ダウンロード - 山陽核医学カンファレンス

1068485/ 医学カンファレンス記録集第 52 号指名演題 2/P1 → 2 校(栢野)
指名演題 2
脳血流 SPECT 画像読影補助ソフト
Z-score summation analysis method (ZSAM)の検証
長谷川 大輔 1),長谷川 明 2),野口 泰宏 3),柴辻 一成 1)
1, 背景・目的
認知症患者の増加により脳核医学を専門としな
い医師が脳血流 SPECT 画像を読影する機会が増え
ている.典型的な所見であれば読影は容易である
が,微妙な所見では脳核医学を専門とする医師でも
読影時の状況によって所見の捉え方が違ってくる
可能性がある.
近畿大学の石井らは 123I-IMP SPECT 画像専用の
読 影 補 助 解 析 ソ フ ト と し て Z-score summation
analysis method( 以 下 ZSAM) を 開 発 し た.
ZSAM はテンプレート ROI 内における Z-score の
合計値から血流低下判定を行い,読影を補助するた
めのソフトウェアである(Fig.1)
. 今回臨床結果
を用いて ZSAM の解析結果を,脳核医学読影医の
結果と Mini-Mental State Examination(MMSE)
を比較し,ZSAM の有用性について検討した.
2, 対象
アルツハイマー型認知症 (AD) 疑いで 123I-IMP 脳血
流 SPECT 検査を施行し,AD と診断された 29 症例.
頭蓋内に器質的疾患を有する患者,DLB やその他の変
性性疾患が疑われる患者は除外した.平均年齢 78.5±
7.2 歳,男女比 11:18,平均 MMSE は 21.5±3.9 であ
った.
3, 収集・再構成条件
IMP 画像研究会における機種別 Normal Database
の収集条件に準拠した.
・使用機器:SIEMENS e.cam
・投与量:185MBq
・収集開始時間:投与 15 分後
・収集時間:30 分(2.5 分 / 回転 ×12 回転)
・ピクセルサイズ:3.9mm
・画像再構成方法:FBP 法
・前処理フィルタ:Butterworth(0.58cycles/cm,
order:8)
・散乱線補正法:TEW 法
・減弱補正法:chang 法(μ=0.146cm-1)
4, 方法
1)読影医は SPECT 断層画像と 3D-SSP による
Z-score 画像を読影し,左右の後部帯状回・楔前部に
おいて血流低下判定を行った(58 領域:29 症例 ×2).
その後 ZSAM による血流低下判定を行い,脳核医学
読影医の読影による判定と比較し,以下の一致率を求
1)岡山済生会総合病院 画像診断科
2)国立病院機構岩国医療センター 放射線科
3)岡山東部脳神経外科 東備クリニック
めた.
・一致率:読影医と ZSAM の判定が一致した割合.
・血流低下ありの一致率:読影医が血流低下ありと判
定した領域において ZSAM が血流低下ありと判定し
た割合.
・血流低下なしの一致率:読影医が血流低下なしと判
定した領域において ZSAM が血流低下なしと判定し
た割合.
2)各症例において ZSAM から算出される左右の
後部帯状回・楔前部での Z-score 合計値と MMSE の
スコアとの関係を軽度低下群(MMSE24 点以上),中
等度低下群(MMSE20~23 点),重度低下群(MMSE19
点以下)に分けて比較した(有意差検定:student-ttest,有意水準:0.05).
5,結果・考察
読影医と ZSAM の判定結果を Fig.2,Z-score の合
計値と MMSE との比較の結果を Fig.3 に示す.
読影医と ZSAM の一致率は 83% であった.血流低
下ありの一致率は 88% で,血流低下領域において
ZSAM の判定は読影医による判定とよく一致し,血流
低下がある症例に対して有効なソフトであった
(Fig.2).血流低下なしの一致率は 78% であり,血流
低下ありの一致率と比べ低値となった.ZSAM はテン
プレート ROI 内における血流低下判定なので,ROI
境界部での血流低下症例や,ROI 内の閾値を超えない
僅かな血流低下症例において,読影医との不一致が生
じたと考えられる.
判定不一致領域は 8 領域あった.読影医が低下,
ZSAM が低下なしの判定は 6 領域(5 症例)で,6 領
域中 Z-score の合計値が閾値を下回っていたのが 5 領
域,正常範囲内であったのが 1 領域であった.読影医
が低下なし,ZSAM が低下の判定は 2 領域(2 症例)で,
Z-score の合計値は閾値を僅かに上回っていた.以上
の結果から,今回の検討においては ZSAM が血流低
下なしと判定した僅かな血流低下領域に対して,読影
医は低下ありと判定する傾向があった.
Z-score の合計値と MMSE には有意な関係はなかっ
たが,MMSE の軽度低下群から重度低下群にかけて
僅 か に Z-score の 合 計 値 が 増 加 す る 傾 向 が あ っ た
(Fig.3).アルツハイマー型認知症は進行すると,後部
帯状回・楔前部から大脳外側に波及し頭頂葉から側頭
葉,さらに前頭葉と拡大していく. 今回は後部帯状回・
楔 前 部 の み の 評 価 で あ っ た こ と, 血 流 低 下 度 と
MMSE のスコアには個人差があることなどが Z-score
1 校(栢野)
1068485/ 医学カンファレンス記録集第 52 号指名演題 2/P2 → 1 校(栢野)
の合計値と MMSE に有意な関係がなかった原因とし
て考えられる.
6,結語
読影医と ZSAM の判定一致率は 83%,血流低下領
域での一致率は 88%,血流低下のない領域での一致率
は 78% だった.ZSAM を使用する際は,ZSAM と読
影医との判定を比較し,傾向を把握したうえで利用す
ることが望ましい.
Fig.1 ZSAM の解析画面
Fig.2 読影医と ZSAM の判定結果
Fig.3 Z-score の合計値と MMSE との比較
1068485/ 医学カンファレンス記録集第 52 号テクニカルデータ / 指名演題 2 → 2 校(栢野)
テクニカルデータ
指名演題2
施設名: 岡山済生会総合病院 123
1.使用製剤
I-IMP
185MBg
投与量
投与法 i.v. ・ i.a. ・ p.o. ・ inh. ・ その他( )
2.使用機器
カメラ
コンピュータ
コリメータ
SIEMENS
社製
社製
E-CAM signature model
( LMEGP )
3.撮像開始時間(DYNAMIC撮像は除く)
投与後
15
秒・分・時間
秒・分・時間
4.撮像条件
c) DYNAMIC撮像
投与後
(図 , , , , , )
0
秒・分から
1フレーム
秒・分から
1フレーム
秒・分から
1フレーム
2
秒・分×
秒・分×
秒・分×
70
フレーム
フレーム
フレーム
d) SPECT撮像
(図 , , , , , )
【収集マトリクス】 64×64・128×128・256×256・その他( )
【収集時間】
・1step
秒
×
step(方向)
・1rotation
5
秒・分 ×
6
rotation/scan
【画像再構成】
・FBP法(*Butterworth Filter使用の際はOrder値とCut off値も記載)
前処理フィルタ : なし
あり(filter名: )
再構成フィルタ : なし
あり(filter名:Butterworth(Order8,Cutoff 0.45 ))
後処理フィルタ : なし
あり(filter名: )
・OSEM法
(subset数 iteration数 )
・その他( )
【減弱補正】
:なし あり (方法:Chang
(方法 :
factor:
)
【散乱補正】
:なし あり (方法:TEW )
【スライス厚】
pixel/slice×
mm/pixel
e) 画像出力方法
・フィルム
サイズ ( )
・カラープリント
( )
・サーバー メーカー( )
メーカー ( テクマトリックス )
第 52 回 山陽核医学カンファレンス