交付金として施行することになるが、こ うした活動が、市内はもとより三浦半島全体に広がることを期待している。 【課題について】 初声土地改良区は、設立から50年が過ぎ、水田のほ場整備から始まった土地改良事業も数え 切れないほど導入され、土地基盤整備の充実が図られてきた。 役員の方々には、世代交代を期に、一区切りつけるべきという声もあり、解散に向かう機運も 高まりつつあるが、一旦解散した土地改良区を再度設立することは、至難の業であり、近々に補 修が必要な施設や再整備が必要な地区も見受けられる。 担い手の確保にさほど苦労しない地区であっても、農業者の高齢化及び少子化、職業選択の多 様化を考えれば、更なる効率的な土地基盤整備も必要と考える。 今後は、将来にわたり永続的に施設管理ができる土地改良区の維持管理計画と効率的な運営が できる体制づくりを、地元農家を中心に、農協、市、県が一体となり、早急に進めることが重要 である。
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