厳格三声対位法:第二種

厳格三声対位法:第二種
この種の対位法においても、基本のルールは二声対位法および三声対位法の第一種に準
じる。ただし、ある声部間で強拍に生じる連続五度について、これを回避する手段として
は、二声対位法では四度以上の跳躍を伴った反行を裏拍で行うという規則があったが、こ
の規則は若干緩和され、三度の跳躍でも許容される。
【進行】
1. 連続五度の回避法としては、裏拍の三度跳躍によっても可能となる。(二声対位法
では四度以上の跳躍が必須であった。)
2. 内声の旋律において連続五度が発生しても、上声部によって十分にその問題を隠せ
れば許容される。ただし、これは他に可能性が無かった場合の次善の策であり、内
声であっても連続五度は濫用されるべきではない。外声部に現われる連続五度はい
かなる場合にも許容されない。
3. 二分音符で進行するのは、三つのうちの一声部だけである。
4. 二分音符による声部は、開始小節の強拍を休符とするのが趣味が良い。
5. 声部の交差は不可避な場合には許容される。(交差を恐れるよりは自然な声部の進
行を優先すべきである。)しかし、交差が長い間つづくのは良くない。せいぜい二
小節以内に元の声域に戻るべきである。
6. 二分音符を持つ声部では、同じ音が連続してはいけない。
【和声】
1. 強拍で和音の第三音を重複させるのは避けるべきであるが、弱拍での重複は許容さ
れる。
2. 開始小節と終止小節を除き、強拍でのユニゾンは禁止である。
進行の規則 6.について、最終小節の直前小節では同じ音の連続が例外的に要請される場
合があり、古典の対位法の大家達もこの用法を許容していることは補足しておかねばなら
ない。次の譜例では、*において上声部と内声に、**において内声とバス声部において、
強拍上のユニゾンが生じてしまっている。
これを、①内声部で同じ音を連続して用いるか、②内声部にシンコペーションを用いる
ことを許容することで、次のように修正し、強拍上のユニゾンを回避できる。
第一旋法の例1
第一旋法の例2
第一旋法の例3
厳格二声対位法第二種では、裏拍の二分音符はあくまで経過音という扱いであって、後
続小節の一拍目と同じ音になるケースは許容されなかった。しかし、三声対位法において
は、上例のように必要に応じて最終小節前の終止形などでタイを使用しても良い。このこ
とは既述した。最終小節の直前小節で上例のようにタイを用いずに協和音音程を用いるよ
りも、上例のように繋留にした方が趣味が良い。
内声におけるシンコペーションの使用は、可能なかぎり忌避すべきであるが、最終小節
の直前小節においては、恐れずに用いるとよい。
タイを使わない陳腐な例(左)と繋留を用いた例(右)
第三旋法の例1
第三旋法の例2
第三旋法の例3
第五旋法の例1
第五旋法の例2
第五旋法の例3